地区予選1回戦。
「童貞!包茎!ブサメン野郎!」
なんとも口の悪い女の子だ。
見たところ相当幼い。
中学生だろうか。
だが、そんな罵倒では俺のサイコメーターは微動だにしない。
イケメンではないがそんなブサメンではないと自分では思っている。
『赤のターンです!』
審判が俺の順番を促す。
「口が悪くて友達がいない!彼氏もいない!貧乳!」
自分のターンは10秒なので相手のターン中に何を言うか考えておくのが効率的だが相手の罵声はヘッドフォン着用なので大音量で頭に響いてくるのでそうもいかない。
だが俺の先制攻撃が効いたようで相手のメーターは残り僅かになった。
なんだ?ちょろすぎるだろ。よくそんなんでこの番組に参加してきたな。
『青のターンです!』
「うううっ、...無職!ニート!社会のお荷物!お前なんかお前なんか死んじゃえーーー!」
精神的ダメージどころか笑いが込み上げてくる。
全然効かないぜ。と思っていたが俺のサイコメーターはちょびっと減少した。
なるほど笑いの感情でもサイコメーターは反応するのか。
...なら、次のターン試してみるか。
『赤のターンです!』
俺は宴会の席で今までハズしたことがない顔芸を試してみることにした。
罵倒しているわけではないのでこの方法が認められるかどうかだが、もし有効なら今後の戦いで相当有利になるはずだ。
「へ、へんなおじさん!」
「....ぶっ!あっはっはっはっはっは!」
女の子のサイコーメーターはみるみるうちに0になった。
『赤の勝利です!』
「いよっしゃ!」
良かった。反則ではないみたいだ。笑いの感情もOKならこりゃあ地区優勝も夢ではないぞ!
俺はスキップしながら選手控室へと戻った。
「五反田くん、1回戦突破おめでとう。...なにあの顔」
「ハハハ」
霧島部長はクスクス笑っている。
選手控室では音声は聞こえないが映像だけのモニターが設置してあって対戦画像が見ることができるのだ。
「霧島部長はいつ試合ですか?」
「10分後くらいかな?」
「そうですか。がんばってください!」
「ありがと」
ふと辺りを見渡すと周りが俺たちのことを見ていた。
話をしているのが俺たちぐらいだから珍しかったのだろうか。
「時間ね。行ってくるわ」
「ご武運を!」
俺は霧島部長の対戦画像を映しているモニターを刮目した。
霧島部長の対戦相手は中年のスーツを着たサラリーマンだった。
するとなんと最初の相手のターンで霧島部長のサイコメーターは0になった。
「えっ!ちょっと、あの人メンタル弱すぎだろっ」
俺は思わず声がでてしまった。
しばらくしてトボトボと選手控室に霧島部長はやってきた。
「お、おつかれさまっす!」
「...どうも」
「...なんて言われたんですか?」
「言えるわけないでしょ!・・・あ!ごめんね」
『負けた選手は自分の荷物を持ってすみやかに退室してください!』
選手控室に待機している運営の人が霧島部長にそう言った。
「あ、すみません!...じゃ、五反田くん、がんばって」
「あ、はい」
そう言うと霧島部長は選手控室を出ていった。
霧島部長が1回戦負け。
意外な結果だった。
でも、気にしてはいられない。
霧島部長の分も俺がやってやる。
そうだ優勝したら霧島部長も一緒に海外旅行に連れてってやろう。
その後も俺は順調に勝ち進んで行った。
そして準決勝。
あと2つ勝てば全国大会出場だ。
俺の準決勝の相手は長髪ブロンドで揉み上げをカールしたとても美しい女性だった。
「おーっほっほっほ。負けませんわよ!」
試合開始前に俺と握手したその女性は開口一番そんなふうに言った。
「お美しい女性を相手に汚い言葉を吐くのは恐縮ですがこっちも全力でいかせてもらいますよ!」