※この作品はR-18です。

もう悪役令嬢なんて言わせない!   作:億田夢人

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第159話

 「ふあああ」

 

 織田信長は起きぬけに大きなあくびをした。午前6時起床。彼の睡眠時間は平均8時間である。

 

 ちなみに彼は朝ごはんをしっかりと食べるタイプだった。彼は一人暮らしだが朝食は必ずサケを焼き、それに納豆と生卵、味噌汁、白いゴハンだ。

 

 「うん!今日もメシがうまいな!」

 

 一人暮らしにも関わらず彼は声を上げた。上機嫌である。それというのも昨日、彼の入部している鳳凰学園剣道部は公式戦初出場にも関わらず決勝では全国大会の常連である剣道古豪の高校を下し全国大会出場を決めたからだ。

 

 彼は無敗であった。地区予選から1度も負けなかったのでる。

 

 「......剣道か。なかなか面白いスポーツだな」

 

 

 ◇

 

 

 ざわざわざわ

 

 ある教室内では北条波哉香を中心とした席の周りには人だかりができていた。

 

 「お前らすげえな!初出場で全国大会出場を決めちまうなんてよ!」

 

 男子クラスメイトがこぞって波哉香たちを称賛している。

 

 「あはは、私は2回しか戦ってないけどね」

 「しかし北条の席の周りには剣道部ばっかだな!北条に徳川に織田に直江に早瀬......」

 

 「私、マネージャーなんだけど」

 

 お茶らけている男子生徒に美樹は反論するが聞いちゃいなかった。そして徳川が口をはさむ。

 

 「マネージャーだって俺達と一緒に戦っているんだ。いつもありがとうな。早瀬」

 「......徳川君」

 

 自分の彼女を気遣うように徳川は美樹をそっと見つめそして微笑む。そんな徳川の態度に美樹は頬を赤らめてしまう有様だ。

 

 「よっ!アツイヨっ!ご両人!」

 

 どっと笑いがおきる。波哉香も茶化されている二人を微笑ましく思うのである。

 

 「おーい!HR(ホームルーム)始めるぞ!」

 

 市ケ瀬教諭の声に教室内の一同はそれぞれの席に着く。

 

 「え~、剣道部!全国大会出場おめでとう!このクラスには5名いたな!ここまできたら悔いのないよう自分の力をだしきってこい!」

 

 「はい!」「はい!」

 

 波哉香と徳川は力強く返事をした。

 

 「先生もな、昔は陸上をやってたんだ。本番で自分の力をどれだけだせるか......全てはそれだ。いい準備ができるように先生も応援している。クラスのみんなもそれぞれに出来ることをしてやってくれ」

 「はーい!」「はあい」

 

 「さ、この話はこれでおしまい。さ来週からは期末テストだ。こちらのほうも皆、悔いのないようにな」

 「はーい!」「うへえええ」

 

 

 ◇

 

 

 「美樹、うちでテスト勉強何日かする?」

 「うん!するする!」

 

 昼休みに弁当を食しながら波哉香は美樹に提案した。そして美樹は嬉しそうに即答する。

 

 「今さ、はまってるコンビニで売ってるチョコあるんだ。それ食べながらやろうよ」

 「波哉香、そんなの食べてまた太らない?」

 

 「それがさ、大会終わったらすごく痩せてて以前よりも体重軽くなったんだよ」

 「え?そういえば......そうかも」

 

 美樹は改めて波哉香の全身をまじまじと見つめる。胸の大きさは変わらないがお腹の部分と腰の部分の肉がすっかりとれていた。

 

 「あれ?波哉香、スタイル物凄く良くなってない?」

 「え?そうかな?自分ではわからないけど......」

 

 「なんかボーン!キュ、ボーン!って感じだよ?」

 「え?マジ?」

 

 「うん、マジ」

 「えへへ、やっぱスポーツはいいね」

 

 全ては栄養士の資格を所持しトレーニングを指導した波哉香の母、波香の賜物である。

 

 「いいなあ、いいなあ、俺も勉強会まざりたいなあ」

 

 直江と供に食堂へパンを買いにいった徳川達はいつのまにか教室に戻っていて波哉香達の話をこっそりと聞いていたのだ。

 

 「じゃあさ、みんなでする?」

 「え?いいの?」

 

 と美樹は聞くが内心はがっかりしていた。波哉香と二人でしたかったのである。

 

 「うんうん、全然いいよ。直江君も来るでしょ?」

 「確かにみんなで勉強会は楽しそうですね。僕も行っていいなら行きますよ」

 

 「うん、決まり!あれ?織田君は?」

 「ああ、あいつは食堂で定食食べるって言ってたな」

 

 「そうなんだ。私、ちょっと行ってくるね。織田君だけ誘わないのはイヤだし」

 「う、うん」

 

 波哉香は食べ終わった弁当箱を片付けいそいそと自分の席を立とうとする。が、美樹の少しおかしな態度が気になった。

 

 「へ?どうしたの?美樹?」

 「ううん、なんでもない」

 

 美樹はふと心配になる。昔のようにまた波哉香と織田が付き合うようになるのではないかと不安になったのだ。

 

 そんな不安な顔をしている美樹の様子を波哉香は不思議に思うのであった。

 

 

 ◇

 

 

 「......うん、うまいな」

 

 織田はA定食を一人で食していた。そこに波哉香が現れる。

 

 「織田君!」

 「あ?んんっ!......え?」

 

 食事の邪魔をされた織田は少し不機嫌そうに一瞬返事をするが波哉香だとわかると慌てて体裁を整えた。

 

 「今度さ、剣道部のみんなでテスト勉強をするんだけど織田君も一緒にしない?」

 「テスト勉強?」

 

 「うん!」

 「いいですね。楽しそうだ」

 

 「じゃあ、決まり!多分、うちですると思うけど......いいかな?」

 「北条さんの家で?」

 

 「うん」

 「いいですよ。でも僕なんかがお邪魔して大丈夫ですか?」

 

 「全然大丈夫だよ~」

 「じゃあ、お邪魔します。宜しくお願いします」

 

 ひとつのテーブルに男女が座り話し込んでいる姿を他の生徒達も見ていた。そしてその中に白石冬男もいた。

 

 「白石!あの二人デキできてるんじゃねえの?」

 

 友達にそう言われて白石はムッとする。この友達は昔から白石が波哉香に好意を持っていることを知っているのだ。

 

 「そんなハズはない。あの2人は同じ剣道部だから......部活のことを話してるんだろう」

 「またまたそんなこと言って」

 

 「僕のほうがチャンスはある!」

 「はあ?ノーチャンスだろ?お前1回ふられてるし」

 

 「でもこないだ、遊園地いったもんね」

 「友達としてだろ?」

 

 「フレンドからラヴァーズへ!さ!」

 「はいはい、がんばんな」

 

 そんな話をしながら白石達は食堂を後にする。そして白石は首を傾げるのだ。波哉香と織田が二人で食堂にいる光景を前にも見たことがある気がしたのだ。しかし織田は最近この学校に来たばかりだしそんなことがあるわけがないと思い返すのであった。

 

 「ところで織田君てさ。剣道初めてだなんてウソでしょ?」

 「いや、初めてですが?」

 

 「ウソだよ。だってあんなに強いんだもん。師匠......徳川君と一緒で一回も負けなかったじゃない?」

 「それはたまたまですよ」

 

 「たまたまねえ......ねえ?敬語やめない?」

 「え?」

 

 「だって同じ歳でしょ?」

 「まあ」

 

 「もっと気さくに話してくれないかなあ?」

 「北条さんがそう言うなら」

 

 「うん、えへへ」

 

 自分に向けられた波哉香の笑顔に織田はクラっと来る。

 

 「まあ、初めてだとしてぇ、なんかコツとかあるなら教えて欲しいなあ?」

 「剣道です......かい?」

 

 「うんうん!」

 「特にないかな。ただ来た相手をぶちのめ......来た剣を防ぎ返すみたいな感じかな」

 

 「来る剣を防ぎ返すかあ。なかなかに難しそうだね」

 「北条さんの反射神経、運動神経を持ってすれば簡単じゃないかな」

 

 「そうかなあ。でも決勝では私、負けちゃったし。織田君と美乃梨ちゃんが勝ってなかったら全国へ行けなかったよ」

 「ん?徳川君は?」

 

 「師匠は......あ、一応、徳川君は私の剣道の師匠なんで私はそう呼んでるのね。師匠は負けるハズがないし」

 

 その波哉香の言葉に織田は嫉妬する。昔は波哉香が認めた男は自分くらいしかいなかったからだ。

 

 「徳川君ってそんなに強いのかな?」

 「強いよ!師匠が負けるイメージわかないもん」

 

 「......へえ~~~」

 「ん?なんか不機嫌?」

 

 「え?いや別に不機嫌じゃないよ」

 「そうだ!今度の勉強会で私、勉強精一杯教えるからさ、織田君の剣道を教えてよ?」

 

 「別に構わないけど。......僕は僕なりの教え方しかできないけどそれでもいいなら」

 「うんうん、それでいい!じゃあ、決まりね!」

 

 再び、波哉香は織田に微笑むと食堂を後にした。織田の目の前にあったA定食のオカズはすっかり冷めてしまったが織田は不機嫌になることもなくまたモクモクと食事を始めるのである。

 

 (......ハヤカ、好きだ......)

 

 しかしその想いは波哉香に向ってまだ口にするわけにはいかない。織田はそう考えた。そして最後に残った味噌汁を一気に飲み干すのである。

 

 

 ◇

 

 

 「おほほほ。久しぶりですわね。北条さ......ハヤカのうちにお邪魔するの」

 

 伊吹は嬉しそうにそう言う。

 

 「そうか。イブキは2回目だっけ?うちに来るの?」

 「遠い昔に行きましたわ......あの時のゲームってまだあるのかしら?」

 

 「ん?あーあれ?確かどっかにあったと思うけど?」

 「なら、勉強が一息ついたらまた勝負しましょう!」

 

 「え~?あれやるの?イブキ、すぐムキになるからイヤだなあ」

 「は?ムキになるのはあなたでしょ?」

 

 「イブキだって!」

 「あなたです!」

 

 「おいおい、その辺でやめとけよ。お前らってなんでいつもそうなんだ」

 

 駅でみんなと待ち合わせて改札をちょっとでたところで波哉香と伊吹、徳川、美樹は合流したのだ。顔を合わすなり早速、波哉香と伊吹はやりあっていた。

 

 「なあ、早瀬。お前からも......ってなんて顔してるんだ?」

 

 徳川は自分の彼女にも波哉香と伊吹の争いを止めてくれるようお願いしようとしたが美樹は美樹でふくれっつらをしていたのだ。

 

 「え?あ!はは、まあ、いいんじゃない?本気でやってるわけじゃないし仲が良いんだよ」

 「え?そうなのか?」

 

 「うん、そうだよ」

 「は?美樹、何言ってるの?私、本気で怒ってるけど?」

 

 「はは、そ、そう?」

 「そうですわ、本気でこの私が子豚ちゃんに怒る気がないですわ。怒ってるのはこの子豚ちゃんだけですわよ」

 

 「私、もうブタじゃないしぃ~」

 

 くるっと波哉香は自分の体を回転して見せた。そして胸を自らの手で揺らす。

 

 「ぼよよよぉ~ん!なんちって」

 

 推定Fカップはあるだろうか。そのグラマラスなボディに一同は目を見張る。慌てて伊吹は自分の胸をバッと両手で覆い隠してしまう。

 

 「え?あははは。イブキ、自分の貧相な身体をそんな必死に隠さなくてもぉ~」

 

 勝ち誇ったように波哉香は言う。

 

 「ぐぬぬぬぬ」

 

 「!!ちょっと徳川君!!何、鼻伸ばしてるの!!」

 「え?伸ばしてない!伸ばしてない!」

 

 「もう!!」

 

 徳川は波哉香の胸をしばし凝視するがその様子を美樹にまんまと目撃されてしまったのだ。

 

 「お待たせしました」「お待たせです」

 

 ほどなくして直江と織田がやってきた。

 

 「おっはー。よし!じゃあ、我が家へレッツゴー!」

 

 全員揃ったところで波哉香が先頭になって歩き出した。その横にイブキがさりげなく並んでくる。その後ろに徳川と美樹が。さらにその後ろを直江と織田がついて歩く。

 

 (そこは私のポジションなのに......)

 

 美樹は自分の彼氏と並んで歩くのに不機嫌な顔をしているので徳川は気になった。

 

 「あのさ、何かイヤなことでもあった?」

 「え?え?ううん、何もないよ」

 

 そんな二人がそういう会話をしているとも気がつかずに波哉香は伊吹と話し出した。

 

 「美乃梨ちゃんも誘ったんだけど今日はお父さんと山へでかけるんだって」

 「......武田さんてもしかしてファザコンじゃないのかしら?」

 

 「ぷっ。そんなこと言ったら美乃梨ちゃんに悪いよ」

 「だって普通、女子中学生がお父さんと出かけるのかしら」

 

 「......そっか、イブキは......」

 

 波哉香は伊吹はお父さんがいないと言うことを咄嗟に口には出さない。

 

 「いいのよ?別に。今日はハヤカのお父さんを自分の父だと思うから」

 「ななななな、何言ってるの?」

 

 「だってハヤカのお父さん、かっこいいし」

 「......そうでしょ?かっこいいでしょ?私の自慢のお父さんだもん。でも残念でした。今日はお母さんと出かけてていないのだ」

 

 「あらそうなの。それは残念ね」

 「はい!残念でしたー!残念賞!アメいる?」

 

 波哉香は自分のポッケからアメを取り出し伊吹に差し出した。

 

 「ぷっ。なにそれ?......いただくわ」

 

 伊吹はアメを受け取るとカラフルな可愛い包装を開きアメを口にいれた。

 

 「......おいしいわ。ありがとうハヤカ」

 「えへへ」

 

 3列目に直江と供に歩いている織田も何か不機嫌そうだった。彼も波哉香と並んで歩きたかったのだ。

 

 「どうしたの?織田君、体調悪い?」

 「いや、別にそんなことはないです」

 

 「......敬語、使わなくていいよ?同じ学年だし」

 

 直江は織田を気遣いそう言う。

 

 「ははは、北条さんにも同じようなこと言われました」

 「そうだよ。みんな仲間なんだしさ」

 

 「じゃあ、直江君、よろしくな」

 「え?は、はい!」

 

 直江は織田の態度が突然変わったような気がしたが多分自分の気のせいだと思うようにした。

 

 

 ◇

 

 

 「さあ!我が家へようこそ!」

 

 波哉香は自分の住んでいるマンションのドアを開くとみんなを招きいれた。そして織田だけはしばし立ちすくむ。あまりの懐かしさに。

 

 「??織田君どうかした?」

 

 波哉香は突っ立って中々部屋に入ろうとしない織田を不審に思う。

 

 「いや、別に何も。キレイなところだね」

 「うん、えへへ。いいでしょ?4LDKだよっ」

 

 波哉香は織田の背中をグイグイ押しさっさと玄関のドアを閉めるのである。

 

 

 (続く)

 

 

 

 

 

 

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