※この作品はR-18です。

シルクロードオンライン¬(differentiam)   作:hachu

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Soap land ✛中世中華のお風呂事情②✛

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

『あっ! 遊珊先輩、お背中流します!』

 

 

「まあ、嬉しいわ、お願いしようかしら」

 

 

 

 

美鈴は先輩達に付いて行こうと一生懸命だ、

それが呂晶をイラ付かせているなど、つゆ知らず。

 

 

 

 

『すごーいっ! 先輩の肌、スベスベ……寒天みたい……』

 

 

 

 

二の腕や腰の、柔らかい所を突く。

柔らかな光沢を放つほど白く、触れれば滑ってしまうのに、

指で押すと、しっとり包み込まれるような初めての感触。

 

 

 

 

「それって……褒め言葉かしら?」

 

 

 

 

同じ人間とは思えない未知の物質、

確かに、肌と言うより寒天に近いのかもしれない。

 

 

 

 

『どうしたらこんな肌になるんですか? 美容法っていうか……』

 

 

「特には何もしてないのだけど……普段は研ぎ汁で洗ってるし、体質かしら?」

 

 

 

 

平民は米のとぎ汁や塩、灰などをブレンドし、各家庭でオリジナル洗剤を用いる。

 

対して遊珊が育った『遊郭』とは、

各地から輸送される高級美容品の『最終集積地点』である。

遊女は自分で調達もするし、男客もプレゼントとして貢ぐ。

 

十代中盤から長らく女王に君臨していた花魁・遊珊は、

同僚に分け与えても余る程の在庫を抱え、

それは何故か、遊郭から旅立った今でも増え続けている。

 

先程も世界最高級の布、紫の染料で染められたシルクを貢がれたばかり。

とは言え、肌は少なからず体質も影響している。

 

 

 

 

『えーいっ!』

 

 

 

 

魔性の肌に耐えきれなくなった美鈴は、

遊珊の後ろから伸し掛るように抱きつく。

 

 

 

 

「いやんっ! ちょっと、美鈴ちゃん、抱きつかないで……あっ、もうっ! そこは自分で洗うわ!」

 

 

『だって、気持ち良いんですもん! こうやって、先輩の垢を擦り付ければ……私の肌もおおおぉっ!!』

 

 

 

 

冗談とは思えない顔。

貴族が西方美容品に執着するに然り、

女は美容に対し、時に狂ったような形相を見せる。

 

 

 

 

『あっ! この先輩、イキが良くてなかなか掴めないぞ……よし、掴んだっ! 大漁じゃあああっ! 遊珊エキスを頂くんじゃあああぁーっ!』

 

 

 

 

美鈴は遊珊の肩と腰を持って固定し、

体を左右に擦り付けながら、訳の判らない事を口にしている。

 

 

 

 

「ちょっと、もうっ……くすぐったいわっ! 私は魚じゃないのよ――――ええいっ!」

 

 

 

 

体勢を入れ替え、

今度は遊珊が美鈴を押し倒し、反撃に出た。

 

 

 

 

『うわっ、ちょ……対面(トイメン)! 対面はキツイです! あんっ、顔近いですって! 先輩と私じゃ釣り合わないからっ! 見た目的に釣り合わないからっ! 対面だけはご勘弁をおおおぉっ!』

 

 

「あら? さっきの勢いはどうしたのかしら……抵抗しないなら、好きにしちゃうんだから!」

 

 

 

 

美鈴は恥ずかしそうに顔を手で隠している。

それを良い事に、今度は遊珊が体を擦り付ける。

 

 

 

 

『あははは! くすぐったい! これ、マジでくすぐったいですぅ!! あっはっは……あんっ……!』

 

 

 

 

横隔膜が痙攣して、笑い声が勝手に出てしまう。

 

油脂石鹸と女の肌が擦れ合う “キュッキュ” “ヌルンヌルン” という音が、

公衆浴室に何度も響き渡る。

 

石鹸は古代ローマ、ラテン語で『sapo(サポー)』という丘で羊を焼く儀式を行った際、

偶然にも油と灰が混ざって出来上がり、

それが『soap(ソープ)』という名の由来になったと言われている。

 

 

 

 

(こんの……野郎オオオォ……ッ!!)

 

 

 

 

その光景を目蓋を痙攣させながら、呂晶は怒りの表情で眺めている。

計画していたイベントの一つが、あろうことか雌豚に先を越されてしまった。

 

遊珊と美鈴はジャレ合っているだけだが、

呂晶にとっては『目の前で寝取られている』も同じ。

 

興奮しすぎて右手が股の間に伸びるのを必死で堪えている。

怒りも性欲も、色々と我慢の限界だ。

 

一方、遊珊はおふざけを楽しみつつ、呂晶の表情も見逃さない。

 

 

 

 

(物欲しそうな顔しちゃって……でもダメ、アナタのような子には、”これはタダでしてあげない” )

 

 

 

 

遊珊は中華が三千年に渡り追求し、高めてきた、

武、食、性の三大要素のうち、『性』の集大成である。

 

呂晶の『バイ』などとっくに見抜いている。

そのため、同じ行為であっても美鈴と呂晶では『値段の基準』がまるで変わるのだ。

 

 

 

 

(私の後輩をイジメた罰よ……そこで犬のように、お預けしていなさい……)

 

 

 

 

今も呂晶の情欲を煽りながら、嫉妬で美鈴に辛辣な対応をした呂晶の態度、

それが気に入らないのでワザと見せ付けている。

 

美鈴にはタダで施す『コレ』を呂晶が受けるには、

相応の対価を支払わなければならない。

 

金、才能、家柄、人生――――

遊珊への想いが強くなる程、遊珊はそれを狡猾に要求する。

自らは言わず、相手が自分から差し出すように。

 

呂晶はその内、楊貴妃に傾倒する皇帝が国まで差し出したように、

自分の全てを自分から遊珊に差し出す事になる。

 

性の化身はそうなるまで、止まること無く情欲を煽り続ける。

 

 

 

 

(ふふ……でも、これ以上見せ付けると、私に手を出しそうで怖いわ……)

 

 

 

 

覆いかぶさっていた遊珊は、

優しく美鈴を起こしながら声を掛ける。

 

 

 

 

「ほら、美鈴ちゃん、観念したなら、呂晶の背中も流してあげなさい」

 

 

 

 

虜は、生かさず殺さずが基本だ。

 

 

 

 

『はあ、はあ、はい――――……呂晶さんも、お背中流しますよっ!』

 

 

「えっ……、あ、あ~」

 

 

 

 

呂晶は落ち着き無く、目をキョロキョロさせている。

 

 

 

 

「アタシ、もう自分でやっちゃったんだ……代わりに、アタシが流してあげるよ」

 

 

『良いんですか! ありがとうございますっ!』

 

 

 

 

桶に座った美鈴の背中を、無表情で擦る。

この女を絶対に許さない――――

 

 

 

 

『あっ……ちょっと、痛いかも……です』

 

 

「うっそ、ごっめ~ん! 肌、弱いんだね!」

 

 

『そうなんですよ~、敏感肌っていうか!』

 

 

「それに柔らか~い! ぷよぷよして豆腐みた~い!」

 

 

『もうっ! 非道いですよ、私太ってなんかないです!』

 

 

「アハハッ、ウケるぅー」

 

 

 

 

狂気に満ちた笑顔を浮かべる。

冷静な判断力など残っていないし、そんな物は邪魔なだけだ。

 

黙って帰しはしない、何があっても実行する。

それしか、呂晶の頭の中にない――――

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