突然だが、その少女の名はスペンスという。
非常に涙腺の弱い彼女は常日頃涙を浮かべており、泣き虫というよりかは泣き上戸といったところだろうか。
無論、お酒など飲むまでもなく、常時泣き続けている。……一応、本人としては反射として涙がこぼれてしまうのだそうだが。
ともあれ、そんなスペンスは今日も今日とて泣いていた。
今日は眠れなかったからだ。
(装備の改修について、指揮官に相談したかったのに結局消灯までお話できなかったよぉ……)
布団にくるまってゴロゴロと寝返りすること20回。
もう眠れないな、と思うと迷惑かもしれないが指揮官の私室へ赴くことにした。
(もう起きてないかも……。明日も出撃任務があるみたいだし、今日は早めに寝ちゃってるかなぁ……)
もし眠っているようなら今日は諦めよう。
でも、もし起きているようなら、少し相談に乗ってもらおう。
装備を変更してもらえれば、もう少し戦闘でも役に立てるかもしれない。
普段から迷惑ばかり掛けている自分でも、みんなの力になりたい。
スペンスは小さな手を強く握り込んだ。
指揮官の私室からは窓から明かりが漏れていた。
曇りガラスなので、中は窺えないが、まだ起きているのかもしれない。
そう思い、控えめにノックしてから返事もないので扉を開いた。
「指揮官……? 失礼しまぁ~…………」
スペンスはそこから硬直してしまう。
何故ならそこには、信じがたい光景が広がっていたのだから……。
――
「ねぇ、指揮官? 情けないとは思わないんですか?」
垂れた横髪を耳に掛けながら、エイジャックスが高圧的な声を投げ掛ける。
声は足下――というよりは足先にいる指揮官へと向けられている。
「こうやって夜な夜な秘書艦に罵られて、ブヒブヒ悦んでいるなんて……。恥ずかしいとは思わないんですか?」
声を投げ掛けられた指揮官の少年は、まだ修学期間を終えたばかりの若々しい声で荒い息をこぼしていた。
「ハァ……ハァ……、うぐ……あぅ……」
苦しそうな呼吸音は、エイジャックスの足の動きと同期するように漏れていた。
それはまるで、エイジャックスが足先で楽器を奏でているようにも思える。
だが、この場合。楽器は指揮官自身だということになってしまう。
「あらあら、まったく……。涎(よだれ)まで垂らして、物欲しそうに何を見ているんです……?」
指揮官は顔を上げる。
そこには嗜虐的な笑みを浮かべる妖艶な小悪魔がいた。
その美貌と、倒錯的な状況に、指揮官は顔を紅潮させてしまう。
そんな光景を、エイジャックスは愉快そうに眺めている。
「答えてください、指揮官。……あなたは一体、どうして欲しいんですか……?」
その問いに、指揮官の少年は荒い息を殺しながら答える。
「……もう限界だ。……頭がおかしくなりそうなんだ」
それを聞いた瞬間、エイジャックスの陶器のような細い足が止まった。
指が指揮官の一部分を摘まみ上げていた。
強すぎる刺激が、僅かな痛みとささやかな興奮を生み出した。
「指揮官……? おしおきの最中に口答えですか……? あなたには口の利き方から教えてあげなければならないんですか?」
指揮官は一度だけビクンと身体を反らすと、懇願するように頭を垂れた。
「お願いします、エイジャックスさま! どうかこの哀れな豚にお慈悲を与えてください! あなたの寵愛を! どうか!!」
それはどこか狂信者のような絶叫だったが、エイジャックスはまだ満足ではないようだった。
「言葉を飾って卑しい自分を誤魔化したつもりですか? そうじゃないでしょう? もっと単調に醜く宣いなさい!!」
「エイジャックスさまの御御足(おみあし)に! 僕の醜いチ○ポをしごいていただき! 無様に果てたいです!」
「もっとシンプルに!!」
「イキたいです! イカせてください!!」
少年の慟哭を満足げに聞き届けると、エイジャックスの爪先が艶めかしく動いた。
生き物のように少年の秘部を蹂躙し、僅かな時間で絶頂へと導いてゆく。
「良いでしょう……、イキなさい!!」
「あ、ああぁ……、ああああぁぁぁッーーーー?! ……ハァ……ハァ……、うぁ……」
ビュクビュクと噴水のように白い液体を放出するそれを愛しそうに見つめるエイジャックス。
たっぷりと精液の掛かった右足を持ち上げると、指揮官の顔へ近づける。
「ねぇ、指揮官。あなたの出したもので私の足が汚れてしまったわ。……こういうときはどうするんでしたっけ?」
指揮官は恍惚とした表情のままコクリと喉を鳴らした。
「僕が舐め取って差し上げます」
指揮官の舌が丹念にエイジャックスの足を洗浄してゆく。
エイジャックスはそれを嬉しそうに見つめている。
それはどこか神聖な儀式のようにも見えた。
互いの愛を確かめ合うような、神聖な儀式にも見える。
「……もう充分よ。またそんなに物欲しそうに膨らませて……。そんなにご褒美が欲しいのかしら、指揮官……?」
エイジャックスが首を傾げると、指揮官は意を決したように頷いた。
我慢しようとして、しかし抑えきれなかったとでも言うように、少年は俯いたままだ。
しかし、そこでついにエイジャックスが椅子から腰を持ち上げた。
そして、指揮官の身体の上に跨がった。
「いいわ。それじゃあ、ご褒美をあげる……」
エイジャックスは少し、表情を隠すように俯くとそのまま腰を下ろし、座位の体勢で密着した。
「ねぇ、好きにしてもいいんですわよ、指揮官……?」
そんなふうに柔らかい微笑を向けられては、まだ年若い少年の指揮官には堪えることなどできなかった。
エイジャックスを激しく抱き寄せ、胸元に顔を埋(うず)める指揮官。
捲れたシャツからまろび出る胸元。その先端で揺れるピンク色の蕾に狙いを定めると、赤ちゃんのようにちゅうちゅうと吸い上げる。
そんな様子の指揮官をあやすように、エイジャックスは指揮官の頭を抱きかかえる。
「ふふふ……、こんなみっともないお姿、他の艦にはお見せできませんね。おいしいでちゅか、指揮官……?」
「美味しいよ、ふわふわであったかくて、それに白くて綺麗なんだ。目の前にこんなものがあったら誰だって気がおかしくなる!」
エイジャックスは少しだけ顔を赤に染めると、少しだけ不満そうに唇を尖らせた。
「ねぇ、指揮官……? 泣きたいほど嬉しいのは分かりましたが、それだけで満足ですか……? せっかくのご褒美です、もっと先までいただいてしまっても構わないんですのよ?」
それを聞くなり、指揮官は急アクセルを踏み込んで暴走したトラックのような勢いで、秘書艦のしなやかな身体を押し倒した。
そのまま服を脱がすのも面倒とばかりに上から覆い被さった。
腕の中で荒い息をこぼし、快感に身体を震わせるエイジャックスの蠱惑的な姿に、指揮官のきかん坊は猛り狂っていた。
発情期の猿のように夢中で腰を振り続ける指揮官。
僅かに男性的に育ちつつあるやや筋肉質な背中にエイジャックスは腕を回した。
「し、指揮官……、お願い、……今ぐらいは、結婚名(なまえ)で……呼んでください……ッ!」
「ハァ……、ハァ……ッ、『アンジェ』! 大好きだよ、……愛してる……ッ!!」
「ああッ、指揮官! 良いです! このまま……ッ!!」
昇り来る絶頂感に、頭に白い靄が掛かったような心地がした。
指揮官はがむしゃらに抽挿を繰り返し、腕の中の華奢な身体を壊してしまうのではないかと心配になるくらい激しく犯した。
上気した顔でこちらを見上げるエイジャックスは、堪えきれない快楽に荒い呼吸と甘い嬌声で悶えていた。
「ああ……ッ、もうダメだ! イクよ、『アンジェ』」
「来て! 指揮官! あ、イク、ダメッ、……アアアァァァアアアアアアーーーーーー!!!!」
ビクビクと震える身体をお互いに掻き抱く二人。
荒い呼吸と甘い恍惚感が収まるまで、二人は相手の身体に顔を埋(うず)め続けた。
ようやく落ち着いた指揮官は目の前の愛しい相手の唇を貪った。
舌を絡めてお互いの唾液を交換し終えると、指揮官はようやくエイジャックスの上から降りてその隣に寝そべる。
視線はお互いに逸らすことはない。二人だけの空間に二人だけの時間が流れていた。
「……こんなご褒美は今日だけですからね」
何度目かも分からないような、そんな甘い言い訳を聞きながらも指揮官はそれに逆らおうとはしない。
彼女の顔を見れば、その言葉が嘘か本当かくらい朴念仁の指揮官でも容易に分かったからだ。
「……それじゃあ、今この時間をもっと大事にしないといけないね」
どうやらこの返答は正解だったらしく、満足げに微笑んだエイジャックスはぎゅっと身体を寄せてきた。
指揮官は愛しい身体を愛でようと、右手を持ち上げた。
抵抗しない愛する人へ込み上げてきた更なる欲求が、朝の訪れを拒もうとしていた。
甘い夜はまだまだ続くらしい。
――
そんなまぐわいのひと時を見つけてしまったスペンスは、真っ赤な顔を手で覆った。
(なんということでしょう?! なんということでしょう?!)
浮かぶものはそんなリフォーム番組で繰り返し聞いたような驚嘆の言葉だけ。
見てはいけないものを見てしまった。それだけは明確に理解できていた。
思わず後退り、後ろ手に扉を閉めた。
ガチャリという扉の開閉音も、あれだけ激しくシッチャカメッチャカしていれば聞こえないだろう。
二人に気づかれてはいないらしい。それだけが唯一の救いではあるけれど、持て余した困惑だけは如何ともしがたい。
帰り道も朧気に、自室に辿り着いたスペンスはグルグルと目を回したような心地のまま床に就いた。
――翌日、スペンスは訓練に寝坊して大変に怒られたが、わりといつものことなので心配する者は皆無だった。
――
同じく翌朝、指揮官は自室で目を覚ました。
隣の温もりは既に無く、裸のまま一人で眠っていた。
ベッドに残った臭いが、間違いなく昨日起こった情事が夢ではなかったと告げている。
指揮官は気怠い身体をよたよたと引き摺りながらとりあえず自室のシャワーを浴びることにした。
汗やら何やらで汚れた身体をお湯で流し、さっぱりした心地で浴室を出る。
朝のうちにエイジャックスが用意してくれていたらしいアイロン済みのワイシャツに袖を通し、鏡のまえに向かう。
そこで指揮官は銜え込もうとした歯ブラシを落としてしまう。
ワイシャツには『エイジャックスは俺の嫁』とデカデカと書かれており(しかも恐らくは油性マジックで)、指揮官は絶句する。
慌ててサイドテーブルに視線を移すと、そこにはエイジャックスのものと思われる書き置きがあった。
『お寝坊さんの指揮官へ。私より後に起きた罰として、今日はこのワイシャツで出勤すること。だいじょうぶですよ? 上着を着ればギリギリ誤魔化せる位置にありますから♪ もし、人前で上着を脱ぐようなことがあれば、……分かりますよね? それでは今日もお仕事、がんばってくださいね♪ ――あなたの永遠のお世話係より』
エイジャックスの浮かべる小悪魔染みた微笑が、容易に想像できてしまう指揮官だった。
ゲーム中のチャット画面でエイジャックスとのサセックス的な話題を見てたらなんか思いついたので書いてみました。
分かり易いSM的プレイと最終的に優しかったりするのがエイジャックスの魅力なんだなと書いてみて改めて思いました。
R-15系は何度か書いたことあるけどガチでR-18な話はこれがハヂメテだったりします。
そんなわけである意味での処女作をお楽しみいただけましたら幸いです。
追記:続ける予定でしたが、アズレン自体ちょっと引退気味になってしまったのでそのままおざなりになってしまっております。
なにかの奇跡が起きたら再開する可能性もわずかにありますので、期待しないでお待ち下さい。