「ターララ♪タララララー♪タラララララ♪」
その女は自分の歓迎会の2次会、とあるカラオケボックスに来ていた。
「杉本さんうまーい!」
「わー」
「ひょおおおー」
女の歌声に周囲はどよめいている。
「タラララ♪....ふう。おそまつさまでした」
わー、ぱちぱちぱちぱち。
「杉本君!仕事もできて歌もうまい!君はいったい、何者なんだい?」
「ただの人間ですよ。...さ、どうぞ西川課長」
女はそういうと自分の上司である経理の西川課長にお酌をした。
「これはこれは、かたじけない。今日は君の歓迎会なのにな!」
「課長!こんな美人の部下にお酌してもらえるなんて課長は幸せ者ですね!」
同じく経理の大山係長が調子のいいことを言った。
「まったくだな!ガハハハ!」
「あははは」
「時に杉本君」
「はい」
「君は彼氏とかいるのかね?」
「いません」
「はあ、君ほどの人がもったいない」
「私なんてそんな...」
「いやいや...そうだ大山係長なんてどうかね?」
「え!やめてくださいよ、課長。杉本さんに迷惑です」
「そうかね?どうだ?杉本君?」
「...まだ、出会って1カ月なので」
「そうかそうか、じっくり見極めてやってくれ。大山君はいい奴だぞ?」
「また!やめてくださいよ、課長!」
「ガハハハハ」
「...」
「もう!杉本さんをイジメないでくださいよ!杉本さん、こっちにこよ?」
「はい」
「ガハハハ、一里塚くん。杉本君を総務にとらないでくれよ!」
「あたしにそんな権限ありませんし。...杉本さん飲み物なくなってるね?何がいい?」
「あ、はい。では、ウーロン茶を」
「うん。わかった」
一里塚は女からオーダーを聞くと部屋に備え付けのインターホンから注文をした。
「すみません。ウーロン茶とオレンジジュースをひとつずつ、それから中ジョッキ3つお願いします」
「ガハハ。よく働くなあ、一里塚くんは。違う部署なのに幹事をやってもらってすまんな!」
「いいえ!こういうの好きなので」
「ガハハハ、君の彼氏は幸せものだな!君みたいなしっかり者が彼女で。いつ結婚するんだっけ?」
「来年の6月です」
「そうかそうか、わが経理部でも盛大に祝うから期待しててくれ。君には大変お世話になってるからな」
「ありがとうございます。...ふぅ」
一息ついて一里塚は女の横に座った。
「大変ですね、幹事さんは」
女はそう、一里塚に声をかけた。
「ううん、慣れてるから平気」
「ふふふ」
「杉本さんはお酒飲めないの?」
「飲めますよ」
「あ、そうなんだ」
「私、飲むと暴れるので」
「あははは、そうなんだ。...少し、見てみたいかも」
「...一里塚さんは?オレンジジュースですけど?」
「あたしも飲めるけど幹事が酔いつぶれたら...ねえ。それに飲めることは飲めるけどあんまり強くないし」
「そうなんですか」
「うん。...ね?」
「はい?」
「今度のゴールデンウイーク何か予定ある?」
「...特にありませんが」
「なら、バーベキュー、行かない?」
「バーベキュー?」
「うん、知り合いからいいお肉をもらったの。それをね、ハイキング場でみんなで焼いて食べるの」
「行きます」
「あはは、即答?結構、杉本さんって食いしん坊だよね」
「そうですか?」
「うん、だっていいお肉って聞いた瞬間、目がキラーンってなってたよ?」
「...」
「あはは」
「えーっと、宴もたけなわですが、ここらで今日はしめたいと思います。最後に杉本さんから一言お願いします!」
一里塚と一緒に幹事をやっている大山係長が〆る。
「あ、はい。...今日は私の為に歓迎会を開いていただきましてありがとうございます。みなさん良い方ばかりなので私はこの職場に来てとても幸運です。これからも宜しくお願いします!」
わーぱちぱちぱち。
◇
歓迎会も終わり女は自分のアパートに戻ってきた。
「あーストレスたまるわ!クソが!」
女はそう言うとさきほどティッシュでくるんだ道端に落ちていた犬のフンを集合ポストのある場所に郵便物のように無造作につっこんだ。
そして階段を上りながら先ほどカラオケボックスでみんなが食べていたバナナの皮を1枚1枚丁寧に並べていった。
「ウヒヒヒ、明日の朝が楽しみだわ」
女は自分の部屋に入るとすぐさま全裸になりシャワーを浴びはじめた。
シャーーーーー...
「バーベキュー...か」
シャワーを浴びながら女はそうつぶやくと不敵な笑みをこぼすのであった。