俺は36社目の会社の面接に行きようやく再々就職することができた。
今度は製造メーカーのシステム開発部門だ。
営業はもうやらないことにした。
そこでほそぼそと目立たなく仕事して生きていくつもりだ。
次のアストディアラーまでは。
だがしかしそこの会社でも経理の女性社員に目をつけられた。
そんなに俺ってもてる男だったっけ?
「五反田さんってお付き合いしてる人いないんですか?」
「彼女はいないし、募集もしておりません!」
そうスッパリ応えてスタスタと俺は行ってしまった。
弱みを持たないためにもあんまり他人と関わりたくない。
自宅に帰っても極力、パソコンでのAV干渉は控えた。
抜くときはトイレにこもって縁(ゆかり)や浅野さんとのセックスを想像して抜いていた。
そんな感じであまりにも人との接触を避けていた為
「五反田君、もっと他部署の人とコミュニケーションとってくれないと仕事がスムーズに進まないよぉ」
と室長に言われたのでちょっとだけ他人との態度を軟化することにした。
給湯室で自分のお茶をついでいると経理の女性社員が近づいてきた。
「ちょっと、五反田さん、聞いてくださいよ!」
「どうかしたんですか?」
「うちの課長ったらうちの会社の売掛管理も自分でできないくせにデカイ顔してるんですよ!」
「ハハハ、死ねって感じですね」
俺がまともに返答したのでその女性の顔はパアっと嬉しそうな顔して次のような言葉を言ってきた。
「今晩、飲みにいきません?五反田さんといろいろお話したいです」
「申し訳ないけど承服できません!ごめんなさい!」
そうスッパリ応えてスタスタと俺は行ってしまった。
なんなんだいったい。
ここでこの人と付き合ってしまったりしたらなんで縁と浅野さんと別れたのか意味がなくなる。
申し訳ないが縁や浅野さんのがこの女性より遥かに魅力的だ。
しかしこの人もさんざん俺に冷たい態度とられてるのに性懲りもなく俺に話しかけてくるよな。
アストディアラーに出たら結構いいところまで行くんじゃないか?
「おいおい、いいのか?経理のお局様をあんなに無碍にして?後で仕事がやりづらくなるよぉ~?」
その様子を見ていたらしく俺と同時期入社の営業の加戸(カト)がそう言ってきた。
「うわっ!びっくりさせるなよ、カトー。だってさ、気を持たせたら悪いだろ?」
「へえ」
「気を持たせずに女子社員と仲良くなる方法を教えてくれ」
「んんー。それはその女子社員に興味対象外になればいいんじゃね?」
「そうか!!なるほどな!サンキュ、カトー」
「お、おう」
翌日から俺は寝ぐせ全開のボサボサ頭にしスーツはヨレヨレ、肩越しには塩を振りまき、あたかもフケが積もっているようないでたちで出社した。
「...五反田君、もうちょっと社会人として身だしなみに気を付けてくれないかなあ。鼻毛もでてるよ?」
室長にそう注意された。
「いや、まず形から入らないと...」
「ん?言ってる意味がわからないんだが?」
「いえ、なんでもありません!以後、気をつけます」
口では室長にそう言ったものの3日くらい俺はこのスタイルを変えなかった。
その間、例の女子社員は俺に近づいてこなかった。
よし、明日からは髪型は直すとして、他はそのまま、風呂には1カ月くらい入らないでおこう。
しばらく俺は目立たないように仕事に打ち込んだ。
プログラム開発中は主にパソコン相手なので都合がよかった。
ある時、カトーに言われた。
「お前、におうな?風呂入ってる?」
「いや、入ってない」
「へ?おまえんち風呂ないの?」
「いや、あるよ」
「じゃあ、入れよ」
「いや、入らない!」
「なんでだ?」
「面倒だから」
「あほか」
「カトー、お前から五反田は不潔な男だと噂を流してくれ」
「はあ、なんで?」
「そのほうが俺には都合が良い」
「変な奴だなー」
「ああ、俺は変な奴。ありがとう」
「意味わからん」
俺との会話が終わったらちゃっかりカトーは女子社員の群れの中に飛び込んでいた。
「なあなあ、五反田、あいつ1カ月風呂入ってないんだってよ!」
「キャー、ヤダアー」
「汚ぁ~い」
「不潔」
「キモーーーーーイ」
おい、キモイってなんだよっと思ったが俺は全然かまわない。
てか、いいぞ、カトー。グッジョブだ。
これで俺に近寄ってくる女子はいまい。
俺はそこそこ残業し自宅のアパートへ帰った。
なにげにPCを立ち上げアストディアラーの攻略サイトを見る。
俺の目にはいったのは歴代優勝者の顔写真付きプロフィールだった。
第1回優勝者 禅昌寺住職 禅昌寺幸隆
その後、政治家からの裏金が発覚し逮捕。
第2回優勝者 主婦 根津川真樹菜
過去に性転換手術を受けている。元は男。夫は某有名IT企業の社長。
え?あのブロンド女、元男だったのか。
もうちょっと先にその情報があれば...
てか、今だからこの情報がわかるんだろうな。
優勝したらネットで晒し者になるとはな。
本当にネット社会は怖い。
俺はこのまま何事もなく目立つこともなくこの会社で1ヶ月働いた。
第3回アストディアラーに向けて良い準備ができている。