※この作品はR-18です。

うちの妖怪娘   作:生涯中二病

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エルフな彼女と僕の毎日

「ふむ・・・・・・」

 

取り壊されることなく、放置された郊外の廃工場。

そんな廃工場に程近い林で、一人の男が佇んでいた。

存在感のまるで無い、気配の希薄な、周囲の自然に溶けてしまっているように感じる、そんな不思議な男だった。

その男の傍らに蹲るは、日本人とは異なる容貌の二人の男。

外国人達は男が見つけた時には、既にこのような状態であった。

体のあちこちには、瘤のように腫瘍が盛り上がり、皮膚の丘疹、結節がおびただしく見受けられた。

梅毒の第三期に属する、重症化した症状である。

日本において、まず見られないものだ。

 

「妖精の輪、か。また厄介なモノを持ち込んでくれた」

 

男の視線の先には、樹を取り囲むように生えた小さな茸がある。

驚くことに茸がきれいに輪になるように生えているのだ。

茸の輪からはアンモニア臭が微かに立ち上っているのを、男の鼻は捉えていた。

外国人達は設備の壊れた廃工場のトイレを嫌い、ここで用を足していたのだろう。

男はその茸の輪を写真に収めると、一枚の紙をその上に落とした。

ひらりと滑るように落ちてきた紙・・・・・・呪符が触れた途端に、ボォっと火が上がり、茸を消し炭へと変えていく。

この茸の輪の中に小便をすると、性病にかかるという力が込められている。

北欧や欧州などに住まう、妖精共が使う魔法の一つだ。

それを看破するこの男は、日本政府の対妖怪・怪異に対処する為の機関でも、最強とされる戦闘部隊の隊長である。

見世物や好事家への販売目的に、海外の犯罪組織が妖怪を捕縛して密入国した件の内偵を行っていたのだが、根城にしていた廃工場に着いて早々に、性病でぶっ倒れている犯人と思わしき外国人を発見したのが今しがただ。

状況からして、原因は持ち込んだエルフだろう。

サブカルチャー等では好意的に描かれ人気の種族だが、実際はかなり質の悪い妖精だ。

精神を操り、呪詛に長け、病を引き起こす魔術を使う。

この倒れ伏した外国人を見れば一目瞭然だろう。

本来は時間を掛けて進行する梅毒が、一気に重篤化している。

発症して動けなくなってから、二日~三日といったところかと、外国人の様子から隊長は当たりを付ける。

相当、頭にきていたのかもしれないが、こんな物騒なトラップをそこら中に放置とは。

いずれにしても放っておいていいものではない。

妖精の輪はもとより、エルフの方もだ。

 

「きいきい」

「きゅうきゅう!」

 

手の平程の小さな鬼達が、競うように鳴き声を上げる。

家に憑き、物を揺すったり、軋むような音を立てて人を驚かせる妖怪家鳴である。

 

「あっちにもあるのか。ありがとうな」

「きゅぅい!!」

「きいぎい!!」

 

隊長が懐から金平糖の包みを出すと、にわかに家鳴達が騒ぎ出す。

こういった小妖は甘味が好きなモノが多い。

特に昔は献上品等に使われていた金平糖は、ちょっとした殿様気分を味わえるのか人気が高いのだ。

そのためこういった菓子で小妖を手懐けるのは、退魔師達の間では常套手段になっている。

数個の金平糖を渡してやると、他の家鳴達もこぞって、ここにあるよ、こっちにもあるよと、妖精の輪の在処を指し示す。

それらを順番に焼き払いながら、隊長が呟いた。

 

「エルフの方も捜索せねばな。逃げて数日ならそう遠くには行っていないだろうが・・・・・・」

「きゅうぎぃきぃ!」

「きゅわきゅいほうふう!!」

「逃げたのは一月前!? それを早く言え!!」

 

発端は五年程前に遡る。

イギリスの方に住んでいたエルフが、気紛れで旅に出ることにした。

東の果ての島国は大層面白いらしい・・・・・・そう噂をしていたのはポルターガイストの連中だったであろうか。

理由は本人もあまり覚えてはいないし、気にもしていないが、とにかくそのエルフはその島国に行ってみようと、唐突に思い立った。

それが発端。

とはいえ元々気紛れなエルフという種のこと。

途中であっちにふらふら、こっちにふらふら。

飛行機に密航して退屈しのぎにグレムリンを焚き付けたせいで墜落し、ドイツではちょっと抜けてそうなデュラハンの女に、少しだけ運の悪くなる(ドジを踏む)呪いをかけてやったり、ロシアではバーバ・ヤガーにちょっかいをかけて危うく殺されそうになり、ルサールカに仲介されて事なきを得て、中国では軽い悪戯でとある封印が解けてしまい、キョンシーが大量発生して、解決に際して白澤に散々迷惑をかけ、そんな傍迷惑を撒き散らし続けて、いつまで経っても目的地に着かず、このエルフはここで一計を案じた。

日本に妖魔を密輸をしようとした連中に捕まって、連れて行ってもらえばいいと。

そうして日本にやってきて、あっさり縛めを破り、そいつらの乱雑な扱いにちょっと腹が立ったので置き土産をして逃げてきたのが、およそ一ヶ月前の事だった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「何か思ったよりも普通だな」

 

ルサールカからはこの国は人外魔境だと聞かされたのだが、他の近代的な国とそこまで大差は無いという印象だった。

確かに小妖は多いし、さっきからポルターガイストみたいな連中がちょろちょろとこちらを見澄ましているが、それとていくらか多いというだけで、イギリスでもそれなりには見られるものだ。

人外魔境と言うほどではない。

 

「噂ほどじゃなかったか」

 

まあ食い物は結構美味そうだし、その辺は楽しめそうか。

さてどうくすねてくるか、そこらの家からちょっと失敬するかと、閑静な住宅街を悪巧みをしながら歩いていると、ふと妙な気配を感じてそちらに視線を向けた。

そこにいたのは五人も子供を連れた夫婦だった。

父親は人間なのだが、腹が大きな臨月間近の母親と思わしき女はどうやら妖怪のようだ。

 

(ありゃ自然霊型かな? あの手のは人間なんかと結ばれたら寿命ができちまうのによくやるねえ)

 

妻が妖怪と知ったら、夫はどうするだろうね?

そう思い立ったら、何かしでかさずにはいられないのがエルフというものだ。

さてどんな魔術をかけてやるか、どれが一番面白いだろうと思案する。

そうしてエルフが虎視眈々と機を窺っていると、唐突に走りだそうとした子供を母親が引き止めた。

その事自体は極々普通の事ではあるが、問題はそれを手ではなく長く伸びた舌でやったのだ。

 

「え?」

 

夫の方は慌てて辺りを見回して、人がいないかを確認している。

とっさに隠れたので、姿は見られていないはずだと、エルフは物陰で気配を窺う。

 

「おいおい、人に見られたらまずいよ」

「すみませんあなた、つい。こら、急に走っちゃ危ないでしょ」

 

(何だ、あいつ。まさか妖怪だって分かって一緒になったのか?)

 

正体をバラしてやる悪戯が出来なくて面白くないのか、よく分からないもやもやした感情を抱えて、エルフはその場を走り去った。

子供のような見た目に反して、獣のように俊敏に、住宅街を駆け抜けて行く。

もともと森を主として生きるエルフだ。

身体能力は見た目よりずっと高い。

どれだけ走ったのか、山裾に近い所まで来てようやく立ち止まる。

 

「ああ!! くそ、なんでこんな苛つくんだ!!」

 

それは本人も忘れてしまった、あるいは無意識に思い出したくないと思っている、遠い過去の出来事。

人間と仲良くしようとした幼い日の事、そして裏切られたあの艱苦辛苦。

それを想起させるような、心の底の澱みを刺激するような・・・・・・光景を

あの日、望んでいた光景を、望んでも得られず踏み躙られたものを、見せ付けられてしまったのだと、そう思い至るには彼女はあまりにも長く生き過ぎてしまっていた。

 

取り敢えず彼女は、次に出会ったやつに何か悪戯して、憂さ晴らししようと決めるとまた歩き出した。

長く生きていようと、エルフというのは割りと短慮だったりするのだ。

ちょっとした事で相手を殺しにかかるし、強姦だってやる種族である、サブカルチャーとは大違いなのである。

そんなエルフと運悪く行き会った、いや運悪くエルフが出会ってしまったのはと言うべきか・・・・・・

この山に住む、大天狗の娘だったりしてしまうのだった。

獲物を見付けたエルフが、その娘に指を向ける。

これはガンドという北欧に端を発する魔術の一つで、指差した相手に呪詛をかけるというものである。

呪詛の種類は、エルフロック。

髪をもつれさせるという、軽い悪戯に使うものだ。

まずは小手調べというつもりなのだろうが、その前にエルフの足元を何かが駆け抜けて行く。

 

「!?」

 

それは小さな鼠だ。

鼠はちょろちょろと、足元に纏わり付くように走り続ける。

 

「わ、わわあ!? こ、こいつ!?」

 

いきなりのことに、さしものエルフもバランスを崩し転倒して、強かに尻餅を付いてしまう。

これに頭にきたエルフが、鼠を捻り潰そうと痛みを堪えて、立ち上がろうとするが、そこで彼女は異様な姿を見る。

小さかった鼠が、猫ほどの大きさに膨れているのである。

これに一瞬、呆気に取られてしまったエルフは、次の惨劇をまともに浴びてしまう。

具体的には膨れ上がった鼠が勢いよく破裂して、飛び散った肉片や臓物がエルフの顔を直撃したのだ。

 

「あ、あぁァァああ!? 目が目がぁ!!」

 

血だの臓物だの言う以前に、そんなものが直撃したら、まず物理的に堪ったものではない。

あまりのことに我を忘れて、のたうち回るエルフ。

そこにいつの間にか再生を遂げた鼠が、エルフに体当たりをして、そのまま畑にダイブさせた。

 

「あぅ!?」

 

道路から一段低く、結構な段差のある畑に落ちた衝撃は思いのほか強く、内臓への衝撃がもたらした苦しみにより、しばし身動きが取れなくなる。

その間に鼠は素早く走り去っていった。

この鼠は小玉鼠と呼ばれる妖怪である。

山の神の使いであり、この場合は天狗が娘のために、護衛として付けていたのであろう。

それ故に、悪戯をしようとしたエルフを敵対者と見なして、立ち向かったのだ。

さらに容赦のないことに、エルフを落とした畑は怪畑(ケバタケ)である。

立ち入れば不幸になるとされる、忌み地の一種である。

 

「ちくしょう!! あのネズ公!!」

 

怒りに任せて畑にあった石を掴み投げ付ける。

いまだ目もろくに見えない状態での盲投げである。

コンクリート製の畑の縁に当たり、跳ね返った石が額を直撃した。

 

「あがぁ!?」

 

さらに石の下に潜んでいたミイデラゴミムシが鼻に貼り付いた。

二種の化学物質を噴出、混合させて、高温のガスを外敵に噴きかけるという、特異な性質を持つ昆虫だ。

当然、いきなりの事に外敵に襲われたと判断したミイデラゴミムシは、ガスを噴出する。

 

「熱っちゃぁああぁあ!?」

 

突然の熱さにゴミムシを振り払い、一歩下がったところ、モグラの掘ったトンネルがあったのか、土が陥没して足を取られ、そのまま派手に転倒する。

 

「あ、あぐ・・・・・・」

 

怪畑は本来は人死にが出るような災厄をもたらす、非常に危険な忌み地である。

本当ならば陰陽師などが鎮めており、そういった問題は起きないはずだったのだが、ここ数年、とある事情で慢性的な人手不足になり手が回らないのが現状だ。

それでもコントレベルの災難で済んでいるだけ、彼らはよくやっていると言えるのだが、災難に合う当人にとっては、堪ったものではないだろう。

そうしてエルフが散々な状態で、ようやく畑から出たのは一時間してからだった。

・・・・・・仏教的に言うと、このエルフは業が深かったため、常よりちょっと酷くなったのかもしれない。

なにしろ・・・・・・

 

「あ?」

「あ!?」

 

いきなり道路に飛び出したことで、走ってきた農家の軽トラに跳ね飛ばされたのだから。

とにかく、エルフな彼女とその男は、こうして出会うことになった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

少女は目も覚めるような美貌だった。

肌は驚くほどに白く滑らかで、シルクのようにすべすべとした質感が見て取れる。

陽光を弾いてきらきらと光る肌の美しさは、プリズムを通した光が虹色のスペクトルを放つような、七色の輝きを幻視しそうになる。

ふわふわでボリューム感のある肩にかかる、輝くような綺麗な金の髪。

体躯は小さく、幼く見えるが、可愛らしい顔の輪郭も相まって、それがまるで絵画に描かれた妖精のように可憐さを演出していた。

アーモンド型のような尖った耳が少々気になるが、不思議と調和していて、むしろ良いアクセントになっている。

 

だが不思議な事に、あどけない乙女にも見えそうな輪郭を持ちながら、良く言えば野性的な力と狡猾さ、悪く言えば腹黒さを感じさせる少女だった。

そんな印象を与えるのは、ひとえにその目付きだ。

とにかく目付きが悪い。

何を企んでいるのかと思うような、目付きの悪さが全てを台無しにしていた。

まるでチンピラである。

いや、まだチンピラの方がマシだと思えるくらいに、ガラの悪さを印象付ける目付きだった。

 

「おーい、コーラとクリスプス取ってー」

「あ、ああ・・・・・・」

 

そんな少女に顎で扱き使われているのは、一週間ほど間にこの少女を軽トラで跳ね飛ばした農家の男だ。

幸い足を捻った程度で済んだのだが、このエルと名乗った少女は警察も呼ぶなと言う、病院にも行きたがらない。

家出少女か何かと思った男は、どうしたものかと思案に暮れたが、やはり警察に通報するべきと思ったのだが、気付けばエルを家に泊めていたのだ。

何故そうなったのかどうにも思い出せないが、車で跳ね飛ばした少女を家に連れ込み、一泊させたとなると今更警察にも通報し辛い。

いや、それだけならばまだよかったのだが、この少女には弱みと負い目を握られてしまって、強く出ることが出来ないのだ。

 

「その、すぐそこにあるんだから自分で取った方が早いんじゃ」

「・・・・・・ふーん、オレに歩けっていうんだー」

 

伝法な口調と動作で起き上がると、挑発的な笑みを浮かべてエルは男を睨めつけた。

スカートから伸びる無造作に投げ出した足。

白くて細いその間から、白い布がちらりと男の視界に入る。

否、わざと入るようにしているのだ。

 

「歩くと痛むんだよなあ・・・・・・足の方じゃなくてこっちがさぁ」

 

そう言うと、外見に似合わぬ、やけに蠱惑的で扇情的な仕草でスカートをたくし上げていく。

丸見えになった股布を、くいっと指で横にずらして・・・・・・

 

「う、あぁ」

 

露わになった自身の性器を男に魅せ付けるように腰を突き出し、くいくいっと小さな尻を揺らして。

よく見ろと言うように、ゆっくりと足を広げて。

男を食い物にする魔性が笑っていた。

 

「なあ、見ろよこれ。オレのプッシー・・・・・・お前にレイプされてからさ、まだぽっかり広がったまま閉じきらねえんだよ」

 

その言葉に、男の顔がさっと青褪め、だらだらと冷や汗が流れ落ちていく。

そうなのだ。

少女を泊めたあの晩、男は気付けばこの少女を組み伏せていた。

そのまま何度も繰り返し、欲望を注ぎ込んでしまったのだ。

何故、あんな馬鹿な真似をしてしまったのかと。

ここ数日、何度も自責の念に駆られ、罪の意識が男の心を苛むのだ。

そんな男の様子に、エルは口元をにぃっと釣り上げた。

さも愉快そうに、ケラケラ笑いながら。

 

「いいんだ、いいんだ。オレはヤること自体はなんも気にしてねーぜ。でもよぉ、さすがにオレの腕くらいあるようなペニス突っ込まれてズコバコやられたらなぁ・・・・・・いやぁ、あの時は口から内臓飛び出すかと思ったぜ」

「・・・・・・・・・どうぞ」

 

男はおずおずと、クリスプス・・・日本でポテトチップスと呼ばれるジャンクフードとコーラを差し出す。

 

「いやぁ悪いね。苦しゅうない苦しゅうない」

 

それを受け取るエルの、邪気はあるはずなのに無邪気に見える、男を骨抜きにするような笑顔が空恐ろしい。

ひっひっひ、と少女が老婆のようにも思える笑い声を上げて、ジャンクフードを口に運び、ポリポリと美味そうに音を立てて咀嚼しては、コーラで流し込む。

何ともシュールであり、退廃的な有様をも感じさせる姿だ。

 

「腐るな腐るな、ちゃぁんと後で、お礼はしてやるからさ。そうさなー、いつもどおり風呂の後でな。クリスプスまみれの口じゃ、具合が悪いだろ?」

 

もう世間に言い訳のできない所に来てしまったのだと、下半身の疼きが男に思い知らせてくる。

せめて両親が畑仕事をしている最中に、コントみたいな事故で怪我をして入院しなければ、こんなことにはならなかったかもしれないのに。

そう思いながらも男はいそいそと風呂の準備をするのであった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「はぁぁ~~やっぱいいなこれ。日本の風呂って」

 

心地よい湯温を感じて、両手を広げて深く息を吐いた。

イギリスは水事情が悪いので、あまりバスタブに湯を張る事ような習慣はなく、何日かに一度シャワーなどで済ませるのが一般的だ。

人間ではない彼女(エルフ)ともなれば、湯を波々と張った風呂など、この上ない贅沢事だ。

それが毎日入れるとなれば、ご機嫌にもなろうというもの。

 

「さて、今日もサービスしてやりますかね」

 

だから人間相手とはいえ、それくらいはしてやるかと、この後の情事に備えて、歯を磨きながら独りごちる。

もっとも、それだけが理由ではなく、自身の奥底で熱を伝えてくる子宮(おんな)のせいでもあるのだが。

 

(マズったよなぁ。まさかあの畑が忌み地の類だったとは・・・・・・その影響を受けた状態じゃ、ドジも踏むわ。媚薬を頭から被るなんてなぁ)

 

そう媚薬である。

ちょーっと、男と既成事実を作って色々と要求してやろうと企んでいたのだが、ちょっとしくじってしまい媚薬の影響がまだ抜けきっていないため、体が疼いて仕方ないのだ。

 

(匂いにアテられただけのあいつは、何発か出したら治まったみたいだけど、原液被ったこっちは全然治まんねーんだよな)

 

とはいえ男の一物はいくらなんでもデカすぎた。

大抵の事は快楽として感じる状態だったにも関わらず、苦痛の方が先に立ったくらいだ。

 

(我ながらよく裂けなかったな)

 

くちゅっと確かめるように二本の指を、陰唇に潜らせる。

それだけで、全身に甘い痺れが走る。

 

(やっぱり、前より広がってる)

 

流石にガバガバになるのは厭だなと思う。

それなりに経験はあるが、だからといってゆるゆるで構わないとは、思うわけがないだろう。

やはり締まりが良くて、気持ち良い穴というのは、表立って口には出せないが『女』としてはそれなりに自負を持ちたい部分だ。

 

呼吸に合わせて鎖骨が上下して、湛えた湯が流れてはまた湛えてを繰り返しながら、二本の指がひりつくような疼きを訴えてくる膣壁を掻きむしれば掻きむしる程に、皮の舌に隠れた豆に似た部分が、充血して痛いくらいに張ってジンジンと存在を訴え続けてくる。

媚薬の効果を抜くのに一番手っ取り早いのは、やはり男の精を注がれることなのだが。

 

(アレはちょっとな)

 

指ではどうしようもない、体の熱を沈めるあの男の味。

毎日のように口で受けてはいるが、やはり効き目は薄い。

子宮に注いでもらうのが一番なのだが、あの大きさではその前に壊れかねない。

かといって他に男を漁るとなると。

 

(この国のエクソシストどもにすぐ嗅ぎ付けられるよな)

 

それにまあ、あの男はそれなりに気に入っているのだし。

いっそあの最初の晩のように無理矢理にでも事に及んでしまうべきかとも思う。

思うのだが・・・・・・

 

――やだぁ!! もう無理ぃ・・・もう挿れんなぁ、ォ、オレのプッシィ、壊れちまうよぉ!!

 

(みっともなく・・・初めてのガキみたいに、あんな、ピイピイ泣きじゃくって・・・このオレが、あ、あんな)

 

あの夜の屈辱感とそれだけではない感情が、体をどんどん熱くさせる。

お湯では潤す事の出来ない、別種の乾きが治まらず、それどころかどんどん激しくなっていく。

ぐちゅぐちゅとお湯と愛液を混ぜるように、荒々しく指の動きは増していく。

もう少し、もう少しでお腹の奥の、気持ちの良い部分に指が届くのにと、ぐいぐいと指を押し込んでも、後少しが届かない。

意識ではどうしようもない、無意識の本能的な女の部分が、体の奥で暴れて駄々をこねるように懇願している。

 

女の淫欲的な本能が、囁いてくる。

女だけが持つ穴が、訴えてくる。

ざらざらした淫肉の疼きを、男の物で擦り落として欲しいのにと。

入って来てくれたら、お礼に吸盤の様にちゅうちゅうと吸い付いて、ご奉仕して上げるのに。

この穴はこんなに気持ち良いんだよって、にゅるにゅる絡み付いて、ぎゅうって抱きしめて上げるのに。

気持良く絡み付いて、搾り取って上げる。

この産道を男の形でいっぱいに満たしてよ(いっぱい過ぎて無理だと言う理屈を無視して、きゅうきゅうと膣肉が指を締めてくる)

奥の奥までたくさん愛してよ(奥まで来すぎて苦しいんだという思考を無視して、女の部分は欲しい欲しいと口を開けて貪欲に収縮を繰り返してる)

ペニスでこんこんってノックして(あんなに大きなので、されたら壊れちゃうのに、それでも構わないって欲しがってる)

奥に押し付けて、精液びゅぅびゅうってたくさん出して、子宮に飲ませて(欲しい欲しい欲しい男が欲しいペニス入れて欲しいセックスしたい)

それで、それで・・・・・・

 

――お、俺・・・なんで、こんな!! なんて事を。ご、ごめんな。ごめんよぉ・・・

 

・・・・・・あの夜みたいに。

またギュッて抱きしめて。

頭撫でて。

 

「~~~~~~~~~あぁ、はぁぁあああ♥ い、いクぅ、イくゥ♥」

 

あの時の事を思い出した瞬間、昂ぶった快楽が神経を巡り、身体を一気に絶頂に押し上げた。

ガクガクと全身を震わせて、荒く呼吸を繰り返して。

動悸がする。

心臓の脈打つ鼓動がはっきりと感じられる。

少し頭に痛みが走る。

 

「あ・・・・・・やばい、これ」

 

くらくらとする頭で、これは不味いなと湯船から這い出て、シャワーの蛇口を捻って水を浴びる。

完全にのぼせた。

これからまさにヤろうというのに、風呂で自慰行為をして、のぼせるなどと何をやっているのか。

熱を逃がすために髪を手で梳きながら、自虐的な笑みを浮かべて。

 

「何がしたいんだろうね、オレは・・・・・・」

 

興味本位で異国に渡って。

厭忌の情さえ抱いていた種族と、情交すらして。

独り身だし、一人寝が寂しい時も、それは確かにあるが。

同族の男は自分勝手だ。

あいつらは突っ込んで好きに腰振って、自分だけさっさと満足するだけ。

だからといって人間はと言われれば、別に大差はないと思う。

まあ、あの男は優しくはあるが・・・・・・

 

「いまさら恋だ愛だ言うような歳でもあるまいし」

 

眩暈も治まったかと、シャワーを止めると立ち上がった。

難しいことなど、どうでもいい。

後の事などその時、考えればいい。

エルフなんて寿命が無駄に長い分、刹那的、享楽的にダラダラ生きるものなのだ。

だから今は、これからヤる事だけ考えればいい。

 

「よし、思い切って本番までやって・・・・・・」

 

と言いかけて、男のサイズを思い返す。

 

「無理、あれ胃まで来る・・・・・・」

 

何か体を自由に伸び縮みさせる魔法の薬とかなかったかなと、自分の知識を思い返してみるが、そんな都合の良いものは出てこない。

まったく違う生き物に変身したり、体の一部を変化させたりとかは心当たりがあるが、あそこだけ一時的に伸び縮みというピンポイントなのが無いのが解せぬと思いながらエルは風呂を後にした。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

舌先を亀頭の割れ目に這わせると、口の中で熱い塊がビクリと震える。

先端部分に口を被せるだけで、精一杯の巨大な一物。

その分、尿道口も大きく、小さなエルの舌も相まって、押し入れた分だけ中に侵入していく。

 

「う、あぁぁ」

 

唇の部分だけで、亀頭を噛むように締め付けると、ガチガチに怒張しながらも、ぷにぷにした弾力を返して、面白いとエルは思う。

そのまま亀頭のあちこちに吸い付いて、引っ張ってみる感触も何か楽しい。

ちゅぽちゅぽっと、引っ張りすぎて唇が滑る度に、卑猥な音が響いて、その度に男の身体が震える。

 

「ちょ、エ、エル・・・そ、それやめて、も、もたない」

「いいだろ、これくらい、いつでも射精()していーんだぜ?」

 

両手で根本をすりすりとしながら、その柄の悪い目付きで男を睨むと、手による刺激によるものか、その眼力によるものか、まあ多分前者だろうが、男は黙って渋々なすがままにされる。

すべすべぷにぷにした亀頭に唾液をまぶしていく。

ぬるぬるとした唾液に、時折まじる塩気に少し気色悪さを感じて、だけどそれが妙に興奮して。

血管の浮いた陰茎を唇で締め付けて、舌で舐めたり、吸ったりを繰り返していく。

男はもうぐったりとして、されるがままになっている。

 

(なんか、かわいぃな。こんなでかい図体してんのにさ。オレのなすがままになっちゃって)

 

よくよく考えると、こんなじっくりと愛撫した経験などなかった。

大抵はさっさと突っ込まれて、腰振って終わり。

そんなのばっかりだった。

 

尿道に舌を入れて、じゅぶ、じゅるるるるぅと啜りながら、亀頭をシゴイてやる。

男の全身が痙攣してビクンと震えた。

 

「ん、あぁ・・・」

 

それから一瞬、遅れて精液が吹き出した。

エルは鈴口に口付けして、そのまま精液を受け止める。

ぬるぬるして、生暖かい。

変に喉に絡んで、生臭くて。

気持ち悪いのに、ひどく興奮して、うっとりする。

身体を侵す媚薬の効果は、精飲により僅かながらも鳴りを潜めたはずなのに・・・・・・男が何度も力んで尿道に残った精液を絞り出してくる度に、身体の熱がどんどん昂ぶってくる。

 

人間なんて大嫌いで、気持ち悪くて、だけどもっと気持ち悪いことがしたくなる。

射精して満足したそれは、さっきまでとはまったく違い、すっかりと柔らかくなって、同じモノとは思えない。

ソレを口に含んで、喉奥まで飲み込んでみる。

パンパンに膨張していた時とは、萎えて半分くらいにスケールダウンしているから、何とか口に入る。

何とか飲み込める。

でも長くて太くて、どこまでも入ってくるような感じで。

気持ち悪くて、気持ち良い。

 

「う、うぁああああああ・・・・・・」

 

喉を通り過ぎて、食道にまで達し、男が吠えると同時にそれは来た。

食道から胃に直接、精濁が流し込まれていく感触。

萎えきったモノからトクントクンと微弱な、喉にぴったり張り付いているからこそ分かる程度の脈打ち。

その度に、その脈動に連動するように、子宮も震えているような気がする。

 

「・・・・・・んぅ、ぷはぁ」

 

食道からズルリと抜ける感触。

同時に精液の匂いが、鼻腔に溢れてくる。

気持ち悪くて、ぞくぞくする。

食道まで入るとか、我ながら凄くない? と妙な自画自賛をしながら、完全にふにゃふにゃになった男の逸物を、手で弄び、その感触を楽しむ。

ガチガチだった時と違った、変な感触が面白い。

 

「ちょ、エル・・・そんな弄り回されたら」

「んー? なんだよぉー、オレがやめろってあんなに言ったのに、無視して腰ふりまくったのは誰だったかなぁ?」

「う・・・」

 

悪戯した子供のようにシシシと笑うと、舌舐めずりをして、今度はニタリと妖艶な女の笑みを浮かべた。

目付きの悪さすらも考慮した、女の性を露骨に意識せる、男を骨抜きにするような所作だ。

舌舐めずりで見える舌が、先程まであれが自分の一物を散々に這い回っていたと、男に魅せつける様に計算されている。

だがそれでも男の物は、ヒクヒクと震えるだけで硬さを取り戻すことはなかった。

 

「へへ・・・五回も出したからな。さすがにもう勃たねーか」

 

数日前まではもう少し持ったはずだが、流石に毎日だとそうもいかないようだ。

小柄だが怪力の妖怪というのもいるが、エルフはそういう類の存在でもない。

敏捷さには自信があるが、体格差を考えれば、抑えこまれてしまうと抵抗できないため、もっぱら暴走されてもいいように口で勃たなくなるまで抜いてしまう。

 

「じゃ、満足したなら、オレのもさ・・・・・・」

 

男の視線が、エルの足の間に注がれた。

ぬらぬらと濡れ光って、男を誘う匂いを放っているそこに。

男がエルの足を掴むと、ぐいっと押し上げた。

柔軟に稼働するエルの足は、難無く頭の上に押し付けるように固定されてしまう。

男は足の間にぽっかりと開いた、その穴に顔を押し付ける。

 

「あぁ♥」

 

婬毒に冒された身体は、すっかり火照ってそれだけで震えが走る。

流石に羞恥を感じるも、黙ってその行為を受け入れていく。

 

「ひぅ・・・」

 

柔らかいものそこに触れると、一瞬身体が強張るように震えて。

濡れた舌が、腟口に触れ、そのまま舌先がその周りをなぞっていく。

 

「はぁ・・・あ、ひぁあ!」

 

少し押し入って何度も何度も、舌先が撫でるように壁を舐める度に、少しくすぐったいような感触と、快楽神経を走るパルスに、身体を跳ねさせる。

舌全体が押し付けられ、ぐにりとそこが軟らかく押し広げられて開いていく。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

壁の間に押し付けれる舌の感触、熱い体温。

エルは酩酊にも似た感覚に、うっとりと身を委ね、力が抜けていく。

男が舌先を尖らせ、二枚貝のような壁の間をぐねぐねと弄ると、舌がそこから上に這い上がってくる。

壁の合わせ目に舌が到達し、エルは溢れだすような快感に襲われてわなないた。

 

「あ♥ あ♥ あぁ♥」

 

舌でその突起を小刻みに刺激する。

男は夢中になって何度も何度も舐め上げて。

それだけでエルは充分な快感に震えるのに、男はさらに舌全体を押し付けて、執拗に舐め回してくる。

 

「あはぁ♥ あ、じょーず、そ、そこもっとぉ♥」

 

その言葉に男は唇を細めて、クリトリスを吸い出すように刺激する。

一気に官能が高まり、頂きに押し上げられていく。

このままじゃすぐにイかされる。

あまりにも呆気ないのが、癪に障る気もしたが、そう思っても全身の力が抜けて、抵抗もできない。

エルの体は、貪欲に快楽を欲している。

男の舌が陰核の包皮の中に侵入して、グリグリと這い回った瞬間、エルの頭は真っ白になった。

どこかに落ちていくような浮遊感。

本能的に伸びた手が、必死で男の頭を掴みながら、何度も何度も神経を快感が駆け抜けて、その度にカラダがびくびくと痙攣してしまう。

 

「ああぁ!? はぁっ♥ あぁぁああああああ~~~~~~~♥」

 

絶叫と共に、荒い息を吐き出される。

吐き出し切って、しばし吸う事もできずに、金魚のように口をパクつかせ。

徐々に波が引いていくに従い、呼吸も元に戻っていく。

 

「あ・・・?」

 

自分が男の髪を握りしめているのに気付き、慌ててそれを放した。

我を忘れて気をやった証のようで、恥ずかしかった。

こんなにじっくりと愛撫されるのも、この男が初めてだったからというのもある。

手馴れているつもりだったが、どうも攻めに回られると、中々巧みで手玉に取られてしまう。

というか今までの連中が下手というか、自分本位のセックスばかりだったのだろう。

この男はエルを気持ち良くしようと、丁寧にしてくれるのが分かって、それがまた恥ずかしい。

 

「・・・・・・エル、可愛かった」

「・・・・・・恥ずかしいこと言ってんじゃねーよ、ばーか」

 

頭を撫でられるのは・・・少しだけ悪くないかもと思った。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

そんなちょっと? 爛れた日々を送るある日の事。

 

「エンニチ?」

「えーと何というのかな、お祭りで、そのカーニバル? フェスティバル? ・・・・・・えーと屋台とか出て、踊ったりとかで」

「EVENT?」

「あー、それが近いかな」

 

カーニバルもフェスティバルも宗教的な催事が元だ。

今はそういう部分が薄れたものが多くなったが、日本などは特にそういう面が薄いというのは、知識として知っている。

エンニチとやらも、まあ宗教的なものもあるだろうが、どちらかといえば娯楽的なものに特化してしまった、イベント的なものだろうとエルは当たりを付けた。

 

大体合っている。

この縁日も元は、山の大天狗の誕生日を祝っていたものだった。

前日から二日かけて行われる、賑やかなお祭りだったのだが、最近は完全に屋台が出る日くらいの認識で、ここ十数年などは客が集まるようにと、土日にずらされてしまったりしている。

大天狗はちょっと泣いた。

 

「せっかくだから遊びに行かない?」

「うーん」

 

エルは少し考えこむ。

正直に言えば、楽しそうだし行ってみたい。

だが下手に動いて、この国のエクソシストと出くわしたらどうなるか。

日本はかなり穏当な方だとは聞いているが、それだってどこまで本当なのか。

それによそ者のエルにとっても、穏当かは分からない。

エルの知っているエクソシストは、何というか・・・・・・今に見ていろ人間以外は全滅だ、という感じの危ない連中ばかりだった。

ルサールカに偏った連中に当たったわね、と言われたことはあるが、エルにとってはそいつらがエクソシストの一般的イメージだ。

遭遇したくない連中の筆頭である。

しかも媚薬のせいか、体調も万全とは言い難い。

あまり迂闊に動くべきではないと思う。

思うのだが・・・・・・エルフというのはそこまで思慮深くないのである。

伊達に性悪で悪戯好きなどと、言い伝えられているわけではない。

そして何より・・・・・・

 

「お袋の子供の時のお古だけどさ、浴衣もあるしこいつを仕立て直そうと思うんだ」

 

浴衣である。

エルとて女である以上、やはりお洒落には興味があるもの。

桜柄の綺麗な浴衣に、心が弾んでしまう。

こんな綺麗な服を着て、遊びに行けるとなれば、是非もなかった。

だからだろうか。

気付かなかったのは・・・・・・

 

家を出る時に、きいきゅいという音が聞こえた。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「えへ~~」

 

服屋で浴衣を仕立直した帰り道、エルはご機嫌だった。

雑木林から葉鳴りと共に、吹き付ける風に舞うように軽い足取り。

古着とはいえ、こんな綺麗な服が自分のためになんて、初めてだった。

大事そうに浴衣の入った収納バッグを抱きかかえて、ご満悦の笑みで浮かれていた。

そのせいか目付きの悪さも、今はうきうきした笑みも合わさってか、魅力的に見える。

こんな小さくても女なんだなと、男は否応無く意識させられた。

まあ毎晩させられてはいるのだが。

 

「なあ、この服の模様ってサクラっていうんだろ?」

「うん、日本でよく親しまれてる花だね。春には山の桜が一斉に咲くから、凄い景色になるよ」

「へ~~~」

 

秋に桜紅葉で染まった山も凄いが、やはり春の桜花で染まった山は筆舌に尽くし難い美しさがある。

 

「そんなにすごいのか? そりゃ見てみたいな」

 

無邪気にはしゃぐエルの姿に、男は胸が締め付けられる。

だって、それは無理な話なのだから。

こんな生活がいつまでも続くわけがない。

男はエルとの生活が、こんなにも気に入っていたのだと思い知らされた。

そしてその生活が、すぐにでも終わる、その時が近付いていると、そう思うと胸がどうしようもなく痛んだ。

両親も、もうじき退院して家に帰ってくる。

それに・・・・・・

 

陽は暮れ始め、空は茜色に変わりつつある。

気が付けばどちらからともなく、二人は手を繋いで歩いていた。

顔が朱に染まって見えたのは、夕日に染められたからだろうか。

もう間もなく、家に着く。

それが何故か惜しいような。

二人はなんとなく、お互いにそう思っていると、奇妙な確信があった。

いつの間にか、口数は減り、静寂を破るのは何もなかった。

 

・・・・・・虫の音さえも。

 

「失礼、少々お時間よろしいですか?」

 

突然、呼びかけられた声。

丁寧ではあるが、有無を言わさぬ、強制力を感じる言葉だった。

夕闇の中で、電信柱の傍らにそれは立っていた。

人間、ではあった。

だが最初からそこに佇んでいたはずなのに、声をかけられるまで、気付きもしなかった気配の薄さ。

それはまさに幽鬼を思い起こさせる、不気味な存在だった。

時刻はまさに逢魔ヶ刻。

 

男は悟った。

ああ、終わりがやってきたのだと。

 

「思ったよりも早かったですね」

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

エルが咄嗟に指を向け、撃ちだしたガンド魔術が、あっさりかき消される。

微動だにもせず、空漠とした幻のようなその男に、エルは総毛立った。

強制力を持つ、言霊のこもった言葉。

間違いなく、この国のエクソシストだ。

 

先程まで心地よく思っていた、雑木林から吹き付ける風が、今は妙に生温く不快に感じる。

林から響く、葉鳴りとは違う、地を這う音。

横目で見れば、いつの間にか林の中に無数の蛇が群れていた。

その中に一際、大きく、頭に刃のような角を生やした大蛇が、静かにこちらを窺っていた。

 

頭上から羽音が響く。

電線に無数の鴉が止まっていた。

そこにも一際、大きな・・・・・・三本足の鴉がこちらを睥睨している。

使い魔、囲まれている。

どうする、どうすればいい。

静かだが、飲み込まれそうな、眼前のエクソシストの圧力。

いつだったか、あれはずっと昔、中東の辺りで会ったあの悪魔。

そう、アスモデウスとかいう悪魔と、同等の圧力を感じる。

 

(ルサールカのやつ、人外魔境ってこういうことかよ!! 魔王クラスの人間とエンカウントするとか聞いてねーぞ!!)

 

しかも得意の呪詛もまったく通じそうにない。

なんと云ったか。

この国のエクソシスト・・・・・・

 

(オン、ミョウジ)

 

そう、陰陽師だ。

聞くところによれば、陰陽師とは抗魔術(アンチマジック)専門家(スペシャリスト)

さらに無造作に見えて、どんな状態にも対応できるような重心の置き方から、間違いなく武術の心得がある。

魔術は通用しない、力では勝てない。

圧倒的に格上の相手、さらに相性は最悪。

 

(詰ん、でる・・・?)

 

どう考えても、戦って勝つのは無理だ。

 

逃げる。

 

だが周囲を使い魔に囲まれて、どう逃げる?

身震いする程の恐怖が、全身を駆け巡っていく。

男と繋いでいる手の温もりが、辛うじてエルの正気を繋ぎ止めていた。

人質・・・一瞬、頭をよぎった考えを振り払う。

通用する相手か分からない、無用に怒りを買うだけの可能性が高い。

むしろまとめて殺されるかもしれない。

一か八か、連れて逃げの一手を打つべきか。

その時だった・・・・・・

 

「思ったよりも早かったですね」

 

繋いでいた手が解かれた。

一瞬、遅れて男の言葉が頭に入ってくる。

男はゆっくりと陰陽師の方に歩いて行く。

 

ああ、また裏切られたんだ。

どこか冷めた思考が、エルにそう認識させた。

縁日も浴衣も自分を連れ出して、陰陽師を待ち伏せさせておくための、方便だったのだ。

分かっていたはずなのに、人間なんてそんなものだと。

なのに、なんで・・・・・・自分は信じてしまったんだろう。

湧き上がる感情は、怒りでも憎しみでもなかった。

ただ、悲しかった。

それだけがエルを満たそうとしていた。

 

男が陰陽師から数歩の距離で立ち止まると、両手を前に差し出してこう言った。

 

 

 

「刑事さん、私がやりました」

「は?」「え?」

 

その台詞に、期せずしてエルと陰陽師から同時に漏れたのは、困惑の声であった。

そんな二人に構わず、男は言葉を続ける。

 

「本当ならすぐにでも自首するべきだったというのは分かっています許されざる罪を犯してしまったというのにでも気付けばずるずると過ごしてしまってもう調べは付いているのでしょうが俺はこんな小さな女の子を車ではねた上に家に連れ込んで淫らな関係を持ってしまった最低のロリペド野郎なんです刑事さんにはお手間を掛けて申し訳ありませんでしたもう覚悟はできていますどうぞ手錠をかけてください」

 

男は一息で言い切った。

もう完全にさっきまでの空気は吹っ飛んでいる。

陰陽師はちょっと引き気味だ。

普段のポーカーフェイスが若干崩れて、知り合いが見たら、珍しい物を見たと言うだろう。

 

刑事と勘違いされているのは理解したが、どうするよこれ? とばかりに、電柱に止まっている自分の式神にアイコンタクトを送る。

知らんがなと、大鴉はそっと目を逸らした。

林の中の大蛇に・・・目をやるまでもなく、そんなことこっちに振られても困るという雰囲気が伝わってきている。

どうしたものかと僅かに思案して、面倒くさくなったので、別に誤解させたままでいいかと思い直した。

途中で見つけた怪畑を鎮めたり、エルフの捜索に近くの家鳴に聴きこんだり、式神を呼んだりと色々あって、もう今日で五徹目だったので、さっさと終わらせたかったのである。

 

「少し勘違いしているようだが、別に君を、逮捕に来たわけではない、のだが・・・」

「は?」

「それとそっちのエ、いや女の子と言ったが、彼女は俺や君よりも年上だぞ」

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

思い返せば、エルには確かにやたらと大人びた所があった。

色気というか、女の武器もよく扱いを心得ていた節がある。

だが子供にしか見えない見た目と普段の言動で、完全に未成年だと思い込んでいたのだ。

そもそも年齢を聞いたこともなかった。

 

男はエルの方に振り返る。

勘違いで色々と湧き上がった感情と、それを一気にぶち壊されて、行き場のない名状しがたい感情、それと女の年齢を詮索するなという感情がこもった眼で、ギロリと睨まれる。

凄い形相に、すごすごと男は目を逸らす。

 

「あの、それで、どうなるんでしょうこれ?」

「そう、だな・・・・・・こちらで保護して・・・身元を調べて本国に送り返すということになるか」

 

妖怪等に関しては、現場の裁量に任される部分がかなり大きいが、基本的な対応としてはそんなところだ。

陰陽師が視線を向けると、エルの身体がビクリと震えた。

エルからしてみれば、保護とは名ばかりで、連れて行かれて殺されてもおかしくはないと考えているので、無理もないだろう。

怯えるエルを見て、男は間に割って入り、口を開いた。

 

「あ、あの!! 彼女、ここで暮らすっていうのは駄目ですか?」

「ん?」

 

人間ならば不法滞在ということで、本国送還は免れないだろうが、国籍など持っていない妖怪が大半だ。

送還は努力目標と言ってもいいので、必ず送り返さなければいけないというわけでもない。

自然発生的に誕生する妖怪も少なくはない。

戸籍の取得に関しては融通が利くので、確かにこのまま暮らすというのも不可能ではない。

だが融通を利かせる権限は持っているが、問題を起こしたら責任だって生じるのだ。

陰陽師としては、軽々しく認めてしまうわけにもいかない。

問題児で有名なエルフとなると尚更だ。

少なくとも身元保証人も無しに認めるわけにはいかない。

 

「君達はどういう関係だ?」

「え?」

 

陰陽師の問いに、男はしばし考える。

出会いは飛び出してきたエルを、車ではねた時、つまり被害者と加害者?

レイプ紛いの事までしてしまったし、これが一番しっくり来そうな気がした。

それとも同棲相手だろうか、あるいはセックスフレンド?

間違っても恋人とはいえない気がした。

 

「彼女が何かした時、君は責任を取れるか?」

 

男はその問いにしばし考え、取れますと答えた。

 

「エル!!」

「な、なんだよ!?」

 

男の剣幕に少し、怯えた表情を浮かべるが、強がって睨み返す。

だが鋭い目付きも、今となっては男には秋波にしか見えていない。

興奮させる役目しか果たしていないようだ。

 

「け、結婚しよう!! 俺と結婚してくれ!!!」

「は? はぁあああああ!? ちょ、おま、な、なに、い、いきなりなに言ってんだょ!!」

「いきなりじゃない!! ずっと考えてた!! あ、あんなことしちまって、ずっと責任取らなきゃって!! だ、だから、エルさえよければ! 俺と結婚してここで一緒に暮らそう!!」

「ぅえ? ぇえ!? ほ、本気かお前?!」

「本気だ!! 結婚しよう!! 俺より歳上だっていうなら結婚できる年齢なんだろ!!」

「女に歳のこと言うんじゃねえ!!」

「今はそんな事はどうでもいいんだ、重要なことじゃない!! 結婚してくれるのか、はいかイエスで答えてくれ!!」

「拒否権ねーのかよ!?」

 

約三十分、そんなやり取りが続くのを、陰陽師は帰りたい気持ちを抑えて見守っていた。

まだ凶悪な妖怪と殴り合ってた方が楽だと思っても、人出が足りないので仕方ないのだ、頑張れ陰陽師。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

「では受理書は後日、郵送ということで」

 

たまにある事例なので、こういう時の書類一式は常備してあったのが幸いした。

さっさと記載させて、その場で受け取って陰陽師は帰路についた。

妖怪というのは洋の東西を問わず、人間とは比べ物にならないくらいに、こういう約束・契約に縛られる存在だ。

妖怪の戸籍を作るのが比較的容易というのも、その方がむしろ安全なためという理由が大きかったりする。

正式に婚姻契約を結んだ以上は、そうそう勝手もできないだろう。

 

(念の為に魔法も封じておいたし、エルフの方も何だかんだ言って、満更でもなさそうだったし、まあ上手くやってくだろう)

 

「流石に疲れたな」

 

とはいえまだまだ、やることは山積み。

書類の方は優秀な事務員に任せればいいだろうが、問題児な部下達を監督しないと、またぞろ後始末で仕事が増えかねないと思うと、さしもの特殊部隊の隊長も気が重い。

 

――お紺さん何かどうなんです?

 

ふと以前、部下に言われた事を思い出した。

事務員の妖狐についての話だ。

 

――食事にでも誘ったらどうですか? そういうの抜きにしても、親睦を深めて悪いことはないですし

 

面倒な仕事を頼むのだし、折角だ。

何か奢るのも悪くないだろう。

 

彼はまだ知らない。

そのせいで、七徹に突入するはめになることを。

詳細は第八話「ようこそ妖狐」を参照下さい。

 

「きぃきゅい」

「どうした? もう菓子はないぞ」

 

一匹の家鳴がとてとて駆け寄ってくる。

エルフの居所を教えてもらった謝礼に、持っていた金平糖やチョコレートをあげたので、今は菓子を何も持っていない。

 

「きぃ!!」

 

その家鳴は小さな手で、持っていた金平糖を持ち上げた。

 

「くれるのか?」

「きゅい!!」

 

その通りと、得意気に胸を張る家鳴。

そのまま、持っていたもう一つの金平糖を齧り出す。

一緒に食べようということなのだろう。

 

「ありがとな」

「きぃきゅぅ!!」

 

カリッという音と共に、口内に広がる砂糖の甘味・・・・・・それと家鳴の気遣いが、疲れた身体に染み渡った。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

さて、唐突に新婚初夜となった二人はというと。

色々今後の事で談論風発、丁々発止とやっていたが、夜も更ける頃には盛っていた。

 

「も、もういーっての、これ以上は意味ねーって」

「だ、大丈夫かな? やっぱやめた方が、せめてもうちょっと慣らしてから」

「いくらなんでも、そんなかんたんに体なんて伸び縮みしねーっつーの!! たく、五回もイカせやがって」 

「ご、ごめん・・・・・・」

「ほ、ほら。挿れるから、ちょっとジッとしてろ」

「なあ、エル。やっぱ無理はしない方が」

「うるせーよ! オレとしたくねーのかテメーは!!」

「そういうわけじゃないけど」

「テメーは、黙っておっ勃ててればいーんだよ・・・・・・あー、いや、まて、ちょっとくらい萎えとけ」

 

エルが膝立ちで男に跨ると、そそり勃つ肉棒を震える手で、そっと女の入り口にあてがった。

 

「ひ、膝立ちしてんのに、入り口にとどくとか、ふざけてるよなテメーのコレ」

「・・・・・・ご、ごめん」

「いちいち謝んな!!」

 

さっきはあんな積極的に結婚しろだの迫ったくせに、こっちはもう覚悟決めたってのに、うだうだやってんじゃねえと憤懣やる方ない思いを募らせる。

 

(薬も飲んだし、ここまできて後戻りなんてできねーんだよ、このトウヘンボクが!!)

 

エルはとある薬を服用していた。

本当ならある程度、痛みを麻痺させる媚薬なんかも使いたかったが、薬が変にバッティングして効果が出なかったら元も子もないので、そこは我慢する。

我慢しなければならない。

我慢してこの並外れた腕並みの巨根を、受け入れねばならない。

 

(魔法封じられちまったし、どうにかなるかわかんねーけど、精気は確保できるよーにしとかねーとな)

 

地脈、龍脈の管理も行う高位の陰陽師が施した封印となると、エルフといえどまず解けないだろうが、エルの専門はどちらかといえば知識さえあれば作れる魔法薬の類だ。

解けなければ解けないでまあ仕方ないと、それなりに楽観的に考えてるが、それでも色々試しておきたい。

そのためにも、効率的な精気の獲得手段、つまりセックスはできるようにしておきたい。

 

(・・・・・・なんかこいつ以外は、ちょっとやだなって思うし)

 

割りと今回の件は満更でもなかったりする。

夫婦の性生活は、家庭円満に欠かせないので重要である。

 

「よ、よし!! いくぞ!!」

 

向かい合った男の肩に、手を付いて体を支えながら、ゆっくりと腰を落としていく。

滴る愛液でテラテラとヌメる亀頭の先端が、柔くほぐれた花肉を押し広げていく。

体の小ささに反して、驚くほど柔軟に広がっていく膣肉。

だが骨盤一杯までと思う程に広がった辺りで、メリメリとひび割れそうな感覚と、窮屈な感触。

 

「ふぅ、ふぅっぅうう!」

 

苦しげに呻きながら、懸命に腰を落とそうとするが、限界なのかそれ以上は通って行かない。

二人の位置からは見えないが、エルの女の構造は伸びきり、張り詰めたゴムのように今にも裂けそうになっていた。

 

「エ、エル・・・・・・無理するな」

「うぅるしゃい、一回、もうやってんだ。入らねぇわけぇね、ねえだろぉ」

 

普段の横柄さも鳴りを潜めて、一杯一杯になってふうふうと呻いている。

 

(こ、これ、やっぱでかすぎ・・・・・・が、がき産むよりきついんじゃねーかこれ?)

 

出産時の赤ん坊の平均的な頭囲は、おおよそ三十センチ少々である。

流石にそこまできつくはない。

 

(が、がき・・・こいつとのがき?)

 

ゾクリとした。

子供を産む。

人間との子供。

それを、悪くないと思ってる自分がいる。

 

俄にエルの女があちこちから、ヒク付き押し寄せてきた。

ぬるぬると潤滑油を垂れ流し始めて、僅かに飲み込んだ男の亀頭を、濃厚に口付けるように蠕動する膣肉。

ずるっと一番大きく張り出しているカリが、エルの関所を越えた。

後は驚くほどスムーズに奥まで到達する。

 

「あ、ぁああぁぁ、ひっ、ひ、っひ、ひっ」

 

肺から絞り出された空気が、悲鳴とも嗚咽ともつかない音を上げる。

一気に侵入された衝撃。

ただただ己を満たす圧迫感。

 

「エ、エル、ちょ、大丈夫!?」

「ひ、ひぃっひひひひ・・・・・・は、入ったぞ。ちゃ、ちゃんと入ったろ、へ、へへへ」

 

(あ、あとは、しゃ、射精させれば・・・・・・え?)

 

とはいえ、挿入しただけで終わりではない。

男女の睦事は本来はここからなのだ。

 

(う、うごかねーと。そうだった、挿入れただけで終わりじゃねえよ。いや、でも、これ・・・・・・うごくの?)

 

比喩抜きで裂けそうなくらいに広がりきった腟口。

内蔵を圧迫される、凄まじいまでの違和感。

事前にちゃんと済ませておいたが、そうでなければ粗相の一つ二つはやってしまっただろう。

 

ふーふーと息を荒げて、震える足に力を込めて、抽挿を始めようと、陰茎を引き抜いていく。

 

「い、ぎぃ!?」

 

身体に走る、鋭い痛み。

みっちりと隙間なく詰まった物を引き抜くと、吸引の圧力で子宮が引っ張られていく。

痛みのあまり、半分も引き抜けずに、力の抜けた足が崩れ、腰掛けるように男のモノが再び押し込まれていく。

 

「うぐぅ!」

 

肺から絞り出されるように、空気と呻きが漏れる。

半分も往復できずに、エルの気力はすっかり萎えてしまっていた。

そんなエルを男は、ぎゅっと抱きしめる。

反射的にエルも男の背に手を回し、抱き返していた。

手が回り切らぬほどに、大きな背中。

それが何故かエルを安心させる。

 

「なあ、やっぱりやめとこう。エル、すっごい辛そうだよ」

「・・・・・・オ、オレのこと抱きたくない?」

「い、いや、その・・・めっちゃしたいです、凄い興奮してますよ」

 

実際、エルの中で男のそれはガチガチに怒張しきって、血管の脈動が分かる程に滾っていた。

う~と呻きながら、手に力を込めて、男の胸に顔を埋める。

 

「じゃあ、抱けよ・・・・・・」

「う・・・・・・いや、でも、エルが辛いだろ」

「なんで、そんなこと気にするの?」

「何でって? 普通、気にしないか」

「今まで、気づかってもらうとかなかった。誰もいなかった」

 

男は反射的に、エルの頭をかき抱いていた。

 

「もっとギュッて、して」

「うん」

 

いつの間にか、しおらしくなったエルが、胸に顔を押し付けてくる。

暖かい体温、体から立ち昇る匂い。

 

「さっき・・・・・・」

「ん?」

「さっき、あいつからかばってくれたよな」

「あいつって、あの刑事さん? ちょっと怖そうな人だったけど、別にそんな大したことじゃ」

 

ちょっと何てものじゃない。

あれは化け物だった。

そんな相手から・・・・・・

 

「なんか、うれしかった。ちょ、ちょっとだけ」

「そりゃ、その・・・好きな娘のためなら、まあ、頑張っちゃったというか」

「・・・・・・オ、オレも、好き、かも。よくわかんねーけど」

 

どちらからともなく、二人は口付けを交わしていた。

どこかぎこちなく、舌を絡め合い、啄むように吸い合う。

 

「チンコにはさんざんキスしたけど、口にするのってそういえば初めてだったな」

「女の子がそんなこと言わないの」

 

今更だろと、シシシと笑うエル。

再び口が交わされ、舌を吸い出し、飴を舐めるようにしゃぶる。

僅かに顔にかかる鼻息。

それは男に否応無しに、エルを意識させた。

腕の中にすっぽり収まる、エルの体。

今まではその小ささから、子供だとばかり思っていたが、確かに子供らしからぬ成熟した靭やかさがあった。

小さいのにふにふにと柔らかくて、ちゃんと体も女性らしい曲線を持っている。

歳上だと聞いたが、肌などすべすべして、触れているだけで心地良い。

背中に回していた手が、ゆっくりとその背をなぞっていく。

身震いするエルの鼓動がダイレクトに伝わってくる。

その手はやがて、やわい尻肉に到達する。

 

「ん、んん♥」

 

薄い肉付き。

なのに触れた指は、どこまでも沈み込んでいきそうで。

口を吸い合いながら、むにむにとその感触を愉しむ。

ただ挿入しているだけで精一杯だったその結合部は、その度に微妙な収縮を繰り返す。

蠕動して、膣肉が男の怒張にねっとりと絡み付いて、抽挿できずに飢えた膣壁自体が、貪欲に男を搾り取ろうとしているかのようだった。

女の蜜はこんこんと分泌量を増やして、お湯のように熱さを伝えてくる。

 

(は、腹の奥がぐにゅぐにゅしてるぅ♥ なんだこれ? こ、こんなの初めてで)

 

エルの穴はそれ自体が意思を持ったように、男を咥え込み、その陰嚢から精液を搾り取ろうと求めていた。

自分の意思を離れて、暴れ出した性器。

身体の変調にエルも不安なのだろう。

子供のように、男の体にしがみついて震えていた。

 

「エ、エル」

 

膣の蠕動によって射精を促され、エルの最奥にビシャビシャと男の精液が叩き付けられた。

みっちりと男がつまった膣に放出された液体は、逃げ場を求めて子宮に注ぎ込まれていく。

射精は恐ろしく長く続いた。

子宮を圧迫する感覚に、エルは何度も身を震わせていた。

男は凄まじい虚脱感に襲われながら、荒い呼吸を繰り返す。

腕の中でエルは言葉もなく、息も絶え絶えに肩を上下させ、男に体重を預けていた。

いつまでそうしていたのか、その硬度をなくし、いくらかダウンサイズした陰茎をゆっくりと引き抜きにかかると、ハッとしたエルの手に力がこもる。

 

「だ、めぇ・・・このまま」

 

逆らう気力も起きず、繋がったままゆっくり倒れむ。

胸にエルを抱いたまま、虚脱感と心地良い温もり、そして女の肉に包まれた一物から、弾けるような感触を感じながら、その意識は闇に落ちていった。

 

   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇   ◇◆◇

 

ぴちゃ、ぴちゃと水音が響く。

朦朧とした頭は雨の音かと、しばしの間、錯覚する。

やがてそれは、自身の近くから響いているのだと、覚醒を始めた頭が理解する。

意識した途端に、下半身、正確にはその一部に感じる感触。

同時に水音もそこから響いているのだと気付いた。

見れば、シーツが盛り上がり、下半身の辺りでもぞもぞと動いている。

 

気怠げな身体とは裏腹に、急速に動き出した意識。

昨夜の情事を思い出し、口元が緩む。

新婚。

何とも甘美な響きであった。

 

(しかも、朝からなんて)

 

朝から新妻のご奉仕!

男の浪漫である。

だが、そこで妙な事に気付いた。

今までも、散々口でしてもらったはずなのだが、現在、下半身に感じる感触がおかしいのだ。

男の並外れた巨根は、萎えていなければ、とても口に入るようなサイズではない。

だというのに、今感じているのは竿の半ばに、ぷにぷにとした唇の感触。

そして亀頭を這い回る、舌の感触だった。

 

「エル?」

「ん? 起きたか」

 

シーツから顔を出したエルが、夫となった男の一物から口を放して、頬を寄せて蠱惑的に笑っていた。

 

「え?」

 

どこか信じられない物を見るように、男の目が見開いた。

エルが手で弄んでいる、それがおかしなことになっていた。

 

「ええ?」

 

まだ状況を理解できない。

小さくなっていた。

萎えているという意味ではない。

サイズそのものが、半分以下になっていた。

長さも、太さも。

理解が追いつかない。

何故こんなことになっているのか。

 

「オレサイズ。あんなの毎日じゃ壊れちまうからな」

 

エルが飲んだ魔法薬の効能、それがこれであった。

男のモノを、女のサイズに合わせてしまったのである。

それはエルフの卑劣な魔術。

男の尊厳を奪う許せぬ術だ。

 

「な、なんだよ? これでオレのことちゃんと抱けるだろ?」

「え? あ、いや・・・・・・」

「まさか、オレ以外に使うアテがあるなんて、言わねーだろうな?」

 

ギリっと男のソレを握る手に力が篭もる。

 

「いえ、その、残念ながら」

「ざんねんながら?」

「エル以外には使いませんです! 残念じゃないです!!」

「よろしい」

 

シシシと笑うエルフは、どこか幸せそうであった。

 

余談ではあるが、これからしばらくして、エルが魔法薬をネット販売で売り捌いたことで、いくつかの事件が起こるのだが、それはまた別の話である。

 




サブカルチャー的なのではなく、原典に近いエルフをイメージしました。

あと3千字位書けば書き上がると思ったら、2万字オーバーしてた。
結構削る羽目になりました。
隊長さん出てくると、ついバトル描写入れて、そういうSSじゃねーよと大幅にカット。
隠し持ってた手榴弾を投げるエルフに、袖裏乾坤の術で手榴弾を吸い込む陰陽師!!
電線が結界を構築しており、瞬時に動きを封じられるエルフ!!
何を書いているんだ俺は・・・・・・

この二人はだらだら過ごしてその内、破局してるビジョンしか浮かばなかったので、強引でもくっつける要素が必要だと思ったので隊長さんが出張りました。
大まかなプロット自体は初期にできてたりしましたが、時間かかったなあ。

この話で一番やりたかったのは最後のエルフの卑劣な魔術だったりします。
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