若い2人の女性は正門を目の前にし、しばらくウロウロとしていたが意を決し正門前に向かって歩き出した。すかさず警備員が2人の前に立ちはだかる。
「どちら様でなんの御用ですか?」
「え?この家の者ですが......」
「は!しばしお待ちください」
警備員は自分の腰にぶらさげているハンディスキャナーを取り出した。
「2人ともそのまま顔を正面に向けていただけますか?」
若い2人の女性は警備員の指示に従った。すると警備員は持っていたハンディスキャナーでその若い女性2人の全身をなぞるようにした。
ピピピ......
警備員は持っていたハンディスキャナーの小さな小窓の液晶画面を見た。すると険しい表情になって画面から顔を上げたその瞬間。
「おとといきやがれってんだよ!!」
1人の若い女性は突然、叫んでその警備員に膝蹴りをかました。もう1人の警備員はあわてて警棒を取り出し応戦しようとするが別の若い女性は一瞬でその警備員の間合いに入り首をとって鳩尾に肘を入れた。
ドカッ!......
「あはっ!ごめんねぇ~」
倒れてゆく警備員に微笑みながらその若い女性は敬礼した。
「
「うん!」
2人は正門からダッシュして北条敷地内へと突入していく。
「ねえ、汐海。こんな簡単に中に入れちゃうんだね!」
「ん......でもなんかいつもと様子が違う、北条警備隊はこんなものか......それともあの2人が間抜けなのか......」
◇
「ん......確かに15時から面会の予約が入っていますね。でも、おかしいな。お館様に来客がある場合は事前に連絡があるはずなんだが......」
西の門では時哉と真樹男、香織が警備員を前にして敷地内に入る許可を求めていた。
「なんならお館様に直接連絡をとってもらっても構わない」
時哉は警備員にそう言った。
「いや、私どもが直接お館様と話すことはできないので私の上司に聞いてみる」
その警備員は自分のスマフォを取り出して電話を掛けるが電波が通じにくく上司とは繋がらない。
「......おかしいな?いつもは電波が悪くて繋がらないってことはないのに......」
「......時間に遅れるようなことがあればあなたも責任を追及されるのでは?」
「いや、しかし......確認をとらぬまま敷地内に入れてしまって何かあったら私は罪に問われると思いますので申し訳ないですがもうしばらくここでお待ちください」
「......ちっ」
すんなりとは入れてもらえず時哉と真樹男、香織はしばらく待つことになりそうなのでお互いの顔を見合わせ地団駄を踏む。するとその警備員のスマフォが鳴った。
「......はいはい、そうですか。わかりました」
その警備員はスマフォを切ると時哉と真樹男、香織に向かって話し出した。
「3人とも確認がとれましたのでお入りください。お待たせして申し訳ありませんでした」
「いやいや、職務に忠実なのは良い事ですよ」
時哉は安堵の顔色を浮かべ警備員に話しかけると真樹男、香織と供に敷地内へと入って行く。
「うまくゆきましたわね」
「さっきのニセの電話は旦那さん?」
「ええ」
「小西さんから聞いてはいたが凄いな。こんな凄いことが出来るなんて......」
「おほほほ、わたくしが選んだ旦那さんに出来ないことはないですわ~」
「ハハハ......これからどこに行けばいいんだろう。なにせ俺は中学校を卒業してからここには来たことがないので......」
「館内はわたくしがいた時よりもだいぶ変わっていますわね。情報によると地下にある研究施設に姉さまがいる確率が高いらしいですわ」
「地下に研究施設......そんなのがあるのか......あ」
時哉は以前、父に聞かされたことを思い出していた。
『ヒトの寿命を延ばす研究やクローン人間の開発などだ』
「......」
「時哉さん?どうかされましたか?」
しばらく無言になっていた時哉を香織は不審に思う。
「いや、なんでもないよ。香織さん。マキオ、この道をまっすぐでいいんだよね?」
「......トキヤさん、お願いがありますの」
「ん?」
「もう、これからはいい加減、『真樹菜』と呼んでくれませんか?」
「え?ああ、わかったよ。マキナ」
「はい」
顔を見ずにそう応える時哉に真樹男はにっこりと微笑んで返事を返すのであった。
◇
「大河原!!波香の検査はまだ終わらんのか!長すぎるぞ!」
繁一は傍に立っている軍服の将校に向かって怒声を浴びせていた。
「ハッ!事態が事態故に念入りに検査をしておりますのでもうしばらくお待ちくだされ」
「......波香が着床しているだと?あり得ん......そんなハズはない......だとしても何故相手はワシじゃないのじゃ」
繁一と大河原が見つめるその先には波香が丸い白いベッドの上に寝ており波香の身体には無数のコードが刺さっていた。
「......宗時の様子はどうだ?」
「変わりはないようです」
「そうか......もういいだろう牢獄から出してやれ」
「ハッ!」
大河原は繁一から命を受けると自分のスマフォから部下へと連絡する。
(たまに昔の優しい、お館様に戻られるような感じがするが......)
部下へ電話をしつつ大河原はそんなことを考えていた。
◇
「クローン人間ですか!そんなどうして!どうしてそんなことを!」
お館様の変貌、波香が帰ってきたのに宗時はあまり嬉しく思っていないことなど。不審に思った伍代沙織は自身の心のモヤモヤを晴らすべく自白剤を屋敷内から拝借しそれを使って宗時から事の真相を聞き出したのだ。
「私も......当初プロジェクトには参加していたが途中で外されてしまった......その後、責任者には大河原がなった......だから最近のことはよくわからないがお館様はクローン開発の目的として亡くなられた奥方、フランソワ様にそっくりな人間を生み出そうとしたのだ。研究は何年か続き何体ものクローン人間が作られた。ナンバーのみを与えられた者、北条の性を名乗ることが許された者、多種多様だ」
「も、もしかして、わ、わたしも?」
「.....そうキミもだよ。ナンバー5」
「イ、イヤアアーーーー!!」
沙織の絶叫は牢獄内に響き渡った。
◇
「ん?前方から誰か来るぞ!マキナ、香織さん、隠れよう」
時哉は前方から誰か駆けてくる足音に気づき他の2人に注意を促す。
ダッダッダッ......
その足音の主、2人は足を止める。どうやら時哉達の気配を感じ取ったようだ。
「そこに隠れている人、出てきなさい!」
若い女性の声に時哉は真樹男、香織の顔を見渡して頷ずきその女性の眼前に姿を現した。
「......!!」
そして時哉はその若い女性の顔を見て驚愕する。その女性は容姿、果ては顔まで波香にそっくりなのだ。
「ナミカちゃん?」
「誰だ?お前?私は
「シオミ......俺は北条時哉だ」
「ああ、お前か北条の家を勘当されたイケメンのバカ息子っていうのは」
「くっ。......キミたちは何故ここに?」
「研究施設をぶっ潰して北条繁一を殺す為だ」
「なんだって?」
「そういうお前たちは何しにここに来たのだ?」
「......俺の恋人、北条波香を取り返しに来た」
「なるほど73号の恋人はお前なのか」
「......73号?」
「北条波香は73番目に作られたクローン人間だ。私は403番目」
「く、くろーん?......ナミカちゃんがクローン人間だって!?」
「ああ、私も記憶を消され長い事、世に送り出されていたが37号に出会い、全てを思い出した」
その女性はツレのもう一人の女性を見て時哉にそう言い放った。
「
「クローン人間の......共鳴......?」
時哉の開いた口は塞がらなかった。汐海と美菜の口から出る言葉に驚きの連続だからだ。
「73号が繁一の奥方、フランソワに近い成功体らしく繁一の寵愛を受けていたが73号は本家を出奔。私は73号を超えるべく製造されたが73号を超えられなかったらしい。だから記憶を消され野に放たれた。......お前の隣にいる奴もクローンなのだろう?」
「え!?......わ、わたくしがクローン......お母様の?」
「そうだ、お前、名をなんという?」
「昔の名は『北条真樹男』ですわ」
「マキオ?男なのか?お前は?」
「今は女ですわ!」
「......なるほど性で失敗した為、お前には北条の性のみ与えられたんだな」
「......」
「お前は?」
次に汐海は香織に向かって問う。
「私は香織......北条香織。私も今、全てを思い出した。恐らく私が一番最初に作られた......」
「ふむ......私達は顔こそ違うが他は同じだ。身長、体重、胸の大きさ、爪を噛むクセなど......な」
「......」
「これからどうする?私達は利害が一致しそうなので協力しあわないか?」
汐海は時哉たちに共同戦線を提案してきた。時哉は真樹男と香織の見るとゆっくりと頷いた。
「わかった。こちらとしても助かる」
「よし、では行こう。研究施設はこっちだ。おそらく73号もそこにいる」
__汐海に促され5人は走り出した。波香のいる地下の研究施設へと向かって......
(続く)