誰にも話したくなかった忌まわしい過去の出来事。
波香はもちろん誰にも話すつもりはなかった。
しかし、酒の酔いもあってか時哉に抱かれ、その夜、悪夢を見た心の不安から時哉にそのことを話してしまった。
「お館様を殴りにいこうぜ!」
その言葉からして時哉も自分と一緒に行動を供にするつもりなのであろう。
できることなら誰も巻き込みたくはなかった。
時間はかかるが波香は自分の生涯を賭け、資金を貯め、北条財閥を乗っ取るか潰す計画をしていたのだ。
「はあ、なんで私、喋っちゃったんだろう」
波香は一人、校長室で生徒達の大学入学の為の書類を作成していた。
こんこん
校長室の扉を叩くノック音がする。
がちゃ
「ノックオン!スクラ......」
「ノーサイド!ギャクタイム終了」
毎度のつまらない時哉のギャグに水を刺すように波香は言った。
「ハ、ハハハ、さすがナミカちゃん、良い返しだ」
「北条先生、学校では......」
「あ、申し訳ありません。城之内校長」
「で、用件は?」
「はい、いつお館様のところへ行くのかと」
「......はあ、本当に殴りに行くの?」
「お話をしてそれで校長の気がすまなければ殴って解決......みたいな」
「それで私の気が済むとでも?それにそれじゃ傷害事件になっちゃうじゃない?」
「それはそうですが......じゃあ、俺が校長のかわりに殴りましょうか?」
「それじゃ、北条先生が捕まっちゃうでしょ!」
「そうですが......」
「いいの、もう。それに私には私の復讐の仕方もちゃんと考えてあるし」
「復讐の仕方?」
「私のはじめてを奪ったクソじじいから全てを奪ってやるのよ!」
「北条財閥グループを潰す......とか?」
「そんなとこね」
「......それは、難度高すぎなんじゃ......」
「時間はかかってもいい。私は生涯を賭けてなんとしてもやり遂げてみせる。決して泣き寝入りはしない」
「そうか、でも、俺はいずれにしても一度、お館様と話をするべきだと思う。それからでも遅くはないんじゃないかな?」
「......なんで、そこまで心配してくれるの?」
「なんでって、その理由をまた言わなくてはいけないのかい?」
「......」
「愛しているからだよ。君を。俺も君の力になりたい。問題を解決した暁には俺と結婚して欲しい」
「.....ダメよ。あなたにはメグミちゃんが......」
わしっ
時哉は不意に波香の両肩を掴む。
「覚えてる?俺が中学生の時、お館様に波香ちゃんをお嫁さんにくださいって言った日のこと?」
「さ、さあ、知らない」
「ウソつけ!お館様の部屋の障子の裏にひっそりと隠れて聞いていたじゃないか!」
「......」
「あの時、お館様は笑い飛ばして俺が波香にふさわしい男になったら嫁にやろうって言ってくれたんだ」
「そ、そうだったかしら」
「俺はそれから勉強にスポーツにひたすらうちこんだ。勉強は君のH大には及ばないけど日本で1番の大学にも行った」
「......」
「俺は君を嫁さんにすることを目標にして生きてきたんだ。それなのに君は突然、姿を消して......まあ、それはお館様とあんなことがあったから仕方がないけど」
「......そんな、一方的にそう言う事を言われても困るわ」
「困る?ハハハ、散々、俺を困らせてきたのは君だろ!」
がばああ!
突然、時哉は波香に襲い掛かった。
「ト、トキヤ?」
波香はその時哉らしくない行動に吃驚してしまい一瞬の不意をつかれてそのままソファに押し倒されてしまった。
どさっ!
「俺が忘れさせてやるよ!忌まわしい過去の出来事も!」
もみゅもみゅ!
服の上から波香の胸を激しく揉みしだく。
「や、やめて!」
波香の言葉にもかまわずに胸を揉みしだき、そのうちに波香の上半身の衣類、ブラジャーを剥ぎ取り波香の乳房に吸い付く時哉。
ちゅぱちゅぱちゅぱ
「うっ!あ、あん!はあ、はん!や、やめ、やめなさい!ここは学校よ!」
「それがどうした?学校でも散々今まで無茶苦茶してたくせに!」
ずるっ
波香のズボンとパンティをずりおろし一番恥ずかしいところに顔をうずめようとする時哉。
「いや!」
ぼかっ!
自分の足元に時哉の頭がきたので思いっきり足の裏で波香は蹴飛ばした。
「うわっ!」
どかっ! ぼこん!
その勢いで時哉はソファから転げ落ち、したたかに校長机に頭をうってしまい、気を失ってしまう。
「あ!ご、ごめん!」
波香はとっさに謝ったが気を失った時哉からは返事はなかった。
そして波香は自分の大事なところが異常に濡れている事に気づいてしまうのだ。
「え?私なんで......」
◇
しんと静まり返った夕暮れ時。
『天晴学園』の校舎は眩しいオレンジ色に染まっていた。
「う、ううう」
「良かった。時哉、気がついたのね」
時哉は波香の膝枕の上で意識を取り戻した。
「......ナミカちゃん。俺は気を失っていたのか?」
「ええ......さっきは、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。俺もごめん。突然、あんなことして」
「......時哉らしくなかったね。突然、暴力に訴えるなんて」
「煮え切らない君の態度に......というか何回言っても俺の気持ちが伝わらないのか、とイライラしちゃったのかもしれないね」
「......伝わってるわよ、十分」
「そうか......なのにどうしてもダメなのかい?」
「私、トキヤのこと好きよ」
「!!だったら!」
「だからなの。だからトキヤには幸せになって欲しいの。私と一緒だと幸せになれないから......」
「君と一緒だと俺が幸せにならない?なら俺の今の気持ちはなんなんだ?ナミカちゃんにこうして膝枕をしてもらってるだけでたとえようのないこの溢れてくるふわふわとした気持ちはなんなんだ?」
「それは頭を打っておかしくなってるんじゃない?」
「あほか!幸せなんだよ!俺は!ナミカちゃんのそばにいるだけで幸せだ!そしてナミカちゃん以外でこんな気持ちになることはない!絶対に!」
「信じていいの?私の父みたいに私の気持ちを裏切ったりしない?」
「愚問だよそれは。俺はナミカちゃんのことを小さい頃から今までに一度も裏切ったことなんてないハズだ」
「そうね、確かに私を裏切ったことがないのはあなただけだった」
「俺は君を裏切らない。絶対に。......君のその悩みを2人で解決しよう。この先どんな苦難が待っていようとも俺は構わない。君と一緒にいるだけで俺は幸せなんだ。もう俺のそばを離れないで欲しい」
声をひねり潰す用に時哉は下を向いて波香に言う。
「トキヤ......本当に私でいいの?あなたなら他にも......メグミちゃんだって」
「俺は君じゃなければダメなんだよっ!」
時哉は波香の膝からむくっと起き上がり今度はガシっと波香の両腕を掴み波香の顔を凝視してきっぱりと言い放った。
「じゃ、じゃあ......よ、宜しくお願いします」
波香はスッと時哉の胸に顔を埋めた。
「や、やったあ!」
時哉は満面の笑みを浮かべ波香を片手に抱きながら右手を掲げガッツポーズを取った。
「ねえ、さっきの続きしたい?」
「ああ、したいよ」
波香は上着、下着を脱ぎ、自ら全裸になった。
「あ、ちょっと待って」
そう言いつつ波香は全裸のまま、立ち上がり校長室の部屋の内鍵を閉める。
そしてソファに座り両手を広げて時哉を迎えた。
「さあ、どうぞ」
この女のこんなにしおらしい姿をかつて見たことがあっただろうか。
まるで別人のようだった。
時哉もあまりのことに固まってしまい、しばらくその場で立ちすくんでいた。
「??どうしたの?」
「か、かわいいよ、ナミカちゃん」
「そお?だったら早く来て?」
「うおおお!」
「きゃ」
時哉は波香に覆いかぶさり右の乳首、左の乳首と順番に舐めまわす。
ぴちゅ......ぴちゅ
「あ、あああ」
波香のかすかに聞こえる甘い吐息にさらに時哉は興奮する。
「はあはあはあ」
「そ、そういえば私、今日、あぶない日かも」
「そ、そうか、なら外に......」
「ううん、いいの。ナカにしていいよ?」
「......ナミカちゃん、本当に俺と......覚悟を決めてくれたんだね」
「うん」
「なら、俺ももとより覚悟の上......ナカにだすよ?」
「うん」
2人はそのまま思う存分、愛し合うのだった。
◇
愛し合う2人の校長室の壁に耳をあて聞き耳を立てる2年生の生徒、男女2人がいた。
「うえ~~~ん、時哉さああ~ん」
「まあ、まあ、まあ、こんなに愛し合ってる2人の仲を邪魔するのは野暮だって」
「時哉さん時哉さん時哉さあ~~~ん」
「まあ、まあ、まあ、そうだ!変わりに俺なんてどお?」
ぼかっ!
「いててえ!」
「うわ~~ん、時哉さあん!」
女の生徒は泣きながら校長室から離れて行く。
「ってえなあ、もう」
殴られた男の生徒は立ち上がった。
「......ま、いいか。校長。俺も校長のおかげでモテモテになりましたよ。俺も校長のこと大好きだったけど......お幸せに」
そう独り言を言い、彼もまた校長室を後にした。