書類を書き、指輪を用意して、俺は睦月を執務室に呼び出していた。
これまで沢山の困難を一緒に越えてきた睦月と俺は今日、遂に結婚するのだ。
大変な日々だった。日増しに強くなっていく敵艦隊。猛攻に沈んでしまった者もいる。共に勝利を喜びあい、共に敗北に涙した日々。それら全てが頭を駆け巡った。
ノックと共に執務室に入室した睦月。
初めて出会った日は体も小さくて幼かった睦月も、今では2度の改装を経て心身共に大きく育っている。
「睦月」
名前を呼ぶと睦月は笑顔でこちらを見てくれる。目が合うだけで心臓が弾けそうな程激しく鼓動した。きっと睦月も俺が言うことを分かっているはずだ。いつも通りの明るい笑顔でいるのだが、緊張で固まっていてどこかぎこちない。
俺は一歩踏み出し睦月に近づいた。
近付いてみれば背が大きくなったといえどもまだまだ頭1つ小さく上から見下ろす体勢になる。
思いがけず近付いたからか睦月の瞳にはうっすら涙が溜まった。体の後ろに隠していた指輪を取り出し片膝を床に付ける。
俺の急な行動の連続に睦月は遂に笑顔が消えていた。
俺は、俺の、震える手をどうにか抑えつけ、指輪を睦月の前に突き出した。
「俺と、結婚してくれ」
渾身の愛の告白に睦月は少し固まったのち、それはそれは嬉しそうに、心から溢れる感情を抑えられないといったように、睦月の大きな瞳からぽろぽろと大粒の涙を零していた。
「睦月は提督のために強くなれるようずっとずっと頑張ってきたのね。これからも提督と一緒に頑張っていきたいのね」
睦月の思わぬ返答に今度は俺が驚く番だった。
俺の指揮不足で何度も危険な目に合わせてきていたし、それでも気丈に冗談を交えながら親密に話してくれる睦月がいた。
いつも冗談を混ぜて話す睦月の口から、本気の本当の根本としての俺への思いを率直に打ち明けてくれたのだ。これほど嬉しいことはない。生きてて良かった。睦月と逢えて良かった。
「睦月。左手、出して」
「うん」
俺は睦月が出した左手を掌で優しく包み込んだ。
止めどなく流れる涙を拭いていた左手は冷たく濡れ、それなのに手は指先まで熱い。
箱から出していた指輪を睦月の白く細い指にゆっくりと通していく。
合わせている手の平から睦月の脈が俺に伝わってくる。二人で指輪を通す数秒、いや数十秒、お互いはお互いの脈を感じていた。
奥まで入れ終わると指輪は仄かに白く輝いた。
「おおー! このみなぎるパワー! 睦月、もっともっと頑張れるにゃしぃ!」
いひひっ、とふざけてみた睦月は泣きはらした目を細めて俺に、白い綺麗な歯を見せるように笑う。俺はそんな睦月の頭を優しく抱き抱えた。
「睦月、今夜は二人で寝ようか」
俺の胸に手を添えて顔をうずめた睦月は顔を上げることなく、小さく頷いた。
* * *
「提督と初めて一緒の夜なのね! これからはずーっとずっとここで寝るのにゃぁ!」
部屋から持ってきたパジャマ姿で盛り上がる睦月は蘭々と、この日の為に用意しておいた高級羽毛布団に潜り込む。
俺は睦月のテンションまでとはいかないが、それでも気分は高揚している訳で、でもどういう風に入れば良いのか分からないのも事実で。
「提督! 早くはやくにゃ! 隣に寝るのね!」
俺の分の枕をポンポンと叩く睦月に促され、言われるがままに睦月の隣に腰を落ち着けた。
「睦月」「提督!」
二人を言葉が重なる。
「あー…、睦月からでいいぞ」
同じタイミングで話し掛けたのがかなり嬉しかったのか、睦月はニヤけた顔が戻らない。
綻んだ睦月の手に俺の手を重ねるとびっくりした様子で小さく跳ね上がった。
「にゃにゃっ! わっ、え、えっと、提督、き、きしゅ、キス、したいのね…」
しどろもどろに噛みまくる睦月の様子に俺は思わず噴き出してしまった。
笑う俺を見てますます恥ずかしがり真っ赤に茹で上がる睦月の顔。その温かい頬に右手をそっと添えた。
ぴくり。
真っ赤な顔が小刻みに震え出す。体の前で組んだ手に力を込める睦月に一気に顔を近付ける。口は一文字に結び、目は極度の緊張で見開いている。
俺はそんな緊張した睦月が組んでいる手を左手で包む。
「大丈夫、力を抜いて」
優しく語り掛ければ、睦月はゆっくり深呼吸を始めた。
何度か呼吸をすると落ち着いたように自然に目を閉じる。
心の準備が出来た。
俺は更にゆっくり時間を掛けて唇と唇を重ね合わせた。
最初は感触を確かめる重ねるだけの優しいキス。一瞬の事であったにも関わらず唇には柔らかい違和感が残っている。
あまりに優しいキスだったからなのか、睦月は物足りなそうに目だけで訴えてくる。
俺は睦月の要望に応えるようにもう一度、今度はじっくりと口の中を合わせる口づけをした。
「んっ、んむぅ、んちゅる…♡」
一度焦らした影響か、睦月は貪欲に俺とのキスを激しく求めてくる。顔を押し付けてくる睦月の後頭部に手を回して、ゆるりと撫でる。それだけで興奮していた睦月は落ち着いて粘膜を擦る。
口づけで口が塞がった状態では、どうも鼻息が荒くなってしまう。荒くなった鼻息を目の前の睦月に聞かれるのは恥ずかしかったが、それでもハリの良い睦月の唇を味わう事が出来る嬉しさに前ではそんなことでキスを辞めるようなことは絶対にしない。
座ったまま横を向く今の体勢では流石に限界が来て、俺は睦月を抱きしめながら布団に押し倒した。
名残惜しい睦月の柔らかい唇から離れ、仰向けとなっている睦月に俺は覆い被さった。
これからされることに期待と恐怖が入り混じった表情を浮かべる睦月は、それでもうっとりと恍惚に惚けた瞳で俺に身を預けてくれた。
「パジャマ、脱がすよ」
静かに頷いた睦月の顔を見てから、丁寧にパジャマのボタンを上から外していく。
「んんっ、」
第二ボタンを外す際、間違って睦月の胸に触れてしまった。分かりやすいくらい体が震えた睦月に申し訳なく思い、ボタンを外す手を止め謝ろうとしたときだった。
睦月は離そうとする俺の両手首を掴んで離さなかった。
「私の体はもう提督の物なのです。胸だって好きなだけ揉むといいのね。だから、続けて?」
まただ。
どうやら俺はいつもとは違う真面目な睦月の口調に激しく心を揺さぶられている。
真っ直ぐ見つめる双眸。それは覚悟を決めた乙女のもので、俺への愛の印だった。
「分かった」
そう返事を返すと睦月は俺を押さえていた手を離す。俺は引き続きパジャマのボタンを外し始めた。
だが、先ほどまでとは違う。
第二ボタンを外す。その行為をするのに俺は左片手だけを使う。
かなり小さめのボタンを使っている睦月のパジャマは、片手だけではとてもやりづらい。それでも片手だけで外す。
空いた右手を睦月のそのふんわりと柔らかい胸に乗せ、胸肉を大きく寄せ集める。
「にゃっ、ひゃっ、んん、にゃぁ、あぅん♡」
それは1度ではない。何度も何度も何度も何度も、左手がボタンを外し終えるまで俺は睦月のこんもりとした胸を揉んで、布越しに伝わる睦月の乳の感触を楽しんでいた。