「......ははっ」
大手都市銀行を出て間宮忍は苦笑いをする。融資を断られてこれで3件目だ。所詮、私は前社長にとりいって今の部長の座にいるのだ。そう思うとやるせない気持ちになる。こんなことでは社長に合わす顔がないしなにより自分が敬愛している会長に申し訳が立たない。しかし自分の会社の業績は問題ないはずなのにどうして融資を断られるのか彼女は納得がいかなかった。もしかして藤岡が裏で手を回しているのか......
電車を乗り継ぎ次の銀行へと急ぐ間宮。次で断られたら一旦、会社に戻り報告せねばなるまい。彼女はそう考えた。しかし意外なことに次の銀行ではすんなりと融資の話を受け入れてくれた。詳細は後日改めてということになったのだ。
「そう、とりあえず良かったですね。明日にでもあちらの支店長さんにご挨拶にお伺いしましょうか」
「はい、私もお供いたします」
「宜しくお願いします」
社長室を出た間宮はほっと一息をする。おそらくこれでなんとかなるだろう。当面の義務を果たしふと一里塚の席を見るがそこには彼女はいなかった。
「また外出してるのかしら?小西部長、がんばってるなあ」
一里塚と波香の仲良しさに自分も割って入りたい。そんな想いのある間宮はもっと自分に何かできないか、そんなふうに焦っていた。
「部長!」
アルバイトとはいえ直属の部下である小野寺が彼女を呼ぶ。
「簡易版ではありますが生産管理システム、できました!」
「あら、すごい。早速テスト運用してみましょうか」
「はい!」
この一連のやりとりに随分と仕事がやりやすくなったと間宮はあらためて思う。今、思えば昔は何をやるにしても男性社員から疎まれていた。自分が前社長に抱かれて部長の座についた女には誰も従わなかった。と彼女は考えている。たとえ自分が会社をよくしようと思っていてもだ。なので波香が来る前の間宮は余計なことはせずにただ言われたことだけをやっていた。部長でありながらも権力は持たず傀儡的な部長だったのだ。当時、自分が抱かれた社長を盾にすればある程度は自分のやりたいようにできるではあろう。そんなふうにも思いはしたがそこまで意欲的に仕事をする気にはならなかったのである。
そもそも彼女は自分の上司だった経理部長と課長から過酷なパワハラとセクハラを受け、当時の社長に相談したところ力になってくれ、そしてその流れで親密な関係になってしまいパワハラ部長課長を追い出す為に間宮を部長に就任させパワハラ部長課長を平社員に降格させて納得がいかないその部長と課長はこの会社を辞めていったのだ。
「でも一番仕事の流れをわかっている小西部長が今、いないんだよね」
「また、どこかに材料の調達にでも行かれてるのでしょうか?」
「どうかしらね。あ!南くん!」
間宮は通りすがりの南を呼ぶ。
「えっと、ケニーへ行くって言ってましたよ。午後には戻るって言ってました」
「ケニーへ?どうして?」
「さあ?わかりません」
◇
「し、失礼します」
一里塚はケニーエンタープライズ本社へと来ていた。彼女はケニーの会長、園村会長から呼び出しを受けていたのである。
「やあ、よく来たね。小西君。忙しいところを呼び出してしまって申し訳ない」
「いいえ、私にご用っていうのはどういったことでしょうか?」
「うん、こういうことは電話じゃなく直接本人に伝えたほうがいいと思ってね」
「はい」
「神崎さんのところで随分と頑張ってるそうじゃないか。部長に就任したんだってね」
「はい、なぜか私が......わかりませんが」
「うんうん......言いにくいのだがね」
「はい?」
「ウチに戻ってくる気はありませんか?」
「ええ!?今ですか?」
「うん、もちろん、今、神崎さんのところで受けている待遇はそのままというかそれ以上の待遇を約束しよう」
「ええ!?私がケニーで部長!?」
「うん、どうかな?社長である息子の了解は貰っているというか息子が提案してきたのでね」
「ええ!?社長が?どうして私なんかを......私なんて一介の女子社員ですよ?」
「いやいやキミは報告によるとね。交渉・折衝力が高くて事務処理能力も早く間違いも少ない。そしてなんといっても元気があって明るく清く正しいイメージがあり周りの人も仕事をやる気にさせる能力があるそうじゃないか」
「え?えええ~~~~!?」
「そんな有能な社員をいつまでも外部に貸しておくのは勿体ないのでね」
「......はぁ」
「今すぐ返事をくれとは言わない。一週間後くらいには返事をくれないかい?」
「......はい、わかりました。でも嬉しいです。そんなに私を評価していてくれてたなんて。ありがとうございます」
「いや、逆にそんなキミを今まで平社員にしたままでいたのはすまなかったね」
「いえ!とんでもないです」
「じゃあ、良い返事を待っているよ」
「はい!」
一里塚はケニーを自分の運転する神崎電子の社用車、軽トラックに乗り後にする。彼女の顔からはニヤニヤが止まらなかった。自分の仕事ぶりを評価してくれるのは社会人なら誰だって嬉しいものである。
「うんうん、そっかそっか」
彼女はトイレと水を飲むためにある公園で休憩を取ることにした。コンビニで何か飲み物を買ってトイレもそこで借りることも出来るのだが倹約家である彼女は公園を選ぶ。
トイレを済ませ誰もいない砂場のど真ん中に設置されている水飲み場で水を飲んで一息つくと彼女はスマフォを取り出し電話をかける。
「あ!杉本さん?今、大丈夫?」
『うん、大丈夫よ。今、ベッドにいるからかけなおすね』
「あ!ごめんね」
一里塚は車に戻りしばし待つ。するとすぐに波香から電話がかかってきた。
『それでどうしたの?』
「うん、無事に生まれたんだってね。おめでとう」
『ありがとう』
それから一里塚と波香は他愛のない話を30分ほどした。
「あ!ごめん、私、今、外なんだ。会社に戻らないと」
『あらそうなのね。ごめんね、長話ししちゃって......退屈でさ』
「あはは、それでいつこっちへ戻ってくるの?」
『来週には戻ろうと思う。それで赤ちゃんを背負って出社するつもり』
「ええ~!?こっちは大丈夫だよ?ゆっくり赤ちゃんの面倒を見れば?」
『そうもいかないわよ。突然、消えたりして迷惑かけちゃったからね』
「......もう、何かあったら私に相談してくれればいいのに」
『まあ......ね。相談できたらしてるんだけどね』
「え?」
『ううん、なんでもないわ。それより何か私に言いたいことあったんじゃないの?』
「え?う~~~ん、別になんでもないよ?ただ杉本さんと話がしたかっただけ」
『そうなのね』
「うん、じゃあ、私会社に戻るから切るね」
『は~い』
波香との会話を終え、一里塚は園村会長の誘いを断ることを決意する。自分の仕事ぶりを一番最初に評価してくれたのは波香だと思うからだ。女性社員を部長にするのは中々できるものではない。それをなんの躊躇もなく波香は一里塚を部長に任命した。正直のところ波香が自分を評価してくれたのかどうかはわからないが一里塚は波香の信頼を裏切りたくはないしこれからももっと波香と仕事をしたいと思っている。先ほどの電話では赤ちゃんの面倒をみればと口ではそう言ったが早く波香の顔を見たいし一緒に仕事がしたかったのであった。
◇
「えっと、その汐海さん」
「なんだ南殿?」
「その後、彼氏とはうまくいってるんですか?」
汐海の担当するラインに材料を持って来た南は彼女に声をかけた。沖縄から帰って来たものの何か少し元気がないように思えたからだ。
「いや、別れたぞ?もう一週間以上連絡も何もない」
「え!?そうなんですか」
「うん」
「......」
「なんだ?どうした南殿?」
「じゃあ、今夜俺と食事にでも行きませんか?」
「私は構わないが......」
「よし!決まり!どこかいいとこ予約しときますね!」
「いや、そんな高いところでなくとも私は構わないので......」
「......やっぱり汐海さん、元気ないですね?何かありました?」
「うん、いろいろあったぞ?聞きたいのか?」
「聞きたいけどいいんですか?聞いちゃって?」
「私は構わないぞ?」
「はあ」
「それよりも私から南殿に聞きたいことがある!」
「なんでしょう?」
「南殿は赤ちゃん欲しいか?」
「はい?」
南は耳を疑いもう一度汐海に聞く。
「南殿は赤ちゃんは欲しいのかと言っている!」
「突然ですね。汐海さんは欲しいんですか?」
「欲しいぞ!ただ作る相手がいない!南殿にぜひお願いしたい!」
「なんなんですか、元気じゃないですか」
汐海の言葉にちょっと噴き出した南はそう言う。そして真面目な面持ちで汐海に問い返す。
「......それは俺と結婚して欲しいってことですか?それともただ単に赤ちゃんが欲しいってことなんですか?俺の事はどうでもよくて?」
「うぐっ!......す、すまない、また私は南殿を傷つけてしまったか?」
「てことはやっぱりただ赤ちゃんが欲しいだけなんですね......」
「......すまない。でもでも私の事を深く知っていったら南殿も私から離れていってしまうと思うのだ......だから赤ちゃんだけでも......私に残して欲しい」
「何をバカなこと言ってるんですか?それって俺が汐海さんとHして子供を作らせて俺とはそれっきりになるってことですよね?」
「そ、そういうことになるのだろうか」
「そうですよ。俺はそんなことしたくないです。Hして子供が出来たらちゃんと汐海さんと子供の面倒をみていきたいです」
「......でも私のことを知ったらきっと南殿も......」
「なんなんですか?その汐海さんの事って?」
「言いたくない」
「はあ、そうですか......どうしても?」
「どうしても言いたくない。もうあんな心が折れる思いはしたくないのだ。彼との別れの時も一週間泣きっぱなしだった」
「......言いたくないなら言わなくていいですよ......俺と一緒に子作りをしましょう!」
「いいのか?南殿?」
「俺は構いませんよ!」
「ありがとう!」
「じゃあ、早速、今日は食事の後、俺の部屋に来てください!」
「わかった!」
「じゃあ、お互いに仕事が終わったら一緒に帰りましょう!」
「わかった!」
汐海と南は互いにその後、全力で仕事を終わらせ定時よりも一時間過ぎたところでそれとなく会社の門で落ちあい食事へと出かけて行く。
「今日ほど仕事終わりが待ち遠しいと思ったことはないわ」
「お、俺もです。話し方変わってますね?」
「イヤ?」
「イヤじゃないです」
「じゃあ、行きましょうか」
「はい!」
この後、2人は南の探した高級レストランで食事を済ませ南の住んでいるアパートへとなだれ込んでいく。
「お風呂お借りしてもいいかしら?」
「はい、どうぞ」
汐海は風呂場で服を脱いでいく。しばらくして脱衣所の扉がガラっと開いて南が入ってきた。
「キャッ」
「ごめん。なんか我慢できなくて」
そう言って南は半裸の汐海を後ろから抱きしめる。
「......南殿」
「はじめて見た時からずっと好きだったんだ」
後ろから抱きしめながら南はそうつぶやく。汐海はその言葉にビビビと全身に雷に打たれたような衝撃を感じ振り向いて南の顔を両手で優しく掴んでそっと唇にキスをした。
「ありがとう。私を好きになってくれて......」
南もその言葉にいてもたってもいられず汐海の唇に再度吸い付いて自分の舌をねじ込んでいく。
ぴちゃぴちゃくちゃぴちゃ
いやらしい音が脱衣所の中で響き渡るが2人は一向に気にせず無我夢中で相手の口の中を貪っていく。
「......はあ、一緒に入る?」
汐海は南の目をじっと見つめ南の手を取った。
「はい」
その後二人は正面を向きお互いの身体をボディソープで洗う。お互いの大事なところまで。そして一通り終わった後、汐海はそっと南を掴み手で扱き出した。
「あ、あう」
「気持ち良いですか?」
「はい、とても」
「そうですか......あむ」
「う、うわあ!汐海さんの口の中......暖かい......気持ちイイ!」
汐海の舌は南の裏筋をさすり南をしゃぶる速度は段々と早くなっていく。
「うううう、もうダメだ!」
ぶぱああ!
汐海にしゃぶられたまま南は射精してしまった。
ごっくん
南を見つめそのまま一気に飲み干す汐海。
「ベッドに行きましょう?」
「はい」
汐海に促されるまま二人とも全裸のままお互いにバスタオルで軽く全身を拭きあうとそのままベッドへとなだれ込んだ。
ギシッ......
「ん、はうぅ」
南は汐海に抱きつくと唇に吸い付くと同時に左の乳房を鷲掴みにし優しく揉みしだいていく。
「......ぷはっ.......はあぁん!」
そして南は汐海の乳首にむしゃぶりつき左手でその位置を確認すると優しく慎重に汐海の中に挿入していく。
「う、う!」
「はああ!」
最初こそ優しく挿入しゆっくりと出し入れをしていたが時がたつにつれそのスピードは増していく。
ずちゅくちゅ!くちゅ!
その音が激しさを増してやがて二人は絶頂を迎える。南は果てると汐海の胸の中に落ちて行った。それを汐海は抱きしめると不敵な笑みをこぼす。
(どうせこの男も私がクローンだと知れば離れて行く。でもいいのだ。子供さえ出来てしまえば私はそれでいい)
___汐海はそんなことを考えながら窓の外から見える満月を見つめやがて眠りにつくのであった。
(続く)