ゼルダの伝説『時のオカリナ』ナビィに転生したと思ったら、肉便器だった件 作:はくびしん
突然だが、皆はキスと言うものを知っているだろうか。
愛情表現の一種で、頬やおでこなどといった体の一部に唇を触れさせる行為の事である。
広義的にはそんな感じだが、きっと大半の人が唇と唇を合わせる行為を差す言葉であると思っている事だろう。
私もそう思っている一人だ。
ん?なぜそんな話をしたかって?
それはね━━━━
「ナビィ・・・」
MLK5。
マジで(M)、リンクに(L)、キスされる(K)、五秒前(5)だからだよ。
誰か教えて。
どうしてこうなった。
サリアとの一件があって以来、何処と無く体が火照ってるような気がする今日この頃。
人姿で寛いでいると、修練に励んでいた筈のリンクがエロ本片手にやってきた。
何か分からない事があったのかと思って尋ねると、ゴロン族が濃厚な接吻をかます挿し絵を見せられた。
一瞬高度な嫌がらせかと思ったが、リンクの真剣な顔つきでそうでない事を悟る。
「えっと、どうしたのリンク?」
「ナビィ、キスのやり方を教えて!」
おおう。
どストレートにきおったわ。こやつ。
さしもの私も狼狽えるしかない。
「あ、あのね、リンク。その、これからも分からない事があったら教えるよ?私が知ってる限り、ちゃんと。でもこれは別に━━━」
「生殖行動にはっ!キスも有効だって、書いてあるっ!円滑に進める為にも、無いよりはあった方が良いって!ここに!だから練習しないと!!」
「か、書いてはあるけど、でもね、そう言うのは初めは好きな人とかで━━━」
「大丈夫!オレ、ナビィのこと好きだから!!」
「そ、そういう事じゃないんだけどぉ・・・」
頑なにキスの教示を願ってくるリンク。
教えてあげたいのは山々なんだけど、そもそも私はキスとか知らないので教えられないのだ。
前世は女の子の手も握った事のない生粋の童貞。当然キスなんて夢のまた夢。都市伝説だと思ってたくらいだ。
今世も今世で、キスなんて縁も所縁もない妖精。妖精はキスしない。そんな文化ないのだ。
力にはなってあげたいけど、どうしたものか。
私はリンクからエロ本を預かり目を通してみる。
ふむふむ。ん、んんー。やっぱり実践練習が一番良いのかぁ。でもなぁ、経験なんてないし・・・。
あ、これ、かな。
「リンク、あのね。キスは教えられないけど、上手くなる練習には付き合うよ」
「え、・・・それってどういう事?」
「これっ」
突きだした私の指をリンクの目が見つめる。
あんまり見つめられると、指でも照れるんだけど。
「えーと、ね。この本によるとね、長いものを舐めると、その、舌使いが上手くなるんだって」
「舌使い?」
「き、キスするとき、その、なんていうかな。舌と舌を舐め・・・あったり、絡めたりするんだけど、それがね、舌使いが上手だと良いらしいんだって書いてあるの。だから、ね?」
そっとリンクの口許へ指を近づける。
「私の指を貸してあげるから、練習しよ?」
リンクは目をキラキラさせて凄い勢いで頷いた。
食いつき過ぎて、ちょっと怖い。
もしかして、早まった?
リンクのキス練習に付き合い始めて暫く。
時計という物がないから正確な時間は分からないけど、多分かれこれ1時間くらい。
リンクはまだ私の手を舐めていた。━━いや、それは正確じゃないな。途中から舐めるだけじゃなくて、しゃぶられたり甘噛みされたり、すっかり弄ばれている。
一生懸命指を食むリンクの姿に、あの日のサリアの意地悪が重なり火照ってしまう。
「ナビィ、どう?」
「え?」
「上手になったかな?」
正直言えば分からない。
擽ったいとは感じるけど、それが良いのか判断出来ないから。誉めた方が良いって事は間違いないけど・・・。
「━━━やっぱり駄目か」
掛ける言葉に悩んでいるとリンクは残念そうに座り込んだ。
「そんな事ないよ?結構上手になったと思うよ・・・」
「良いよ、無理して褒めてくれなくて。褒めて貰いたいからやってる訳じゃないし」
「あぅぅ。ごめんね、本当は分からなくて」
最初はからちゃんと説明しておけば良かった。
私に経験がない事とか、この練習がどれだけ効果があるか分からない事とか。そうしたらもう少しマシな結果になったかも知れないのに。
それにしてもこれの上達具合ってどうやって計れば良いんだろう・・・。こんなの、上手になった事なんてどうやっても調べられないんじゃ━━━━あ、そうだ。
それなら比べて見れば良いんだ。
「リンク、リンク」
「ん?なに、ナビィ」
「あのね、手を貸してくれる?」
「手?良いけど・・・」
すっと差し出された手はすっかり男の子の手だった。
木剣を振っていたせいで出来た剣タコや皮の厚い掌、修練でついた小さい擦り傷。
将来、この手がハイラルを救うんだと思うと胸が熱くなる。
━━━と、いけない、いけない。
話が脱線しちゃう所だった。
私は気持ちを切り替え、リンクの指を口に含んだ。
「ナビィ!?」
とっさに引き抜こうとするリンクの手を掴まえる。
今は引かれたら比べられない。
私はリンクの手を掴まえながら、リンクと同じように舌を這わせた。指を一本だけしゃぶったり、指と指の隙間を舐めたり、指と舌を絡ませたりした。
そうしてる内に段々と気持ちが昂ってきているのを感じる。これはリンクのじゃない。私の気持ちだ。
そっと顔をあげれば、頬を赤くさせたリンクの顔があった。恥ずかしいのかな?それは少し分かるよ。私もそう思ってたから。
リンクの手を頑張って舐めていると、今度は私の手がリンクに掴まった。何をするのかと視線を送ると、私と同じようにリンクが指を舐めてくる。ただ舐められている時とは違って、今度のそれは凄く刺激的だった。
頬が熱くなって、胸が熱くなって、お腹がジンジンと何かを求めている。なんだろう、でも、嫌じゃないかも。
「ひぃん、くぅ」
「━━っ、な、に、ナビィ?」
「ひゅび、やじゃない?」
「全然!凄く、良いよ!オレなんかより、ずっと!」
リンクは優しい。
そんなこと在るわけないのに、こうして褒めてくれようとする。
こうしてやってみて分かったんだけど、舐めるって一言でいってもとても難しい。私の舌が短いせいもあるかも知れないけど、全然リンクみたいに器用に舐められないのだ。それに一時間も舐めてた体力も凄い。私はきっと10分も持たないと思う。
でも、どうしてだろう。
リンクが嫌な気持ちになるかも知れないのに、全然上手く出来ないのに、直ぐにへばっちゃいそうなのに。
どうしてだろう。
ずっと、こうしていたいって思うのは。
「ナ、ナビィ?もう、良いよ分かったから。ありがとう」
違う、違うよリンク。
「ナビィ?」
私━━━
「━━しゅきぃ」
「━━━っ!」
ポフっと、私の体は柔らかい温もりに包まれた。
ポワポワとした頭で周囲へ目をやれば、見慣れた天井とリンクの顔が見える。
天井はいつもと同じように高いのに、どうしてだかリンクの顔が近い。リンクの吐息が顔に掛かる。汗の臭いとリンクの臭いが鼻を擽る。
「ぅ?」
近い、リンクの顔がずっと近い。
青い瞳に私の顔が映ってる。
なんだか不思議だ。
「ナビィ」
優しい声がする。
リンクの、私の大好きな声。
今度は耳が擽ったい。
「なぁに、りんく?」
そう返事を返せば、リンクは真剣な顔つきで口を開いた。
「オレも、ナビィが好き」
そっ、か。そうなのか。
ふふふ、やったぁ。
良かった、私もリンクの事が好きだから。
「だから、さ、ナビィ」
「ぅん?なぁに?」
リンクの掌が私の前髪を払った。
壊れ物を扱うように、そっと。
「キス、するよ」
「え?」
靄が掛かっていたような頭が急速に回転し始めた。
本能が何かを察知したのかも知れない。
草食動物が地平の彼方の肉食獣を見つけるように、一流の戦士が死角に迫る敵を察知したように。
本能が叫んでいるのだ。
禁断の導火線に火をつける寸前ではないかと。
少しずつ迫るリンクの顔。
キスするなんて言われてついつい唇を見てしまうが、それどころでは絶対ないので尚も考える。
MLK5、MLK5!!
どうしたら良い。何をしたら良い。
何をするのが正解で、何をするのが間違いなのか。
断ってもいいのか、駄目なのか。
そもそもキスして良いのか、リンクはきっとファーストキスな筈なのに。
ぐるぐると頭の中に考えが交差していく。
けれど、何を考えなくちゃいけないのかすら分からず、何も出来ないまま時間だけが過ぎていく。キスの広義とか考えてる時間ないのに。
落ち着け、私。
あれだ、言っても所詮キスだ。やって死ぬ訳ない。
愛情表現の一種だ、友達とか親にだってやる。可笑しくない。私にリンクがしたって━━━━
「ナビィ」
━━━可笑しくない。
「━━━ん」
「ん」
柔らかくて暖かい物が、唇に触れた。
リンク瞳が私を映す。きっと、私の瞳にも彼がいる。
ゆっくりと、リンクの顔がおりてきた。
「ん」
また触れた。
「ん」
━━また。
「ん」
━━━━━また。
「ん」
━━━━━━━また。
何度も何度も、リンクの啄むような優しいキスが続く。
ぎこちないリンクのキス。
さっきまで上手だったのが嘘みたいだ。
きっと、私と同じで緊張しているんだと思う。
だって、私の頬に添えられた手が、震えていたから。
もう、誤魔化せない。
胸の内に湧いた、この気持ちは。
子供だから。
相棒だから。
友達だから。
未来の勇者だから。
そう思おうと思ってたのに。
一緒にいるって決めてから、ずっとそうしようと思ってたのに。
ずるい。リンクはずるい。
リンクはこれから大人になる。
そうしたら、きっと今まで見えなかった事が見えてくる。楽しい事、好きなの事、なりたいもの、やりたい事。生まれたその気持ちは、きっとリンクを変えていく。今までのリンクじゃなくなる。
それは素敵な事。大事な事。リンクに私が望むこと。
でもね、それと同時に嫌な事でもある。
だってね、そうなったとき、私は側にいられないだろうから。
無理なんだよ。
きっと、出来ない。
私は妖精。
リンクと同じ時は生きられない。
原作のナビィがリンクから離れた気持ちが少しだけ分かった気がした。きっと、あのナビィもリンクが大好きだったんだ。
だから、一緒にいられなかったんだ。
百年を当たり前に生きる私と、百年をやっと生きるリンク。時間の感じ方の違う私達じゃ、リンクの沢山の幸せに足並みを揃えられない。リンクは優しいから、私に合わせようとしてくれる。でもそれは、普通を捨ててしまう事なんだ。
そんなの、きっと駄目だ。
好きな人を作って欲しい。
大切な家族を作って欲しい。
共に歩ける大切な人達を、沢山作って欲しい。
リンクがずっとリンクでいられる、そんな場所でずっと幸せにしてて欲しい。
「ナビィ」
いつまでも、続く訳じゃない。
期待なんてしちゃ駄目だ。
でも、その時が来るまで、この幸せを噛み締めさせて欲しい。
「ん」
リンクのキスは不器用で、でも優しくて。
される度、どんどん好きになってしまう。
変な薬でも使ってるのかもね、なんて。
「ナビィ、触ってもいい?」
何を、なんて聞かない。
リンクの言いたい事なんてずっと気づいてた。
でもその一線を越えてしまうと私は嘘がつけなくなるからって、ずっと止めて貰っていた。
でも、もう、それも止め。それでも良いんだ。
今だけは、私のリンクでいてくれるなら。もう、何も怖くない。何もいらない。
「いいよ、リンクの好きにして?」
いつか、約束を破ってしまう私を、許してリンク。
次回予告
ロリ子とショタ、やる
デュエルスタンバイ!