ゼルダの伝説『時のオカリナ』ナビィに転生したと思ったら、肉便器だった件 作:はくびしん
リンクと熱い夜を過ごした翌日。
デクの樹様に呼び出されて彼の元にいくと、今にも死にそうなデクの樹様がそこにいた。
最初は何をふざけているのかと思ったけど、原作を思い出してまさかと思った。
そう、デクの樹様は原作で亡くなっているのだ。
悪しき者からの呪いを受けて。
「どうして!?」
デクの樹様の力は凄い。
馬鹿みたいな言い方かも知れないけど、これほど的確に彼の凄さを示す言葉もない。何せコキリ族という命を産み出す事も出来れば、森全体を結界を張りながら恵みを与える程の力を持っているのだ。本気になればガノンドロフだって退けられるかも知れない。
そんな彼が、未来を知っていた彼が、何もせずにこんな事になるなんて考えられなかった。
対策を立てない訳がないのに。
呆然としているとリンクが前に歩み出た。
「おう、クソガキ。随分とおっとこ前になりやがったな。なんだ脱童貞すると、そんなんなんのか?」
「そんな事ないと思うけど・・・どうだろ、よく分かんないな」
「なんだ、この、リアルな感じ・・・敗北感がすげぇ。きぃー悔しくないんだからぁー!」
「えぇ!?」
なに、このやり取り?!
前世全開の私とデクの樹様みたいな感じなんだけど!?
もっとしんみりとした感じで話してたんじゃないの!?この二人って!
「あ、ナビィが驚いてる」
「マジだ。つか、今更だお」
「ちょっ!!」
私は割りと本気でデクの樹様の顔面に突撃した。
「ちょっ、どういう事?!なんでこんな感じになってるの!?」
「えぇぇぇ、そんなこつ言われても、おいどん分からんたい」
「エセ博多弁つかうな、うっと惜しい!!」
「へい、へい。スマソ。お前が帰る前からこんなんだよ。残念だったな、お前のリンクは既にオレ色に染まっている。フハハハ」
「デクの樹様!」
なんて事してくれるんだ、この男!!
リンクが真っ直ぐ育たなかったら、どうしてくれるんだ!デクの樹様がどれだけリンクの人格に影響与えるか、分からない筈もないのに━━━!!
━━━って、え、まって、え、もしかして・・・。
じっとデクの樹様の目を見つめる。
デクの樹様はそんな私に舌をだしてウインクしてきた。
「女の子の神秘は、ぼくが教えました。てへぺろ」
私は人の姿になり━━━━ドラゴンインストールした。
「うぉぉぉぉ!?どうどう!まてまて!本当にま て!!死んじゃうから!そんなの喰らったら死んじゃうから!!てか、本当に使えたのかよ!?」
「いざとなったら、リンクの代わりに倒そうと思ってたから。アレを持ってる以上、これくらいないと、いけないと思って・・・」
「過剰過ぎるわ!!何殺しにいくの!?てか、どうやって身に付けたの!?」
「五年くらい頑張ったら出来た」
「出来てたまるか!!」
喚くデクの樹様に止めを刺そうと拳を振り上げたけど、リンクに止められてしまう。
目線でこいつを消すって伝えたけど、首を横に振られてしまった。むぅ。リンクがそう言うなら・・・。
そんな私をデクの樹様がニヤニヤしながら見ていた。
滅茶苦茶むかつく。なんだあれ、本当むかつく。
「さてと、あんま時間もねぇ。リンク、お前に頼みたい事がある。いいな?」
飄々とした話し方は変わらないのに、先程までの楽しげな雰囲気が無くなった。
「うん、父さん」
「リンク、行くなって教えた部屋があったろ。覚えてるな?」
「うん、覚えてる」
「そこにな、家賃も払わねぇでいついてる大ボケ野郎がいる。卒業試験だ、ぶち回してこい」
リンクはデクの樹様の言葉に頷くと、当然のようにダンジョンの入り口へと向かった。
私は急な展開に混乱しながらもリンクの相棒としてついていこうとしたが、伸びてきた枝葉に止められた。
「えっ、デクの樹様?いけないんだけど」
「お前はいくな」
「はっ!?なんでっ!私は━━━」
「これは、あいつの戦いだ。邪魔すんな」
「邪魔なんてっ━━━!!」
そう思ったけど、私にも心当たりがあった。
リンク為に身に付けたの技術の数々。果たして私はこれを使わないでいられるだろうか?ううん、きっと出来ない。些細な危機でも、きっと私は身に付けたそれを使ってしまう。
私はリンクを素直に見守れる自信がない。
デクの樹様に言われた言葉に反論出来ないでいると、リンクが振り返りにっと笑って見せてきた。
「大丈夫!少し待ってて、ナビィ」
自信に満ちたその顔に僅かに安心感を覚えたけど、やっぱり素直に頷けない。そんな私に見かねてデクの樹様が私のデコにデクの実をぶつけてきた。
結構な勢いがあって、めちゃ痛い。
「惚れた男だろ。ちったぁ信じてやれ」
「デクの樹様ってそういうキャラじゃないでしょ」
「うっせぇ。人間死ぬ前とオナニーした後は、賢者になるもんなんだよ。オレが育てて、お前が鍛えた。それは信用にたるもんじゃねぇのか?」
ううん、間違ってない。間違ってるのは私の方だ。
これから一緒に旅にでるのに、その相棒の力を信じないなんて間違ってるよね。大丈夫。だってずっと見てきたから。あの子が頑張る姿を。
「リンク・・・うん、わかった。待ってる」
「うん、行ってくる!」
コキリの剣を片手にデクの盾を身に付けたリンクはデクの樹様のダンジョンへと消えていった。
リンクがいなくなって、私はデクの樹様の顔面にパンチしておいた。リンクに余計な事を教えた罰と、こんな結末を選んだ事への報復だ。
デクの樹様は「いってぇな」と文句は言ったが、私の攻撃を抵抗もなく受ける所を見ると、それがふざけてやった結果でない事だけは分かった。
どうして、と聞きたかった。
選べた筈だから。
こんな事にならないで、上手く出来る方法を。
でも言えなかった。
命を懸けて、友達が選んだのが、この結果なのだから。
「文句、言っても良いぞ」
「言わないよ。デクの樹様はエロで馬鹿だけど、アホじゃない。ちゃんと選んだんでしょ?」
「まぁな」
はぁ、と大きく溜息をついたデクの樹様は続ける。
「仕方無かったんだよ。下手に抵抗しねぇ方が時間稼げたんだからよ。呪いに抵抗する事は出来たけどよ、そうしたらあいつが本気で攻めてくる。結界があるとは言え、本気で攻められたら一たまりもねぇからな。あのボケカス、力のトライフォース選ばれるだけあって馬鹿みてぇにつえーんだ。ガチンコじゃまず勝てねぇよ、なにあれ」
「それじゃぁ」
「ああ。トライフォースの資格者な奴ぶっとばせるのは、同じようにトライフォースに選ばれる勇者だけだ。今その可能性があんのはリンクと」
「ゼルダ姫」
原作でもデクの樹様は『神に選ばれし姫』つまりゼルダ姫を探せと言っている。どうして森に留まり続けるデクの樹様が彼女の存在に気づいたか分からないが、デクの樹様が気づいた程の何かが彼女にあるという事だ。
「ま、そういうこった。ここまで分かってんなら、あいつが覚醒出来るように、ちゃんと支えんだぞ」
「言われなくても、そうするよ。私はその為に強くなったんだから」
私の言葉にデクの樹様が笑い声をあげた。
「にしても草過ぎるわ!本当に、どんだけ強くなってんだよ!人間は勿論、妖精だからってドラゴンインストール覚えていい道理はねぇぞ?」
「うるっさいなぁ!良いでしょ!別に!それに、他のと比べたらまだマシだし」
「他って・・・まさかお前、怒りで金髪になったりしねぇよな?」
「し、しないよ、それは」
「似たような事は出来んだな、ひくわ」
伝説のあれにはなれないけど、じゅうべぇだぁーくらいは出来てしまう。というか、ドラゴンインストールが正にそれだしね。
「まぁ、なんでも良いわ。あ、ナビィ」
「ん?なに」
「好きに生きろよ」
デクの樹様らしくない、澄んだ言葉。
偽りのない、心からの言葉。
私は思わず唇を噛み締めた。
「お前は色々とゴチャゴチャ考え過ぎだ。もっと素直になれ」
「・・・わかってる」
「分かってねぇよ。全然な。オレは好きに生きたぞ。この世界はゲームみたいだけど、ゲームじゃねぇ。皆生きてる。なら、原作通りやったって絶対はねぇ。━━━だから、オレはオレの守りたいもんの為にやれる事はやりつくしたぞ。後は撒いた種が芽吹くのを待つだけだ。もっとも、それを見ることは叶いそうもねぇけどな」
そうカラカラと笑うデクの樹様はいつも通りなのに、酷く寂しそうに見えた。辛いのだと思う。怖いのだと思う。でも彼は泣き言一つ言わず、これからも生きる仲間を思って笑う。
どれだけの決意で、彼は死ぬことを選んだんだろうか。
凄いなって、そう思う。
私にはきっと、マネ出来ないから。
「━━━と、しんみりしちまったな。わりぃ、わりぃ」
「ううん、いいよ」
「話長くなっちまったけどよ。ようはさ、幸せになって貰いてーんだよ、お前には」
「私に?」
「そうだよ、私様。・・・ガラじゃねぇけどさ、友達には幸せになって貰いてーんだよ」
「━━━ふふ、そっかぁ。私も、デクの樹様には幸せになって欲しかったかなぁ」
「おう?可愛い事言うようになったなぁ。すっかり雌堕ちかよ。だが、残念だったな━━━」
地面が大きく揺れた。
デクの樹様の沢山の枝葉がその身を震わせ、葉の擦れ会う大合唱が鳴り響く。
そして光の柱が落ちてきた。
神々しいまでの光の中心には、私の大好きな人の姿があった。
「ナビィ!」
満面の笑みを浮かべ手を振る彼に私は手を振り返す。
そしてデクの樹様は光に包まれる彼を見て笑う。
「━━━━オレはもうずっと、幸せだからよ」
そう幸せそうに笑う。
小鳥の囀りを聞きながらバッグの中身を確認していると、リンクが徐に私に抱きついてきた。
「もぅ、準備の邪魔しないで」
「ごめん、後ろ姿が可愛いくてつい」
「むぅ、また、そんな事言って・・・誤魔化されないからね」
リンクの手を払いたくはない。
出来ればずっとこうしていたい。
でも、そういう訳にはいかない。
森の精霊石をリンクが持っている以上、それを狙っているガノンドロフがいつ来ても可笑しくない。
デクの樹様という強大な守りがなくなった以上、ここに止まるのは愚策でしかない。
精霊石を守る為にも、コキリ族や森を守る為にも、私達自身を守る為にも、ここを離れた方が良いのだ。
私はリンクの手を握り締めてから、そっと離させた。
「リンク、頑張ろう」
「うん、任せて。」
荷物を担いだ私は住み慣れた家を出た。
リンクと一緒に。
森の出口へと繋がる橋の所にやってくると、原作通りサリアが待っていた。
サリアは私達に笑いかけ、手を振った。
「色々言いたい事はあるけど、もう沢山話したしね」
サリアは私を見つめる。
「ナビィ。辛くなったらいつでも帰って来て良いからね。ここは貴女の故郷なんだから。誰が何を言ったって、ナビィはわたしの友達で、いつでも一番の味方なんだから、ね」
「うん、ありがとう、サリア」
うんうんと頷いたサリアはリンクを見る。
「ナビィの事よろしくね。泣かせたら、わたしが貰っちゃうんだから」
「絶対に渡さない」
「泣かせないとは言わないのね。まったくもう。意地悪し過ぎないのよ?」
「うん」
原作感ゼロかよ。
うわぁぁぁぁ、これは、うわぁぁぁぁ。
デクの樹様のせいだ、絶対そうだ。リンクに変な事教えるからこんな・・・何が好きに生きたぞ、だよ!その結果がこの混沌を産み出しているんだよ?!私の話しかしないとか、絶対に可笑しいよぉぉ!
あの男、死ぬ前に殴っておけば良かった・・・。
「またナビィが自分の世界にいってるわね」
「そういう所も可愛いんだけどね」
「のろけないでよ」
それからリンクはサリアからオカリナを貰い、私はサリアから髪飾りを貰った。オカリナは原作通り。髪飾りの方は特別な力で作った物らしく、妖精に戻っても外れたりしない凄い物だった。
最初に聞いた時、小さな妖精状態の私の体にデカデカと張り付く髪飾りを想像して、本気でいらないと思ったのは内緒だ。
実際は光の粒子になって体の周囲をキラキラしてるだけだった。
「それじゃ、リンク、ナビィ!!元気でね!!」
サリアに見送られて私達は森の外へと向かった。
私は数年ぶり。リンクは初めての森の外だ。
リンクは私の手を握りながらこちらを見てきた。
何を言うのか待っていると、不意に口を開いた。
「離さないからね」
私は繋がった手を見つめ、頷いた。
一緒にいる、そう約束したから。
いつか別れの日が来るまで、絶対に離したりはしない。
「行ってきます。デクの樹様」
沢山の思い出が残る森を背に、私達は長い冒険の第一歩を踏み出した。
ハイラルを救う長い冒険の第一歩を。
そして、間違いなくその一歩は、私の肉便器への道を加速させる一歩だったりしたのだが・・・あの時の私は何も知らなかった。
◇◇◇
ボス部屋
ゴーマ「~~~♪」
扉どーん。
ゴーマ「━━━!」
リンクさん「━━━あ、いた」ゴゴゴゴゴゴゴ
ゴーマ「・・・!・・・━━━━・・・・!?!?」
リンクさん「父さんから頼まれてるんだ。さぁ、やろっか。折角だから父さんの枝で、ね」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ゴーマ「・・・・オワタ」
ボス討伐タイム5秒。
使用武器、デクの棒、パチンコ
使用必殺技、ジャンプ斬りというなの一の太刀
次回予告
おそとで