ゼルダの伝説『時のオカリナ』ナビィに転生したと思ったら、肉便器だった件 作:はくびしん
そう思うだろう。
おれもおもった。
ココリコ村を立ってから半日程。
モンスターを始末しつつデスマウンテンの険しい山道を進んでいた私達は、無事目的地であるゴロンシティに辿り着いていた。
ゴロンシティはデスマウンテンと呼ばれる活火山の山間にある街で、岩を主食とするゴロン族達の棲みかである。
因みに、街周辺は生息するモンスターと岩の崩落、転がってくるゴロンに気をつけていればそれなりに安全なのだが、それより昇るとハイラル地方屈指の危険地帯である。ほぼ毎日火山弾が雨と降る場所と言えば分かるだろうか。
気温も高いし、流石のリンクもどうなる事か。
いずれ行くとこになるだろうけど・・・今から少し心配だ。
「どうしたの?ナビィ?」
思わず溢した溜息にリンクが不思議そうに振り向いた。
心配してくれるのは嬉しいけど、昨夜・・・というか今朝まで私の体を貪っていたのが嘘みたいに疲れがなく、逆に艶々してるその顔に、ちょっといらっとする。
私は疲れてるのにぃ・・・。
ちょっと癪だったので顔を背けてやる。
すると何故かクスクス笑われた。
ムッと思って睨めばリンクは目を逸らした。
「━━━━━━あぁっと、ナビィ。ゴロンシティでもやること色々あるんでしょ?行こう、ね?」
「そうだけど・・・・むぅ・・・・・リンクの今晩のお夕飯は干し肉なしだからね」
「えぇ、そんな!?ご飯を抜いたりとかは駄目だって、ナビィが言ったんだよ!?ほら、栄養が偏るとか!」
「お肉食べなくてもお豆食べれば良いよ。それは準備してあげる」
「またあの味気ない豆かぁ・・・・」
ブツブツ呟くリンクを連れてゴロンシティの入り口である洞穴を進むと、妙に明るくて広く拓かれた空間に着いた。すり鉢状に段々になっている地形。一番深い所にある謎のツボ。ロープで空中につられた如何にも精霊石が埋め込まれてましたって感じの台座。
ゲームで見たままのゴロンシティがそこに合った。
「ふあぁー」
「おおー」
思わずリンクと一緒に感嘆の声をあげてしまった。
だってゲームの世界だった物がリアルに存在しているのだ。それもちゃんと生きてる風景。
何十年、下手したら何百年と生きてたから、頭ではこの世界が生きてる事は理解してる。だけどやっぱり、目でみたり体験してみないと実感出来ない所はあるのだ。
こういう時、旅に出て良かったと本当に思う。
いつまでもそうしてる訳にもいかないので、早速リンクと一緒に台座へと向かう。足場の不安定さなんて私もリンクもなんのそのだ。
そこにいたゴロンから話を聞くとやっぱりゴロンのルビーと呼ばれる精霊石は族長のダルニアが持っていったらしい。ゲーム同様、教えてくれたゴロンは「舐めたかったゴロ」と呟いてしょんぼりしてた。
リンクは呆れた顔で見てたけど、リアルで聞くとゾクッとする物がある。ゴロン族って岩食べるから、宝石とかは勿論、下手したら精霊石すら食べれちゃう可能性あるんだよね。精霊石が無事で良かった。
台座にいたゴロンと別れて、すり鉢状の段々を降りていく。皆の様子を窺っているとやっぱり元気がない。ゲームではキングドドンゴと呼ばれる恐竜みたいなのが暴れているせいで、ゴロン族の主食である岩を取れずに困っていた━━━って設定だったけど・・・・そこは変わらないみたい。
妖精仲間に聞いた話、キングドドンゴは元々守護獣みたいな役割のあるモンスターだったらしいから、問題がなければ倒したくなかったんだけどなぁ。
うむむむ。
そうして降りていって最下層にある族長の部屋の前に着いた。ゲーム同様、部屋は岩で固く閉ざされてるみたい。ちょっと触れて確かめ分かったけど、物理的というよりは魔法的な守りみたい。
よしよし、ナビィの出番だよね!
ヒント出さなきゃ。
「あのね、リンク━━━━」
「っふぅん!!」
私の言葉を聞いて無かったリンクは岩にタックルを決めた。大きな音が響き地面が揺れる。入り口が無理に押されたせいかヒビが入り、数センチ岩が押し込まれた。
魔法で塞いでるから、動く筈ないのに。
「よしっ、もう二三回やれば━━━」
「駄目だからね!?リンク!これは魔法で塞いでる岩なの!結界と一緒!無理矢理なんて開けたら中の術者が大変な事になるんだから!!」
「━━━え?あ、そうなの。早く言ってよ。もう、ナビィのおっちょこちょい」
つんっとオデコを押された。
「ご、ごめん。次からは・・・・ごめんじゃないよ!リンクがせっかちだからでしょ!?人のせいにしないの!」
「ごめんってば。じゃぁ、どうしたら良いの?」
「もう・・・・」
それからゼルダ姫に教わった筈の時の歌を吹かせれば、岩は簡単にどいて道を作ってくれた。尤も、動いてく岩の動きは壊れた機械みたいに鈍かったけど。
次、使えるかなぁ・・・・。
ダルニアに会いにいってから、おおよそ一時間後。
予定ではサリアの歌を覚えに森に戻っている筈の私達は、未だにゴロンシティにいた。
そして何故か、ゴロン族の祭りに使う御輿の上に乗せられ運ばれていた。
「我等の救世主!!リンクとナビィのお通りだぁ!讃えやがれぇ!!ゴロォォォォォ!!」
誰よりも大きな声をあげてゴロン族の皆を煽るのは、英雄であり現族長ダルニアさん。ゴロン族の皆はよくわからなそうな顔しながらも族長の言葉に従い黄色い声をあげる。
「ナビィ?」
不意なリンクの声に振り返ると、心配そうなリンクの顔がある。
「大丈夫?もしかして酔った?」
「よってはいないけど・・・ちょっと頭痛はするかなぁ・・・ははは」
そう伝えるとリンクは自分達を担ぐダルニアさんに視線を落とした。嫌な予感は感じるけど、今はそれを防ぐ元気がないから放っておく。
「ねぇ、ダルニア。揺れが強いよ。ナビィが気持ち悪くなっちゃったってさ」
「おっ、おうさぁ!!!!魔王様!!」
「魔王だなんてやだなぁ、あはは。リンクでしょ?」
「っめ、面目ねぇ!?今度から気をつけるぜぇ、リンクの旦那ァ!!」
デクの樹様、どうしよう。
リンクが魔王様呼びされてるんだけど。
答えが欲しくて心の底から天井の向こうにある空に祈ると『ヤクザと警察が大して変わらないように、勇者も魔王も似たようなもんだから。オケオケ』と見も蓋もない声が聞こえた気がする。死んでからもデクの樹様はデクの樹様だったらしい。幻聴なのは間違いないけど、果てしなく腹立つ。会える機会はないだろうけど、もし会えたらぶん殴ってやろう。
頭に走る痛みに耐えながら視線を落とすと、必死な形相で私達の御輿を担ぐダルニアさんの後ろ姿が見える。
そこにゲームで感じた族長感と兄貴感はない。
リンクが抉じ開けようとした影響か、ダルニアさんは最初から若干ビビっていた。それはそうだろう。英雄と謳われた自分でさえ動かせない岩の扉を動かしたやつが来たのだ。ビビりもする。
しかもその後何か口を滑らせたらしく、リンクを酷く怒らせ服従まで誓わされてしまったのだ。
因みに何を言ったのか私は知らない。
リンクが自分で話をつけるというので私は離れていたから。・・・・一体何を言ったんだか。
「━━━おおぅ!?ど、どしたいナビィの姐さん!?まだ駄目そうかゴロ!?」
「えっ?・・・いや、大丈夫です。なんでもないです。それより姐さんって・・・?」
「ありゃ、不味かったですかナビィの姐さん?リンクの旦那のよ━━━━ったぁ!!?」
何か言いかけたダルニアさんの横っ面に、突然デクの枝が突きつけられた。隣を見ればデクの枝を持ったまま良い笑顔をしたリンクがいる。
「こらっ!リンク!いきなり何するの!!危ないでしょ、めっ!!」
「ごめんごめん、だって虫がいたから。空気の読めない虫がね。ねっ、ダルニア」
「・・・・そうだなゴロ。リンクの旦那」
それから御輿に揺られて暫く。
もうすぐ夕暮れ時という時間にキングドドンゴがいる洞窟に着いた。ゲームだと大岩が塞いでたけど、何故かない。近くに腹を膨らませたゴロンがいるけど、食べたのか?まさか。
まぁ、何がともあれ、夜はモンスターが活発になって危ない。だからリンクにはダンジョンへ挑むのは明日にでもと言ったんだけど、困ってるゴロン族を早く助けてあげたいと言われてしまって、どうしても止められなかった。
そんなリンクにダルニアさんはゲームでも授けていた爆弾花を引き抜けるようになる腕輪を━━━━━王様でも相手してるかの如く、膝をついて献上した。
おかしぃなぁ。
いや、ここにダルニアさんがいるのもおかしいけども。子分のゴロンがいるのもおかしいけども。
それを差し引いてもおかしぃなぁ。
「ゴロン族の運命、リンクの旦那に託すぜぇ!!頼むゴロ!!」
「「「「ゴローーー!」」」」
ダルニアさんと子分ゴロン達が盛大に頭を下げた。
そんなゴロン族達にリンクは腕輪を嵌め、笑顔を浮かべて拳をあげた。肘から先を上にあげる、軽いガッツポーズだ。
もうやだ。この緊張感のなさ。
デクの樹様、私頭が痛いんだけど。
助けて。
そっと助けを求めると『がんばっがんばっダヨ!』と腹の立つ猫なで声が聞こえた気がした。この世界に天国とかがあって、もしそこでデクの樹様に会えたなら、私は全力で殴ると心に決める。
気持ちに区切りがついた所で一旦デクの樹様への憎しみを胸の内にしまう。よく考えなくても、現実逃避をしてる場合じゃないからね。・・・・あの事もあるし。
「ねぇ、リンク。本当に行くの?」
準備をしてるリンクに聞くと「そのつもりだけど」とキョトンとした。これから行く場所がどんな所か分かってるのだろうか。心配だ。出来るだけリンクの意見は尊重しようと思うけど・・・ううん。
でも、やっぱり一人でなんて。
デクの樹様ダンジョンで見守るしかさせて貰えなかったから、今度こそしっかりサポートするつもりだったのに、リンクはここにきて一人で行くと言い出したのだ。
これは俺がやらなきゃいけない試練だからとかなんとか。あと岩が主食のゴロン族に期待出来ないから、美味しいお夕飯作って待ってて欲しいとかも。
確かにこれはある種リンクの試練ではある。
リンクがどうにかしないといけない定めだ。
でもゲームでは私も一緒に試練していたのだ。
案内という形で、ちゃんと。
まぁ、今のリンクにゲームみたいな案内がいるかと聞かれれば、些か疑問ではあるんだけど。
少し悩んだ後、結局リンクの意思を尊重して一人で行かせる事にした。子供にも関わらずハイラルの盾を自由自在に操る、その力に期待しようと思う。
「それじゃ、ナビィ行ってきまーす!夕飯が出来る頃には帰るから!━━━━あ、ダルニア!あれ用意しておいてねー!」
「任せとけぇリンクの旦那ぁ!!」
あれ?あれってなんだろう?
疑問に思ってダルニアさんを見たけど、思い切り目を逸らされた。どうやら答えてはくれなさそう。
・・・変な事じゃなければ良いけど。
それから暫く、月が爛々と輝く頃。
夕飯の完成間近にリンクは帰ってきた。
眩しい笑顔と共に。
無事なのは嬉しいけど、リアルでタイムアタックしないで欲しいなぁ。
◇◇◇
ボス部屋
リンク「おらぁ」デクの樹ーブンッ
キングドドンゴ「ッグギァ!?」メメタァ
遭遇から討伐までの時間
1分40秒
使用武器、デクの棒、バクダン
使用必殺技、特になし
遅かった理由、転がったから
次回予告。
おふろ