「さて、そろそろ自分で蒔いた種を回収するとするかのぅ......大河原」
「ハッ」
北条繁一はそう大河原に言い放ち茶をすすった。
「CA(Clone Annihilation)作戦発動じゃ。......4桁が負けることは絶対にないのじゃな?」
「ハッ!計算上はありえません。......ですが試験を兼ねてまずは手始めに身近の者から......」
「よし、こないだここに来た者からじゃのぅ......?」
「ハッ」
「クックック、波香よ。いや73号よ、お別れの時が来たようじゃ。お前は確かにフランソワによく似ておったわ。だが少し自我を持ちすぎじゃ......のぅフランソワ」
繁一がそう言うと奥からおずおずと波香そっくりの女性がそばに寄ってくる。
「はい、お館様の仰せのままに」
◇
「警部!北条香織の鑑識の結果が出ました!」
「おう、どうだった?」
宮里警部が休憩室でコーヒーを飲み加熱式のタバコを吸っていると新人刑事がかけよってきた。あわてて宮里は吸いかけの加熱式タバコをポケットにしまう。この休憩室は禁煙だからだ。
「北条香織......人間には違いはないのですがただ......」
「??」
「骨の強度が通常の人間の3倍......あるそうです」
「ほぅ......それは」
「ドーピング検査もしましたが結果は陰性でした」
「ふうむ」
「それで波香も検査したんですが......」
「......」
「こちらは普通の人間でした。違いは何も。香織と顔以外はそっくりなんですがね」
「そうか」
宮里はふと波香の言った言葉を思い出す。
『たくさんいると思いますよ』
あの言葉はどういう意味なのか。自分と似たような人間がたくさんいるということなのか。人間の複製は日本の法律では禁止されているのでもしそうなら製造元を検挙しなければならない。
「
「はい?」
「日本ではヒトを複製することは禁じられてたよな?」
「え~と、そうでしたっけ?」
「馬鹿、禁じられてるんだよ」
「そうなんですね、てことは北条香織、波香はクローン人間だということですか?」
「その可能性があるな」
「一体誰がそんなことを......何のために」
「まあ、複製された女性を見ると......快楽の為って辺りが濃厚だろうな」
「はあ、快楽ですか。確かに2人とも美人ですしね。スタイルもいいし」
「うむ」
「北条っていう苗字からしてあの財閥で......造られたのですかね?」
「もちろん一番最初に疑うとこだろうな」
「えっと確か当主は『北条繁一』でしたっけ?」
「そうだ、明日行ってみようと思うがお前も来るか?」
「もちろんお供させていただきます」
「さてと」
宮里は鑑識の結果の資料を一通り目を通すとそれを新人刑事に返しコーヒーを一気に飲み干した。そして立ち上がる。
「警部どちらへ?」
「ちょっと北条波香の様子を見てくる。赤ん坊もいるので不備があったらいかんからな」
「犯罪者の赤ん坊なんかどうでもいんじゃないですかね?」
「馬鹿野郎!赤ん坊に罪はないだろうが。そういう考えは改めろ。山辺!」
「あ、はい!すみません!」
頭をぽりぽりと掻く、新人刑事を残して宮里は休憩室を出て行った。
◇
「スースー」
留置場のベッドの上で我が子の寝息を聞きながら波香はいろんなことを考える。この子も育つと私そっくりになるのか。どうしてこんなに寝てばかりいるのか。ほとんど泣かないのでもしかして声を発する器官に障害があるのじゃないかとか。
こつこつこつ
誰かが近づいてくる足音が聞こえてきたので波香はベッドから身を起こしサッと髪を整えた。
「北条さん、様子はいかがですか?」
「宮里警部でしたか。はい、特に問題はありません。すみません大きめのベッドまで用意してもらいまして」
2人は鉄格子越しに会話を始める。
「いえいえ、赤ちゃんがいることですしね。それにしても随分と静かな赤ちゃんですね」
「ええ、おかげで随分と楽です。......やっぱり、よその赤ちゃんと比べて静かですよね?」
「そうですね、ちょっと静かすぎますね」
「......やっぱりどこかおかしいのかしら......」
「......もしよろしければ赤ちゃんをお預かりしていただければ健康診断いたしますが?」
「お願いしますと言いたいところですけどそれは辞退させていただきます」
「なぜですか?」
「この子は私の目の届くところに置いておきたいのです」
「ん?どうして?」
「なんとなくなんですが目を離したらどこかに行ってしまうような気がして」
「なるほど......検査を......いや失礼」
ここで宮里は『検査を受けたがらないのはあなたのクローンだと我々にわかるからですか?』と言う言葉を濁す。その言葉はあまりにも的外れすぎるからだ。
「明日、北条繁一のところに行ってみようと思いますがあなたとの関連性はありますか?」
「はい、父.....と言える存在でしょうか」
「ん?その言い方は......何かあるのですか?」
「まあ、いろいろ。家出したり勘当されたりとかですね。あはは」
「あなたが我々に拘束されているのをお父様に伝えたほうが良いですか?」
「ん~~、別にどちらでも良いです。身元引受人はこの子のパパがいますので」
「なるほど。では他に何か不都合があったら係の者にお伝えください。あなたの処分はもう少し時間がかかるようなので」
「わかりました。ありがとうございます」
◇
「んーなんだか寂しくなったねえ」
美菜は時哉と小野寺に向かってそう言いながら小野寺の作ったおかずを口に運ぶ。
「まあ、それでも3人いるからいいんじゃないか?俺だって昔は一人で晩飯食ってたんだし」
「私もそうだったっ」「私も......実家は遠いので高校の時からずっと一人暮らしでしたね」
「それを考えれば......一緒にメシを食える人がいるってのはいいね」
「でも、時哉さん。昔は社長(神崎恵美)と付き合ってたんですよね?教師と生徒という立場でありながら。それでも夜は一人だったんですか?」
「うぐっ、そうか小野寺はそのことを知っていたんだよな。ハハハ.....まあ、たまに外食はしたかもしれなかったけどほとんど一人だったよ。夜メシは」
「へえ~そうなんですか」
「生徒と教師......禁断の愛か......いいねっ!」
「......美菜、やめてくれ」
「でもでも社長さんは時哉さんを会長(波香)に奪られちゃってなんとも思わなかったのかなあ?」
「そのことはもう解決したんだ。美菜、掘り起こさないでくれよ」
「ふぅん、なんだかわかんないけど。会社でもあの2人は仲が良かったし円満解決したんだねっ?」
「うん、まあ、そういうこと」
「ところで会長はいつ帰ってくるの?」
「う~ん、わからないなあ」
時哉は美菜にそう返答しみそ汁を口に運んだ。
◇
「......ということがあったのだ。ドタキャンしてすまなかった」
ベッドの上で賢者タイムに入っている全裸の汐海と南。ここは南のアパートである。
「いや、いいんだよ。それより無事でよかった」
南はぎゅっと汐海を抱きしめる。汐海は南に友人のストーカー達に追われたということだけを話したのだ。
「しばらくの間、警察の尾行がつく。南殿にも煩わしい思いをさせてしまうかもしれん」
「いや、いいよ。俺は後ろめたいことはないし、しないし、全然問題ナッシング」
「そうかそれならいいが」
チラッと上目遣いに南を見る汐海。2人の身体は密着しているので汐海は再び南のモノが大きくなっていくのを感じていた。
「ん?南殿、おおきくなってきたな。私はウエルカムだぞ?」
汐海がそう言うや否や南はちゅくっと汐海の乳首に吸い付く。
「あっ、はぁ!」
その声に南はますます興奮し乱暴に汐海に挿入する。
「はあぁぁぁん!イ、イイイイ~~~~!!」
◇
その女性は180センチはあっただろうか。日焼けした黒い肌。頭髪は金髪。そして特筆すべきはその鍛え抜かれた肉体美。そんないでたちは都心の人の多いところでもいやがおうにも目立つ。その女性に気が付いた若きサラリーマンはその女性に駆け寄り自分のバックから手帳とボールペンを取り出しこう言った。
「総合格闘家のジェニファーさんですよね?サインください!!ファンなんです!!」
「ファット?ノーノーワタシジェニファージャナイヨ」
「え?そうなんですか?すみませんでした!」
人違いだったことに気づき恥ずかしそうにその場を立ち去るサラリーマン。その姿を見送る女性はペロっと下を出した。そしてこう思ったのだ。(今の男性はなかなかおいしそうだったな)と。そしてその女性はのっしのっしと時哉達のいるマンションへと確実に歩みを進めて行く。
ぴんぽ~ん
その女は玄関のチャイムを鳴らした。
「は~い、どちら様ですか?」
小野寺はカメラ付きのインターホンでその女性の姿を確認するとそう問うた。
「ホウジョウナミカサン、ミナサン、シオミサンノシリアイデ~ス。アソビニキマシタ!」
その言葉を聞いて小野寺はピンと来る。何か特殊な事情を持った人なのだと。
「少々お待ちください」
小野寺はそう言うと時哉のいるリビングへダダっと駆け込んでいく。
「時哉さん時哉さん!変な人がきました!」
「変な人?」
「とにかくカメラで見てもらっていいですか?」
小野寺にそう言われ慌ててインターホン付きのカメラのある玄関先まで時哉は走った。
「......この人は知らないぞ?でも、どこかで見たことあるな......こいつは女子総合格闘家世界チャンピオンのジェニファー・ロドリゲスだ!」
「え!?そんな人がここになんの用ですか?」
「わからない......聞いてみよう。......あのご用件は?」
再び時哉はカメラに向かってボタンを押しながらそう話した。
「ダカラアソビニキタンダヨ?」
そこにちょうど風呂から上がった美菜が通りかかった。全裸にバスタオルを巻いて。
「どうしたの?」
「あ、美菜。この人知ってる?」
時哉は美菜にそう聞く。すると美菜はいぶかしげな顔をしてカメラを覗き込んだ。
「ん?......知らな~い」
「そうか、なら関わらないほうがいいな。......すみません、誰もあなたを知らないそうなのでおひきとり願えますか?」
「......イヤダネ」
バキャ~~~~ン!!
「うわあ!」「きゃああ!!」
その女性はドアを蹴破って部屋内に侵入してきた。その吹き飛ばされたドアが時哉と小野寺に直撃する。
「時哉さん!!明日香ちゃん!!......くっ!!な、なんなのっ!!」
「オマエハ......37ゴウダナ。ズイブントフルイ......ワタシノテキデハナイガ」
「なっ!!私を番号で呼ぶなあ!!」
美菜はそう言い自分の身体を纏っているバスタオルがはだけるのも構わずにその女性の右腕に飛びつこうとする。美菜、お得意の飛びつき腕ひしぎ十字固めだ。
ガシッ!!
だがその女性はわざと美菜に右腕を取らせて左手で美菜のクビを絞める。
「ぐ、ぐえええ!!」
「フフフ、サア、モットアソボウヨ?」
(続く)