● act 1 拾われた犬 ●
イギリスの北部ウェールズ地方、ダブリン。
スコットランドにも同名の都市が存在するが、ここは片田舎で古き良き時代を感じさせる街並みが広がっている。
ダブリンで暮らす人々も保守的で余所者や環境が変わる事を好まない。そう言う意味でもバーノン・ダーズリーは典型的なウェールズ人だ。仕事が終われば家に帰りビールを開けTVで野球観賞と言う長年のサイクルをしている。
オクラホマ266番地にある庭と車庫付き二階建てがバーノンの城。家族四人が暮らすには十分な広さだ。
妻のペチュニアは愛する夫と息子の為に夕食の仕度をしていた。
ミンチ肉を用意している。彼女の作る茹で卵をミンチ肉で包み調理した料理は絶品だと夫も絶賛していた。
プラチナブロンドの髪は手入れされ光沢を放っており肌も滑らかで30代子持ちに思えない。
自身の後ろ姿を凝視していた少年に気づいてペチュニアは声をかける。
「ハリー、冷蔵庫から卵を取ってくれる?」
甘く歌うような声にハリーと呼ばれた少年の股間はびくりと反応する。
(良い声してる……)
ハリーはムズムズしながら、ペチュニアの臀部を眺めぼうっとしていた。容姿に関しても文句の付け所が無い。むしろ抱き着きたいぐらいだ。
返事が無いことに叔母は振り返る。
「ハリー?」
「あ、はい叔母さん」
ハリー・ポッターはペチュニアの亡くなった妹の息子で甥にあたる。
ハリーの母とペチュニアは仲の良かった姉妹で、妹の忘れ形見をペチュニアは我が子ダドリーと同様に扱っていた。
ハリーも叔母夫婦を敬愛していた。そして美しい叔母に劣情を抱いていた。
(若い頃はモデルをやっていたそうだけど、今でも十分20代に見える。すげえな)
今夜も叔母をオカズに寂しい夜を過ごす事になるとハリーは溜息を吐いた。
「パパ、帰って来たよ」
ダドリーの言葉で特徴ある爆音が聴こえた。4.0LのV型12気筒DOHCエンジン。バーノンの愛車、LP400だ。
タイヤをきしませて中古のカウンタックが家の駐車場に入った。
車から飛び降りたバーノンは家に駆け込んだ。
「やったぞ!」
バーノンは歓声を上げて家の扉を開ける。
そんなバーノンを妻のペチュニアと息子のダドリーは驚きの表情で迎えた。
「どうしたの貴方?」
普段、人目を気にし常識人であろうとするバーノンが、夫婦の寝室以外でこのように感情を発露させるのは珍しい事だった。身嗜み、態度だけではなく、家の庭に生える芝生が不揃いでも直ぐに業者を呼ぶ人間だ。
ぎゅっと妻を抱き締めて口付けをするバーノンは、背広の胸ポケットから手紙を取り出した。
「見てくれ」
バーノンの経営するグランニングズ社が、穴あけドリルの製造技術を見込まれリベリア政府から招致された。首相サミュエル・ドウの署名が入った正式な物だ。
リベリアはギニア湾沿岸部に位置し大西洋と接する小国だ。国は貧しく成長途上にあると言えた。金、ダイヤ、鉄鉱石を算出し外貨獲得をするリベリアにとって掘削機器は生命線と言える。
その為、庭にプール付きの豪邸を準備するなど高待遇での契約条件が記されていた。
「まぁ!」
美しい水色の瞳を見開き驚きの表情を浮かべるペチュニア。口許に当てる手を優しく握りしめて、バーノンは笑みを深める。
リベリア政府と事前交渉を続けていたとは言え、正式な決定はやはり喜ばしい。ふと視界の端を霞める物があった。小柄な少年だ。
「向こうは英語が通じるらしいけど、フランス語、ポルトガル語は覚えていて損は無い。ハリーも頑張れよ」
ハリー・ポッターはダーズリー家の居候で10年以上の世話になっている。バーノンにとってもハリーはもう一人の息子だった。
「はい叔父さん」
ハリーとダーズリー家の関係は良好で、実の息子と同様に愛情たっぷりと育てられて来た。
ハリーは叔母と関係を結ぶ希望を見いだせなかった。
このまま一生、良き妻、良き母親を演じているだろうと諦めていた。
「さあ、明日から荷造りで忙しくなるぞ!」
イギリスにおける資産を処分したダーズリー家はリベリアに移住する。
政府の招致と言う事で仕事と家は用意されていた。順風満帆な新生活のスタートだった。
1989年12月、ダーズリー家に悲劇が襲う。チャールズ・テーラー率いる
寝室で休むバーノンとペチュニア。ベットはヨーロッパから取り寄せた特注品だ。
「ねえ貴方。このまま、この国に居て大丈夫なのかしら?」
リべリアの国内情勢が変わった事は知っている。ペチュニアは不安そうにバーノンに腕を絡める。
「そうは言っても、この国から離れては生きていけないぞ」
働く場所、家、生活の全てを捨てる事は出来ない。
突然、玄関の方から破壊する騒音が聞こえた。慌ててベットから飛び出すバーノン。
「な、何だ。お前ら」
武装した一団が押し入っていた。ゲリラか武装強盗か分からない。
「お金ならあげるわ。欲しい物があるなら何でも持っていって良いから」
「黙れ、資本主義者の豚め」
AK突撃銃の高速弾がバーノンの体を襲う。
「パパ!」
「いやああああ」
夜着を引き裂かれたペチュニアは、バーノンの死体の横で何十人と言う褐色の男達に犯された。
「ひぃ、やぁ」
そう言いながらも愛撫に反応し締め付け、流れ出る蜜で濡らしていた。
その痴態を見せつけられ体の奥が熱くなるハリー。
「次はこいつらのを咥えろ」
勃起したハリーとダードリーの股間に気付いたゲリラは近親相姦を強要する。
「御免よ叔母さん」
そう言いながらもハリーはこの好機に内心で歓喜しており、叔母を陵辱する事に忌避感はなかった。
「ああ、いけないわハリー!」
ペチュニアの蜜壷はハリーの大きな根っこを受け入れる。ダーズリーも腰が自然と動き、美しい母親の体に溺れた。
夫の死体の横で息子たちに犯される母親は、しばらくすると甘えた喘ぎ声が漏れるようになっていた。
「あぁん、ああ、あっ……」
「叔母さん、叔母さん!」
何度も膣内射精をして衰えないハリーの大きな根っこにゲリラは呆れた。
生物は子孫を残す本能がある。強い雄が生き残る。そう言う意味でも大きな根っこと絶倫な精力こそ男の象徴だった。
「お前、ガキにしてはたいした奴だな。気に入った。生かしてやる」
この時、幼いハリーとダーズリーは少年兵としてゲリラに拉致され洗脳教育を受ける事と成った。
三週間の訓練できっちり丸っと洗脳された少年達に混ざってハリーは、将来の幹部候補として一目置かれるようになっていた。
襲撃した町で積極的に女を犯し子供さえ殺すハリーは狂犬として褒め称えられた。
そして月日が流れた──
「南アフリカの豚共め」
199×年、シエラレオネにハリーの姿はあった。アハメド・フォディ・セイバナ・サンコー率いる
少年兵と言えば特殊部隊の猛者を倒す様な精兵ではなく、民兵に毛が生えた程度の者に過ぎない。与えられた任務は大人の補助であり、子供に期待はされていない。
敵は
エグゼクティブ・アウトカムズは、ローデシアやモザンビーク、アンゴラで実戦経験を積んだ元
ヘリコプターのローターが巻き起こす爆音が聴こえた。緊張の空気が流れ空を睨み付ける様に注視する仲間達。黒い機影が見え大きくなって来る。
最近、戦場の空を対地ロケット弾で武装したセスナ337が飛来する事があった。今度のはそれ以上の脅威だった。
NATOコードでハインドと知られる旧ソ連製Mi-24強襲ヘリコプター。コイドゥ西方のカンガリー丘陵に進撃するGH134作戦で、フリータウンからの航空支援だ。
「ガンシップだ!」
携帯対空ミサイルと言った気の利いた武器はない。精々が対空機関銃程度の装備だ。
「射て、射て。怯むな!」
空に銃を向け射ちまくるが、防空網と呼べるほど大層な物ではない。
戦いの流れは政府軍に移っている。歴戦のエグゼクティブ・アウトカムズ社員に指導されたシエラレオネ政府軍は、RUFを各戦線で圧倒しつつあった。
「頭を下げろ!」
ダーズリーの頭を押さえつけるハリー。大型の拳銃を取り出した。
デザートイーグル。.45ACP弾と言う凶暴な弾を放つ道具だ。シエラレオネの首都、フリータウンにあった金持ちの邸宅から略奪した物で、ハリーは愛用していた。
対処不可能に思える敵に対して、正面からぶつかるのではなく、頭脳と体力を尽くすのがゲリラの戦い方だ。
額の傷が疼いたが、構わずハリーは銃口をハインドのテールローターに向けて連射した。
瞬間、吹き飛ぶローターが見えた。
期待以上だった。コントロールを失ったハインドは敵の車列に落ちた。
静寂、そして歓声が沸き起こった。
「ハリーがまたやってくれたぞ!」
● act 2 猟犬、魔法界に征く ●
歴戦のゲリラ戦士に育っていたハリーの人生に転機が訪れた。
フリータウン周辺からRUFを掃討したEOはフェイズ2として、東部のコイドゥに進んでいた。フェイズ3ではボー、ケネマと南の解放、フェイズ4では本拠地の制圧が目的とされている。
確かにこのままだとリベリアまで追い払われる勢いで、RUFの大敗は避けようもない現実だったが、それとハリーの人生は根本的に次元が違う話だった。
中共軍上がりの中国人傭兵の指揮で行った襲撃は、ランドローバーと82mm迫撃砲の火力を前に失敗。多くの仲間が帰らなかった。
その日の戦闘後、下手を打った中国人傭兵に仲間内でケジメを着けた後、AK-47を手入れしていたハリーは声をかけられた。
「ハリー、ハリー・ポッター。探したよ」
突然、現れた大男に抱き締められハリーは驚いた。
「な、何だよあんた」
「覚えてないか。わしはハグリッド、ホグワーツ魔法学校の森番さ」
魔法学校なんてイカれた台詞を信じる訳がなかったが、相手に敵意が無いことは理解できた。
「それで、俺に何の用だよ」
「うん、ダンブルドア校長に言われてな。お前を迎えに来たんだ」
落ちていたエロ本の様に黄ばんだ封筒が渡された。シエラレオネ、コイドゥ、ゲリラの宿営地、ハリー・ポッター様と宛名が書かれていた。
「ホグワーツ魔法魔術学校……入学の許可。何の冗談だ?」
唖然としていた仲間達が、ハリーが連れ去られそうな事態に警戒の目と銃口を大男に向ける。
「冗談何かじゃないさ。おまえさんは魔法使いさ。マグルたちが殺し合う、こんな物騒な所に居ちゃいかん。わしと行こう」
「って言うか、俺はゲリラの一員だし簡単に抜けれないぞ」
ダーズリーが頷く。
「邪魔するやつは実力で排除するだけだ」
そう言うハグリッドは周囲を一睨みした。
「お前さんの持ち物はその鞄だけかい」
「ああ、大した物は持ってないんでな」
ハリーは鞄の中にUZI短機関銃やデザートイーグル、M67破片手榴弾といった物騒な代物を持ち込んでいた。戦場での鹵獲品だ。他に額の傷が疼いた時に飲むアスピリンとロキソニンがあった。
「ううっ、苦労したんだな。だが、安心しろ。ダンブルドアから金庫の鍵を預かっておってな」
ハグリッドに拉致されたハリーは、アフリカのシエラレオネからイギリスのロンドンに隠された入り口を通ってダイアゴン横丁にある銀行グリンゴッツに連れられた。ダドリーは魔法の素質も無いので現地に置き去りだった。
「あれれ、ないぞ?」
銀行の窓口で自分の持ち物を漁るとハグリッドはそう言った。ハリーの両親の遺産が入った金庫の鍵だ。
「残念ですが、鍵がないと御通しすることはできません」
応対した小鬼は顧客の満足度を考えない。事務的にそう返した。
「ふざけるな! ハリー・ポッター本人だぞ」
「規則ですから」
大切なのは規則で融通を利かす事では無い。
「だったらハリーに無一文で過ごせと言うのか!」
ハグリッドは愛想の無い態度にキレぎみだった。
「お気の毒ですが……」
「わしはダンブルドアから、ハリーを守るために脅威となる物は実力で排除する事を許されている」
「私を脅すおつもりですか」
「脅しなどはしない」
脅しはしない。やるのは実力による問題の排除だった。
ハグリッドは答え魔法を振るった。頭部を破裂させ倒れる小鬼。ハリーは冷めた目でその光景を眺めていた。
「きゃあああああ」
赤毛の少女が叫んだ。その声を合図にしたかのように客は我先にと逃げ出す。
ハグリッドに杖を向けようとした警備員にデザートイーグルを向けて引き金を引く。
「強盗だ!」
「だれか警察を、警察を呼べ!」
警察に震える手で通報しようとした銀行員の小鬼たちは、熱い弾を受けて頭部を吹き飛ばされた。死の呪い、アバダケダブラに匹敵する即死の威力だ。
「ハグリッド」
銃声とハリーの呼びかけに振り返るハグリッド。
「なんだいハリー」
「僕たち銀行強盗に来たわけじゃないよね」
「もちろんだ。お前さんの持ち物をおろしに来ただけだ。責任者は出てこい!」
ハグリッドの言葉に支店長がビクビクしながら現れた。
「これでもまだハリー・ポッター本人だと認めないのか?」
必要とあれば皆殺しにする。その気迫を感じたのか支店長は折れた。
「お客様、こちらの不手際で申し訳ありません。ハリー・ポッター様のご確認はさせていただきました。金庫へご案内致します」
株のインサイダー取引や金現物取引で稼いでいた両親の遺産はマグルの国家予算に匹敵する金額があった。
「これは迷惑料だ。取っておいてくれ」
「は、はい。ポッター様。これからも御贔屓にお願い致します」
財布を膨らませ、マダム・マルキンの洋装店に制服の採寸で買い物に向かったハリー。ハグリッドはその間に教科書や鍋と言った勉強道具を買って来てくれると言う事で別れた。
マダム・マルキンは外見が二十代ぐらいの若い女だった。
「あら、坊っちゃん。いらっしゃい」
「こんにちは」
年上の女性を落とすには甘えるか、甘えさせるかに分かれる。上目遣いでハリーはマダム・マルキンを見つめる。
「えっと、君もホグワーツの新入生なのかい?」
横から声をかけられ、そこでハリーは他にも先客が居た事に気付いた。同じ年頃の少年だ。
これからと言う時に邪魔をされた形だが、マダム・マルキンの目があり自重してハリーは対応した。
「君はマグル生まれなのか」
ドラコ・マルフォイは自己紹介を交わした後、魔法界の常識を知らぬハリーに対して汚物を見るような視線を向けてきた。
舐められる事は我慢出来ない。ハリーは殺意を込めてにらみ返すと、淀みなく答えた。
「両親が殺されマグルの家で世話になっていたんだ」
殺しを経験したハリーの視線は子供を畏縮させるには十分だった。
「そ、それは大変だったね」
何て目をしてるんだ、こいつはとマルフォイは思いながら応じる。どもりながらも精神的優位を保とうとしたが次の台詞によって屈服した――
「ああ。その養父母もゲリラに殺され僕も少年兵として拐われ、数日前まで銃片手に戦場にいたよ」
さらりとした口調で告げられた驚愕の生活。
「せ、戦場!?」
魔法界だけではなくマグルの社会情勢も一般教養の内に入る。マルフォイも世界のどこかで戦争が続いているのは知っていた。
「そう。シエラレオネ、RUFの一員だったのさ」
シエラレオネがどこかは知らないがハリーの目に同年代には無い黒い光を見た。
一瞬だが、血と硝煙の香りを嗅いだ気がした。
「そ、そうか。僕はマルフォイ。仲良くしよう」
「よろしく頼む」
少年と別れて店を出たハリーは、名乗る事を忘れていた事に気付いた。
「ま、良いか」
その後、オリバンダーと言うボケの入った老人から杖を買ってその日は終わった。