第107話
「ちょっと刑期は短いような気もするけど過剰防衛での立件は簡単でしたね。宮里警部」
「うむ」
警視庁の宮里警部はパイプの煙をくゆらせしかめっつらをする。新人の刑事はそんな警部を見て頼もしそうに眼をワクワクとさせていた。
「北条香織......家族も親戚も一切ナシ。天涯孤独の......身か」
「しかし警部。人間の手刀であれほどまで人間の頭部をぐちゃぐちゃに出来るもんですかね?」
「......精密検査の必要はあるかもな」
そう言いつつも宮里警部は府に落ちない。北条香織。顔にはまったく見覚えがないがどこかで見たことがあるような気がしてならないのだ。それもそのはずこの警部は同じクローン人間である波香を追っていた。波香と同じ体形の香織に不信感を抱くのは当然のことであった。
「2年前から私が追っている『北条波香』という容疑者がいてな。この娘はどことなく似ている気がしてならないんだ。顔は別人だけどな」
「へえ~。その『北条波香』というのはどんな罪をおかしたんですか?」
「窃盗に暴行傷害罪だな」
「はあ、その北条波香も若い女性なんですか?」
「そうだ。写真あるぞ?見て見るか?」
「はい」
宮里は新人刑事に自分のスーツの内ポケットからしなびた写真を1枚取り出した。
「......へえ、美人ですね。でもどこか表情が悲しげだな」
「うむ」
宮里はパイプを咥えふと窓の外を見た。そしてその目は必ず北条波香は自分が必ず捕らえてみせるという執念の眼差しであった。
宮里と新人刑事がいる建物から少し離れた場所には留置場があった。
「敬一郎さん......私のことは忘れて、誰か他にいい人と幸せになってください」
見張りの警官が見守る中、香織と谷は面会を果たす。2人の間には特殊なガラス1枚で遮られていた。
「何をバカな。5年くらいあっという間だよ。その間、好きなアニメDVDでも見ながら過ごす......そしてたまに香織のことを想いながらオナニーでもするさ」
「敬一郎さん......うっうっうっ」
「香織、泣かないで。前にも言っただろ?キミの変わりはいないんだよ?」
「うっうっうっ」
香織は号泣する。
自分はもともと複製された存在。それを自分の変わりはいない。こうきっぱり言ってくれる谷こそ自分にとって唯一の存在なのだ。
「け、敬一郎さん!愛してますぅ~~~!!」
香織の大号泣により見張りの警官に制止され二人の面会時間は終了となった。
谷敬一郎。彼はエロゲマスターである。エロゲー攻略により培われた彼の女性に対する扱いは相当なものだった。現にこうして香織の身も心も完全に谷によって掌握されている。
おそらく香織は今後も谷の言う事ならなんでも聞くだろう。
そしてこの事件は波香達にも衝撃を与えた。香織が最近顔を見せないし会社にも出社してこないので波香が電話をしたが連絡がつかない。しばらくして香織の代わりに谷が会社に連絡して事の経緯を説明したのであった。
社長室では香織の今後の処遇を社長である神崎恵美を中心に話し合っていた。
「んー......どうしましょう?」
恵美は波香の方をチラチラと見るが波香は赤ん坊を背負い、腕を組み足を組み椅子に座りじっと目を閉じていた。
「今までの香織さんの会社への貢献に応え出所されるまで待ちましょうか?」
「いいえ、それはできないわ」
恵美の発言が終わるなりいなや波香がそう言う。
「会社規定には民事・刑事事件をおこし会社を1年間以上欠勤する場合、速やかに解雇とする。とある」
「で、でも会長」
「例外は認められない。そうでしょ?」
波香は恵美をはじめ一里塚、間宮の顔を見渡した。
「......」
みんなは視線を落としどよんと暗い雰囲気が社長室の中にたちこめる。社長室はしばらくの間静寂に包まれた。
「......でも、見捨てるわけじゃない。かおりんは一躍、刻の人となった。世間は彼女を知っている。『やりすぎ美人OL』として大衆の認知度は高い。これを利用する」
「何を言って......何をするんですか?」
一里塚は波香の言っていることがよくわからないのでそう質問をした。
「神崎電子の関連会社を作り、かおりんをそこの社長に就任させる。宣伝はマスコミが勝手にやってくれるでしょう。広告効果は抜群で宣伝費はタダ」
「元犯罪者が社長の会社に仕事なんか発注しますかね?」
間宮はメガネをくいっと人差し指で持ち上げるとそう言った。
「犯罪内容によるけど今回の事件に関しては同情の世論のが多い。大丈夫でしょ」
「神崎グループ系列会社は奇をてらった人事が多いとか記事にされませんかね?」
「そうね、その辺は喜一郎様に確認をとるわ。多分、喜一郎様なら笑って快諾すると思うけど」
◇
「お~い、茶だ!茶を持ってこい!」
スポーツ新聞を読みながら北条繁一はわめく。そのスポーツ新聞には『やりすぎ美人OL逮捕』の記事がのっていた。
「ハッハッハ、香織の奴ととっとと絶縁しといてよかったわい。北条の面目を潰されるとこじゃった」
「お茶をお持ちいたしました」
いかつい軍服を来た男性が繁一に茶を持って来た。
「なんじゃ大河原か。5号(伍代沙織)はどうした?」
「それが病に伏しております」
「病?クローン人間がか?ははっ、あやつめ茶をいれることしかできんくせに病にはなるのか?はっはっは、役ただずめ!」
びちゃ~
そう言って繁一は自分の飲んでいた茶を大河原にぶっかける。
「......」
「そうじゃ、大河原、アレはどうなっておる?」
「は!もうすぐ完成いたします」
「もうすぐもうすぐってそればかりではないか。いつもいつも!」
繁一は新聞を丸めて大河原にぶつけた。
「戦国の世で北条は後れをとったがこと現代においては北条家が覇権を取るのじゃ急げ、大河原」
「ハッ!!」
大河原は繁一に一礼をするとその場を去る。
「ワシのフランソワのクローン化は見事に成功した。だが、これはあくまでも序章にすぎん。のぅフランソワ」
繁一は自分の後ろの暗闇に向かってそうつぶやく。するとその闇から美しい女性が姿を現す。
「はい、全てはお館様の仰せのままに......」
美しい女性が繁一の傍によりそうと繁一はその美しい女性の乳房を荒々しく揉みしだく。
「あっああっ」
びりびりびりっ
繁一は美しい女性の服を全て破ると押し倒しその美しい女性の唇を吸いまくる。
ぶちゅぶちゅぶちゃ
そして右手は胸を揉みしだいたまま片方の乳首を吸い出した。
ちゅくちゅぱっちゅく
「あんっあっんはっ」
美しい女性は恍惚の表情を浮かべながら繁一に為すがままにされている。やがて繁一は自分のモノを取り出すと容赦なく美しい女性の膣にそれをぶち込む。
ぬぷぬぷぬぷぐちゃ!!
「ああんっ~~~!!」
「73号は子を孕んだという。お前も孕むのじゃ!!ワシの子を!!」
繁一の腰は高齢を感じさせないほどのスピードでピストン運動を繰り返す。そのあまりの激しさに美しい女性は失神し気絶してしまうのであった。
「はっはっは、ワシもまだまだイケるな!」
美しい女性が失神しているのを見て繁一は満足そうにそう言った。
◇
「なあ、南殿」
「なんだい汐海」
「私も香織殿みたいになったらどうする?」
「そんなふうにはさせないよ。汐海は俺が守る」
「はは、南殿が私を?」
「なんだよ?おかしいか?」
南と汐海は工作機械に材料を投入しながらそんな事を話す。
「新しい工具持って来たよ~。あれれ?お邪魔だったかな?」
そこへ美菜が工具を持ってやって来た。南と汐海がくっつきながら仕事をしているのを見てそう茶化す。
「いやいや別にお邪魔ではないぞ?」
「うん、そうだよ、大丈夫」
「はは、そうよかった。じゃあ、私は行くね~みんなにも工具、配らないと」
「ああ」
美菜は工具を置いてすぐ別の場所へと去って行った。
「美菜さん、なんか張り切ってるね」
「ああ、まあ、いろいろあってな。彼女なりに吹っ切れたのだろう。それよりも南殿」
「なんだい?」
「今晩お邪魔してもよいか?」
「お!積極的だね」
「うむ、無論そのつもりだ。今夜も私を可愛がって欲しい」
「おう!」
二人はこの会話以降、会社で言葉を交わすことはなかった。定時で帰るために全力で仕事をしたのである。
二人は会社からちょっと離れた公園で待ち合わせることにした。南よりも先に仕事を終えた汐海がベンチに座って待つ。
「ううん、今、来たところなの」
「今日の南殿、かっこいいね!」
「うん、好きだよ!好き、好きなのっ!」
「今日は帰りたくない」
「思う存分イカせてください」
例によって汐海は会話シュミレーションをし始めた。だが幸いこの公園は他に誰もいないので変な目で見られることはない。そしてその言葉が100を超えた時、汐海に見覚えのある顔、2名を先頭に約10名ほどの若い男性がぞろぞろと汐海の前にやってきた。
「おう、じゃあ、俺らが後でたっぷりとイカせてやるよ。いくらお前でもこの人数は無理だろ」
「お前達か、小野寺殿の......」
「さあな、おとなしくしな。そうすれば痛くしないでやるぜ?」
「ん?お前達とやっても私は何も感じないと思うぞ?」
「やってみないとわからないだろ!」
そうチンピラは汐海の腕をがっと掴んでそう叫んだ。
「私に触れてもいいのは南殿だけだ!」
汐海はそう叫ぶと捕まれた腕をくるんと回転させた。すると汐海の腕を掴んでいた男は簡単にくるんと転んでしまう。
「一人ずつではダメだ。みんなで一斉に取り囲まないと!」
4,5人のガタイの良い男が汐海を取り囲み一斉に襲い掛かった。
シュバッ!!
汐海はそれをジャンプ一番で交わした。
ごんっ!!
お互いの頭をぶつけ痛がる男たちを尻目に汐海はその場を逃げ出した。いくら自分でも10人を相手にするには荷が重いと判断した為である。
「逃がすな!!」
汐海は逃げながら厄介なことになったと考える。ここでこの男達を撃退したとしてもまた私を狙って来るだろう。かといって殺すわけにもいかない。そんなことをしたら香織の二の舞になってしまう。彼女は交番か警察署へ逃げ込むことにした。
「く、くそ!はええな、あの女!」
汐海が後ろを振り返るとどうやら吹っ切ったらしくチンピラの姿は一人もいなかった。彼女はこのまま交番へと向かう。ところがその交番には宮里警部と新人刑事か偶然にも訪れていた。そんなことなど知らない波香そっくりの汐海はその交番に入り中の警官に事情を説明する。すると裏側から宮里が現れ汐海の左手にカチャリと手錠をかけた。
「え!!」
「ゲームオーヴァーだ」
驚く汐海を見て宮里は勝ち誇ってそう言うのだった。
(続く)