※この作品はR-18です。

シルクロードオンライン¬(differentiam)   作:hachu

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垢擦り対決・前 ~中世中華のお風呂事情③~

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

風呂から出ると、敷いてある藁を踏んで足裏の汚れを落とし体を拭く。

三人組の女が着替えを済ませ宿の方に歩いていると、

二人組の女とすれ違う。

 

 

 

 

『花雪商隊長、寒月副長! お二人も、この宿だったんですか!?』

 

 

「まあ、奇遇ですわね……こんばんわ」

 

 

 

 

美鈴(ミーリン)と遊珊(ユーシャン)は、この商隊の長と副長、

十八歳で遊珊に匹敵する美女、花雪(ファーシュエ)と寒月(ハンユエ)に挨拶する。

 

 

 

 

「こんばんわ」

 

 

「うむ、輜重班の者じゃな。どうじゃ、オリーブの石鹸は試したか?」

 

 

 

 

花雪と寒月は、経営者という立場を意識させず、

気さくに応対する。

 

 

 

 

『はい! とってもキメ細かい泡で、汚れが隅々まで落ちました!』

 

 

「うむうむ! そうじゃろう、そうじゃろう、アレは妾も愛用しておってな、植物とは肌にとっての――――」

 

 

「明日も早い、皆、今日は早く寝て」

 

 

「む……っ!」

 

 

 

 

花雪が講釈を垂れようとした所をユエが切り上げる。

こうしないと延々と語り続け、長くなるからだ。

 

 

 

 

「ええ、ご機嫌よう……」

 

 

『お二人共、失礼します!』

 

 

 

 

美鈴と遊珊が頭を下げ、二グループはすれ違う。

 

 

 

 

「……待て」

 

 

 

 

花雪が鋭い声色で引き止める。

講釈を聞かせる為に呼び止めたのではない。

 

 

 

 

「そこの者……妾に挨拶も無しか?」

 

 

 

 

目付きの悪い虚ろな表情、

長くて、黒と白の斑模様をした髪、背が小さい女。

 

挨拶をしない以上に何か気に入らない、得体の知れない感情が込み上がってくる。

こうやって会話し、同じ空間にいる事すら許してはいけないような――――

 

 

 

 

「ちぃーっす、こんあんあぁー……」

 

 

 

 

呂晶(ルージン)は目も合わせず、明後日の方向を向いたまま、

面倒臭そうな低い声で返事をする。

 

 

 

 

「こんばんわ」

 

 

 

 

寒月はそんな挨拶でも、律儀に返す。

 

彼女は “挨拶はされたら返すもの” と考えているからだ。

それが反抗的かどうかに関わらず。

 

 

 

 

「フン……行くぞ」

 

 

 

 

花雪は髪をなびかせ、しなやかに反転して浴場へ向かう。

 

 

 

 

『し、失礼しまーすっ――――呂晶さん、ダメですよ……あんな態度取ったら!』

 

 

 

 

あの二人は上司であると同時に、皇帝の側近である大臣の娘、権力の最上層。

本来なら口を聞くことも許されない、ほとんど天子の位にいる。

 

機嫌を損ねようものなら、どんなに強い気功家でも国家権力によって処刑される。

どころか、以前『報酬が少ない』と乱暴にゴネた護衛がいて、

その者は、その場で片腕を切断された。

 

あちらも貴族で居続けるため、平民如きに舐められる訳にはいかないのだ。

 

 

 

 

「ダメな事って、興奮してこない……?」

 

 

 

 

美鈴を横目に捉えた目を細め、薄く笑う。

 

 

 

 

『そんな……ダメな事は……ダメ……ですよ……』

 

 

 

 

言葉以上に裏がある言い方だった。

さっきまで普通に話していたのに、なんだか――――気持ちの悪い女だ。

 

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

 

「アレは護衛の者じゃろう――――妾達は貴族なのじゃ、敬意は払わせんといかんぞ、ユエ」

 

 

 

 

脱衣所で服を脱ぎながら花雪が注意する。

 

護衛は粗暴な者が多い、腕が立てば立つ程に。

あの態度の悪さは、商人や輜重兵とは一線を画すものだ。

 

 

 

 

「あんな子、いなかったハズ……」

 

 

 

 

同じく服を脱ぎながらユエが答える。

 

部下の顔は全て確認しているが、

ユエは呂晶を『アンチ楊貴妃な二つ縛りの子』と覚えている。

呂晶がトレードマークの二つ縛りを解いていた為、判別出来なかったのだ。

 

同様に二人も髪を解き、花雪は靭やかなロングヘアーに、

ユエはお団子を “外す” と、ふんわりしたショートボブのような髪型になる。

 

 

 

 

「そうか、お前がそう言うのなら、商人の新人かのう……」

 

 

 

 

裸になり、戸を開けて露天風呂に出る――――

 

裸体を壮大な自然の空気に晒し、風を受け、

自分の匂いや蒸れを、広大な世界に解き放つ行為。

 

部屋の中でそうするよりも羞恥と開放感が折り混ざった、

本当の『裸』になった感触を全身で確かめ、思う存分楽しむ。

 

花雪はスレンダーで、どこまでも伸びる細長い手足に、

長身に似合った非の打ち所もない『顔程もある二つの巨乳』を、

“プルンプルン” と揺らしている。

 

寒月はボーッとした、隙だらけで無垢な顔立ちに眼鏡を乗せ、

それとは全く不釣り合いな『顔程もある二つの巨乳』に、

それすらも上回る、膨らみ過ぎた『桃尻』をピンボールのように弾かせる。

 

完璧な造形の花雪と、歪んでいるからこそ美しい寒月。

二人で並んで歩くだけで、世界中の男の好みを全て網羅してしまいそうだ。

 

『胸が無い』という要素だけは無いが、

『貧乳好き』とは女性への気遣い、そして、

『これからの発展過程』に思いを馳せる趣向であるため、正確には好みとは呼ばない。

 

 

 

 

「確かに、何処かで見た気がしたのじゃが……ん?」

 

 

 

 

気付いた時にはもう遅い。

一度、罠に掛かってしまえば、どう足掻いても回避は不可能だ。

 

 

 

 

「なんじゃ……床がヌルつ、く――――あっ……あーーれぇーーっ!」

 

 

 

 

上品な叫び声を上げながら、スラリと美しい脚を大開脚して、

オーバーヘッドキックをするようにすっ転ぶ――――

 

その花雪を、空中でユエが受け止める。

 

 

 

 

「石鹸の泡、さっきの子達が遊んだ跡……花雪、気を付けて」

 

 

 

 

背の高い花雪を、綿でも持つようにお姫様抱っこしている。

ユエは体外気孔にも、体内気孔にも秀でている。

 

受け止められた花雪は赤ん坊のように体を縮こませている。

 

 

 

 

「言うのが、遅いんじゃ……っ!」

 

 

 

 

二人は慎重に石畳を進み、

湯を浴びてから、改めて桶の上で体を洗う。

 

 

 

 

「まったく、毎度毎度……自分の体を洗うのは面倒じゃのう……のう、ユエ?」

 

 

 

 

体をユエへ傾け、意味深な言い方をする。

 

 

 

 

「ダメ、そこまで面倒見ない、そろそろ着替えも自分でして」

 

 

「妾はお前のように紐が結べんのじゃ~、のう~、ユエ~」

 

 

 

 

甘えた調子で、手拭いを泡立たせながら差し出す。

 

 

 

 

「絶対、嫌」

 

 

「では、こうしようぞ……着替えは妾一人で出来るよう頑張ろう、その代わり、体を擦るのは……」

 

 

「はあ、あっち向いて……」

 

 

 

 

しつこくワガママな花雪に押し切られ、

ユエはついつい手拭いを受け取ってしまう。

 

 

 

 

「やったぞ! 交渉成立じゃ! ほれ早う、早うせい、左肩からじゃぞ!」

 

 

 

 

嬉しそうに立ち上がり、後ろを向いて両腕を浮かせる。

 

花雪は家を出るまで着替えも垢擦りも、身の回りの世話全てを召使いにさせていた。

と言うより自分でする事を禁じられていた。

今時、貴族でも珍しい仕来りを保つ伝統貴族だからだ。

 

普段は偉そうに命令しているのに、

実は一人で着替えも出来ない小娘だと知られては商隊の士気に関わる。

ユエの苦労は絶えない。

 

 

 

 

「こんなの交渉でも何でもない、花雪はいつまで経っても子供……」

 

 

 

 

面倒そうに手拭いを折って立ち上がり、

言われた通り左肩にあて、細長い手に沿って滑らせる。

 

 

 

 

(フン、どっちがじゃ……)

 

 

 

 

『子供』という言葉を投げ掛けられた、大人の色香を漂わせる花雪が、

子供のように顔をしかめる。

 

 

 

 

「妾はのぅ、人に体を洗われるのが好きなのじゃ、くすぐったくて気持ちが良い、自分でやってもこうはいかんのじゃよ」

 

 

 

 

ユエの手が止まる――――

曇った眼鏡の奥から、怪訝な表情で花雪を見ている。

 

 

 

 

「花雪……それはあまり、人に言わない方が良い」

 

 

「どうしてじゃ? あ、脇と乳周りは蒸れる故、念入りに行え、足は指の間も忘れてはならぬぞ」

 

 

「まったく……はいはい、お股も擦って差し上げましょうか、親分?」

 

 

 

 

垢擦りを再開し、“やれやれ” と言う調子で冗談混じりに受け答えする。

 

 

 

 

「うむ、股座(またぐら)は優しく、妾が良いと言うまで続けよ――――特にくすぐったくて、いと気持ちが良い(・・・・・・・・)」

 

 

 

 

再び、ユエの手が止まった――――

 

今度は目を見開き、怪訝な表情ではなく、

戦慄するように問いかける。

 

 

 

 

「それ、本気で言ってるの……?」

 

 

「おい、まさか知らん訳ではあるまい? 股を擦られると気持ちが良うて、妾は病み付きじゃよ」

 

 

(なんてこと……っ!)

 

 

 

 

ユエは顔に出さないが、心は激しく動揺する。

自分も大臣の娘だけに経験のあった事だ――――

 

そういった事を周りが教えてくれない、『教えてはいけない』と厳命されるため、

結果、自分がその手の知識を仕入れるのが遅れに遅れる。

そして仕入れる頃には、大抵の場合が『多大な恥』と引き換えになる。

 

常々『花雪は貴族をこじらせ過ぎ』とは思っていたが、

現実は予想を遥かに上回っていた。

 

 

 

 

「判った、これからは私が洗う――――でも、他の人に洗わせてはダメ、絶対ダメ」

 

 

「何故じゃ? 判るよう理由を述べよ、それでは清凌(シンリン)をクビにせねばならん、妾はアヤツ

をクビにしとうない」

 

 

 

 

清凌とは花雪付きの召使いの一人。

歳も近く気配りも効いて、召使いの中でも気に入っていた為、

沐浴の世話をさせている。

 

 

 

 

「理由は話せない、それがアナタの為……」

 

 

 

 

少し考えた後、花雪はある提案をする。

 

 

 

 

「よかろう……ならば全ては、お前の腕次第じゃ」

 

 

「どういう事?」

 

 

「これからお前の与える快楽が、我が家の名人を越えた暁には、奴をクビにする事を約束してしんぜよう」

 

 

「……判った」

 

 

 

 

貴族とはよく、この手の無理難題を賜える。

馬鹿馬鹿しい提案であるにも関わらず、ユエの表情は真剣そのものだ。

 

 

 

 

(花雪は何も判っていない、“それ” は後に、決定的な弱味になりかねない――――)

 

 

 

 

大臣家の娘ともあろう者が、奴隷に股を擦らせ『悦』に浸っている。

他人に知られれば一人で着替えが出来ないどころではない、

計り知れない『スキャンダル』に発展する可能性がある。

 

楊貴妃が後宮でお香を炊いただけで、ワキガと噂されるご時世なのだ。

 

ユエは楊貴妃のように美しい花雪の名誉を守る為、

この秘密を墓まで持っていく事を誓う。

 

清凌という召使いには、後で金を渡して口止めするか、

この世から抹殺しなければならない。

 

 

 

 

(花雪が “それ” を知るのはまだ早い……でも、この子を守り抜くと、私はあの日に決めた)

 

 

 

 

二人で旅に出た日を思い出しながら、

ユエは器用な手先を活かし、花雪の体を清めていく。

 

神経の集中する部分は指先を使い、神経が思わず反応してしまうように

触れるか触れないかの力でゆっくりと長く滑らせる。

そうして受け入れる準備が完了したそこへ、

緩急と強弱を変化させ、手加減せずに擦り上げる。

 

自分であれば、“ここはこうして欲しいだろう” と思い付く、

考えうる限りの方法を、最大限の注意を払って行う。

 

 

 

 

(思ったより難しい……これは自分の体を擦るより、何倍も神経をすり減らせる作業……)

 

 

 

 

大切な人の、大切な身体を清める――――

奉仕する表情は真剣そのものだ。

 

ユエは自分で気付いていないが、

彼女が行っているその作業は『愛撫』に他ならない。

 

 

 

 

「うむ……苦しゅうないぞ、じゃが背中や腰なぞ――――所詮は余興じゃ」

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