※この作品はR-18です。

シルクロードオンライン¬(differentiam)   作:hachu

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マジキモいんですけど ✛行商プロローグ✛

 

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「……?」

 

 

 

 

呂晶は自分の世界から引き戻される。

どうやら、戦象に乗り込む花雪を何名かがエスコートしているようだ。

 

 

 

 

(なんだぁ? 一人目が四つん這い、次が膝に手、最後の坊主が頭をかしげ――――って、まさか!?)

 

 

 

 

花雪は冷めた目で、四つん這いの男を見下ろす。

 

 

 

 

「毎度、ご苦労なことじゃ」

 

 

 

 

スラリと伸びた足を大胆に振り上げ、堅い厚底を意に返しもせず踏みつける。

そして、男に全体重を押し付け――――乗った

 

 

 

 

「……次じゃ」

 

 

『ファー殿ッ!! どうぞッ!!』

 

 

 

 

二人目の男が叫ぶ。

花雪は片足のまま直立し、不安定な背中の上でもヨロめいていない。

美しい見た目によらず、身のこなしは良いようだ。

 

 

 

 

(体幹をしならせ、振り子のように安定させる……舞踊に通じたボディバランス……キモイけど)

 

 

 

 

呂晶は花雪の動きから、どういった武術を扱うか予想している。

 

 

 

 

( “剣舞” を取り入れた門派は多いが、大抵は実戦向きじゃない――――眼鏡に比べれば大した使い手じゃなさそうだ)

 

 

 

 

花雪は次の男、また次の男を踏み付け、階段のように上まで登った。

最後の男は頭を踏まれている。

その様子を眺めていた呂晶は、口に手をあて鳥肌を立てる。

 

 

 

 

(うっわ……マジ……ッ! キンモーーーーッ!!)

 

 

 

 

最後に踏まれた男、『うっ』つった――――!

小さく『うっ』つったぞ、うわあああああっ!!

 

 

 

 

(感じてんのか……感じてんのかお前ェーーーッ!?)

 

 

 

 

呂晶は自分の体を抱くように、二の腕をさする。

花雪は象の上に括り付けられた座席に着座する。

そこにはいつでも使えるよう、日傘も備え付けられている。

 

 

 

 

(奴隷……その為だけの? それがしたいが為に雇った?)

 

 

 

 

いや、アイツら従者じゃなくて護衛だぞ――――?

しかも重装備だし、『直属の親衛隊』って感じ。

 

もしかして立候補っ!? 立候補かよォーーッ!!

最後の奴! お前、そのために坊主にしたんかッ!?

 

 

 

 

「ヴォオエッ!!」

 

 

「……っ!」

 

 

 

 

呂晶が激しく嘔吐くと、それが聞こえたのか、

象上の花雪はビクリ反応し、顔を伏せる。

 

 

 

 

(妾だって……っ! 好きでやっている訳ではない……!)

 

 

 

 

真っ赤に赤面した顔を伏せ、その顔は恥ずかしさ染まっている。

 

 

 

 

(登るのに難儀していたら手を貸してきて、甘えていたら、何か、どんどんエスカレートしたんじゃ……!)

 

 

 

 

幼少から崇(あが)められるように育った花雪は、

笑われたり蔑まれることに、人より羞恥心を覚えてしまう。

 

でも、さすがにコレは自分でもどうかと思っている。

これではまるで踊り子――――いや、偶像だ

 

 

 

 

『ファー殿、お怪我はありませんか!』

 

 

「ある訳なかろう、馬鹿者め……」

 

 

 

 

内心は恥ずかしさで一杯だが、周りに悟られぬよう冷静に徹する。

経営者とは部下に対して、小さな事でも威厳を保たねばならないのだ。

 

この花雪専用戦象『昇降鐙(あぶみ)役』は希望者が交代で行っている役割だ。

最初は腰や腿を掴んで持ち上げていたが、

『貴族の女性にベタベタ触るのはどうなんだ』というフェミニストが声を上げ、

彼等が相談した結果、勝手にこのような形に落ち着いた。

 

 

 

 

(体を触られるのは嫌じゃったから、それは良いのじゃが……)

 

 

 

 

『昇降』という名の通り、降りる際にもコレを行う。

その時は人数を増やす決まりである。降りる時の方が危ないからだ。

 

 

 

 

(やっぱり、妾がやらせていると思うじゃろうな――――……)

 

 

「――――整列じゃッ!!」

 

 

 

 

花雪が大声で指示を飛ばす。

 

 

 

 

『整列ーーーッ!!』

 

 

『整列ーっ!』

 

 

『整……』

 

 

 

 

各班のリーダーが叫び、全体に指示を伝えていく。

散らばっていた商人と護衛がせわしなく整列を始める。

 

関所の狼煙を参考にした『リレー式命令伝達』

商隊が大きくなるにつれ後方に花雪の声が届かなくなり、その解消で考案した物だ。

 

町中では大して効果は無いが、

『移動形態』になるとこの伝達が大きな意味を持つ。

 

 

 

 

「呂晶、馬に乗れ――――俺達はこっちだ」

 

 

「整列って? 行軍でもすんの?」

 

 

 

 

 

 

 

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「まず、前から後ろに向かって商人と輜重兵を並べる、その両翼を護衛が並走するんだ、俺達は右翼だな」

 

 

「んん……つまり、どうしろって?」

 

 

 

 

馬に乗りながら尋ねる。

慣れたウェイには当たり前の事でも、新参の呂晶には情景が浮かばない。

 

 

 

 

「花雪さんが先頭で舵取って、皆がそれに付いて行く感じだな。蛇みたいに長い隊列になる」

 

 

「 “先頭の花雪” って――――賊が来たら、ご令嬢が蹴散らすの?」

 

 

 

 

意外だ――――てっきりアイツは中央とかに陣取って、

危ない役は他にやらせると思っていた。

 

 

 

 

「いや、前から賊が来たら舵を横に切って、斜めに横陣敷くみたいになるな」

 

 

 

 

乗馬したウェイは身振り手振りを使い、その様子を説明する。

 

 

 

 

 

 

 

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「賊を早期発見するための “物見櫓” って訳だ。それに、先頭は甲冑着た古参が守ってる」

 

 

「なーんだ、そゆコトね……」

 

 

 

 

呂晶は『へっ』と言うような、落胆した顔をする。

不敗の安全神話を誇る行商隊、その中でも一番安全なのはやはりご令嬢だ。

 

 

 

 

「横陣と言っても進み続けるぞ。いちいち止まってたら埒が開かん、賊が掛かって来ない時は無視しちまえば良い」

 

 

「後ろに食い付かれたら(・・・・・・・・・・)?」

 

 

 

 

呂晶は一瞬で、隊列の『ウィークポイント』を見抜く。

と言うより『自分ならそこを攻める』と言いたいのだ。

 

この商隊は長い隊列を活かし、基本的に賊には横陣を敷いて対処する。

蛇の頭は重点的に守られ、常に移動して的を絞らせない。

左右は護衛が壁のように展開し、矢が雨のように降ってくる。

 

だが『最後尾』を攻撃されれば、蛇の尾が食い千切られるかもしれない。

千切られたら、それだけ積荷を奪われる。

 

あれこれ説明するより戦場を想像させてやる方がこの女には伝わるのだろう。

 

 

 

 

「それが一番ヤバイ。ユエさんが助太刀に出たりするが、最悪の場合は切り捨てるしかない。護衛は厚くしてるが、死人も一番多く出てる」

 

 

「最後尾は消耗品、か――――」

 

 

 

 

商人側の『勝利』とは賊の殲滅ではない、対して『敗北』とは積荷を奪われること。

死人の多寡は勝敗には影響しないのだ。

 

例え何人死のうと積荷が無事なら『勝ち』である。

逆に死者が出なくとも積荷を奪われてしまえば『負け』なのだ。

 

護衛はまさに『消耗品』だ。

 

 

 

 

(死人は出ても、積荷は奪われた事がない―――― “人より荷物の方が大事” てのは、本当らしい)

 

 

 

 

『安全神話』とは、『人』ではなく『積荷』に対して向けられたもの。

そして、その積荷を奪われたことが無い。

 

情にとらわれず任務を全うする。

弱点を補って余りある程に、この商隊は――――強い

 

 

 

 

「新人は後ろで、古参になるほど前に行くんだ。お前が中列なのは俺の推薦のおかげだぞ? まあ色々教えてやるから、やりながら覚えていけばいい」

 

 

 

 

ウェイは自慢気に解説するが、呂晶はうすら笑いを浮かべている。

 

 

 

 

(それじゃ、中列のお前は普通の評価(・・・・・)ってことじゃねーか……)

 

 

 

 

だが、少し判ってきた――――

基本は飴と鞭、従順な者ほど取り立てていくスタイルだ。

活躍して、のし上がるってのも面白いかもしれないな。

 

 

 

 

『ファー殿』

 

 

「うむ」

 

 

 

 

花雪は先端に鈎(かぎ)がついた棒を受け取り、鞭を入れるように叩(はた)く。

象が大きな鳴き声を上げ、立ち上がった。

 

 

 

 

「おお……やっぱり、何度見てもデカイな!」

 

 

 

 

立ち上がるとやはり、デカイ。

それ以上に、こんなに重量感のある物が立ち上がる事に驚く。

剣で斬り付けてもビクともしないだろう。

 

 

 

 

(所詮は、“小娘” か――――)

 

 

 

 

その様子を見て、呂晶の表情は冷めたものへと変わった。

 

 

 

 

戦象てのは『戦う象』寿命は極端に短い消耗品だ――――

 

アイツそれを鈎で刺さなかった、腹で叩いた。

剣で斬ってもビクともしないんだぞ?

 

それを『慈しむ』ってことはアレはハリボテ、戦象じゃなくて只の『象』だ。

戦うために調教されたなら、戦いの中で死なせるべきだ。

 

 

 

 

(アイツは戦象という道具の摩耗を、ケチっている(・・・・・・))

 

 

 

 

呂晶はガッカリしたような『期待外れ』といった顔をしている。

 

花雪象印商隊が掲げるスローガン『積荷は人の命より重い』

道徳的な観念はさておき、行商にとって『シンプル且つ重要な命題』だ。

 

だが『実際にそう思っている』と『そう在ろうと思っている』では、

その言葉以上に結果に違いが現れる。

 

大切なのは、努力すべくは―――― “そうなってから”

 

 

動物を痛めつける事への『忌避感』これは誰もが持つ『本能』だ。

 

この本能を持たない者達は無用に餌を取り過ぎ、

生態系を破壊し、食糧が無くなり死に絶えた。

だから今生きている人間は、誰もがこの『本能』を持っている理屈になる。

 

『行商』という危険な仕事は、

人間のあらゆる危機回避本能が最大限の警報を鳴らす世界。

『ビビリ』は肝心な所で判断を誤る。

 

まず思想を強制的にでも曲げ、無用な本能をどうにかして捻じ伏せなければならない。

そうして出来上がった人間性から、ようやく成すべき事が見える。

 

『そう在ろう』とするだけでは正解の道筋が判らず、

どう頑張っても結果には辿り着けない。一般的に『無駄な努力』と呼ばれるものだ。

 

同じように呂晶は人から動物まで、

あらゆる生き物を斬り殺し、刺し殺してきた。

だが、元々は温室育ちの小娘であり、最初から『人でなし』だった訳では無い。

 

 

一人の武侠を殺すこと――――

それは一族を破滅させ、先祖代々が築いた物を無に返し、

妻を路頭に迷わせ、子供が泣き喚くようにしてやる事だ。

 

それを何人にも行ってきた。

初めは苦悩し『それ』を見て躊躇った。

 

だが『ある事』をキッカケに、

脳の奥底に封印されていた回路が、他を押しのけるように繋がった。

自分が『それ』になろうとした時、ようやく本能をねじ伏せたのだ。

 

――――死体になれば、みんな同じ

 

 

以来、人を殺すことに快感を覚えるどころか、

スイッチを入れるように頭を切り替え、

歪ではあるが戦闘と一般生活を共存させる術も覚えた。

 

大抵の武侠は多かれ少なかれ、こういった経験を辿っている。

だからこそ、動物に対する所作一つで判る事がある。

 

 

 

 

(アイツは死人を出した事を悔いる、“ビビリ” だ――――)

 

 

 

 

花雪はその名のように、雪のように冷徹な雰囲気を纏っているが、

根は冷徹になりきれない真人間。

 

重装備の親衛隊に守られ、

本物の戦闘をしたことも無ければ人を殺したことも無い。

武侠の世界はビビリのお嬢様が大成できる世界ではない。

 

『小娘』とは年齢だけを指しているのではなく、

経験や知識、思想、全てを指している――――自分とは違う

 

 

 

 

(もう少し、似た性格だと思ったんだけど……)

 

 

 

 

自分の好みと思った相手が、相容れない性質だったと気付き、

寂しさを覚える。

 

この商隊も隊列も、賊との戦いを想定した物ではない。

基本は数の威光による『戦闘回避』

 

『安全神話』とは優秀さに付随した実績ではなく、

何とか見栄を張り、保ってきただけの『ハリボテ』

 

たまたま上手く行っていたに過ぎない、大事を成すつもりもない、

満足したら辞める、終わりの決まったママゴト。

 

 

 

 

(この商隊は、大層成功してんだろうよ――――でも、歴史に刻まれるような発展性は無い。アタシがその気になれば簡単に上回れる)

 

 

 

 

呂晶が偉そうに導いた分析は、『半分』当たっている。

 

花雪と寒月は、官吏の中でも最高峰である『戸部』を仕切る大臣の娘。

いずれは親の決めた相手と見合いをし、有力者の妻として悠々自適に生涯を全うする。

行商などする意味など無いのだ。

 

二人が修めた武術や帝王学は、

彼女達の『商品価値』を少しでも伸ばしたいという父親の思惑が介在している。

どれだけ努力を重ね一廉の人間になろうとも、親の道具なのだ。

 

二人はそれを良しとせず、月並みではあるが、

『決められたレールよりも自分達の道を歩みたい』と思っている。

そして一人立ちならぬ二人立ちをするべく、この『定期交易事業』を立ち上げた。

 

それは既に、十代の小娘が成したとは思えない程にその規模を拡大させている。

 

だが、世間知らずの令嬢が自由に生きるなど所詮は乙女の戯言でしかない。

女なら一度は抱く夢だ。

 

彼女達の生い立ちと活動は特殊だが、特殊な者の中では至って普通の存在なのだ。

本人達もそれは理解している。

 

それでも、『ママゴト』で終わらせるつもりはない――――

 

 

 

 

(花雪……)

 

 

(判っておる)

 

 

 

 

花雪と寒月がアイコンタクトを取る。

二人の意思疎通はあまり言葉を必要としない。

 

性格も特技も正反対だが、二人で一つを成す連携能力は、

姉妹を越えた双子の域に達している。

 

正反対だから惹かれ合う、磁石のように。

 

 

 

 

「出発じゃ――――ッ!!」

 

 

 

 

『出発ーーーーッ!!』

 

 

『出発ーーッ!』

 

 

『出……』

 

 

 

 

長い隊列の前から後に向かって、花雪の指示が伝達されていく。

花雪が舵を取り、皆がそれに続く。

 

不敗の安全神話を誇る花雪象印商隊が、

その長い体を蛇行させる。

 

 

 

 

『花雪隊ーーッ! がんばれよーーッ!』

 

 

『いってらっしゃーい! また来てねーーっ!』

 

 

 

 

周辺の住民達や、露天で働く者達が、

花雪隊に手を振っている。

 

 

 

 

羌族の西夏と、漢族主体の宋――――

繰り返される両国の戦争によって、

衰退の一途を辿っていた砂漠都市、敦煌。

 

この都市は最近、ある行商隊のおかげで経済を立て直され、

かつての繁栄を取り戻しつつある。

 

その行商隊は宋と西夏を交易で繋ぐことにより、繰り返される戦争をも沈静化させた。

そして、送元二使安西で有名な陽関ではなく、

彼女達のもたらす財で新設された、新しい南門から出立する。

 

 

 

 

「この商隊も、随分長い物になったのう……」

 

 

 

 

花雪は住民に手を振りながら、後方を確認して呟く。

 

花雪と寒月、二人の本当の意味での『一人立ち』とは、

通常のそれより困難な、おおよそ不可能な道だ。

 

彼女達の父親は国を動かす地位に就いている、宋の全てが親元のようなもの。

その親の意向を跳ね除ける――――

 

少なくとも中華の未来を担う大商人という肩書、それを示す結果が必要だ。

そして『行商人』という者の地位自体、『行商』という業界自体の価値を、

誰もが想像できない程に、自分達自身で高める必要がある。

 

行商のトップに立ち、物流を統べるだけでは足りない。

国を越える権力機構を築くまで自分達が成長させる。

 

大臣すら口を出せない、大臣以上の地位を得る。

これは二人の娘が父親に仕掛けた静かな戦いでもある。

時間はあまり無い、自由に動けるのは十代の間だけだろう。

 

初めは護衛に金を注ぎ込み、ほとんど赤字であった。

焦りはしたが、最優先すべきは『安全性』であると考え、

愚直にそれを追求し、短期間でそれは『安全神話』と呼ばれるまでに成長した。

 

結果、博打のように不安定だった行商を、

『定期便』という、『物を確実に輸送する手段』へと変えた。

 

その機構は『投資』という概念を産み、一つの商隊を株式企業へと成長させた。

利益も出るようになり、それはどんどん巨額な物となり、

今では家の財力に頼る必要さえ無い。

 

次に二人が目指すのは『私財による公共事業への参入』である。

まだまだ先は長い。

 

しかし、一度でも失敗すれば――――

せっかく付いた協賛者は離れ、道は潰えるだろう。

 

他にも問題はある。

二人は親に対して、行商活動はあくまで『将来の為の経済勉強だ』と説明し、

内容も全く危険の無い、別の商売であると嘘を付いている。

 

しかし、戸部の右曹と左曹を仕切る優秀な父親達は、

娘が付く浅はかな嘘を見抜いている。

 

護衛の中には密かに送り込まれた監視が混ざっている。

『貴族の体を触るのはどうなんだ』と、声を上げたフェミニストがそれだ。

 

今、二人が自由に行商を行えるのも、

『やりたい事をさせてやったのだから、その後は親の言う通りにしろ』

という心理的、現実的な貸しを作る為に、父親が野放しにしているに過ぎない。

 

『これ以上は危険だ』と判断されても何らかの手を回され、

それと判らぬよう、この隊商は自然消滅させられるかもしれない。

彼女達の親がその気になれば造作も無い事だ。

 

彼女達はギリギリの所で戦っている。

慎重を重ねた隊商の性質も、失敗できない立場を表している。

 

 

世間知らずの令嬢が『自由に生きる』など、乙女の戯言でしかない。

口では何とでも言えるのだから――――

 

だが花雪と寒月は、大真面目でそれを成そうとしている。

 

 

 

 

(家の財力、偶像としての偽りの尊敬、使える物は何でも使ってやろう……踏んで士気が上がるなら安いものじゃ)

 

 

 

 

この象もその一つ。

協賛者を得るためには広告塔となる『シンボル』が必要だった。

 

大食漢だけに餌代とその輜重代、実際のところ単なる金喰い虫だ。

そして金以上に、入手する事が困難な代物。

 

失う訳にはいかない――――

『戦わせる為の戦象』では無いのだから

 

 

 

 

呂晶が間違えているのがこれらの点だ。

そしてもう一つ間違えている点は、彼女達は『二人で一つ』ということ。

 

花雪には長所もあれば短所もある。

花雪の足りない部分を、完璧なまでに補っている者こそが――――

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