「んぁあぁぁっ❤」
部屋には甘い匂い、甘い声が充満していた。
じゅるじゅると何かを啜る音が響く度に、それは部屋を満たしていく。
軋むベッドの上では、一人の女がうつ伏せにされ、肉付きの良い尻を突き出すようにして男の責めるがままにされていた。
光の加減によっては、緑にも見えるセミロングほどの黒髪は、四つに分けて括られフォーサイドアップ。
それはどこか柿のへたを思わせる。
出るものは出、引っ込むものはそのように、紛れも無く体は成熟した女性のものである。
だというのにまだ全体的に青臭さを感じさせるという、不思議な女だ。
艶めかしく淫靡にくねる愛らしいお尻に顔を埋め、男の舌が菊門を執拗に舐り続けていた。
本来不浄なはずのその穴に、躊躇いもなく舌を割り入れ、啜り立てると女の背が反り、口からはカチカチと歯の鳴る音が漏れてくる。
「ゆ、許ひてぇ❤ ひぃっひぃぃんっ、ひぃ、ひぃぃ、あぅぅっ、あうぅ❤ も、もぉ、ゆ、許ひぃぃっ❤ やめへぇ、じゅ、じゅっと、お、おかひくぅ、な、にゃって、るぅ❤」
何を言ってるんだろう、この女は?
何でやめなきゃいけないのだろう?
最初に尻穴をほじって舐めてくれと頼んだのは自分じゃないか。
そう男は思いながら、女の哀願を無視して、本来は汚物を排泄するためだけの穴に、なおも舌を深く深く捩じ込んで啜り立てる。
すっかりほぐれきった括約筋が健気にも抵抗を示すが、それも男を喜ばせるアクセントとしての意味しか持たなくなっていた。
儚い抵抗を容易く捻じ伏せ、夢中で舌を動かすと、その度にねっとりとした甘みが味蕾を刺激する。
同時に蠱惑的な甘い匂いが立ち昇って男の理性を融かしていく。
どれだけそうしていたのか・・・・・・やがてその甘味もだんだんと薄れてくると、男はもっと寄越せと菊門を口で覆うと、じゅるじゅると音を立てて吸引する。
「にゃ、にゃいぃいい❤ も、みょ、うぅうう、にゃいからぁああ❤ わらひのなかぁ、みょぅ、にゃいからぁ❤」
もう無いから、吸わないで、吸わないでと懇願する女を無視して、もっと出せとばかりに女の下腹部に手を滑りこませる。
そこでようやく男は女の異形に気付いた。
一見すると無毛にも見える、うっすらとした産毛の感触だけで、あるはずの感触がなかった。
本来なら女性器が存在するはずの場所は、なだらかな女らしい曲線を描くのみで、剥きたての茹で卵のようにつるりとした、まるでのっぺらぼうのような、すべすべした肌だけが広がっていた。
興奮しきった男はその異形にむしろ興味を持ち、無穴の女性器を撫で上げてその感触を確かめる。
「ひぃ、しょ、しょれぇ、だ、だめぇ、ぞわぞわするぅ❤」
「は、ははは、穴も何にもなくてつるっつるで。まるでのっぺらぼうみたいなおまんこだな」
「にょ、にょっぺりゃびょうじゃぁ、ぬぁいもん・・・・・・た、んぅ・・・たん、こ、ころりん、だもん」
呂律の回らない女の言葉に男は問い返しながら、つるりとした性器、いや
「何、ころりんだって?」
「た・・・んぅぁ❤ た、たんたん、こ、ころりんぅぅ❤」
「タンタンコロリンね・・・・・・それってなーに?」
「よ、ようかぃい。妖怪でひゅぅ・・・ひゃ、ひゃきのきのよ、妖怪ぃ❤」
ひゃきのき、というのがよく分からないが、とにかく妖怪だと理解した男だが、興奮しきった頭はそれを大した問題とは認識しなかった。
何の先触れもなく訪れた、不思議な女。
甘い匂いを放ち、蕩けるように魅入られた。
疑問に思う心を押しのけて、言われるがままに女の尻穴にむしゃぶりついた時点で、もう男は戻れないところに来ていたのだ。
「そうか、君は妖怪なんだ」
何でもないことのように言いながら、手を離し、柔らかい尻肉を割り開くと、散々舌で嬲り尽くされたその愛らしいすぼまりは、ぽっかりと穴を開けて、ひくひくと誘うように蠢いている。
「わざわざお尻の穴を舐めさせにやってくるド変態妖怪なんだ」
ほっそりとくびれた腰を掴み、尻穴に肉棒の切っ先をあてがう。
それだけで、腫れ上がった肛門の粘膜は、ちゅうちゅうと男の欲望に吸い付いて引きこもうとしてくる。
「うぅぅう、そんなこと言わないでぇ」
髪から覗く耳朶やうなじは、長い長い愛撫の快楽によるものとは別のものによって、さらに赤く染まっていく。
「んぁあああ!?」
そんな
反射的なものなのか、女の足がぱたぱたと跳ね上がり、まるで泣くように嬌声を上げる。
奥まで入ったそれを、ゆっくりと引き抜いていくと柔らかな腸の肉が包み込むように絡み付いて、快楽を与えてくる。
亀頭の雁首が見えるところまで引き抜くと、体重を乗せて一気に、容赦なく肉棒を突き立てる。
それでも小さな肛門の皺は完全に伸びきって、男の逸物を楽々と迎え入れていた。
「あああ・・・・・・こ、こんなのぉ❤」
「お尻の穴しかないアナルセックス専門のド変態妖怪なわけだ」
その言葉に否定を返す前に、男は腰を抱え、上に下に右に左にと角度を変えては何度も何度も突き込み、躊躇なく串刺し刑を実行していく。
発情した牝の声で絶叫し、腰が震え、足がガクガクと震える。
張り出た雁首が淫肛肉をぐりゅぐりゅと掻き毟り、その度にきゅんきゅんと括約筋が収縮して肉茎を締め付けて喜ばせにくる。
「おぉォォ! あおぉお!!」
幾度も絶頂を向かえて、発狂しそうな程の性感の波に、体中から搾り出されたような獣地味た喜悦の声を上げて、髪を振り乱す。
奥の奥まで容赦なく、体重をのせて男の欲望が何度も何度もピストンされていく。
舌で散々舐られてもたらされた絶頂以上の快楽に、全身からじっとりと汗が滲み出してくる。
「この、この尻穴妖怪め。なんていやらしいんだ。このドスケベ妖怪」
「ひ、ひがうもん❤ ひ、ひりあな、ひょ、ひょうかい、じゃぁ、にゃいみょん❤ はぁきのきぃだも、ん❤」
「どう違うんだ、この、この」
「にゃぁ、にゃるもん❤ ひゃ、ひゃんと
「へぇ・・・・・・おまんこもその内、できるってこと? はは、やっぱりドスケベ妖怪なのはかわらないじゃないか」
甘ったるく茹だって、蕩けきった女妖の体を強引に起こして、背面座位の形になる。
「ひ、ひゃぁ・・・こ、こりぇ、ふ、
体重をかけて、男根に座る体位となったため、奥までみっちりと肉塊で埋められて、全身から汗を吹き出して、紅潮した内股をぴくぴくと痙攣させて快楽に震えていた。
その淫らな姿に堪え切れず、男は腰を揺すってさらに奥へ奥へと入り込もうと、ぐりぐりと腸壁を掻き回す。
「あぁぁあああーーっ、だめぇっ❤」
汗の滲んだ首筋から、甘い匂いが漂ってくる。
それを舌で軽くぬぐってやると、甘い味が口の中に広がって鼻孔から匂いが抜ける。
その味と匂いに誘われ、むしゃぶりつくように、首筋に吸い付いて汗を啜ってやると、ビクビクンと女の体が跳ねた。
男は唇を窄め、ちゅうちゅうと首筋から、そのほっそりとした撫で肩に吸い付いて。
まるで樹液にたかる虫のように。
その甘い体液を味わい尽くそうと。
女の肩に顎を乗せて、軽く押さえつけるように体重をかけると、その程良く張り出した乳房を手で持ち上げ、その先端を啄んだ。
「ひぃん❤」
体重をかけられ押さえこまれてしまい、ただでさえ快楽で茹で上がり上手く動かない体では、その敏感な突起を唇でむしゃぶられても、体をひねって逃れることもできない。
男の舌が蠢き、女の体液を吸い上げる代わりに、自身のねっとりとした唾液を塗り込みながらピンクの突起を蹂躙してやると、男を咥え込んだ腸壁が何度も締め付けて、精を絞り出そうと動く。
とうとう男も堪え切れずに、その精を女妖怪の尻穴へと注ぎ込む。
ドクンドクンと脈動するたびに精巣から送り出された液体が陰茎から放出され、敏感な粘膜に精液の熱さが染み込んでいく。
「あぁぁあああ・・・・・・熱ぃぃぃ❤ お、おひりぃ・・・熱ぃよぉ❤」
小さな口が裂けるほどに大きく開かれ、白く歯並びの良い歯を覗かせながら、戦慄くようにブルブルと快楽に震えて、ぐったりとその体から力が抜け放心してしまった。
やがて口元から滴る涎に目を付けた男は、その顔に舌を這わせていく。
女が口内を蹂躙されて、また何度も何度も絶頂させられるのに、さして時間はかからなかった。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
空がゆっくりと白み始めていた。
男が気が付くと、女はどこにも見当たらない。
乱れた寝床と、何度も何度も事に及んだ惨状だけが、女の存在を証明していた。
意識が失くなるまで励んたせいか、流石に少しばかり痛む頭と、疲労のためにふらつく足に苦労しながら、女の姿を求めたのか、あるいは何の気なしにだったのかは、本人にも判然としなかったが、庭へと足を向け縁側の窓を開けた。
情事に火照った体に、ひんやりした夜気を孕んだ風が、心地良く感じられる。
庭へ出てみると、地面に何かが散乱しているのが目に付いた。
それは熟した柿の実である。
庭に生えた柿の木を見上げると、たわわに実っていたはずの実は全て無くなっていた。
そして地面に落ちた柿の実には、一つの例外もなく何かに啜られたように、抉れた痕。
「・・・・・・なるほど、甘いわけだ」
そしてあの女が口にしていた、ひゃきのきというのは、柿の木のことであったかと、男は納得した。
これが最初の一年目の出来事である。
タンタンコロリン、タンコロリン。
誰そ彼、柿をタンタン、コロリンと。
柿樹の精霊タンタンコロリン。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
「あ、あの・・・・・・きょ、去年みたいに一晩で全部食べちゃ駄目ですからね。も、もう少しゆっくりお願いします」
翌年の同じ時期。
柿のなる頃。
その女は再び現れた。
柿の妖怪だから・・・・・・という理由とは明らかに違う理由で、朱に染まった顔をして。
まだ年若い妖怪故に固有の名前は無いという、タンタンコロリンのために男はリンという名を付けた。
そう、妖怪に名を付けてしまったのだ。
もう、リンは男を逃がそうとはしないだろう。
リンの浮かべた蠱惑的で妖美な笑みが、言葉にせずともそのことを物語っていた。
化生とはそういうものだ。
妖怪に魅入られるとはそういうことなのだ。
幽霊は人に憑くものだが、妖怪は特定の場所に現れ、そこに近付かねば害はない。
俗にそのような説を唱える者もある。
だがしかし、それは誤りだ。
幽霊とて土地に縛られるモノもあれば、妖怪とて人に憑くモノもある。
一度ひとたび、魅入られたなら・・・・・・そう容易に離れることはない。
例えそれが、地に根を張り動けぬ柿樹の、精であろうと。
樹木であろうとも、想えば空をも舞ってみせるものなのだから。
いずれにせよ妖かしに魅入られた者の末路は
「イ、イぐゥうウううぅうゥ――――――――も、もう、許ひて、許ひてぇ、あぁぁアア、はなじでぇええ、た、たひゅけてぇええ!!」
魅入られた者の末路は
「ごめんなひゃい、ごめんなひゃい!! おまめひゃんもういじらないでぇ!! いグのとめでぇええええ!!」
末路は・・・・・・
「ーーーーーーーーーーー~~~~~~!!」
まあ問題はなさそうである。
ズズッと、お茶を啜る音が響く。
陽は沈みかけ、逢魔ヶ刻を向かえている。
窓から差し込む光は部屋を昏い黄に染め、幻想的に輝いていた。
間もなく宵の口となろう。
また一口、湯飲みを口に運ぶ。
さっぱりとして、喉越しのいいお茶である。
湯飲みの中で揺れるお茶の波紋に、ふと口元を綻ばせる男。
どこで仕入れたのか、緑茶の二十倍くらいビタミンCが含まれてて体に良いんですよ、風邪や糖尿予防にもなりますよ、などとしきりに奨めてくるので、今では日常的に飲んでいる柿の葉茶だ。
柿のなる時期にしか会えない彼女としては、どういう思惑なのかを考えると、微笑ましくなるというか何というか。
他のお茶を飲むと拗ねてしまう彼女の姿を思い出すと、何とも可愛いものだと笑みが堪え切れない。
「もう、あれから八年か」
タンタンコロリンのリン。
彼女が初めて現れてから、早いもので八年が過ぎていた。
初めての時は、貪るように彼女の体を味わった。
次の年は、あのつるりとした性肌に無穴のスジが走り、陰核が生じていた。
無論、興味本位で弄り回したのは言うまでもない。
動かなくなるまで。
「甘いもんだから飴玉みたいで、夢中でしゃぶちゃったからな・・・・・・気付いたら体中から汁を垂れ流して痙攣してたっけ」
治まってから、怒るの怒らないの。
怒ると怖いタイプだった。
三年目に現れた時は、尿道が出来上がっていた。
「ストローはちょっとやり過ぎだったかもしれない」
彼女に聞かれたら、当たり前だ馬鹿と怒られそうだ。
というか実際、言われた。
まあ何だかんだいって、受け入れてくれるのが可愛いのだが。
四年目には膣口が出来た。
浅くて指の第一関節までで、すぐに行き止まるくらいだったが。
「そういえば、この頃からデートとか普通に過ごすことも多くなったんだよな」
流石に最初の頃のような一晩中みたいに、がっつくのは無くなって(それでもかなり濃密にいたしてはいたが)料理したり映画見たり、普通に遊びに行ったりという事も増えてのがこの時期だ。
これには男の精を吸って安定してきたため長い時間、人の姿でいられるようになったというのも大きいのであるが。
五年目には指を根本まで飲み込むくらいには、膣は深くなっていた。
流石に男の物を受け入れるには、狭すぎたが。
この年は二ヶ月程、人の姿で一緒に暮らしていた。
「家事をほとんど任せっきりにしてたっけ」
料理も美味かった。
果物に関してだけは柿以外を食べようとすると、やたらと拗ねるのでちょっと困ったが。
六年目は挿入が可能なまでに膣口は出来上がっていた。
七年目は子宮が出来始めていた。
「あの奥の奥までねっとりと包み込むような感じも良かったけど、子宮口があるとコリコリってした感じが加わってそれがまた堪らなかったな」
男はあの蜜月の日々を思い出す。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
部屋中に満ちる、リンの甘ったるい叫びと匂い。
女の膨らみが、男の物を挟んで、上下左右へと動く。
亀頭が乳肉に刺さり、その弾力に弾かれたと思うと、今度は竿の根本から先端までを乳肌が擦り上げていく。
ぐにゅぐにゅと弾力があるのに、柔らかくもある蠱惑的な感触が左右から男根を包み込んでは、激しく扱かれ、胸の間から見え隠れする鈴口にむしゃぶりついて、舌が縦横無尽に激しく舐め弾いていく。
その度に、四つに括られているリンの髪がふわふわと揺れる。
ニュルッと丸められた舌先が、ストローのように鈴口を刺激してくる。
前にされた事のお返しとでもいわんばかりに。
「で、
「むくぅ❤ ん、んんん~~❤ んぷ、ん、ぐぅ・・・・・・はぁ❤」
深く咥え込んだまま、喉奥を叩く精液を甘んじて受け止め、何の躊躇いもなく嚥下していく。
「凄く濃いです。ドロドロでゼリーみたい。栄養たっぷりな私の柿をたくさん食べてるからかしら?」
「少なくとも、リンが凄くエッチで興奮したからなのは、間違いないかな」
「も、もう・・・恥ずかしいこと言わないでください」
自分の精液を嬉しそうに味わう女の姿というのは、何故こうまで男の本能を刺激するのか。
射精したばかりだというのに、肉竿はすでに硬度を取り戻し、女を貪りたがっている。
「リン・・・」
「は、はい・・・・・・き、来てください」
男がリンの花弁の中央に開いた、甘く誘うような匂いの漂う穴に、剛直を突き立てた。
じっとり濡れた媚肉が、淫靡な音を上げ、血管の浮いた棒肉をねっとりを締め上げていく。
最奥まで到達した男の亀頭が、コンコンとそれをノックする。
「これ・・・去年と感触が違う、奥に何か」
「ひ、ひきゅうですぅ❤ ま、まだ入り口だけだけど、し、子宮・・・・・・」
トントンと力強く肉の槍で突かれる度に、甘い声が跳ね上がる。
その体をぎゅっと抱きしめ、豊かな胸に顔を埋めると、その奥からドクドクと鼓動が伝わってくる。
粘膜と粘膜が擦れる度に、甘い匂いが、甘い快楽が、甘い声が二人を満たしていく。
腰を一振りする度に、意識が交じり合うように錯覚する。
口舌に尽くしがたい、幸せが溢れてくる。
「も、もっとぉ❤ お、おかひぃっ、気持ちひいのが、と、とまらないのにぃ、もっと、もっとぉほしくなるぅ❤」
「リン、リン、好きだ、リン」
ギチギチに勃起した男根を、さらに奥まで突き込み、出来たばかりの子宮口に、熱烈な口付けを繰り返す。
ニュチュニュチュと、粘液の擦り合う音が。
グチュグチュと男女の性液が交じり合う音が。
ドクドクと暴れ狂う白濁を吐き出す音が。
二人にはっきりと伝わっていた。
まだ何も飲み込むことの出来ない子宮口を、びちゃびちゃと叩きながら精液が逆流して結合部から溢れ出していく。
「ね・・・ぇ❤ こ、今度はこっちに」
息も整わぬ内にリンはそう言って、尻の肉を割り開き、もう一つの性交に使う穴を示す。
夜はまだこれからだった。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
「良かった、あれは本当に良いものだった」
そして今年は八年目。
去年の別れの日。
「あの来年、来る時は、その・・・・・・体も完全になりますので、そしたらずっと人の姿で一緒にいられるようになると思います」
桃栗三年柿八年。
柿の実が収穫できるようになるまでは確かに長くかかるが、実際はそこまではかからない。
八年とは柿の木がタンタンコロリンになってから、嫁にできるようになるまでが八年ということだったのだ。
「まだか、俺の嫁! 指輪の準備は万端だぞ!!」
流石に出会って八年。
まだ世間的に問題はないとはいえ、男もいい加減、身を固めていてもおかしくない年齢だ。
八年の間にすっかり胃袋も玉袋も握られてしまっているので、身を固めるのに異論もない。
「早く来い、いつでもOKだ!!」
というか、もうすぐにでも子供作ろう子供。
年に一緒に入られる期間がそこまでではなかったので、結構溜まっているのだ。
しかもあんな可愛い娘が積極的だし、大抵のことはさせてくれるし、してくれるし、色んな意味で美味しいし良い匂いだし。
妖怪とかどうでもいいです、嫁になってくださいと土下座してもいいと、男のテンションは止まるところを知らない。
そこに玄関でノックする音が聞こえたきた。
「来たか!!」
さようなら独身生活。
ようこそ新婚生活!!
扉を開けるとそこに待っていたのは・・・・・・
「おい、俺の尻を舐めろ!!」
むさ苦しい僧形のおっさんという名の絶望だった。
未だかつて無い勢いで扉を閉めると、鍵をかける。
扉の向こうからは尚も、俺の尻を舐めろというおぞましい声が響いてくる。
ドン! ドン! と扉を叩く音に、男はへたり込んで呟いた。
「こんなのってないよ・・・・・・あんまりだよ」
体が完全になるって、おっさんに
妖かしに魅入られた者の末路は、やはり凄惨なものにしかならないのか。
◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇ ◇◆◇
どれくらい経っただろうか。
あのおぞましき野太い声は、いつの間にか消えていた。
代わりに聞こえてきたのは、聞き慣れたよく通る声だった。
自分が散々に甘い嬌声を上げさせたあの声だ。
「すみません、何か別のタンタンコロリンが来てましたから、追っ払いましたよー、もう大丈夫ですよー」
別のタンタンコロリン!
そういうこともあるのか、と男はほっとして扉を開けようとした。
だが怪談でよくあるパターンだ。
声に騙されて開けてみれば・・・・・・雨月物語の吉備津の釜にだって書かれている定番パターンだ。
扉を開けたら、そこに立っているのは、あのむさ苦しい僧形のおっさんかもしれない。
もしそうなら、貞操の危機だ。
「本当にリンかー? じゃあこの質問に答えてくれー」
「な、何ですかいきなり?」
「リンは俺の何だー?」
この問いに、少し間を置いて扉の向こうから返ってきたのは。
「あ、あなたの・・・・・・その、し、尻穴奴隷です」
最後の方は消え入りそうな声であった。
男は恋人とか、奥さんとかそういう答えを期待していたのだが、いや、確かにプレイ中にそう言葉責めしたこともあったなあとは思うのだが。
しかし、逆にこういう答えを返してくるのは、確かにリンに違いないと、男は把握していた。
気を取り直した男は、少しだけ扉を開けて外を窺った。
そこにあったのは、むさ苦しいおっさんの顔ではなく、愛しい女の顔だ。
初めて会った時と変わらぬ、だが青臭さ感じさせる雰囲気は消えた成熟した女の顔だ。
「リン・・・か?」
「何を言わせるんですか、あなたは・・・もう」
言ったのはそっちなのだがと思うが、言うと余計に拗ねそうなので黙っておく。
完全に扉を開けると、男はリンを力強く抱きしめた。
「怖かった・・・」
「ふふ、もう大丈夫ですからね。私が他のタンタンコロリンなんて近付けませんから」
ふと、男は玄関先に何かが転がっているのが見えた。
さっきの僧形の男が、頭から何かを垂れ流しながら痙攣している光景だった。
近くには何かがこびり付いた、程よい大きさの石が転がっている。
殴るのに程よい大きさの石が。
「絶対に近付けたりしませんから・・・・・・うふふ」
「あ、はい・・・・・・」
絶対怒らせてはいけない。
男はそう思うのであった。
ご無沙汰してしまいました。
今年は花粉症長引いたなあ。
タンタンコロリンの名前はリンになりますが、名前出るのは次になってしまいました。
前の穴がないのは、元の伝承で尻の穴舐めさせる柿妖怪がいるのと、昔のエロゲーってモザイク無しで性器に描き込みのないつるつるなのがあったので、ああいうの実際に穴が無いって設定でやってみようと思い立ったからだったり。
桃栗三年柿八年と言いますし、前の方は八年かけてできることにしようと。
汗とか涎も甘いのは中国の桃娘の柿バージョンみたいな感じで。
個人的にスカは苦手ですが、食物ならいいよねってことで。
オオゲツヒメとかセーフですよね。
え、アウトですかね?