基本構成は、人生が全部繋がって謎が解けたねって感じにしたい。
だ、ダメですか?
彼が燐寸を数回擦る音。シュボッという発火音、その燈火は誕生と共に暗い部屋を灯した。オレンジ色が広がり、それを受けて今いる地下の死体安置場に、燐寸を指に持つヘン・ピツィラダ自身が浮かぶ。
赤い瞳。赤銅の虹彩。眉毛は無く、頭髪は赤毛の癖っ毛の少年。彼は侏儒であった。
呟く、なにかを笑んで、お前が死んでよかったよ、と。
壁の窪みに掛けられた燭台に火を移す。三本の蝋燭が三倍以上の照明となり、ヘンが確認に来た何某かの亡骸が奥に伸びる石台の上に三体安置されていた。
一番手前の死体は毒死したらしい。口角には黄色い泡が固まっている。手がくの字に、喉元から力を失ってくだり仰向けに両手が胸にある。
そして、その隣の目的に近付く、頭が軽くなる。隠せない微笑みを両手で抑えてしまう。その死体の顔面には大きな裂傷が、最早、穴と言える傷が刻まれ鼻腔の内まで露わになっていた。
ヘンにとってこの死体は彼への虐めを喜んでいた一人の躯にすぎないが、彼を虐めていた主格の惨殺死体だから格別だ。
悪意の消失はどれほど嬉しいだろうか。誰でも考えた。考えたが、諦めたその喜びに、こんなにも彼は喜びを抑えている。おそらくこんな事が起こるのだ。
小躍り、歓喜の祈りを小声で、服の袖は涙と鼻水にグシャグシャになり、滴り落ちた涙は太陽の木漏れ日の様に温かい。石台の傍らで、その虐げてきた躯の足下で彼は温かくなっていた。
体を細かく震わせてヘンは話しかける。
「……ヘン・ピツィラダは生きてるよ。貴様の性奴隷のヘン・ピツィラダは生きてるんだよ」毎日毎日、馬鹿にすることを止めなかったこの下衆野郎。
周囲には仲のいい゛兄貴分″で「こいつ、俺がいないと悪い事ばかりしやがる。この前だって牛の頭をハンマーで叩き付けて気絶させたばかりだろ。教育してやらないとな」この下衆が巨人退治で勲爵を得てからはこいつの放つ嘘を誰も疑うことがなかった。
しかし、どこに行こうと弟分を連れて行くのは、暴力で従えた内気な少年に無理に咥淫させるため、舌の動く咥内に射精をするめだった。
普段から彼は少年に口を開けたままにし、舌に爆ぜた己の子種が蠢く白濁とした命の泉を眺めるのに夢中であった。それが偽りを述べない時の下衆の真の姿だった。
少年、それはヘン自身だった。殺したい気持ちは抱きつつも、殺せない。自刃を試みるも母に止められその経緯を話す訳にはいかなかった。だから、彼は、ヘン・ピツィラダは巨人に、この淫行貴族を売ったのだ。
一際、悦に入ることが出来る解放感の望める崖があると囁いた。下衆は喜ぶ。
美しく碧がかった海が見渡せる林の向こうの崖、吹き抜ける風を避けるために朽ちて倒れた白木に二人で身を寄せた。これが最後の苦しみだと陰茎を口に含み、三メートルの兵士たちが来る気配を悟らせないようにした。
巨人達は殺しに長けている。数百年も血に塗れた歴史に生まれ、抗うために新たに血の歴史を捲る呪われた戦士。
彼等は後ろから現れると、手にしたフックを快感を叫ぶ口に引っ掻けて朽ち木から引き摺りだした。そこから鶴嘴を構えた二人が交互に切っ先を振り落とす。腹や胸を突くと起き上がろうとする。そこへ更に振り落とす。口から顎骨を噛んだフックが動きを封じ、口からは血を吐き、手は護ろうとも外そうとも泳ぐがそれも力が無くなっていく。
最後に巨人は顔を残すなと怒鳴り付け、鶴嘴で跡形も無く顔面を蜂の巣にしていった。よく見ると眼と鼻は形が無くなり鼻腔が露わになっていた。
僕が手を掛けなくても死んでしまった。巨人の仇討ちに遭ってしまったと、その躯に残る残虐性から誰もがヘンの作り上げた悲話を信じた。
持っていた擦り終わりの燐寸を裂孔の穴に投げ捨てる。蝋燭の火は安定して静寂を吸い上げている。
「顔面に鶴嘴で風穴を空けられる気分はどうだったんだい。僕にはわからないけどさ、デュオ・ゾーイア・ペリッタ。無様な最後だって、死ぬ瞬間も射精をしていた気違いだって、墓標にも記録にも書いといてやるから」
ヘンは石台に昇り立ち、嘗て自分を犯してきたデュオの裂孔に痰を吐き掛け、ズボンから無垢な一物を導き出すと、その穴に目掛けて、昨日から膀胱に無理して溜め込んだ小便を滝の様に放った。
闇を輪郭に宿した部屋に弧を描いてオレンジ色の黄金水が、躯の顔面に降り注ぐが、不思議な事にヘン・ピツィラダが放射する黄金は溢れなかった。
まるで、デュオ・ゾーイア・ペリッタが飲み干しているかのように。喉仏が動くかのように。
今日の一言
「 つまりよぉお、この女全部いただいちまっていいってことか!?ウヒャヒャヒャヒャァア!!」