※この作品はR-18です。

罵倒せよ!アストディアラー!   作:億田夢人

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第19話 惜別

 「縁、突然で悪いが俺と別れてくれ!」

 

 俺は縁の部屋でまっすぐに縁の目を見てそう言った。

 

 「な、なんでですか!」

 

 突然、面と向かって叫ばれて縁は驚いていた。

 

 「アストディアラーで優勝する為だ!」

 「?意味がわかりません!」

 

 「縁の事は大好きだよ!嫌いになったわけじゃない!」

 「『あすとでぃあら』で優勝するのと私とどっちが大事なんですか!」

 

 「両方とも大切だよ。できれば両方ともうまくできればいいんだけどそれは無理なんだ!」

 「どうしてなんですか!」

 

 「...それはあまりにもキミが魅力的すぎて俺の心がキミの存在によって安定しないからだ!」

 「なんですかそれ?そんなこと言われても全然嬉しくないですよ。...ハジメさんは私がお荷物だと言ってるんですよね?」

 

 「...どう、とらえてもらっても構わない!俺は会社も辞めるつもりだ!」

 「え?せっかく係長になったのに?」

 

 「ああ!この会社も仕事もここで働いてる人たち...縁は別にして全員、嫌いになっちまったんだ!」

 「そんな...」

 

 「そういうクズ社員、縁は嫌いだろ?だから別れてもらいたい」

 「...本心で言ってるんじゃないですよね?」

 

 「いや、本当さ!」

 「そんなに『あすとでぃあら』で勝ちたいんですか?」

 

 「ああ、勝ちたい」

 「...聞かせてください。ハジメさんの真意を。...ダメですか?」

 

 「...あの大会では少しでも自分に負い目があるとそこを突かれる可能性がある。俺はその負い目を全て排除して次の大会に参加したい。そして優勝したい!」

 「なんでそこまでして勝ちたいんですか?お金だったら今の会社で頑張ればハジメさんだったら年収で1000万円は稼げると思いますよ?」

 

 「金じゃないんだ!」

 「理解できません!」

 

 「理解できなくてもいい!俺と別れてくれ!」

 「イヤです!」

 

 「俺は会社辞めてプーになるよ?それでも別れないの?」

 「....」

 

 「仕事できない奴は好きじゃないんだよね?」

 「...はい。どうしても考え直してくれませんか?今の会社で2人で頑張って働いて経済的に余裕ができたら赤ちゃん作って。...そうですね、できれば男の子と女の子が1人ずつ欲しいな」

 

 「...」

 「で、一家4人で明るくて幸せな家庭を築いていきましょうよ!」

 

 ぐっ、それは確かに幸せそうだ。

 一瞬、心を動かされるが俺は強い意志でそれをはねのけた。

 

 「縁、君の理想の将来のビジョンに俺を巻き込まないでくれ!」

 「巻き込むってそんなヒドイ」

 

 「とにかく会社は辞める。それでも俺についてくるかい!?」

 「...それは...」

 

 「なら、今日でお別れだ!会社には明日、退職願いを出す!それではさらばだ!」

 「あ!ハジメさん!」

 

 俺はそそくさと縁の部屋を出た。

 縁は...追ってくる気配はない。

 

 いいんだこれで。

 

 次の日、俺は会社に辞表をだした。

 俺はすでに係長になっていたので退職願いを辞表に書き直した。

 

 「ごたんだあくん!考え直してよー」

 「なんでやめんだ!コラ!せっかく俺の右腕になってくれると思ったのによぉ!」

 「残念ね。でも君にとってはあの番組でそこまでしても勝ちたいっていう意味があるのね」

 

 いろんな人から俺が会社を去るのを惜しまれた。

 後は、浅野さんだ。

 携帯で電話しても繋がらなくなってしまった。

 とにかく決着をつけなければならない。

 俺は浅野さんの自宅まで行ってみることにした。

 平日のこの時間なら旦那さんも自宅にいないだろう。

 

 ぴんぽーん。

 

 「はーい、どちら様ですか?...あっ!」

 

 マスクを着けているが懐かしい顔が玄関先から出てきた。

 涙が出そうになる。

 

 「あ、浅野さん!無事だったんですね!」

 「え、ええ...どうしてきたの?」

 

 「決着をつけにきました!」

 「決着?」

 

 「これ、少ないですけど!」

 

 俺はさきほど銀行からおろした金の入った封筒を浅野さんに渡した。

 

 「なにこれ?」

 「中絶費用です!」

 

 「え?なんで知ってるの!?」

 「ある人から教えられました」

 

 「でも、これは受け取れないわ。事の始まりは私から誘惑したんだもの」

 「いいえ、いいんです!これはケジメなんで!...金で解決っていうのは不本意ですが俺の気がすむんです!」

 

 浅野さんは俺が渡した封筒をチラッと見た。

 

 「ちょっとこれ、だいぶ多いんじゃない?」

 「いいんです!」

 

 「それじゃ俺はこれで!...旦那さんと良い方向に向かうよう、影ながら祈ってます!」

 「うん、ごめんね。ありがとう、のうごう・・・五反田君も元気でね!」

 

 「はい!...もしも、生まれ変わったら今度こそ一緒になりましょう!」

 「...あはは、うん!」

 

 俺は振り返りダッシュで浅野さん宅から離れた。

 浅野さん...マスク越しからかなりの青あざが見受けられた。

 もしかして旦那さんに...

 余計なことは考えまい。

 これで何もかも不安要素は排除したと考えなくては。

 

 

 

 俺は準決勝で敗れたあのブロンドの女の放った言葉を思い出していた。

 

 「お付き合いしている女性がいらっしゃるのに結婚なさってるご婦人を妊娠させてしまうなんて、なんてクズな男なんでしょう!」

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