シルクロードオンライン¬(differentiam) 作:hachu
いた――――……
(馬に乗った商人ひとり……弱そうだ、護衛は四人)
二人は余裕、二人は何とか殺せそう。
積荷は少ないが厳重、陶器か? あの規模じゃ宝石は無いか、
ヘラヘラ談笑してる――――無警戒
まず出頭に商人を殺し、そのまま走り抜ける。
怒りで追ってきた奴を一人づつ殺し、誰もいなくなった所で荷を吟味し、
気に入った物をまるっと――――
「……って、ありゃウチの連中じゃねーか!!」
――――アタシが所属する結盟、『真夜中の旅団』
人情に熱い商人上がりの武人、
自由な気風で頭角を顕してきた新進気鋭の結盟。
とは言え、かつての群雄割拠に比べて穏やかな昨今、
頭角と言ってもたかが知れている。
昔は一人、飛び抜けたエースがいたそうだが、私が入る前に抜けてしまったそうだ。
一緒に仕事をした盗賊仲間が所属していて、
『エースの穴埋めを募集している』と紹介され、籍を入れた。
結局、その盗賊仲間だった女の子は『自分には向いていない』と、商人に転向した。
仲間だから襲う事は出来ない。
――――で、その転向した商人っていうのが
あそこの真ん中で馬に乗ってる
タメなのに何故『先生』かと言うと、
結盟の女達は皆、先生に作法や化粧、喋り方なんかを教わってる。
元・花魁で、男を惚れさせるテクが半端じゃないのだ。
代わりに皆は、先生に弓術や気功を教える。
腕力は無いのに、最近じゃ気孔で補ったけっこう強い矢を放ってくる、
動く的にもほとんど外さない。
一芸に秀でる者とは、他の事でも吸収が早いのだろう。
そして何より、肌が幼女のように瑞々しい。
あれが花魁だったと言うのなら、男はやはり幼児体型が好きなのだろう。
私は女の特権でよくあの肌に抱きついている。
『バイ』だと気付かれるのが嫌で一線は保っているが、
一緒にいるとムラムラして正直ヤバイ。
だがそんな先生も、肌の秘訣だけは教えてくれない。
「そんなっ……何もしてないのよ? 本当なの……」
と言ってごまかし、それがまた可愛い。
だが、絶っ対! 何かしているハズだ。
その遊郭の秘術、いずれ頂いてみせる――――
商人だろうと盗賊だろうと構わず受け入れ、それでイザコザが起きないのは、
今、先生の横で護衛している、長身で眉間に傷があって、
長い髪を一つに束ねてる、顎の薄い男がそれだ。
この結盟は面白そうな事なら何でも挑戦する。
気が弱い奴もいれば、気が荒い奴もいる。
下手な正義感は持たず、以前は盗賊業も手伝ってくれて、
けっこう居心地が良かった。
「でも、今はコレ――――」
増えた人員の育成、装備、その他活動資金を捻出するため始めた行商。
やり出したらハマったらしく、
最近じゃ遠足気分で色んな所を行ったり来たりしてるそうだ。
ウェイは私と同じく商人家の出だから性に合ってんだろう。
と言うか、盗賊業の方がみんな無理に合わせていたのかもしれない。
私は逆に、『行商なんて興味ない』と断っていたが――――
「いざ見るとアイツら、格好のカモじゃん……」
いつもあんな具合なのか――――?
まあ、ウェイがいればそうそう殺られはしないだろうけど。
アイツ、あれでそこそこ強いし。
「久々のカモが結盟とはなぁ……あー、もうっ!」
近頃は盗賊界隈も繋がりが薄く、同業がどれだけ続けてるかさえ判らない――――
私が未だに昔ながらのポイントで張ってるのも、
この情報不足に起因する。
「それを解消すんのも、結盟入った理由なんだけど……――――おっ?」
ウェイ達の後方、茂みに隠れて動く『黒い物体』が二つ。
両手で筒を作りその方角を注視する。
(盗賊、二人か――――動きが慣れていない、ルーキーだ)
「殺るのかぁ……? いくのかぁ……? いけーーっ!!」
本来なら結盟の助けに入るところだ。
でも、久々に見つけた同業だけに先輩心からついつい応援してしまう。
「おおお、いったーーっ!」
自分が手を出せない分、余計に感情移入しているかも。
「殺れぇーッ! 薄顎を殺れぇーッ! アイツは顎が弱点――――ああ~……」
先に飛び出した一人が集中攻撃に倒れ、
それを見たもう一人は理性を失って突っ込み、やはり集中攻撃に倒れた。
『偉大教師』すらも知らないとは。
(何やってんだよ……)
あれでは『特攻』だが、それなら最低でも一人は道連れにせねばならない。
あれでは只の『犬死に』だ。
「アタシがやったらなぁーっ! アタシがやったらなぁーっ!」
違う、アタシがやっちゃいけないんだった――――
「賊って……実はまだ、結構いるのか?」
判ってれば一緒に殺ったものを。
いや、アレは殺らないよ? 別のをよ?
「それも、違うか――――」
正直あのレベルと行動しても ”一人よりマシ” って位だ。
付き合いって言うか、指導って言うか、目的が別の物に変わりそうだ。
「アタシは別に、金なんていらないんだ……」
この燻った気持ちをぶつけられる『敵』が――――
「ちょっと待て!?」
ハッと気付いたように、寝そべりかけた身体を起こす。
「敵が欲しいんなら――――……!」
********* あとがき *********
このゲームでは(以前は)商人、ハンター、盗賊という3つの職を好きに選べました。
ゲーム黎明期が終わった時期、「☆1システム(積荷が少ない商人は襲えない)」「一定レベル差の商人への攻撃不可」などが追加された頃の話です。初期のスタープレーヤーが続々引退し、職業戦が停滞した時期でした。
自信がないプレーヤーは「システムで保護された交易」レベルが高いプレーヤーは「寄り集まって圧倒的物量」と、世界観がゲーム臭くなってしまった記憶があります。
早朝あたりは単独交易してたプレーヤーもいましたが、その時の動画です。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4523999
盗賊がとにかく減って、『自分以外いないんじゃないか?』と思うほどでした(やってる人はやってたみたいですが)
特に盗賊は高Lvプレーヤーが少ないと思ってましたが、初期の人がいなくなった影響で気付かぬ内に自分がトップランカーに食い込んでいたようですね。
その辺りを反映し、呂晶は周りがサボっている(とまではいかないけど)
『世界が腑抜けてしまった』という思いを感じ、何かスゴイ事をしたい、でも何をすればいいか判らない、そんなフラストレーションが溜まっています。
燻る大きな理由は他にもあって、そちらは次の回になります。
とにかく『自分がアクションを起こしていくべき立場になった』という事ですね。それに気付いていくのも次回になります。
また、この『ギルド員が二人の盗賊に攻められたのを虎穴山で見ていた』というのは実話になります。
職業自由のギルドで、私は商人は絶っっ対やりたくなかったのですが、他のメンバーはけっこう自由にやってました。
皆が楽しそうに交易するチャットを見て、疎外感を感じ、チャットを閉じて虎穴山近くでボーッとして、『久々の獲物!』と思ったら仲間で、二人のPC盗賊に追われていました。どちらにも加勢できない、という気まずい立場でした。
よって、次回もその後にギルメンと対面した時の、ほぼ実話になります。