『天晴学園』
体育館横の水場など施工途中のものは数々あるが生徒48名、校長兼教師1名によって開校した。
生徒の内訳は3学年21名、2学年18名、1学年9名。
全ての学年、全ての教科において他に教師が来る間、波香が担当することになる。
波香はまずは1学年のクラスに向かった。
「おはよう!1年生のみんなは受験を勝ち抜くためにも今から体力をつけておくのも悪くはないのでなるべく部活とかにも入るように。さて、授業だが今日は授業をおこなわない!今日は国語の1ページから100ページまでの範囲を各自、自習しろ!わからないところがあったら生徒同士で教えあえ!私は30分後に来るのでその時に質問の要点をまとめておけ。以上だ」
「はい!」
そして隣の2学年のクラスに行った。
「おはよう!さっき1年生のクラスでも言ったことだが今から運動系の部活などで活動し受験の為に体力をつけるのが吉なので考えておけ。さて、授業だが今日は授業をおこなわない!今日は代数・幾何の1ページから100ページまでの範囲を各自、自習しろ!わからないところがあったら生徒同士で教えあえ!私は1年生の質疑応答が終了したら来るのでその時に質問の要点をまとめておけ。以上だ」
「えー!?」
一番前の席に座っている神崎恵美は不満そうな声を上げる。
「えーとはなんだ?神崎!?」
「授業やってくれないんですか?」
「無理だ!おそらくこの先もな」
「なんだあ、師匠の授業、楽しみにしてたのに......」
「......他に教師が来てくれたら考えるわよ。とにかく私からは以上だ!」
波香はさらに隣の3年のクラスに行く。
「おはよう!......ここのクラスは井上と小野寺以外、元々は私のクラスだった生徒ばかりなので既に高校の教科範囲を修了していたな」
「はい!」
「井上と小野寺はそれぞれの科目、あとどれくらい残っている?」
「俺は独力ですでに全部終わっています」
「ほぅ、さすが井上だな、小野寺は?」
「あ、あたしも中原君に教えてもらうので大丈夫です!」
「そうか。なら黒崎!わかってるな?」
波香は一番前に座っている黒縁眼鏡の生徒に向けて言う。
「......校長先生?わざと言ってますよね?」
「あはは」
黒縁眼鏡の隣に座っている黒縁眼鏡の彼女の細田ふみえは楽しそうに笑っている。
「いやーすまんすまん。品田、共通試験の過去問のコピーをみんなに配っておいてくれたか?」
「はい!っていうか品川です!」
「よし!それを5年分解いてあとは各自それを元に今度出題される予想問題を作って解答しあえ」
「はい!」
「おおお!さすが城之内校長先生だ。そんなやり方があるとは」
井上は感心しきっている。
「......できた問題集は品川と細田でコピーを人数分頼む。......大変だができるか?」
「できます!なっ?ふみえちゃん?」
「はい、できます!」
「ちっ!ふたりはもうヤッたのか?」
波香は舌打ちして品川に問うた。
「ななななな、やってないですよ!」
「......」
慌てる品川の隣の細田は赤くなっている。
「やってもいいが避妊はしっかりしろよ?」
「なななな、校長がそんなこと言っていいんですか?」
「いいんです!結果さえだせばな!」
その話を聞いた
「な?小野寺?結果さえだせばエッチオッケーなんだってさ?」
「ばか!」
「というわけで私は1年のクラスに行ってそのあと2年のクラスに行って......かなりここに戻ってくるのは遅くなるがみんなしっかりやれよ?」
「はい!」
「それから休憩は各自好きなタイミングでとるように。集中力はそんなに続かないからな。休みたいと感じたらやすめ!いいな?」
「はい!......校長先生、大変ですね?」
品川が心配そうに言う。
「まあ、他に教師が来るまでは仕方がない」
「え?他に先生が来るんですか?」
「わからん!」
「なら、校長先生。校長先生こそ無理しないでください。校長先生しかいないのに倒られでもしたら......」
「私の体調はいつも万全だ!私の心配より自分の心配をしろ!」
「はい!わかりました!」
がらがらがら......ぴしゃ!
こんな調子で天晴学園の毎日が始まった。
◇
ある日のお昼休み。
職員室の波香の席には生徒達によるちょっとした行列ができていた。
「校長先生、3年も部活やっていいですか?」
3年の相沢浩二が波香に問うた。
「ああ、別に構わんぞ?」
「それでその......顧問の先生が必要なんですが......」
「相沢は野球部だったけか?ああ、別にいいぞ?名前だけだろ?」
「いえ、ちゃんと指導もオナシャス!」
「......ああ、わかった」
「ありがとうございます!では、失礼しまっす!」
そして相沢の後ろには恵美と真子が控えていた。
「師匠!」
「どうしたのメグミちゃん?」
「私たちも女子ソフト部を作ったので顧問になってください」
「え?......はあ、わかったわ」
「それとお昼は私たちともう一緒に食べないんですか?」
「んー......ごめんなさいね。ちょっとお昼はしっかり休みたいわ」
「......そうですね。前みたいにはいかないですよね。師匠、激務だし」
「ごめんね」
「いえいえ、いいんです。師匠、体には気をつけてくださいね」
恵美と真子はぺこりと頭を下げて波香のもとを去って行く。
「あ、あの......」
次に控えていた小野寺明日香が言いにくそうに下を向いている。
「どうした?小野寺?」
「......彼が......中原君が浮気してるみたいなんですけど」
「はあ?......ったく、じゃあ、中原呼んできて」
「え?やめてくださいやめてください。私が告げ口したみたいじゃないですか?」
「してるじゃない?」
「......そうなんですけど」
「なあ、小野寺。浮気問題ってのは結構難しいぞ?......中原が浮気をする心当たりはあるか?」
「多分、私がなかなかさせないからじゃないでしょうか......」
「セックスをか?」
「は、はい」
小野寺は真っ赤になっている。
「小野寺はセックスをするほどには中原の事が好きじゃないってことなのか?」
「いえ、そんなことはないです。ただ......まだ早いんじゃないかとか恥ずかしいとか怖いとかいろいろ......勇気がでなくて」
「私が言えることはセックスとはとても気持ちがよいもの......かしらね」
「そうですか......他の人たちってどうなんでしょう?」
「他の人たちって他の生徒の事か?」
「はい」
「あー......品川と細田はやりまくっているな」
「え?そうなんですか?」
「ああ、細田の奴『どうすれば男の人は喜んでくれるのでしょう?』って私に聞きにきたぞ」
「へ、へえーーー......」
「なあ......小野寺」
「はい?」
「例えばな、私がいろいろ男を喜ばせるテクニックを小野寺に教える」
「はい」
「それで中原とセックスしまくって小野寺の身体の虜にさせる」
「は、はい」
「それでもな、浮気する奴はするんだよ。こればっかりはどうにもならん」
「そ、そんな......」
「小野寺は可愛いしスタイルも悪くない。こういっては悪いが中原との関係が深くなる前に......清算したほうがよいのかもしれないぞ?」
「はあ......」
「悪いな。ベストアンサーが出来なくて。でもそれくらい浮気問題は難しい。まあ、決めるのは小野寺だ。ゆっくり考えろ」
「......」
「まあ、結局答えは2つしかないがな。浮気を許容するかしないか......だ」
「わかりました。校長先生ありがとう。私、ちょっと考えてみます」
「うむ、次!」
「せ、せんせい......」
「なんだ?皮田?」
「お、おれ、むけてないんですが、そういうのって女性からしてどうなんですか?ダメですか?」
「......はあ、あまりにクサイのはどうかと思うが好きな人のちんぽなら愛おしいものだ。あんまり気にするな!」
「そ、そうか、よかった」
「お風呂のお湯を新しいのに変えた時にお風呂の中で自分の手で亀頭を露出させて洗っておけ」
「わ、わかりました!ありがとうございました!」
ようやく生徒が職員室からいなくなった。
「やれやれ、ようやく食事だわ」
波香はいそいそと自分のバックから弁当を取り出した。
◇
「ふぁ~~~、ぜんっぜんっ疲れが取れないわ」
ある日曜日の昼下がり、波香はフラフラと学園に登校してきた。
野球部の練習を見に来たのだ。
ばっちこ~~~い!
グラウンドから声が聞こえてくる。
ずばあ~~~ん!
ずばあ~~~ん!
高校生とは思えない剛速球をばんばん投げ込んでいるピッチャーに波香の目が留まった。
そんな波香に気が付き相沢がかけよってくる。
「校長先生ハヨっす!」
「おはよう......あんなピッチャーうちの学校にいたのね。すごいわね、あの51番」
「ええ、あいつまだ1年なんですよ。中学の時に全国大会優勝したピッチャーで『優明学園』の時には野球特待生で入ってきたらしいですよ」
「へえー」
「なぜ、この高校に編入できたのかはわかりませんがね」
相沢はこう言うが波香は神崎喜一郎からスポーツ特待で何人かの生徒が編入したことを知らされていた。
「もうすぐ春の選抜も始まりますし校長先生を甲子園に連れて行きますよ!」
相沢は鼻息荒く、そう言うが波香は興味なさそうに答えた。
「はあーーそう......って相沢、あんた出られるの?」
「出られません!」
「......ばか、大学受験、大丈夫なんでしょうね?」
「俺は大丈夫です。T大模試判定Aなんで」
「それは良かったけど最後まで油断しないでね」
「いえっさー!」
そして波香はスタスタとピッチャーマウンドに歩いていく。
「きみ!」
「は?俺すっか?」
「きみ、名前は?」
「
「五反田君、そんな投げ方では肩と肘に負担がかかるわ、早急に投球フォームの見直しをしたほうがいいわよ?」
「はあ、でもこの投げ方じゃないとスピードが出ないんで」
「私がしっかりと見てあげるから......いいわね?」
「はあ、わかりました」
背番号51はしぶしぶと波香に従った。
波香は30分もかけて51番の投球フォームの改善を熱心に指導した。
「師匠!こっちも見てくださ~~い!」
グラウンドの反対側では神崎恵美、長谷川真子と他の女子生徒3名がグローブとバットを持ってきて何かをやっていた。
「今行くぅ!じゃあね、五反田君。そんな感じで......今日はもう本格的に投げるのはやめておきなさい」
「わかりました」
五反田の指導を終え、恵美のもとに急ぐ波香。
だが波香を待っていたのは波香の予想を遥かに超えた光景だった。
「こ、これはヒドイ。老人ホームの老人たちのゲートボールのがよっぽマシだわ」
「師匠!ひどすぎ~!私たちは身体が動かせればいんです!師匠もそう言ったじゃないですか!」
「あ、あはは、そうね。ごめんね。メグミちゃん。ま、まあ、それじゃあ、基礎中の基礎から始めましょうか?キャッチボールくらいできたほうがいいでしょ?」
「はい!お願いします!師匠!」
青空の下の元、天晴学園の教師と生徒たちは白球を追っていた。
10月も半ばあたりのことである。