「おい、霧島部長と経理の柴原が見学に来てるぞ」
「五反田が連れてきたんだってよ」
「まじか、五反田様様だな」
「ははは、あの、本人の前でひそひそ喋らんといてもらえますか?」
今日はある土曜日。
俺の入部したサッカー部の練習試合だ。
「って、サッカーってフットサルじゃないっすか?しかもメンバー俺入れて5人って」
「ん、そうだよ?...五反田君、どれくいらいできるの?ルール知ってる?」
「えと、オフサイドがないってのとスライディングタックルは禁止ってことと4秒ルールくらいは知ってます」
「それだけ知ってれば充分だよ。リフティングやってみて」
「あ、ハイ」
新井工事部長に言われてリフティングをやってみる。
「あれ?なんか身体が軽いな」
ポーン、ポーン、ポーン。
「え?何?経験者?」
「いえ、俺昔、野球やってたけど野球部の朝練とか体育の授業とかでサッカーばかりやってましたからね」
「ほう」
ポーン、ポーン、ポーン。
「なんかいくらでもできちゃいますが、まだ続けます?」
「いや、もういいよ。俺とパス練習やってみよう」
「はい!」
ばしゅ!ばあしゅ!
2,3本新井工事部長とパス交換をした。
「1VS1やろうか。キミからどうぞ」
「はい!」
俺は動画で見たリオネラ・マッシの緩急だけのドリブルを見よう見まねでやってみたら一瞬で新井工事部長をぶち抜くことができた。
「ごたんだあくん!キミすごいよ!ポジションは真ん中やってもらえる?役目は敵のボール奪取と味方へのパスの供給。そして自分で行ける時はドリブルでいっちゃっていいから」
「わかりました!」
俺は縁と霧島部長のところへ行った。
「部長!サッカーってフットサルじゃないっすか!」
「え?これってサッカーと何か違うの?」
「...まあ、同じようなもんですけどね」
「ハジメさん、ちょこっと何かやってたけどかっこ良かったですよ!サッカーもできるんですね!」
「いやあ、営業で外、歩いてたせいかな?身体が軽くて思ったように動けるんだ!」
「まあ、試合中ケガしないようにやりなさいよ」
「了解しました!霧島部長!」
「おーい、五反田君そろそろ試合始まるぞ!」
「今いきます!」
『これよりFCミストとオレンジバッカスの練習試合をはじめます!』
「宜しくお願います」
「シャッス!」
「お願いします!」
ピー!
ホイッスルが鳴り敵のボールで試合は始まった。
俺のポジションは中央。
開始早々、敵の動きが読めていとも簡単にボール奪取をした。
「ごたんだあ!」
味方のフォワードが俺を呼ぶ。
そいつがいい位置にいたので俺はスルーパスを送った。
味方のフォワードは敵のキーパーが出てきたところを一瞬でかわし無人のゴールへボールを蹴りこんだ。
ピー!
「ゴール!」
あのフォワードなかなかうまいな。
工事部の
「ナイッシュ!」
「ナイスパス!」
俺と榊はハイタッチを交わした。
「榊さん、ナイスシュート!」
縁は声を上げて応援していた。
榊はそれに手を挙げて応えている。
俺はそれに少し、ムッとしてしまった。
再び敵のボールから再開。
細かいパス交換をして敵のフォワードがドリブルで中央突破を仕掛けてくるが俺はチャージしてこそっと敵のボールをかっさらう。
くるっと反転してパスの出しどころを探すが榊はマークが2人もついていてもう1人のメンバーにもマークがついていた。
後ろに一旦戻すか?
いいや。
俺の前方が、がら空きなんで自分で行くしかないでしょ!
俺はドリブルを開始する。
相手のDFの1人は慌てて俺にチャージしてくるが緩急だけで俺は置き去りにする。
そして榊にマークについていた敵のDF2人は榊から離れて俺めがけて突っ込んでくる。
ファウルも覚悟してるような危険な感じがした。
俺はその2人を動画で見たクリソナ7のフェイントを真似してみたら交わすことができた。
後は敵のゴールキーパーのみだ。
今度は敵のゴールキーパーは前に出てこない。
俺は思いっきりゴールの左上を狙って蹴りこんだ。
ズバアアア!
ピー!
「ゴール!」
「きゃああああああ!ハジメさああ~ん!ナイッシュー!」
縁がたまらず大声を出す。
俺は縁にウインクをして投げキッスを送った。
「ごたんだあ!いいぞおーーー!」
霧島部長もやる気のない声援を送っていた。
どうせこの人はこの後の飲み会目当てだからな。
ていうか、もう缶ビール飲みながら観戦してるし。
結局、この試合は14対3というFCミストの圧勝で終わった。
「それでは、FCミストの初陣かつ初勝利を祝ってカンパーイ!」
「カンパーイ!」
新井部長のカンパイの音頭で祝勝会は始まった。
「柴原と五反田ってつきあってるん?」
俺は縁の隣に座っているが反対側の縁の隣に座っている榊がいきなり声を上げた。
こいつやっぱ縁のこと狙ってるだろ。
「はい!つきあってますよ!」
「まじかよ!俺、シバちゃん、狙ってたのによ!」
そういうと榊はどこかに行ってしまった。
...縁は即答してくれた。
うんうん、よしよし。
俺の彼女は一途だな。
そう感心していると縁は俺の手を握ってきた。
...俺の股間にも手が伸びてきている。
誰だと思ったら俺の左側にはいつのまにか霧島部長が座っていた。
「ちょっ、部長!」
「あらあら、こんなに大きくして・・・」
「ダメだ、完全に酔っぱらってる!縁、助けて!」
俺は隣の縁に助けを求めたが、縁も一緒になって俺の股間をまさぐりはじめた。
テーブルの下の痴女2人の愚行にみんなは気が付いていない。
みなさんはそれぞれの会話と食事に夢中だ。
「やばい、...でちゃう。ちょっ、2人ともやめてくれ!」
俺は2人の手を振り払い、大慌てでトイレに向かった。
「うあ、少しでちゃった」
俺は個室に入りトイレットペーパーでパンツを拭いた。
なんとも情けない姿だ。
トイレを出ると居酒屋に設置してあるTVの放送でなんと俺が出た番組の全国大会をやっていた。
「それではアストディアラーの諸君!健闘を祈る!」
あの司会者って『料理の天才』の
すげーな、この番組、結構金使ってるんだ。
しばらく俺はその場でTVを見ていた。
赤のコーナーはお坊さんみたいな人。
青のコーナーはOLだった。
居酒屋の客の騒ぎでよくTVの音声が聞こえなかったがお坊さんみたいな人が勝った。
どうやらこの人が優勝したようだ。
次回の参加者大募集!
しばらくTV画面にデカデカと表示されていた。
俺も営業でだいぶメンタル鍛えられたのではないだろうか。
というか前回霧島部長に負けた時に言われたことはすでにクリアしている。
ニートではないし今、社会人だし、童貞ではないし彼女もいるし。
うはっ、今、俺って最強じゃん?
優勝賞金で何を買おうかなんて考えながら、次の日、俺は参加申し込み書を送っていた。