※この作品はR-18です。

シルクロードオンライン¬(differentiam)   作:hachu

25 / 47
黄金の精神 ✛超能力者の恋愛事情②✛

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

(まさかの、一日二連続……? オイオイオイ、やっぱアタシって、結構モテんじゃねーのか……?)

 

 

 

 

呂晶は澄ましていればそこそこ可愛い。

十六歳の時、地元の祭りで『ミス提灯クイーン』に選ばれた経歴を持つ。

 

明るく物怖じしない天真爛漫な性格が手伝ったのか、

それとも大企業の娘という『お嬢様感』が滲み出ていたのか、

“地元では” 一、二を争う人気があった。

 

ただし人気の絶頂は十六歳まで、程なくして『バイ』の噂が立ちモテ期は終わった。

 

以降は、旅の準備と修練を本格的に開始し、

偏屈な性格も顔に染み付き、実際にバイとしても覚醒し、

とんとモテなくなってしまった。

 

それでも、あの時の栄光を今も引きずっている。

 

 

 

 

「アレ見て口説くとか……アンタ、変態?」

 

 

『別に普通だろ、可愛いくて生意気とか……最高じゃね? ハネっ返りは即ち鮮度……みたいな?』

 

 

「アタシに聞かれても判んないし」

 

 

『それそれ! そういうの、スッゲーソソる』

 

 

「はあ……? 意味、分かんないし……」

 

 

 

 

人生二度目のモテ期を迎えた呂晶、これには『カラクリ』がある。

 

この商隊は『商人・輜重(しちょう)部隊』は女性の割合が高いが、

『護衛部隊』の女性となると副長ユエ、呂晶、その他数名で一割にも満たない。

 

護衛は、商人・輜重と関わりが薄く、

会社で言う『他部署』や、学校で言う『他のクラス』のようなものだ。

 

第一候補の副長・ユエは、いくらエロイ体の『ロリ眼鏡っ娘』で、

クラスのマドンナだったとしても、

大臣の娘とあっては住む世界が違い過ぎる、告った所で玉砕必死。

アイドルとして崇めるならともかく、ガチの相手を探すならユエは除外される。

 

 

つまり、呂晶が言い寄られる仕組みとは――――

 

男の集団に『手の届きそうな女』が混じると、『八割増し』に見える補正が掛かり、

イケメン達がそうでもない女を取り合う、

『工業高校効果』ならぬ『行商効果』である。

 

そして、蘭州は宿泊街と言っても風俗施設なども無く、

地元の女は蚩尤(しゆう)のような暗殺者も混じっている。

雇われの身である以上、地元民に対してトラブルは起こせない。

 

呂晶のみならず、男も皆、“たまって” いるのだ。

 

 

――――といった事情はあるが

 

『隊商をキッカケに出会い、仲睦まじく行商に参加する』

そういった、隊内恋愛をしているカップルがいない訳でもない。

 

毎日が修学旅行のようなこの仕事では、カップルは羨望の的である。

 

 

 

 

『俺じゃ可能性薄いかもだけど……俺達って、明日死んでもおかしくないだろ? だから、後悔したくないっつーか』

 

 

「後悔したくないから……何?」

 

 

『ぶっちゃけ、今からお前とヤリたい』

 

 

「…………っ!」

 

 

 

 

ド直球――――なのに、真摯な台詞にも聞こえる

 

『イケメン』と『そうでない者』では同じ言葉でも印象がまるで変わる。

『イケメン』が放てば、メラでさえメラゾーマ級の火柱を上げるのだ。

 

そして『イケメンの条件』とは、

どんな女でも果敢に攻め落とす選り好みしない『黄金の精神』

イケメンほど女性に対して理想が低かったりする。

 

 

 

 

「えー、イキナリそんな事言われてもぉー、てかアタシィー、女の子と泊まる約束してるしぃー」

 

 

 

 

顔を赤らめながらも、呂晶は茶番を再開する。

 

これは必要な手順の為、面倒でも省くことは出来ないのだ。

だが心はもう、『百パーOK』である。

 

自分のダメな所を見て、尚も好きと言ったポイントは高い。

しかもイケメン、断る理由など存在しない。

 

 

 

 

『マジか、友達か……女の先約は考えてなかった、つーか……』

 

 

 

 

イケメンは困った顔をしている。

メンヘラの思考は読み難い、返答には長考が必要だ。

 

 

 

 

(ヤッベ、露骨に嫌がりすぎたか……? クソッ! 黙って恥ずかしそうに頷いときゃ良かった……!)

 

 

 

 

呂晶は、『性行為は女とする方が興奮する』という歪んだ趣向を持っている。

性欲を他で発散出来るせいか、男への理想は青天井に高い。

 

普段は豪族でもない男にナンパされただけでキレるし、

わざわざ露出の高い服を着たり、少なければ破ってでも増やすのは、

その豪族を釣ろうとする呂晶なりのアピールだ。

 

バイだからと言って誰でも良い訳ではないのだ。

 

ただし今回に限ってはイライラした気持ちを発散する為、

たまにはイケメンとの火遊びも良いと考えている。

と言うより、火遊び超したい。

 

 

 

 

『まいったな……でも、諦めたくねーんだよな……』

 

 

 

 

イケメンは言葉を探す。ド直球『今からお前とヤリたい』は、

イケメンと言えど結構なMPを消費する『天地魔闘の構え』

続け様に気の利いた言葉など、ポンポンと出せるものではない。

 

 

 

 

(そうだ、諦めんなよ……! 何でも良いんだよ、さっさとアタシを落としやがれ……お前はアタシのアソコを “通って良し” だ!!)

 

 

 

 

呂晶が『通行手形』を配布しかけていると、

 

 

 

 

「よう兄ちゃん、やめとけ――――」

 

 

 

 

今時、長い髪を一つに束ねた、

歳の割りにオヤジ臭い、眉間に傷のある男が割って入る。

 

 

 

 

『っと、なんだいオッサン……コイツの彼氏か(・・・・・・・)?』

 

 

 

 

イケメンは、呂晶とオヤジ臭い男を交互に見回す。

 

呂晶に彼氏などいない、もし彼氏がいるのなら、

『今夜は女友達と泊まる』などとは言わず『彼氏がいるから』と断るハズだ。

なので、このオヤジ臭い男は彼氏では無いことが判る

 

 

――――と、思いきや

この手の『ナンパ中・後に彼氏見参』パターンはよく起こる。

 

何故なら女にとって彼氏がいる事は『ナンパを断る理由』にならないからだ。

断りたくなった時だけ、彼氏がいる事を理由にする。

 

こういった三角関係でのトラブルの九割は女の不貞によって発生するため、

イケメンはそれを警戒しているのだ。

 

オヤジ臭い男は、イケメンの質問に回答する。

 

 

 

 

「コイツは俺の妹だよ、そんでもってコイツは、あー……梅毒持ちだ」

 

 

 

 

そう言って、呂晶の頭に “ポン” と手を乗せる、

馴れた仕草だ。

 

 

 

 

『…………梅毒ぅ?』

 

 

 

 

イケメンは怪訝な顔で確認する。

 

呂晶は目を細くしてオヤジ臭い男を睨んでいるが、

ノースリーブから伸びる腕、破けた袴から露出する足に、

湿疹等は見られない。

 

 

 

 

(ちっ、つまんねー嘘付きやがって……)

 

 

 

 

イケメンは少し笑い、オヤジ臭い男の背中を叩く。

 

 

 

 

『カッコ付けんな……“俺の女だ” って言やぁ、十分なんだよ』

 

 

 

 

多少のアドバイスを残しつつ、その場を後にする。

去り際もやはりイケメンだ。

 

彼が去るのを細目で見送った後、

呂晶はその目を、横のオヤジ臭い男に向ける。

 

 

 

 

「アタシはアンタの生き別れの妹で、知らぬ間に梅毒になってたのか――――衝撃の事実だ?」

 

 

 

 

目を細めた顔をニンマリさせる。

 

 

 

 

「お兄ぃちゃーんっ! アタシ梅毒ぅ~んっ! 行商でいっぱい稼いで、お薬ちょーだーいっ!」

 

 

 

 

手首を反り返らせて身体を振り、大袈裟な演技をする。

 

 

 

 

「お前な、助けてやったのに、その言い方は酷くないか?」

 

 

「助けるぅ? アンタがアタシをぉ? ……ウッケる」

 

 

 

 

呂晶は呆れたように腕を広げる。

 

ウェイは呂晶が嫌がって見えたので助けた、他意は無い。

だが、呂晶が嫌がっていたのは演技である。

 

女のそういった演技を面倒と捉える男もいれば、

アトラクションと捉えて楽しむ男もいる。

 

なのに、それを真に受け、

彼氏でも無いのに律儀に助ける人間がいるとは思わなかった。

 

 

 

 

「これで確定したな――――お前はやっぱり童貞だ」

 

 

 

 

イケメンもそんな真人間がいるとは思わなかった為、

『彼氏が穏便に済ませる為に、嘘を付いたのだろう』と察し、身を引いた。

 

ウェイは助けたつもりになっているが、

簡単に言えば『余計なお世話』だったのだ。

 

 

 

 

「おい、俺は童貞じゃねぇ! 何歳だと思ってやがる!?」

 

 

「さあな……確か、四十はいってたよな?」

 

 

「いってねぇよ!! まだ二十代だッ!!」

 

 

 

 

ウェイは今年で二十九歳になる。

 

 

 

 

「あーあー、うるせー童貞だ」

 

 

 

 

――――悪い気はしない

 

今まで一人で戦う事が多かったし、誰かに助けられた経験などほとんど無かった。

ヘマして死にそうな時、自分で切り抜けなくてはならない盗賊とは違う。

これもいわゆる『行商効果』だ。

 

 

 

 

「とりあえず、ラーメン食い行こうぜ? さっきから腹が鳴らないかヒヤヒヤもんだったぜ……」

 

 

「とりあえずじゃねぇ、お前が来ないから探しに来たんだ――――辛いのある店、調べといたぞ」

 

 

 

 

自称、女の気持ちが判る男・ウェイは、典型的な『良い人』である。

だからこの歳になって妻もいない。

 

二人は蘭州でも穴場の店で、ただ辛いだけで無くしっかりとした味のある、

呂晶好みのラーメンに舌鼓を打った。

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

「この店、まーまー美味かっ……ゲァップ、たな。ウェイはどこ泊まるんだ? アタシは先生とだ、羨ましいだろ」

 

 

 

 

自慢気に報告する。

イケメンは逃したが、元々最強の保険を掛けてある。

 

 

 

 

「フッフッフ、俺は “漢(おとこ)の寝床” ってやつだ」

 

 

「おい、野宿は止めろよ……? 前の奴が臭かったら、アタシが隊列を離れて小娘に怒鳴られるハメになる」

 

 

 

 

歩きながら身振り手振りで説明する。

 

呂晶の護衛担当は右翼中列・ウェイの真後ろ。

そして呂晶は匂いに敏感な女、ちなみに特技は即尺である。

 

部屋の戸を閉めた途端に袴を降ろしカバリと咥える。

どんな男もこれでイチコロだ。

 

 

 

 

「風呂には入るよ、今夜は係留されてる “船” に泊まるんだ」

 

 

「船ぇ? 意味わっかんね……」

 

 

「中華を潤す河に揺られ、満天の星空を眺めて眠る……最高だぜ、お前にゃ判らんだろうガナー?」

 

 

 

 

ウェイは自然を愛する男である。

対して呂晶は、一銭にもならない星空よりも俄然(がぜん)宝石に目が眩むタイプだ。

 

 

 

 

「うっわ! それ絶対、蚊に刺されるぞ。こっち寄んな、病気が伝染る」

 

 

「まだ刺されてねぇよ……つー訳で、俺はこっちだ、宿の場所判るか?」

 

 

「大丈夫だ、アタシは子供じゃない」

 

 

「おう、また明日な」

 

 

「あいよ」

 

 

 

 

花雪象印商隊・総勢百五十名は明日をも知れない仕事の中、

ここ蘭州で思い思いの夜を過ごす。

 

川で体を洗い野宿で済ます者。

船に揺られ星を見て眠る者。

綺麗好きの女は高めの宿に泊まり、三日分の疲れを癒やす。

 

言ってみれば蘭州とは、過酷な行商の中での最高の楽しみポイントである。

 

 

 

 

(最悪だ――――)

 

 

 

 

意気揚々と待ち合わせの宿に参じた呂晶は、一転してシラけている。

 

 

 

 

「この子は美鈴(ミーリン)ちゃん、輜重班の同僚なの。優しくしてあげてね」

 

 

『はじめまして、呂晶さん! よろしくお願いしますっ!』

 

 

 

 

とても元気な、男に媚びるのが上手そうな女。

遊珊との恋路を邪魔するかのような女――――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。