一人の若者が防波堤の上に無造作に置かれているテトラポットに腰掛けてペットボトルの水を飲んでいた。
「はあ、昨日の大貫さん・・・ええ、カラダしとったなあ」
若者の目はトロンとしていた。
「はあ、また抱きたいわー」
若者が昨日の情事に思いふけっていると
「こうちゃあああーん!」
一人の若い女性が駆け寄ってきた。
「お、おう!小百合ー!」
「はあはあ、ハイ!これ今日のお昼のお弁当!」
「お、おう!いつもわりいな」
「ううん、来年結婚したら毎日作るからね。今から練習しとかないと!」
「お、おう!そだな!」
「・・・ねえ?」
「あ?」
「昨日、大貫さんとこにマグロ届けに行ったの?」
「あ、ああ!行ったど」
「で?」
「で?ってなんだや?」
「それだけ?」
「ああ!上がってお茶さ、いただいたけんどもそれだけだや」
「へー」
「なんだ?何か疑ってるん?」
「ううん、あんだけ綺麗な人だからちょっと心配になって」
「わはは。何もなかろうもん。俺はお前だけや」
「・・・うん、こうちゃん、好き」
「ああ、俺も」
2人はひと目もはばからずブチュっとキスを交わした。
◇
ちょうどその頃。
「はあー、漁を教えてくれると言ってくれたけどよく調べたら漁ってなんだかキツそうね」
その女は最近新調したスマフォ、マイサンダーフォン20XX(アストディアラー仕様)を手にしながらそう独り言を言った。
けだるそうに畑道を歩いていると畑作業をしているおばあちゃんから声をかけられた。
「あんたぁ、見ない顔だな?」
「こんにちは。ええ、最近この辺にきましたの」
「おお、そうなんかえ。・・・お!サブちゃん!」
おばあちゃんはその女の後ろを歩いていた30代と思われる男性に気づき声をかけた。
「やあ、花枝さん。おはよう」
「おはよ!今から松茸取りに行くだか?」
「ああ、行ってくるよ」
「歩合の振り込み、忘れんでな」
「ははは、忘れないよ。ごまかしもしないし。」
「頼むで。あんたのこと信用してるでな」
「ああ、任せとけ」
おばあちゃんと30代の男の会話が終わるなら否やすかさずその女は男に声をかけた。
「ちょっとあなた」
「ん?俺?」
「そう、あなた。・・・あなた地元の人?」
「いや?俺は西の首都から来た業者だよ」
「ふぅん」
「で、あんたは?」
「私はこういうものです」
その女はジャージの胸ポケットから名刺を取り出した。
「・・・フリーランス・
「いいえ」
「は?フリーランスってなんなんだ?」
「・・・要するになんでもするってことです。私を松茸狩りに連れて行ってください」
「なんで俺が!断る!」
「まあ、そう言わずに・・・あん!」
女はおもむろに男の手を取ると自分の胸に押し付けて喘ぎ声を上げた。
「な!何を!」
「ちょっと!おばあちゃん、おばあちゃん!あの人、私の胸をいきなり揉んできましたよ!」
女はさっきのおばあちゃんのところに行ってそう話した。
「サブちゃん!あんだなんてこと!」
「わあーー、俺は何もやってねえ!その女が勝手に!」
「わあああんん、この人がっ!この人がっああ~」
女はいきなり泣き出した。
「サブちゃん!」
おばあちゃんは物凄い形相で男を睨んでいる。
「・・・なんで俺がこんな目に。・・・おい、そこの女。連れってってやるから!」
「ぐすっぐすっ・・・ほんとう?」
「ああ!・・・ったく子供かよ。俺は山岡三郎よろしくな!」
「うん!よろしく!」
「ああ、えがったえがった。・・・あんたら、ながよくな」
「うん!おばあちゃん、ありがとう!」
女はそう言いながらてくてくと男の後に続いて山道に入って行った。
◇
「・・・てなわけでだな。松茸ってえのはそういう調理法もあるんだ。うめえぞ?」
2人で松茸を狩りながら男は得意そうにウンチクを語っている。
「へええ。お詳しいのね」
「こんなの山の男ならシキジョーだよ。シキジョー」
「ね?これは?」
「ああ、それは毒キノコだな。・・・それはあまり触っちゃダメだ。痒くなるぞ?」
「あら、そう」
女は残念そうにそのキノコを手放した。
「・・・さて、もうこのぐらいでいいだろう」
男は2人で狩った松茸を見てそう言った。
「・・これでどれくらいになるの?」
「ざっとこんなもんだな」
男は両手を広げた。
「10万?」
「バカ!桁が違うよ。」
「そんなに!」
「ああ。・・・これをどこへ持っていくかというとだな。・・・おっとっと。これ以上は言えんな」
「・・・」
「・・・まあ、都心に近ければ近いほど高く売れるというこっちゃ。それも鮮度をなるべく高くしてな」
男はそう言いながら帰り支度をはじめた。
「あ!そうだ。タダ働きもなんだからこの中で2,3本いいやつを持ってっていいぞ」
「え?ほんとう?」
「ああ」
「・・・でも、私はこっちの松茸のほうがいいかな」
女はそういうと男の股間の松茸に手を伸ばしさすった。
「・・・おあ!」
「・・・あなた、恋人はいるの?」
「いない。俺の恋人は松茸だ」
「あらそう、じゃあ、誰にも気をとがめることなくできるわね?」
「・・・ああ」
女は男のズボンをパンツごとずりおろした。
びょん!
「まあ、なんて立派な松茸なんでしょう!」
女はそう声をあげた。
ドカッ!
そしていきなりその松茸を思い切り蹴り上げた。
「ぐああ!」
「・・・さっきから偉そうにしやがって!おとといきやがれ!」
怯んだ男の顔面に膝蹴りがもろにヒットする。
「ぐぼあああああ!」
バタン!
男はきりもみ回転しながらうつ伏せに倒れこんだ。
「シキジョー?ふざけやがって!・・・それならこいつと結婚式でもあげやがれ!」
ぐちゃ!
女はさっきの毒キノコを拾い男の肛門に勢いよくぶち込んだ。
「ぎゃああああああ!!」
「あーはっはっは!大漁!大漁!」
女は盛大に笑いながらカゴに大量の松茸を拾って下山していった。
「あっはっはは・・・これでもうここには、いられないわね・・・光一さん。さようなら」
◇
一人の若者が防波堤の上に無造作に置かれているテトラポットに腰掛けてペットボトルの水を飲んでいた。
「はあ、大貫さん・・・おせえなあ」