新学期早々の昼休み、波香たちは視聴覚室に集まっていた。
藤田が記憶を失くしたということなのでここに集まっても大丈夫だと判断したようだ。
「しかし、城之内先生がやったことは下手したら殺人未遂なんじゃないのか?」
時哉は一通り波香の話を聞いてそう言った。
「なんで?私の話を聞いてなかったの?運転中にフェラを強要されて仕方なくやっていたら藤田が勝手に車で海へ飛び込んで行ったのよ」
「どうせ、誤運転を狙って城之内先生がフェラをすすんでやったんじゃないの?」
「......だから、なに?」
「......なんでもないです。とにかく俺たちのヤバイ画像が全部消えてくれてよかったよ」
「ええ、弟のダンナにお願いしてちょちょいのちょいだったわ」
「え?弟のダンナ?」
「ええ、気持ち悪いことにマキオは結婚してたのよ」
「はあ?男と?」
「ええ」
「日本で同性結婚って......できたんだっけ?」
「マキオは女になったわ」
「は?」
「手術したのよ」
「ええ!?なんでまた......」
「......そんなことよりお昼ごはん!あれ、メグミちゃんとマコちゃん?なんでそんな隅っこにいるの?」
時哉と波香の会話を恵美と真子はガタガタと震えながら視聴覚室の隅っこで聞いていた。
「あら?あなたたちどうしたの?」
「......い、いえ、お弁当を食べましょう!」
恵美は震える身体をごまかしながらそう言った。
「待ってましたあ!今日は何かな何かな?」
波香はワクワクしている。
「今日は鍋です!ふぐちりです!」
「いやっほう!」
波香は飛び上がって喜んでいる。
「......学校でふぐちりが食べれるなんてなんて贅沢なんだ......」
時哉も感動で身体を震わせていた。
「ぽちっとな」
波香は率先してカセットコンロの準備をし火をつけた。
「ふぐが温まるまでにこちらをどうぞ。松茸ご飯です!」
「......マジかよ」
「うわあ!ナミ.....さやか感激!」
時哉は驚愕し波香は涙を流していた。
「ホント、本物のお嬢様の実力は違うわね!でも、大丈夫なの?こんなに毎日高そうなモノを?」
「大丈夫です!私を誰だと思っているんですか?」
「スト......いいえ、ここは素直に敬意を払って言うわね。さすがは神埼財閥のお嬢様です!」
波香は珍しく恐縮してそう言う。
「まったく、城之内先生は食い物の時だけ謙虚になるな」
「はあ?......これいただき!」
波香は時哉の松茸ご飯が入っているお椀から一番大きな松茸の塊をひょいと箸でかっさらった。
「ああ!一番デカイやつぅ!」
時哉は悲鳴をあげる。
「あはは、北条先生は本当に城之内先生にはからっきしですね。」
真子は屈託のない笑顔を見せてそう言った。
「言ってくれるなよ。真子ちゃん」
「あはは......あの、私もお漬物とか作ってきたんです。よかったら......」
「お?どれどれ?」
時哉より早く脇からでてきた波香は真子が差し出した漬物を箸でつまむ。
「おわ!んまい!高菜と白菜ね?」
「はい、良かった......」
「どれどれ?......うん、うまい!いい奥さんになれるよ!」
時哉はしれっと言う。
「ありがとうございます」
真子は恥ずかしそうに下を向いた。
その様子を恵美は凝視し、波香はしらーっとしてひたすら松茸ご飯と漬物を交互にぱくついていた。
「あ!もうふぐいけますよ!」
恵美は鍋を見てみんなに知らせる。
「ワーイ!」
波香たちはアツアツのふぐに舌鼓を打った。
◇
一方、その頃。
静香と藤田は職員室で静香の作ってきた弁当を食べていた。
「斉藤先生、悪いね。いつもお弁当作ってもらっちゃって」
「いえ、いいんです。ついでですから......それでその......」
「え?」
急に静香は周りをキョロキョロしはじめ他に職員がいないことを確認した。
「2人きりの時は『静香』って呼んでもらっていいですか?」
「え?なんで?」
「もう!鈍感ですね!」
「はあ?だってキミは僕のことを嫌ってたんじゃないのかい?」
「別に嫌ってたわけじゃ......ちょっと、苦手だっただけです。それに今のセンパイは......」
「......」
「今のセンパイははっきり言って私の好みなんです!」
「はあ、僕がですか?」
「はい!」
「はあ、なんとまあ」
藤田は困惑している。
そして静香は決意をこめた表情で藤田に向かって言った。
「センパイ!好きなんです!お互い、いい歳してこんなこと言うのもなんですが、私とつきあってもらえませんか!?」
「ええ!?」
「ダメですか?」
「いや、ダメってことはないんだけど、ちょっと、僕、記憶がなくて混乱してて」
「.......」
「でも、斉藤先生にはいろいろ助けてもらっちゃってるし断るわけにはいかないかな」
「.......そんな.......あの!」
「うん?」
「私のことどう思ってるんですか?」
「う~ん......でもま、好きなんだろうな......うん、好きだと思う!」
「ほんとですか?」
「うん!こんな僕で良ければつきあいましょう」
「良かったあ、思い切って言ってみてよかった!」
静香は渾身の笑顔を藤田に向けてそう言った。
「あらあらあら、魚のアラ」
波香は職員室にいつのまにか戻っていて二人の様子を伺っていて満を持して登場した。
「ひっ!城之内先生いたんですか?一体、いつからいたんです?」
静香はドキドキしながら城之内に問う。
「『静香って呼んでもらっていいですか?』から」
「ひっ!そんな前から......」
静香は観念したようにうつむいた。
「いくら婚期を逃しそうになってるとはいえ、いいの?こんなので?」
「こんなの?アハハ、僕ってこんなのか、アハハ」
ひどいことを言われてるのに藤田は天に向けて笑い飛ばしている。
「ひどい!婚期を逃しそうって!私は城之内先生より2つ歳下ですよ!」
静香は激昂してそう言った。
「は?それがどうしたの?私は結婚しようと思えばいくらでもできるのよ?今はしないだけ」
「はあ、そうですか......」
「それにね、藤田先生は私とつきあっていたの。ほら、これが証拠写真よ。見る?」
「え!?」
波香は静香に車の中でフェラをしている波香の画像を自分のスマフォで見せた。
「でも、これって藤田センパイのじゃないのかもしれないじゃないですか!」
「ちっちっちっ!これは動画なのよ」
波香は動画をスタートさせ、カメラは段々と上のほうを写していく。
波香がしゃぶっているちんぽはまぐれもなく藤田のだった。
「そ、そんな......」
「あっはっは、そういうわけなのでコレ、私が連れて行くわね」
波香はそう言い、食事中の藤田の腕を無理やり組み、職員室から連れ出そうとしている。
「そ、そんなああ......」
1人、職員室に取り残された静香は大粒の涙をぽとんと自分の弁当に落とした。
「あ、そうだ」
突如として波香は振り向く。
「斉藤先生、コレ、あなたに譲ってあげてもいいわよ?」
「え?」
静香はびっくりして顔をあげた。
「アハハ、僕はコレか、アハハハ」
「あんたは黙ってろ!」
「はい、すみません」
「譲ってあげてもってどういうことですか?」
静香は困惑している。
「言葉のとおりよ?いらない?ならいいけど。」
「いりますいります!」
「あっそ。じゃあ、あなたも私の子分ね。ついでに藤田、あんたもね」
「はあ」
波香の言葉に静香と藤田はただぽかんとするのみだった。