「こんにちは!ごめん、少し道に迷ちゃった」
「こんにちは。いいえ、わざわざ私のアパートまで迎えに来てもらってありがとう」
「ううん、いいの、誘ったのあたしなんだし。あ、ええと、みんなを紹介するね!この人は
「こんにちは」
「こんにちは」
「んで、あちらから
「!!」
「ん?どうかした?」
「いいえ、なんでも。杉本です。みなさん宜しくお願いします」
「おう!」
「宜しくお願いします!」
「よろしくね!」
「よろしゅー!」
「...宜しくお願いしますわ」
市ケ瀬夫妻の旦那が運転する白いワンボックスカーに市ケ瀬の妻と御燭寺夫妻が乗り込み、総務の一里塚の運転する新車と思われる銀色のワゴンに一里塚の彼氏と根津川夫妻、そしてその女が乗り込んだ。
「女は根津川の妻にそっとささやいた」
「...なんでアンタがいるの?」
「それはわたくしが聞きたいですわ。杉本さんって方が来るって聞いてたのにまさかクソネエが来るとは世も末ですわね」
「わけわかんないこと言ってんなよ。まさか、結婚するとはね。キモすぎるんだわ」
「おーっほっほっほ。わたくしの旦那様は全て納得済みですわw」
「はぁー。キモすぎる弟を持ったあたしが不憫でならないわ」
会話の内容からしてこの二人はどうやら姉と弟らしい。
「そうだ、アンタ、私から盗んだ金、返しなさいよ?」
「おーっほっほっほ、もう、ありませんわw」
「はあ?あれだけの金、もうないの?何に使ったのよ!」
「親友の為に使いましたわw」
「チッ!このクソバカが!」
そういうと女は根津川の妻の太ももをギューっと力任せにつねり続けた。
「ふん、負けませんわ」
根津川の妻も負けじと女の太ももをギューッとつねり続ける。
「ふごーふごー、二人は知り合いなのかい?」
隣で様子を見ていた根津川の夫が2人に話しかける。
ぱっと2人はつねり続けた手を離した。
「いいえ、今、会ったばかりですわ。おーっほっほっほ」
まもなく一行を乗せた車は2台とも無事にある湖についた。
「うわー綺麗」
御燭寺の妻は水色に透き通った湖の水面を見て思わず声をあげた。
「いや、君のほうが綺麗だよ」
「...つよしくん」
「ところ」
御燭寺夫妻はお互いに見つめあっている。
その様子を見ていた市ケ瀬の妻が思わず声をあげた。
「おいおい!新婚ホヤホヤでアツアツなのはわかるけどさ。あたしらがいるのをお忘れなく!」
「あ!ごめん、冴子」
「あっはっは、まあいいじゃないか」
市ケ瀬の旦那は思いっきり声をあげて笑った。
「しっかし、あたしらの中じゃ恭子が一番早く結婚すると思ったんだけど一番遅いとはね」
「仕方ないよ、きょんちゃんの彼氏の仕事の都合なんだし」
「ユニ〇フだっけ?大変な仕事なんだろうね」
「...つよしくんが普通のサラリーマンになってくれて良かった」
「うん、俺は仕事なんかどうでもいい。ところのそばにいられれば」
「つよしくん」
「ところ」
御燭寺夫妻はお互いに見つめあっている。
「...ダメだこりゃ」
市ケ瀬の妻はあきらめて2人を生暖かい目で見守った。
「私、お野菜切りますよ。後、お肉も」
女は率先して調理に参加した。
トントントン!...シュババババババッバッ!
「は、はやい!」
「すごいな」
みんなが感心して女が野菜や肉を切っている様子を見ている中で根津川の妻は冷ややかな目で見ていた。
「...切り終わりました。」
「あ!じゃあ、後は私が串を通すね」
御燭寺の妻はそう言った。
全ての具材に串を通し終わりそれを鉄板の上に乗せ焼いていく。
ジュワーーーーー!!
「...あ、これもういいかも。はい!杉本さん」
「ありがとう」
「はい!マキナ様!」
「とこちゃん、ありがとうですわw」
2人はほぼ同時にバーベキューを口に入れた。
「もぐもぐもぐ...おいしいですわーーーwww」
「うん!おいしい!」
2人はほぼ同時に声を上げた。
「やっぱりなんか2人とも似てる~~~!!」
一里塚はそう声を上げるとドッとその場で笑いがおこった。
「はあ、もうお腹いっぱい」
「食べたねーー」
「...ふぅ、もう、何も入りませんわ」
「ぶはっ!北条、なんでそんなすぐ腹がぽこんとなんの?」
市ケ瀬の妻が根津川の妻の腹を指さし必死に笑いをこらえている。
「し、仕方ありませんわ!体質なんですから、それに今は北条ではなく根津川ですわ!!」
「あ、わりーわりー」
一行はバーベーキューを十二分に堪能し帰路に着いた。
「恭子、眠い?運転変わろうか?」
一里塚の彼氏が気を遣いそう言った。
「ん?うん」
「あ!私が運転かわりますよ!」
女は名乗り出た。
「え?」
「一里塚さんには会社で大変お世話になっているので」
「...じゃあ、お願いしようかな」
「はい。私はSライ持ってるんで安心してください」
「へー。杉本さんって本当になんでもできるんだね!」
一里塚は屈託のない笑顔でそう言った。
「大した事ありませんよ」
かくして一里塚の新車のワゴンをその女が運転することになった。
まず最初に根津川夫妻の家に向かって無事にその夫妻をおろした。
一里塚とその彼氏は根津川夫妻と挨拶を交わした。
その女は無言のまま車を発進させた。
ぷっぷっぷー。
しばらくすると、後ろの車がクラクションを鳴らした。
女が運転する車は法定速度を守っている。
しばらくすると後ろの車はぷーーーーとやかましくクラクションを鳴らしながら女の運転する車を抜いていった。
ブロロロロロ!
突然女の運転する車はスピードを上げた。
今、抜かれた車を逆に追い越して行く。
「え?なに?ちょっと!杉本さん!」
ギュワワワ!ガーーーーーー!
女の運転する車はカーブを曲がり切れずにガードレールをこすっている。
「え?え?え?ひどい!新車なのに~~~!」
一里塚は絶叫した。
女の運転する車は女のアパートについた。
「...一里塚さん、ごめんなさい。あなたの買ったばかりの車を傷つけてしまって」
「...」
「おわびに今度のお昼の社食、私がおごりますね」
「...」
女はそう言うとスタスタと自分の部屋に帰ってしまうのだった。