シルクロードオンライン¬(differentiam) 作:hachu
「そこの隊商――――止まれ」
呂晶達の進行方向、
馬に跨る盗賊がゆっくりと歩み出る――――単騎だ
「馬上より失敬…………死にたくなくば、荷を置いて去れ。命までは取らん」
やけに鼻に掛かった、時代劇のような喋り方だ。
『なんだぁ、テメェ……?』
護衛の一人が威圧する。
数の優位もあってか乱暴な振る舞いで、その様はどちらが盗賊か判らない。
「あの人、眼帯よ? もしかして……」
盗賊経験のある遊珊が気付き、呂晶に確認する。
その呂晶は彼を睨み付けながら呟く。
「ハイエナの……イエン」
呂晶は彼をよく知っている。
以前に決闘を挑まれ、死闘の末に引き分けた、
『炎』という名でありながら『氷系気孔』の使い手。
ただし呂晶もイエンも、あのままやっていれば自分が勝ったと思っている。
「……その名は好かん」
古い二つ名を呼ばれ、イエンも相手が呂晶である事に気付いたようだ。
言いながら下馬し、片手に剣、片手に盾を持ち――――
歩み寄る。
「あの時の借りを返す――――」
イエンは余裕のある居で立ちから、剣を上段に構え、深く腰を落とす。
その構えは他に類を見ないほど大袈裟で、変則的な構えだ。
「全員、円陣で防御しろ――――遊珊は馬から降りておけ」
ウェイは相手の気配から手練である事を察知し、結盟員達に警戒を促す。
各々が間隔を開け、馬を囲むような隊形へ広がる。
「気を付けろ……アイツは、まあまあ早い」
呂晶も大刀を構えて前に出る、珍しくやる気だ。
肝心な所が抜けてる、痛い奴だが――――
という一言は結盟員の油断を誘うため、心の中だけで呟いた。
戦ったのはかなり前、自分は大幅に成長している。
その成長を確かめるには打って付けの相手だ。
やはり、盗賊から護衛に転身したのは正解だった。
「スゥー……、フゥー……」
イエンは深呼吸して息を止め――――
「シッ――――!!」
地面を蹴り、一歩目からトップスピードで駆け出す。
盾持ちとは思えない超人的な速さだ。
(前より早い、でも――――ッ!)
呂晶が『半端』に使うことを得意とする――――炎功・火魂陣
己が持つ武器に、激しく燃え上がる程の熱を込め、
甲冑ごと相手を溶かし切る気功――――
なのだが、呂晶は熱を込められず爆発して弾けてしまう為、
『半端』に使っている技だ。
この斬撃を爆裂加速させる使用方法は、イエンと戦っている最中に編み出したもの。
これによって劣勢を覆し、彼を撤退に追い込んだ。
(今のアタシは、
イエンのトップスピードに
真横に大刀を振りかぶり、炎孔を集中させる。
間に合わないタイミングだから、タイミングが合う。
(もらった――――ッ!!)
蘭州の森に爆裂音が響く――――が、
横一閃に振られた大刀は、何もない空を斬った。
「そう来る事は読んでいる……」
トップスピードだったイエンが、間合いギリギリ外で “ピタリ” と急停止した。
(何ぃっ!?)
大きく空振りした呂晶は大刀に引っ張られ、
真後ろを向き、背中を見せてしまう――――絶対的に不利な体勢
(フェイントかよっ!! 馬鹿が治ってやがる!!)
100から0になったイエンのスピードが再び100になり、
呂晶を斬り付ける。
(だが――――
背を向けた呂晶はイエンが踏み出した気配を感じ、薄く笑う。
今仕込んだ爆裂気功は、全力の『半分』だけ――――
もう一度爆発音が響き、ほぼ同時に大きな金属音が響いた。
「二連撃か……ッ!」
(受けやがった!!)
呂晶が二度目の爆発を起こし、もう一回転加速させた大刀、
それをイエンは体を丸め、盾でブロックした。
(やっべ、二回しか考えてなかった!! この後どうする――――ん?)
「ぐっ……!」
イエンの体が横に流されている。
(軽っる――――!!)
男とは思えない軽さ。
体を丸め、地面から足を離した為に、踏ん張る力がゼロなのである。
そのままイエンは流され、
呂晶の斜め後方、ウェイのいる方へと吹っ飛ばされた。
(あ……)
イエンをウェイに、『パス』した形になった。
「ふんッッ!!」
イエンは丸まった状態のまま空中で回転し、
不安定な体勢から脱した。
(二人掛かりで悪いが、殺らせてもらう……)
イエンと対峙したウェイは、槍を短く持ち、
『火魂陣』を呂晶とは違う、本来の精度で炊き上げる。
「つッ!!」
槍の切っ先から炎のブレードが迸り、コンパクトな袈裟斬りを放つ。
が――――
「――――ッ!?」
イエンが消えた。
炎のブレードは地面を切り裂き、熱によって土が吹き飛び、長い亀裂を穿った。
(何処だ……!)
ウェイは咄嗟に視点を緩め、『どこにも向けない』ようにした。
どこも注視しない方が目のどこに映っても捉えられるからだ。
だが、いない――――目のどこにも動く物は映っていない。
(て、ことは……!)
首を左に傾け、後方を見る。
切っ先を振り下ろした為に上がった、反対側の槍の柄先。
そこにイエンの片足が着地していた。
「甘い――――ッ!」
ウェイは振り下ろしていた右手を上げ、左手は逆に下げ、
槍をコンパクトに動かしながら左後方、後頭部に対する攻撃を防御する。
金属音が響く――――
イエンはお互い後ろを向き合っている状態で、上を取った地の利を活かし、
剣を半円を描くように振り下ろし、後ろへ斬り付けていた。
ウェイにはほとんど見えていなかったが、後頭部を狙うと踏んで防御を成功させた。
背中を斬り付けられていたら死なずとも結構痛い思いをしていたハズだ。
だが――――
(軽っる――――!!)
イエンが放った剣撃は、すこぶる軽かった。
無茶な体勢で放った為に攻撃に体重が乗っていなかったのだ。
これなら背中でも大して痛くなかったかもしれない。
驚異的な速さと、どこから来るか判らない変幻自在の剣撃。
それだけに重さに欠け、おまけに威力の低い氷系気功。
自然と相手を倒すのに時間が掛かる。
相手の護衛を倒し終えた頃には仲間の盗賊は荷を奪っている。
自分は最後に、残り物を漁る。
故にハイエナ――――だが、そのイエンも呂晶と同じく成長している。
「行ったぞ――――ッ!!」
馬を囲むように展開していた為、内側に入られては迎撃が間に合わない。
イエンはその馬と、側に立つ遊珊に突っ込んでいく。
「きゃあっ!!」
遊珊が目をキツく閉じ、体を縮こませて悲鳴を上げる。
完全に無防備――――これ以上ないと言える程に隙だらけだ。
華奢な体、その白い肌の好きな場所を斬り裂き、
内部にある真っ赤な急所に深々と剣を突き刺すことが出来る。
「――――女は殺らん」
以前は呂晶に決闘を申し込みながら、
矛盾するその言葉を吐き捨て、風圧と共に走り去る。
その頬は少し、赤らんでいる。
「先生ッ――――あぁ!?」
「うおっ!?」
呂晶とウェイが自分の身に起こっている事に気付き、驚嘆する。
(取れねぇ……っ!)
武器と手の平の間が凍て付き接着している。
会合の瞬間、武器を伝って氷孔を流したのだ。
だが、多少握りは悪くなっても、
武器を手放した訳でもないし、すぐ溶けるので特に意味は無い。
“貴様に気孔を流してやった” というメッセージを伝える為だけの、
つまりは『魅せ技(と、本人は思っている)』である。
「フッ……」
鼻で笑うイエンは既に包囲の外まで走り抜け、
その手にはいつの間に掠め盗ったのか、仰々しい箱が乗せられている。
既に積荷を攫っていたのだ。
倒すのに時間が掛かり過ぎるため『倒さず荷を奪う』ことに特化した。
イエンもまた、成長しているのだ。
「フッ……――――じゃねぇよ! キッタネェなッ!!」
呂晶は凍った手を “どうしてくれんだよ” と言わんばかりにイエンへ向ける。
“気孔を使った分だけ体重が減る” という迷信が出回る昨今、
使用者の間では『気孔とは体内から発生している』という見解が根強い。
そして氷系気孔の源となるその『水分』
これもやはり『体内由来である』という見解が強く支持されている。
なので呂晶は生理的にそれを“汚い”と思ったのだ。
「あの殿方……やっぱり速いわね、イキナリこっちに来るからビックリしちゃった……」
遊珊はすでに呂晶の方に駆け寄っている。
狼狽して悲鳴を上げていたとは思えない冷静ぶりだ。
(あれだけで顔を赤くしちゃうなんて、可愛いわ……女性経験が乏しいのかしら?)
遊珊は元より全く狼狽していない。
これ以上ない程にか弱く、隙だらけで痙攣するように、
小さく “キュッ” と体を縮こませる。
そして可愛らしくも、耳を塞いでしまうほどに甲高い悲鳴。
男はその姿を見ると本能的に――――守ってあげたくなってしまう
(でも、私知ってるの……ああいう殿方に限って、下の “お筆” がとっても凶悪な “おべべ” で……)
元・花魁である遊珊は怯えた表情を見せながらも、
内では激しく気分を高揚させ、頬を紅潮させている。
(どうしましょう……あんな顔をされたら、上に乗って、優しく優しく、とろけるような手ほどきをしてあげたくなっちゃう……きっとあの真面目で凛々しい顔を、子供のようにあわあわさせながら、ウブで、思わず私がキュンとしちゃう反応をして…・・そして私に何度も何度も謝罪をしながら、我慢に我慢を重ねた限界を、意思に反して一気に飛び越え、はち切れんばかりに猛り狂ったそれを、力強く、そして激しく、乱暴に、私の中を壊すように掻き混ぜながら、肥え太った芋虫のように躍動を重ね、密着させた上壁を貫くほど、ドビュン……ッ! ドビュン……ッ! 止める事も叶わず、噴出を繰り返してしまう……! そして狂おしく……情けなくも――――果ててしまうのね……)
遊珊は妄想の中で、イエンをしゃぶり尽くしている。
(ああ……本当はもっと、もっと……! でも、そう……いいのよ、アナタが悦んでくれるなら、私はそれだけで嬉しいの。大丈夫よ、もう謝らないで……ねっ?)
その目を潤ませた紅潮は、一見するだけでは怖い目に合い、
今にも泣き出してしまうようにしか見えない。
つまり、先程の悲鳴は『演技』であり、
ああするだけで自分が攻撃されないと見抜いていた。
それは、思わず二枚目な捨て台詞を吐かせるほどに、
イエンの心に深く杭を打ち込んだ。
「大丈夫――――っ!? 先生、アタシの後ろに……」
呂晶が心配して声を掛ける。
「ごめんなさい……私、いつもアナタに助けてもらってばかり……」
遊珊は悲しそうに、そして悔しそうに目に涙を滲ませる。
「いいの、気にしないで――――」
呂晶は遊珊を手で護りながら、男らしく、そして二枚目に答える。
女は、女の泣き顔を見ると、男以上にその感情を共有してしまう。
胸が締め付けられ、恋愛にも似た感覚を想起してしまう。
つまり遊珊の本能に直接訴えかける『術』とは、男に対してだけ使われる物では無い。
というより、その気になれば誰でも落とせる。
ただし、結盟主であるウェイに対しては、それを意図的に抑えている。
コミニティの長を虜にしてしまうと、
どこまでも自分に注力するあまり、周りを巻き添えに身を滅ぼしてしまう。
ひいてはコミニティの崩壊を招き、それにより何処からか恨みすら買う、
結果、自分に損害が及ぶ。
遊珊は『オタサーの姫』に
以前はその才能を溢れるままに垂れ流し、遊郭の女達と育ての親にさえ嫉妬と恨みを買い、
重大な政治殺人犯に仕立てられてしまった。
同じミスは犯さない、遊珊もまた成長しているのだ。
ちなみに歳は呂晶と同じ二十歳であり、イエンよりも一つ歳下である。
(あの女、今、俺のことを “殿方” と――――……いや、今は戦闘中だ)
そしてイエンは現在、自分の集中を掻き乱す元凶である、あの悪しき女を、
『絶対に意識しないよう意識』しながら――――箱の紐を解いている
だが、その警戒心に満ちた表情でわざわざ相手に見せつけるよう紐を解く姿は、
“攻撃したくば、いくらでもして来い” という、自信の顕れにも見える。
「――――……っ!!」
場に緊張が走る――――
その場にいる全員が悔しさを噛み締めながら、荷を解くイエンの手元に注目している。
そして――――
「ん、なんだこりゃ……種籾か?」
きた――――
呂晶はいつもの薄ら笑いではなく、静かに、そして激しい怒りの炎を秘めた、
真っ直ぐな口調で言い放つ。
「おいハイエナ…………汚ぇ手でソレに触れるな」
イエンは眼帯ではない方の目を細める。
「お前達、馬鹿なのか?」
「あぁ? テメーにだけは言われたくねーよ……!」
呂晶の握る拳が震えている、本気で怒っているのだ。
「その種籾はなぁ、妹妹はなぁ……」
呂晶は目を見開き、この世界に向けて言い放つ。
「アタシらの最後の希望なんだよッ―――――!!!!」
なんだよ……!!
なんだよ……!
なんだよ……
森に囲まれた荒れた街道で、呂晶の叫び声が木霊する。
キマっている――――キメようとした演技ではない
希望の光を卑下され心から憤慨しているのだ。
「……ッ!」
全員が戦慄き、唾を飲み込む。
(呂晶……お前…………とうとうその域まで…………)
もはや、尊敬するしかあるまい。
これ程の自己洗脳能力を持った奴だったとは。
(まったく……とんでもない奴を結盟に入れちまったな……!)
ウェイは呂晶の才能に恐怖すると同時に、
自分の選見眼に、確かな手応えを感じていた。
極まったのである。
「お前達、こんな事が楽しいのか――――」
えっ?
イエンは種籾を放り、呂晶に渡す。
「あっ…………おい!」
呂晶は放り渡されたそれを両手で受け取りながら、
キョトンとしている。
「そんなに農業がしたいなら、武器を
イエンは口笛を吹いて馬を呼び、その場を去ろうとする。
(え、何で? 意味が判らない……何故コレを、そんな風に扱えるんだ……?)
呂晶は激しく狼狽している。
「おいッ! 逃げんのかッ!? こんな貴重なもん放っといて! お前それでも盗賊かッ!?」
馬に乗ったイエンは振り返り、
眼帯では無い方の目で一瞥する。
「お前とは
馬を蹴って走り出し、風のように去っていく。
「カッコイイ……」
遊珊が呟く。
そう、ハイエナイエンの癖にやたらキマっている。
「……。」
真夜中の旅団は固まったように茫然としている。
これではまるで自分達が、いいを歳をこいてイタズラを叱咤された、
子供ではないか。
「眼帯のイエンか、アイツまだ盗賊やってたんだな……」
その沈黙をウェイが破り、話を切り出す。
呂晶はまだ呆然としている。
(お前達、こんな事が楽しいのか――――?)
目眩がしてきた。
こんなに大切な物を、あんな奴に。
『言われちまったな……』
『だな……まあ最近は、知ってる奴しかいなくなってたからな』
結盟員達が口を開き出し、
頭領のウェイがその雰囲気を総評してまとめる。
「そろそろ潮時かもしれん、十分楽しめたし、もういいだろう」
(こんなに大切な物なのに、こんなに大切な物なのに、こんなに大切な…………え?)
呂晶は、自分が大事に抱えた種籾に目をやる。
(なんだコレ、アタシなんでこんなもん、大事に抱えてんだ?)
自己洗脳が解けた。
と言うより、イエンの言葉によって『一気に冷めた』という感じだろう。
「どうだ、呂晶――――?」
ウェイは優しくも、ほぼ決定しているような、
意見を求めるというより宥めるような調子で声を掛ける。
「ん、そうだね……次は別のことしよっか――――」
種籾の袋、その中身を辺り一面に、勢い良く放り撒く。
それは広がり消えながらキラキラしているようにも見えた。
◆
街に向かって帰投する真夜中の旅団。
結盟主のウェイが今後の方針を打ち出す。
「じゃあ練習も済んだって事で、次は本番――――キャラバンの護衛をやってみないか?」
「キャラバン?」
呂晶は聞き返す。
キャラバンとは、隊商が寄り集まった大きな隊商だ。
(そんな上等なもんが、まだウロついてんのか?)
「すごい大所帯の隊商があるんだ、しかも報酬がめちゃくちゃ良い! なあ、遊珊?」
「ええ――――最近、私達、集まりが無い時はそっちに参加してるのよ」
遊珊はウェイにではなく、呂晶の方を向いて言う。
「……。」
ウェイは少しだけ違和感を感じる。
遊珊は誰にでも優しいが、何故か自分にはそっけない気がする。
(オヤジ臭いのかな? 俺……)
「大所帯…………アレか……!」
呂晶はハッとそれに気付く。
あの百人はいそうな、獲物の候補に入れていなかった大名行列。
「お、知ってんのか? 仕切ってるのはまだ十代の女の子なんだが、よく出来た女の子達でな……」
(女の……子?)
呂晶の顔が険しくなる。
(アタシにはんな事、言った事もねー癖に……)
「とにかく物は試しだ。ちょうど明日出発予定だから、お前も参加しようぜ!」
「そんな飛び入りで参加できんの?」
呂晶は疑いの目で見ている。
オイシイ話には絶対裏があるものだ。
「ああ、来る物拒まずってやつだな。だがまあ、ちょっと、指示には従わんといかんな――――」
(来る物拒まず、指示に従う……か)
『自由』と『強制』という意味では、真逆の言葉が入り混じっている。
大抵そういう場合どちらかに無理があったり、
どちらかが『嘘』である事を、呂晶は知っている。
(だが、“アレ” がどういう仕組で運用されているかは興味があった……)
見極めるのも面白いかもしれない――――
それに、あれだけ大規模なら、
血と悲鳴が飛び交う大規模戦闘も行われているかもしれない。
(アタシがついに肩を並べる事が出来なかった、死線の連中がやってた戦いが――――)
呂晶が考え込んでいると、遊珊も参加を勧める。
「私もアナタが来てくれたら頼もしいわ。嫌じゃなかったらだけど、どうかしら?」
行商は長い時間をかけて移動する、ほとんどは退屈なものだ。
知り合いが多い方が楽しいのだろう。
それが決め手になったのかは判らないが、呂晶の顔は明るい。
「やる…………アタシ、やるよ――――っ!!」
振り向いた呂晶の返事はとても弾んだ声で、
まるで少女のように胸をときめかせていた。
『悪い事』ばかりして来た放蕩娘が、初めて『善い事』をする瞬間だった。
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******あとがき******
プライスレス①の挿絵は実際にプライスレス交易をしていた所です。
私はついに、初めて盗賊から護衛に転職しました。決め手はギルメンが襲われる所を見て、戦う機会は襲われる方が多いと気付いたことです。ただ、実際やってみたらそうでもなかったです、全然襲われない事もあったり。きっと職業戦自体が衰退を初めていと事と、次回の『とあるキャラバン』も関係していたのかもしれません。
とにかく誰にも襲われないという緊張感の無さが嫌で、最初は、最後の挿絵のように “沢山商品を積んでるぞ~” と、全体チャットなんかして盗賊に襲われようとしていました。ですが、襲われたら襲われたでリスクが大きい為、少し減らそうと思ったのですが『だったら一個でよくない?』と、本当は何百と積めるそれの、一番安い物一つだけ乗せてみました。これがプライスレス交易の始まりでした。
盗賊プレイヤーが襲いに来て、普通は輸送動物がやられると “ドバーっ” と積荷が散乱するのですが、我々の場合はそれが “ちょこん” と一つだけ散らばり、激戦の末に輸送動物を落とした盗賊の人が、チャットで
「は?」
と言った時には、ディスプレイの前で爆笑したものでした。当時は行商隊も少ない中、我々もかなり本気で防衛してたので(普段使わない課金アイテムとかまで使ったり)、滅多にいない大物の獲物と思ったのでしょうね。その後に『~~こういう理由なんですよ』と事情を説明すると、
「ふ~ん、そうだなんだ、頑張って」
みたいな、『別に俺そんな事で怒らないし?』みたいな返答で、また爆笑していました。今思うと大変失礼な事で、あの盗賊の方々には大変申し訳なく思っております。ただ何回か繰り返すとやはり見知った顔しかいなくなったり、劇中のイエンのような事を実際に言われて冷めちゃった、という感じでした。
やはりアツイ戦場というのは中々巡り会えないもので、『せっかく護衛に転職したのに……』という寂しい気持ちはありましたが、そんな時に誘われたのが次回の話になります。次回もほぼ実話です。
遊珊に関しては、いわゆる『オタサーの姫』みたいのがギルドに一名いまして、引き抜きやら何やらでかなり荒らされました。なのに皆、庇うんですよ。その姫を。
遊珊はとても出来た女性という設定で、その子とは似ても似つかわないのですが、それが影響しているかは判らないですが、Ⅴ章ではかなり重要なポジションとして、準レギュラーとして登場いたします。
ちなみにそのオタサーの姫は、かろうじて正気を保っていた私が責任を持って除名しました。幹部の私を怒らせたのが運の付きやでぃッ(・ω・)9゛