「ちょ、カジノってセンパイ!サボルんですか!」
「馬鹿野郎サボリじゃねえよ。勉強だ勉強。社会勉強だよ」
「そんなあ、センパイ。外回って営業のノウハウを1から俺に教えてくださいよ~」
「馬鹿野郎、どっちにしてもタダで教えられるか!」
「センパイ...さぼってたことチクリますよ?」
「ははは、俺はな。告(ちく)られてもいっこうにかまわねえんだわ」
「は?なぜですか?上司に怒られますよね?」
「怒られるわけがない。俺の機嫌をそこねて俺がやめたら会社の損失なんだわ。それぐらいわかれ」
「ハッ!そうか、センパイがこの会社の売り上げの稼ぎ頭だから...」
「そゆこと。逆にお前みたいなのがやめてもらったほうが会社の為かもわからんな」
「...俺だって会社に貢献してみせますよ」
「どうだかな。まあ、俺みたいに辞めてもらっては困るくらいの人材にならんとな。オンリーワンちゅうやつ?」
「はい!」
「やめても変わりはいくらでもいるっちゅう人材じゃ、アルバイトの時給とかわらんよ」
「確かに」
「ちゅうわけで俺はこの会社じゃやりたいほうだいっちゅうわけだ。さあ、いくぞ」
俺たちはマイナンバーカードを提示しカジノ場へ入場した。
「俺が見てているからやってみ?ゲームはトランプを使うやつにしろ。全部機械任せのスロットやルーレット等はやっちゃダメ」
「わかりました!えっと...」
「まずはあそこで金とチップを交換してこい。ブロンズチップは1枚100円、シルバーは500円ゴールドは1000円、プラチナは1万だ」
「わかりました!...あの、センパイ」
「なんだ?」
「詳しいですね?」
「馬鹿野郎!常識だ」
俺はとりあえずブロンズを20枚シルバーを10枚ゴールドを3枚という配分で1万円をチップに交換した。
「どうですかセンパイ!?このチップの配分!?」
「どうですか?と言われても『うましか』としか答えられんな」
「うましか?...馬鹿ってことですか?」
「そのクソつまんねえ配分じゃそうだろうよ」
「じゃあ、センパイだったらどんな配分でいきます?」
「それはな...企業秘密だ。教えられん」
「なんでですか!」
「...タダじゃ教えられんな」
「センパイ!ケチですね!」
「馬鹿野郎、当たり前だ」
俺たちはなんやかんや言いながらブラックジャックの席についた。
ブラックジャックのルールは平凡な普通のルールだった。
1ゲームきりでもOKなので突然、大金をかけて離脱していくというお客さんも結構いる。
ただし1ゲーム当たりの上限が決まっていて俺たちの地区では最高ベットは100万円までだった。
「BJ(ブラックジャック)やりますよ、俺!」
「まあ、いいだろう」
「それではベットを(ミニマムベットはブロンズチップ1枚)お願いします」
ディラーがそう告げる。
テーブルには俺の他に主婦の友達同士と思われるオバサン2人と若い大学生かニートのにいちゃんが1人。
シャッシャッシャと手際よくカードが配られる。
俺の賭けたサークルには...なんと初っ端からダイヤの10とハートのエースでブラックジャック(21)だ。
当然俺は手札をスタンドした。
「くはあ、もっと賭けときゃ良かった...。ん、2枚でのブラックジャックは配当1.5倍?こういう場合はどうなるんですか?」
「50円分はお客様が最初からお金で交換できないプラスティックチップ1枚になります。もちろん後で交換できますよ」
「なるほど」
「でも、お客様、今回は残念ですが...プッシュ(引き分け)です」
そういうとディラーはクラブの10とダイヤのエースの自分の手を公開した。
「あああああああ!!!」
隣のにいちゃんが相当がっくりきてた。
プラチナ3枚賭けてたからな、...大丈夫か?
隣のにいちゃんは肩を落としてトボトボとカジノ場を出ていった。
「よし、次は2枚で!」
俺はブロンズチップを2枚サークルに乗せた。
「なんだ、200円か、しみったれた賭け方だな」
「俺には俺の考え方があるんです!」
シャッシャッシャとカードが配られる。
俺の手は16だった。
「Hit or Stand ?」
「ヒットでオナシャス!」
シャ!
新たに配られたカードはクラブの5。
「おっしゃああああ!21!」
2枚セットのBJ(ブラックジャック)には勝てないが21なので強い。
ディーラーは4枚目を引いて21を超えての『バスト』だった。
俺の200円勝ち。
「むふ、むふふ。センパイ面白いっすね!BJ(ブラックジャック)!」
「こりゃあ、ダメだな。完全な運ゲーだわ。...あっちのポーカーいくぞ」
「ええ?」
「俺たちは『ギャンブル』をやりにきたわけじゃない」
なんで、ここカジノ場だぜ?遊びにきたんじゃないの?
俺にはセンパイの考えがさっぱりわからなかった。