※この作品はR-18です。

シルクロードオンライン¬(differentiam)   作:hachu

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社内旅行 ✛生死を賭けた✛

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

『蘭州一の宿を取りましたアアアアァッ!! どうか今宵は! この俺と付き合って下さいィイイイッ!!』

 

 

 

 

身なりを整えた男が花束と絹を差し出し、女性に告白している。

『絹』は女性にとって宝石に匹敵する価値を持つ、ようはプレゼントだ。

 

 

 

 

「ありがとう、嬉しいわ……――――」

 

 

 

 

花雪象印商隊は黄河を『船』で渡る。

船への積み込み作業を行うべく毎回この蘭州で一泊するのだ。

 

その時間を利用してナンパや告白、逢引など、

『男女の恋模様』が盛んになる場所でもある。

 

行商は明日をも知れない危険な業務、意中の相手を前に迷っている暇などない。

生死を賭けた社内旅行とも言える、商隊独特の文化である。

 

 

 

 

「でも、ごめんなさい――――私、今夜は結盟の女の子と泊まるの……ホントにごめんなさいね」

 

 

 

 

男は崩れ落ち、この世の終わりのような声を上げる。

 

 

 

 

『ああ……もうだめだぁぁぁ……おしまいだぁぁぁー……ッ!!』

 

 

 

 

こういった『告白の噂』は、その日の内に商隊全てに駆け巡る。

この男は今夜、蘭州一の宿に一人寂しく泊まり、

明日からは『盛大に振られた奴』として肩身の狭い思いをするだろう。

 

 

 

 

『ほーら、やっぱりだ、アイツに落とせる訳が無いんだよ』

 

 

 

 

その様子を見ていた護衛達が、金銭のやり取りをしている。

 

 

 

 

『ちきしょう……でも、失敗して逆に良かったわ』

 

 

『ああ、男もいない事が判った。負けても損はしてねぇ』

 

 

『おい、何で “男がいない” と言い切れる?』

 

 

『遊珊嬢は、“女の部屋に泊まる” と言った。男がいたらあんな美人を行商に行かせるか? つまり、導き出される答えは――――……』

 

 

『おお……確かにそうだ!よし、次回は俺が……っ!』

 

 

 

 

告白が成功するかの『賭け』も大いに繁盛する。

娯楽が無い為、自分達で作り出さねばならないからだ。

 

『あの男が遊珊を落とせるか?』のレートは、意外にも『成功する』が優勢。

 

何故なら『成功する』に賭けておけば、

告白が成功した場合、悔しいが金は得られる。

告白が失敗した場合、金は失うが美女が誰かの物になる喪失感は避けられる。

つまり、『成功する』に賭けた方が得なのだ。

 

ただし勿論、この賭けには『裏で糸を引く者』が存在する。

 

 

 

 

「おら――――アタシの取り分よこせ」

 

 

 

 

呂晶は賭けの胴元に肘打ちする。

 

 

 

 

『おう、銀二両だったな、取り分は六だ――――しかしお前、何で判った? 普通は銀なんて賭けないぞ』

 

 

「……お金」

 

 

 

 

無愛想な顔で、賭けの報酬を受け取りながら更に手の平を広げる。

『情報が欲しければ金をよこせ』という事だ。

 

 

 

 

『まだ取る気か! せっこいなぁ――――で、どんな魔法を使った?』

 

 

「別に、“美人な子を誰かに取られて、おまけに金も取られたら男はどんな気持ちだろう” て、話してただけ、聞こえるように」

 

 

『そういう事か……なーんか偏ってると思ったぜ……』

 

 

「じゃね」

 

 

 

 

軽く手を振り、呂晶はその場を後にする。

 

 

 

 

(へっ……今夜、その “先生と泊まる女” ってのはアタシだ、馬鹿共――――)

 

 

 

 

呂晶は出発前、あの男が告白する事を聞いていた。

 

『事前にそれを遊珊に伝える』というノーマナー行為を行い、

その上で遊珊の分の賭け金も預り、二人分を賭けている。

 

あとは周りを誘導するだけ誘導し、二人で儲ける。

ただの出来レース、告白する者の気持ちを踏みにじる非道いイカサマだ。

 

 

 

 

(しかし、先生とお泊りか……楽しみだぜっ! いやっほうっ!)

 

 

 

 

呂晶は小さくガッツポーズする。

 

 

 

 

(この期にいっそ、『バイ』だとカミングアウトしちまおうか――――?)

 

 

 

 

あの落ち着いた先生がアタシの性癖を知って、

しかも、自分がずっと『そんな目』で見られていたと判ったら、

一体どんな顔するのかオラ、ワクワクしてきたぞ。

 

 

 

 

(いや、早まるな――――まだ慌てる時期じゃない)

 

 

 

 

良い線イッてる自信はある、だが失敗すればアイツのように人生が終わる。

思い出せ、初恋の女に告った日を、

思い出せ、周りにバラされてハブにされた日を、

そして思い出せ、初めて力任せに犯した、あの日の快感を。

 

 

 

 

(違う違う……これは、いま思い出したらいけない事だ――――)

 

 

 

 

そう、アタシは自分から告って、上手く行った試しが無いんだよ。

どうでも良い奴には惚れられるのに、惚れた相手とは上手くいかないタイプだ。

これはどうしようも無い、アタシはそういう運命なんだ。

 

あれだけの上玉を力任せに一発ヤッて、それで終わりってのは勿体無さすぎる。

先生が結盟辞めたりしたら、この楽しい日々も終わりだぞ?

 

ダメダメ、カミングアウトは却下――――圧倒的却下だ

 

旅ってのは人を浮ついた気持ちにさせるもんだ。

だからあの男だって、あんな身の程知らずな告白をする。

 

なァーにが『お付き合いして下さいィ~』だ、鏡で自分の顔見てから告りやがれ。

まず、あの見た目で終了だし、例え上手く行ってもアタシがお前を殺して終了だ。

お前は初めから『詰んで』いたんだよ。

 

 

 

 

(とは言え、馬のせいで大分ムラついてるし、先生と一晩一緒で耐えられるだろうか――――?)

 

 

 

 

アタシがムラつく訳だから、先生もムラついてる可能性が微レ存?

そして、我慢出来なくなった先生が、恥じらいながらもアタシに夜這いを……

なんて、まさかそんな、キャーッ!

 

……柄にも無く何考えてんだアタシは

 

アタシはそういうキャラじゃないだろう、

もっとこう、『頼り甲斐がある』のがアタシの魅力っつーか――――

 

 

 

 

(ヤッバ……こりゃ、一発オナっとかな、保たんッスわ……)

 

 

 

 

『メンヘラバイセクシャル』という属性を持つ呂晶は、

商人達が忙しく積み込みを行う中、自分を慰められそうな茂みを探す。

 

盗賊から護衛に転身したものの、

本人が言うように、上手く隊商生活に適応しているのかもしれない。

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