行為が終わった後も城之内さやかと北条時哉は体育倉庫のマットの上で寝転がっていた。
2人ともすぐには担当の授業がないからだ。
「...さっき言ったこと本気なんですか?」
沈黙に耐えられず服装を整えながら時哉はそう言った。
「...ごめん、思わず勢いでそう言っちゃった。忘れて?」
同じく服装を整えながら城之内はそう言う。
「...そ、そんな...そんなのずるいぞ!」
ガバッ!
時哉はいきなり城之内に飛びつき抱き着いた。
「...トキヤ」
「好きなんだ。...昔からずっとキミが好きだった」
「...知ってるよ?」
「じゃあ、なんでこんなことするんだ!」
「...」
「もう離さない!...もうどこにも行かないでくれ!」
「トキヤ。私たち従妹だよ?」
「それがどうした!法律上は従妹でも結婚できる!」
「...でも、私と一緒になるのだったら...北条の名を捨てる覚悟ある?」
「...」
「やっぱりその程度か...」
「ぐぅ...」
「ハイハイハイ。この話はもうナシね。職員室に戻りましょう?」
ガシっ!
いそいそと身支度を済ませその場を去ろうとする城之内の手を時哉は掴んだ。
「待ってくれ!なんで北条を憎んでいるのかどうしても教えてはくれないのかい?」
「うん」
「教えてくれよ!」
「...どうしても話したくない。...今は」
「....ふう。でもキミと一緒にいればいつかは話してくれるよね?」
「...そうね。いつかは」
「わかった!俺も北条の名を捨てる。だからこの先ずっと、俺と一緒にいて欲しい」
「...トキヤ、本気なの?」
「本気だよ!」
時哉はそう言いながらぐいっと城之内を引き寄せてその身体を抱きしめた。
城之内は抱きしめられた瞬間はぽわんとした表情をしていたがしばらくするとその表情はニヤァと邪悪な微笑みに変わっていた。
その頃、神崎恵美は授業の合間の休み時間に自分の教室を出て廊下でキョロキョロとしていた。
ほどなくして女学生がてくてくと歩いてくる。
神崎恵美はその女学生に声をかけた。
「真子!?なんだったの?」
神崎恵美は廊下で自分の親友、
「...うん、告白だったよ」
「やっぱり!今月でもう6回目だね」
「はあ、そうだね」
「で?断ったの?」
「うん、もちろん」
「え~~~なんで?」
「だってよく知らない人だし」
「結構なイケメンだったじゃない?あの人サッカー部なんでしょ?」
「そうなの?...知らないけど」
「...はあ、真子って男に興味ないの?」
「え?あるよ?なんで?」
「だって今までに何回も告られてるのに全部断ってんじゃん」
「...だって他に好きな人がいるから」
「だから、その人教えてよ!応援するからさ?」
「だから、恵美も教えてくれたら教えるって言ってるじゃない?」
「...むう」
神崎恵美は親友にも北条時哉との関係を話していない。
もし生徒中に知れ渡ると北条時哉に多大な迷惑がかかることは間違いないからだ。
「でも、私より恵美の方が絶対モテルと思うのになんで私のほうばかり...」
とまどいながら長谷川真子はそう言った。
神崎恵美はかなりの美少女であったが長谷川真子もかなりの美少女であった。
「私の場合は、ほら、お家柄がアレだから...とっつきにくいんじゃない?」
「...そうだね。恵美が普通の家の子だったら私より恵美のほうにみんな行くと思う」
「...そんなことないよ。...え!?」
「どうしたの?恵美?」
長谷川真子は神崎恵美が見ている方向へと視線を移した。
「わあ、北条先生と城之内先生だ。2人並んで歩いているとすごい絵になるね。少女マンガみたい。」
「...そ、そうね」
神崎恵美は激しく動揺している。
「どうしたの?恵美?」
「ううん。なんでもない。...教室に入って話そ?」
神崎恵美と長谷川真子は自分の教室に入った。
そしてその2人の女学生を見た1人の教師はバツが悪そうにそしてもう1人の教師はニヤニヤと邪悪な 微笑みを浮かべながら職員室に向かっていった。
がらっ!
2人の教師が職員室に戻ると教頭が城之内に駆け寄った。
「待ってましたよ!城之内先生」
「はい?」
「さきほど城之内先生が3年の1クラスを受け持ってもらうことが決まりました!」
「え?体育兼任だけじゃないんですか?」
「あなたの指導力をただの科目担当にしておくのは勿体ないと方々から声があがりましてな。」
「はあ」
「城之内先生、おめでとうございます」
隣で北条時哉が深々と頭を下げた。
「担任を受け持つと給料も倍近くになりますよ。」
教頭はニヤッと笑いながらそう言った。
「え!?やりますやります!」
城之内は初めはイヤそうな顔をしていたが給料アップの話を聞くやいなやそう教頭に返答した。
隣で北条時哉は苦笑していた。
その様子を見た城之内は北条時哉に問いかけた。
「北条先生は担任されているんですか?」
「いいえ。俺は数学だけです」
「あら、そうなんですか」
そう言いながら城之内はドヤっとした顔を北条時哉に見せる。
そして北条時哉はまたくすっと苦笑しそうになるがそれを我慢してわざと悔しそうな表情に変えた。
そしてその表情を見た城之内は満足そうな顔をして自分の席に戻った。
「俺は覚悟を決めた。...もう、逃がさないよ。ナミカちゃん」
北条時哉はそうつぶやき彼もまた自分の席に戻っていった。
ざわざわざわざわ。
超進学学校と言えど昼休みの喧騒は普通の学校と変わらない。
いつものように北条時哉は神崎恵美の待つ視聴覚室へと急いだ。
「ごめん、メグミ待ったかい?」
「...ううん」
「メグミ?」
「...本当に城之内先生とはなんでもないの?」
いきなり神崎恵美はそう切り出した。
「...ごめん、メグミ」
「なんで謝るの!」
「俺と・・・」
「イヤア!イヤア!聞きたくない聞きたくない!」
神崎恵美は急に暴れだし弁当を時哉にぶつけた。
バキャ!ドシャア!
弁当の中身が床にぶちまけられた。
「痛っ!め、メグミ!落ち着いて!」
「イヤア!イヤ!イヤアアアーーーー!」
両手をブンブンと振り回し小さい子供のように駄々をこねている。
「メグミ!」
北条時哉は神崎恵美の両手を抑えた。
「・・・ふ、ふあはははははは!」
神崎恵美はいきなり笑いだす。
「メグミ?」
「北条先生....これなんだと思いますぅ~~~?」
神崎恵美は自分のスマフォをポケットから取り出した。
「?」
しばらくするとそのスマフォの液晶画面には淫らな動画が映された。
『せ、センセエ!北条センセエ!』
『メ、メグミ!いいよ!かわいいよ!』
そこに映されていたのは北条時哉と神崎恵美の情事の動画だった。
「メ、メグミ...いつのまにそんな動画を?」
「これを学校のホームページにアップロードしますぅ。あははは!」
「キミまでがそんなことを...いいよ。やりたければやれ。俺はキミとは別れる」
「え!!...なんでよっ!ホントにやるわよ!どうなったって知らないから!!」
「いいよ。どうせもう覚悟を決めないといけないことになってしまったから」
「なんで!なんでよぉ!別れたくない!別れたくないよぉ!うわ~~~ん!」
神崎恵美は自分のスマフォを投げ捨て北条時哉に抱き着いて絶叫した。
「ごめんな。...メグミ」
...北条時哉は神崎恵美が泣き止むまで彼女の頭を撫でていた。