「それではゲームの説明をはじめさせて頂きます。
初回ですのでこちら側もいろいろと試行錯誤している段階でして至らぬ点があるかと思いますが何卒ご容赦願います」
俺と同じ年くらいの男性が俺を含め40名はいると思われる人数を相手に懸命に説明を開始した。
「まず、本日は金曜日ですが準々決勝よりその後の勝者は明日、明後日の土日、身柄を一時拘束させて頂きます」
ざわざわざわ。
場内にざわめきがおこった。
「対戦時は互いの氏名すら公表しませんが念のために対戦相手の情報を外部から取り入れることを出来なくするためです。逆もまた然り。
よって土曜日曜は電話の届かない特殊な宿舎で過ごしていただくことになります。
なので金曜日夜までに準々決勝進出者は家族、職場の同僚、上司などに事前に自分の安否確認を行ってください。
...納得できない方はここまでお越しいただいて申し訳ありませんが退場して頂いて結構です」
ガチャっと扉の開ける音がした。
誰か退場したようだ。
「...2名の方が退場なさったようです。致し方ありませんね。さて説明を続けます。
地区予選準々決勝よりTVでオンエアされますので一度でも準々決勝まで進んでしまうとその後当番組に参加されても事前に相手に自分のことを調べられる可能性があります。
そうなるとゲームの性質上、相当不利になると思います。ご容赦ください」
まあ、そうだろうな。
賞金の為には探偵を使ってでも身辺調査をするだろう。
そして弱みを握りそこを突く。
誰でも考えそうな簡単な方法だ。
「これより1室に順番に1組ずつ入っていただきます。
1室の中に入るのは対戦者2名と審判員1人だけです。
続いて対戦の流れですが、まず皆さんにハコに入ったクジを引いてもらいます。
そのクジにはA~Zまでの英文字が書かれた物が2組あります。
Aから順番にバトルルームに入ってください。
バトルルームにはすでに審判員が準備していますので、審判員の合図と供にバトル開始をしますが、その前にじゃんけんで先攻後攻を決めておいてください。
バトル開始後は10秒づつ相手とターンを繰り返します。
相手のターン中は喋ってはいけません。
相手の馬事雑言をしっかりと受け止めてください。
喋ったら即失格というわけではありませんが審判員の判断に委ねられます。
審判員の指示に従ってください。
...以上で説明は終了です。
何か質問はございますか?」
中年のオジサンが立ち上がった。
「賞金は何回勝てばもらえんだ?」
「4位つまりベスト4進出で5千円、準優勝で7千円、優勝で1万円です」
「1000マンじゃねえのかよっ!」
「1000万円は全国大会優勝で獲得できます。そして全国大会は各地区優勝者だけ出場できます」
「もしよぉ、相手のことを調べることができたらどうすんだ?」
「相手のことを調べてもそれは失格ではありません」
「じゃあ、相手のこと調べてそこを突いてもいいんだな?」
「一向に構いませんし、問題ありません」
中年のオジサンは納得したようで席に座った。
「...他に質問はございますか?...ないようなのでこれから対戦の組み合わせ及び順番を決めますのでみなさん1列にならんでクジを引いてください。
対戦順番はAからになります」
俺はクジを引いた。
『F』だった。
バトルルームは5室あるので俺の順番はすぐにやってきた。
係員にうながされ青色の扉から部屋に入った。
反対側の赤色の扉からはぱっと見、綺麗なオネエサンが入ってきた。
「それでは対戦者同士握手をしてください」
審判員が事務的に話した。
「よろしく」
「よろしくね」
オネエサンはニコっと笑うがすぐに厳しい表情に戻った。
結構、俺の好みかもしれん。
「それではサイコメーターを心臓のある側の腕にとりつけてください」
俺とオネエサンはいそいそとサイコメータを取り付ける。
「取り付けが終わったようですね、それでは先行後攻かを決めます。...最初はグー!じゃんけんぽん!」
俺が勝ったので先行だ。
「それではバトルスタート!!」
え?もうはじまったの?俺が先行だから何か言わなければ!
「えっと、そんなに美人なのにこんなところへ来るなんてよっぽど性格が悪いのか?」
「それともクレカで服とかたくさん買って支払に困ってるんじゃないのかな?」
ブーッ!俺のターンが終了した。
相手のサイコメーターは....1ミリも減っていない。
ポーン!相手の女性のターンが開始。
「なにこんなとこへ来てんだよ!クソニート!お前のおかーちゃん泣いてるぞ!」
「なに会社クビんなってんだよ!あ?それともやめたのか?同僚や上司にいじめられてよ!」
「そんなだからモテないんだよ、お前は一生童貞で墓場いきだな!このチ〇カス野郎!」
...どの部分が応えたのか俺の名誉の為にここでは書かないが俺のサイコメーターは一気に0になった。
「赤の勝利!」
審判は赤旗を上げて判定を下した。
「やったあー!フフフ、ごめんね、君」
俺と対戦したオネエサンはぺろっと舌をだし申し訳なさそうな表情をした。
「いえ!勝負ですから」
くしくも記念すべき俺の戦いは1回戦負けという無残な結果に終わった。
賞金で生活費にしようなんて考えが甘すぎた。
とりあえず、また明日から職探しをはじめなければ。