一応R-15でも問題なさそうというか少女漫画はもっとはっきりやっちゃってることもあるから平気だろうと思っている。ガンダムの単行本小説でも色々やってるから構わんよね?
一番悩むのがMSの性能だってそれは一番言われていることだよな。
そういうことを色々とぶち込んで煮出しつつ、次の布石も打っておく。そろそろまた物語を動かさんとなぁ。
「くそっ」
悪態を吐きながら機体を操る。
岩塊の影から飛び出し、頭上からのビームを回避する。
右からのビームをビームシールドというビームサーベルの技術を応用した新装備で防御する。Iフィールドで固定化されたメガ粒子ビームの盾の前にビームが拡散する。ビーム射撃に対するかなりの防御力を誇る上に、Iフィールドで固形化するというビームサーベルと同じ原理の為、実体弾の防御も出来る。
四方八方から襲い来るビームをアポジモーターを小刻みに噴かしてギリギリで回避する。岩塊を蹴って無理やり機体のベクトルを変える。機体表面の耐ビームコーティングが僅かに焼けていくが直接的なダメージはない。脚部スラスターを全開にしながら投げ出した脚の勢いを利用したAMBAC機動とタイミングを合わせて噴かした背中のスラスターで宙返りをしつつビームバズーカで背後から襲ってくるザクを撃つ。
リープザクを再設計したリープザクⅢである。しかしリープザクⅢはそのビームをバレルロールで回避し、ビームマシンガンを威力の高い単射モードで撃ってくる。回避は間に合わない為、背中から抜いたヒートサーベルでビームを打ち払う。
「良くもつよ、ユキ!」
「なんのォ!!」
リープザクⅢが抜き放ったビームアックスをヒートサーベルで受け止め、その瞬間に威力を絞った胸部の拡散ビーム砲を放って目眩ましをする。
「しまった!?」
ヒートサーベルでビームアックスを受け流し、体勢を崩したリープザクⅢに蹴りを入れ、ビームバズーカを向けた瞬間だった。
ピーッという音と共に撃墜判定が出た。
背中にあるガンバレル・ビットからの攻撃で撃墜という結果である。
「はぁ……。負けたか」
細かい動きをして、節々の痛む身体を解しながらユキは肩の力を抜いた。
「いつつ。…なんでノロマなドムでそんな動きが出来るんだ。理不尽だろう」
「いや出来るからやってるだけなんだが」
ヘルメットを取って少し窮屈に感じるパイロットスーツの胸元を開けながら、プルツーの言葉にユキは返した。
「やっぱりエネルギーの心配がないのは良いな。余計な事に気を割かなくて済む」
「そこには同感」
プルツーに賛同しながら機体のチェックをする。エンジンステータスは良好だった。
月で採取したヘリウム3を使って漸く製造できたミノフスキー核融合炉を搭載した第一段目のMS。
リープドムの出来栄えは満足の行くレベルだった。
リープザクに続く機体。本国への提出機体として造り上げたリープドムは、ザクの名にして見掛けはギラ・ドーガであったリープザクとは異なり、ちゃんとしたドムの形をしたMSだ。
設計ベースはリック・ドムⅡだが、ドライセンやプルツーが持っていた火星独立ジオン軍が運用していたドムⅢやRFドムのデータも取り入れられ、性能的にはヤクト・ドーガと性能面では劣らない機体に仕上がった。もちろん本国に提出する機体はバッテリー駆動の上で性能もリック・ドムⅡ程度に抑えている。しかしそれでも総合性能でシグーやジン・ハイマニューバを上回っている。ただ、ドムであるため運動性が若干劣るが許容範囲内だ。そもそもアナハイム製なので量産もされないだろう。
新型のドラッツェが完成するまでの代車になるとしても、実際装甲の厚いドム系の重MSだけあって対装甲リニアライフルでも撃ち抜けない上に、ガンダリウムが使われた重装甲と耐ビームコートは並の出力のビームライフルでも耐えられる防御力を獲得した。さすがに背中からランドセルを撃たれたら敵わないが、それでもブライトの対MS戦術を真っ向から切り抜けられる装甲にはなっている。マイクロミサイル程度なら装甲で耐えられる。流石に艦砲ビームの直撃を受ければ不味いが。
武装はドム系の基本装備のヒートサーベルと胸部拡散メガ粒子砲。出力の調整で目眩ましの拡散ビームも撃てる。そしてビームバズーカとジャイアントバズ改。防御兵装としてビームシールド発振ユニットと機体前面に耐ビームコーティングを施している。
全体的な見かけはドム系のまま重厚感のあるドムトローペンやプロトリック・ドムⅡに近い印象を抱く物になっている。巨大な脚部には核熱ロケットエンジンとその冷却器が内蔵されているために被弾面積は大きいが重装甲である為問題視はされなかった。ムーバブル・フレームのお陰で見掛けの重装甲感に似合わず機体の可動範囲は高く、ユキの機体は更に機動性と運動性を確保する為に各種スラスターの強化とプロペラントタンク・ブースターを装着。ウェイトの大きい脚部にも姿勢制御スラスターを増設することで現行ザフト製MSの追従を許さない性能に仕上がっている。
ジオン重MSの集大成と意気込みを掛けて、設計に2日と、機体組み上げに5日というスピード開発で誕生したMSだが、予めあるものを掛け合わせて再現するだけなのでその早さで済むのだった。しかしジンとの部品共用率は20%程のみしかない。というよりベースがドムであるためジンのパーツがほぼ使えず、アナハイムで使う機体はジンの部品は一切使わない純正ジオンモデルの機体として仕上げてある。つまり補給は出来ても整備はアナハイムでしか出来ない機体になっているのだが、その辺りをユキは気にしない。なにしろアナハイム以外で使うつもりもないからだ。
それでもバルルス改に始まる二つ目の携行型ビーム兵器は喜ばれるはずだ。なにしろ威力をΖガンダムのハイ・メガランチャー並に強化したのだから、攻撃力ならばどんなMSでも一撃で撃破出来るだろう。
携行型ビーム兵器も本格的に配備する為に、ゲルググのビームライフルやギラ・ドーガのビームマシンガン、ビームアックスも造ってはテストを繰り返していた。
リープドムの開発に合わせてリープザクも再設計を行い、こちらはプルツー主導で行われザクⅡに近い姿となった。CG合成モデルで見せてもらった独立火星ジオン軍の運用していたザクⅢその物に落ち着いた姿は正しくジオンの精神が形となっているMSとも言えた。姿は回帰したものの、リープドムとの部品共用を優先し、純正ジオンモデルとしてパーツ統合を行った結果性能も向上している。ジン系のパーツという制約を取り除いたことによる恩恵でもあった。
そのままゲルググの設計もされているが、性能的にジェスタやグスタフ・カールを超える機体に仕上がる予定になっている。
月面工事も順調であり、ガンダリウムの生成やMSの工廠は最優先で進められ、資材が得られたことでようやく実現できる各種計画も進行中である。
ただ、連合はザフトが月面に基地を持つことを快く許してくれるはずもなく、連日小競り合いの様にグルマルディ・クレーター付近を境にして衝突しているのだが。
「連日の被害がバカに出来ないな」
「言っても聞かないんだから、仕方がないでしょ」
稼働間もないローレンツ基地工廠は連日の被害を補填する為にジン系のパーツ生産や機体の修理・修復。さらにドラッツェの建造も行っている。ジンとメビウスでは1:3のキルレシオの差があるが、連合の対MS戦術の前に連日ジンが撃墜される様になっている。その新戦術に対して注意する様に提言しているのだが、ナチュラルの戯言やナチュラルの杜撰な作戦などと聞く耳持って貰えずに被害が増えるのが現状で、そういう輩が体の良い経験値として地球軍を強くしているまである。悪い流れだとわかっているが、現状は月基地建設に集中するので放置している。
◇◇◇◇◇
寝室でプルツーに身体のマッサージを受けながらユキはうつ伏せでだらける。ここの所プルツーがペースメイカー代わりをしてくれているのであるが、そういう部分で甘え切っている所が噂になってきていて、折角築いた年齢に似合わぬ威厳を持つ不思議上官像が、一生懸命背伸びをして闘っている不思議ちゃんになってきている現状をどうにか打開したいと願うものである。
「ほぼ無理だから諦めろ」
「いやだってさ。そうでもしないと舐められそうじゃないか」
それこそその内「お疲れ様です。アメちゃんでもいかがですか?」とでも言われたらへこむ自信がある。それほど自分の子供体形を恨むことはあまりなかった。
何しろ赤い彗星と双璧を成すジオンの蒼き鷹という名が宇宙世紀では自分の存在証明であり、見かけは子供でも、階級がはっきりしていたこともあって子ども扱いはそれこそソロモンの中でくらいだったのだ。実際年齢も16歳だった為まだ子ども扱いされていたわけだが。
しかしそれがエゥーゴになればもう24歳で子ども扱いはされなかった、一部見かけでされていても仕方がなかったが、ロンド・ベルになればもう立派な大人扱いだったし、アムロが居なくなってからは身体も大きくなって普通に大人になったのが、今はまた身体が小さくなっている。
身体の細胞レベルでサイコフレーム――サイコシャードが一体化していてこの5年間一切老化もしていない身体からすると成長は絶望視だが、それでも大きくはなりたいという願望は捨ててはいないのだ。
「別に身体がデカくなったからといって何かが変わるわけでもないだろう。見かけに騙される有象無象を気にしても仕方がない」
「それでも体裁というのがあるのが政治の世界なの」
今はシーゲルやデュランダルに任せているが、何れはシャアやハマーンの様に政治的にも立ち回っていくこともあるかもしれない。せめてミネバ様の様に隠し切れないカリスマオーラでもあればいいのだが、アジア系の幼い顔立ちの自分には望めるわけもなく、それこそニュータイプ的なプレッシャーに頼らなければならないだろうが、それだと高圧的になるので如何ともし難い悩みなのだった・
「別に政治をすることもないだろう。言っただろう? 抱え込みすぎた。世界がすべてお前の思い通りに動くわけでもない」
「それでも何もしないよりはマシだよ」
うつ伏せだった身体を入れ替えてプルツーと向き合う。その蒼い瞳はいつ見ても綺麗だった。宇宙を映す目は何の迷いもなく自信に溢れている。それが少し羨ましい。
「でもオマエが大きくなったら、こうして抱いてやれなくなるぞ?」
そう言いながらプルツーの腕の中にすっぽりと納まってしまう。それくらい自分はまだ小さい。宇宙に比べてあまりにも自分は小さい存在なのだと考えてしまうのは、目の前に広がるプルツーの蒼い瞳を見ているからだろうか。
「そうしたら、プルツーも大きくなればいいんじゃない?」
「マリーダみたいにか?」
「さあ?」
マリーダがプルツーと同じクローン・ニュータイプでも、マリーダよりも戦闘向けの調整をされているからなのか、それともマリーダの様にあとの生まれになるとなにか違うのか、プルツーもあまり大きくはならなかった。それこそ違いすぎてマリーダを一目見た時はプルツーの姉妹だとは気づかなかった。それでも気配がプルやプルツーに近かったからわかったのだろう。
互いに見つめ合って少しだけ沈黙があって、そしてプルツーが近付くことで唇が重なる。
触れるだけの軽いキスは愛情というよりは親愛の意味が強い感覚を味わう。情欲に染まった激しく深い口づけをするにはまだ仕事は残っているし時間も早い。それでもまたプルツーは口づけをしてくる。唇同士の重ね合いではなく、重なった唇から小さな舌が伸びてきて、口の中に隠れている相手の舌を探して舐る様な動きだ。
いきなりそんな情熱的な口づけをされて驚いたユキは慌てて顔を離してしまう。唇から出る小さな舌から繋がる銀色の橋が、幼いプルツーの容姿とはアンバランスな色香を放ち、背徳的な気分を味合わせる。
そんな離れたユキを逃がすまいとプルツーはまた顔を近づけた。
「ちょっと、プルツー!?」
「ん? いいだろう別に。今更恥ずかしがることもないだろう?」
「いやまだ勤務時間んん!?」
「相変わらず首が弱いな」
「くすぐったいって…!」
首筋に吸い付いて、舌で舐めてくるプルツーを引きはがそうとするものの、力はプルツーには敵わないユキではプルツーの拘束から逃れることは出来ない。
「心配するな。天井のシミでも数えていれば直ぐに終わるさ」
「それは男側のセリフでしょ! や、ちょっと、冗談抜きで、ひっ」
「ん、…この前もそうだったけど、いい声で啼くじゃないか。水商売で仕込まれたのか? 結構そそるよ」
「だから、まだ仕事しないとっ、くふっ」
首筋や背中を明らかに愛撫する様に撫でられて心とは関係なく身体を昂らせられていくのが少し悔しくて、それでもこうして愛されているという感覚に心が解されていく。
恋も愛も、そのすべてを戦争で奪われる青春期の経験が愛に飢える心を築いてしまう要因にもなった。
憧れも、恋も、親愛も、尊敬も、何もかもが奪われて残ったのは奪われることに臆病になる心と、愛すると離れてしまうなら、愛するのではなく愛される側になりたいという願望が、求められると断れないという脆弱さを形成した。
それを誤魔化すのが幾重にも被る仮面だ。仮面がある限りそういった部分は決して見えないのだが、プルツーのようにそういう仮面を被る必要がないと話が変わる。あるがままの自分。そしてそういう脆弱さを分かっている間柄の相手だと途端にユキはなんでも受け入れてしまう。
それはレイやプレア、カナードに向ける愛情。親としての面にも出ているが、あれは子育てと親であろうとする仮面がある為、少し違う。
愛されることに貧欲な心を曝け出せられるのならばあとは好き勝手に出来る。
部屋の明かりを暗くして、ユキを貪っていくプルツーはそれが分かっているからユキも身体を預けるしかない。力ずくで組み伏せられる事に喜びを感じるひん曲がった性癖も知っている。それでも宇宙世紀で手を出しきれなかったのは、忙しさもあって中々ユキがアナハイムから帰って来なかったのもあるが、それ以上に心の中でララァ・スンや、ハマーン・カーン、アムロ・レイ、シャア・アズナブルを思うウェイトが締めていたからだ。
自分を見てくれるが、度重なる別れに他人を愛することをさらに臆病になったユキに踏み込めずに二の足を踏んだら60年も待たされるとは思わなかったプルツーは遠慮を止めて、時間が出来た時は積極的にユキを求めて貪り尽すかのように無理やり情事に持って行くようにもなった。
色々と拗れているユキだが、自分も拗れているのは変わらないと思いながら、自分の下で泣き喚きながら笑っているという感情がぐちゃぐちゃな愛おしい相手の心に溜めた物を吐き出させる為により強く抱く力を強め、口づけをするのだった。
◇◇◇◇◇
「よう隊長。今日はご機嫌がよろしいようで」
「ハイネか。まぁ、身体の節々が痛くて堪ったもんじゃないがな」
パイロットロッカーに入って来た上官を認めて、ハイネは当たり障りのない挨拶をする。
白服に黒マントという恰好は赤の時よりも目立つが、その格好も様になっていると感想を抱きつつ、自分のロッカーに流れて来たユキの着換える様子をなんとなくだが目にしていた。
ザフトの共用の物とは変わったデザインのパイロットスーツは左胸の所に生命維持関係の機械が着いているのだろう。右胸には赤いライン。身体の両脇には黒いラインが入る白地の変わったデザインのパイロットスーツだった。
タンクトップとパンツだけの恰好でパイロットスーツに脚を通すユキを背後から見ていたハイネだったが、その足の付け根。太ももになにか赤い痕をみつけた。虫刺され…とも思ったが、宇宙船の中に虫が沸くはずがない。それほど衛生面は気を配られているのだから。
「どうかしたか?」
「え? いや、なんでも」
視線が気になったのか、振り向いたユキに聞かれて誤魔化したハイネだったが、服で気づかなかったものの、タンクトップであらわになった胸元や首筋にも同じような痕があって漸くハイネも理解した。
可愛い顔して隅に置けない上司だと思ったが、それでも自分と同じ男なのだと妙に親近感が沸いたのも事実だ。どこか浮世離れしている存在が、自分と同じ男なのだと意識したからだろう。
「そんなに意外か?」
「え?」
そう言いながら中途半端に胸元を開けているユキがハイネに言葉を投げかけた。それはハイネがソレに気づいた事を気づいての言葉だった。
「こういうことにはまだ無縁な子共に見えるか?」
「いや。まぁ、なんつーか」
どう言葉を返したかと悩むハイネをクスリと笑い、中途半端だったスーツを胸元まで締めてヘルメットを背中のランドセルに引っ掛ける。
「人は見かけだけがすべてじゃないって事さ」
パタリと後ろ足でロッカーを締める様は子供の様だが、しかし纏う空気は相変わらずアンバランスに大人の物である。
「まぁ。命を預けることにはかんけーないってだけはわかるぜ」
「それはそうだ。歳を喰っていても無能なら命を預けたくなくなることと同じだ。その点プラントは実力社会主義でやりやすいが、それでも人特有の家柄による特権階級は生きているし、能力が高いからといって人間出来ているかとも違う。差別意識はその最もたるところだろうさ」
「まぁ、そうだが。よくコーディネイターのオレの目の前でいえるなソレ」
「ナチュラルだコーディネイターだって言っても同じ人だからな。それを気にしていたらプラントを独立させても次の戦争への準備になるだけで意味がない。ナチュラルとコーディネイターの確執をどうにかしない限り、この宇宙の戦争はなくならないし、それにはその確執が生まれた時間と同じ時間か、その倍の時間は掛かるだろうが、今は目先のことをコツコツやって行くしかできないだろうな」
そう思っている人間がどれほどいるだろうか。プラントはナチュラル嫌いが蔓延しようとしているし、コーディネイターはナチュラルを見下しているやつも多い。所詮はナチュラルだからと、ナチュラルという言葉に逃げている奴らが多いのもハイネは実感していた。そうでもしないと自分を確立できないコーディネイターの精神的な未熟さというのは戦争になって余計に見えてくることが多くなった。他者を蹴落として自分の有能性を示すのは生物の持つ根幹でもあるが、それでも悪辣だとハイネは強硬派や過激派のコーディネイターを見て思うのだった。
ならザフトで戦うよりもアナハイムでパイロットをして戦う方がよっぽど心の健康には良い。勿論コーディネイターすべてがナチュラルを嫌っているわけでもない。それでも少し距離を置くとわかる。ザフトはどこかおかしいと。
「民兵上がりで理想によって立っていた組織が憎しみに染まっていればそれはおかしいだろうさ。それが当たり前すぎておかしいとは誰も思わないし、士官アカデミーで洗脳教育やっていれば余計そうだろうさ」
おかげでアナハイムの社員が増えて嬉しいことだがなと、ユキは続けた。自分と同じようにザフトのナチュラル嫌いや教育についていけなくなった者がアナハイムに所属しては、テストパイロットや社員の技術者扱いとして戦線に加わっていることはハイネも知っているし、実際グルマルディ戦線でもそうして戦っているパイロットは多い。
そのおかげで現場に指揮系統が二つも出来るちょっとした問題にもなっているが、基本的にザフトは個人プレー重視の為、緊急時でもなければ今のところ問題になっていない。アナハイム側が何時も撤退が速いのが問題視されているが。というよりそれで深入りして損害を被っているザフトの方がハイネにはマヌケに映っている。
そういう意味ではアナハイム側の戦力を指揮するユキやアーサー艦長は軍人として戦場の流れをちゃんと見ている良い上司だ。ナチュラル・アレルギーが先行して引き際を見失っているザフト側の指揮官よりもよっぽど良い。
「30分後に偵察を兼ねて慣らし運転に出るが。付き合うか?」
「いいですぜ。新型の性能、バッチ見させてもらうぜ」
「見た目に騙されて侮るなよ? 私の愛機はどれもこれも凶暴だからな」
不敵な笑みを浮かべてロッカーを出ていくユキを見送って、ハイネは内心。そんな機体にばかり乗るユキの神経を心配になるが、それがザフトの戦艦キラー伝説を作っている力でもあると分かっている。
MS開発でもマイウスに先んじており、高機動型MSのメッカとも言われているアナハイムにおいてその高機動型MSのさらに先を行く高機動型MSを開発しては涼しい顔で乗り回している少年を誰が恐怖するなと言えるのだが、そんなパイロットのお供が出来るのだから楽しくて仕方がないともいう。MAを追いかけ回すより有意義な時間であるとも言えた。それこそ毎回動きを指摘して、こちらの動きも改善するヒントをくれるのだ。
開発者でパイロットで、政治屋みたいに未来を考えながら教導官の才能まである才能の塊にナチュラル如きと言っていられるようなものじゃない。
そんな戯言を言っている内に何歩も先を歩いていく傑物のあとを追いかける苦労が分かってたまるものかと思いながら、ハイネは腰を上げてロッカーを出た。
◇◇◇◇◇
ヘリオポリスでの生活環境も落ち着いたレイとカナード。しかし向かう先のゼミにキラやトール、ミリアリアが居たことは二人にとっても想定していなかった。
モルゲンレーテの息の掛かっているというカトウゼミで、レイとカナードは色々と作業を手伝わされているのだが、それがMSに関係している作業だと漠然とだが理解していた。
「どう思う?」
「武装中立国のオーブが独自開発でMSを作っているのだろう。しかし開発はユキの手が入って完成したはずだ。まぁ、技術発展は必要なのはどこも同じだが」
レイは4年前に訪れたオーブでの事を思い出していた。その時はまだ子供だったのもあって中に入れたのだが、そこではMSを既に作っているオーブの姿を目にした。
「なぜ地球でやらん」
「地球で出来ない訳でもあるんだろう」
これまでオーブがMSを開発したという公式発表はない。故になにか考えがあって宇宙の領土でもあるヘリオポリスで開発をしているのだろうが、一応手伝い程度で全容はつかめない為、深入りもしないとレイは決めていた。藪を突いて蛇を出した日には自分にはどうしようも出来ないからだ。
「キラもキラだ。気づいてないんだろうな、アイツは」
「俺たちでもユキの指導がなければ気づかなかったさ。無理もない」
「なんであれでスーパーコーディネイターなんだか。確かに普通には優秀だが、宝の持ち腐れだ」
カナードの言葉を聞いてレイは内心で笑っていた。どうもこの自称長男は素直じゃないところに可愛げがあると。
スーパーコーディネイターとしての能力。その完璧なスーパーコーディネイターという生い立ち。自分は失敗作のスーパーコーディネイターという生い立ち。それを比べていずれ越えてやると息巻いていたあのカナードが、実際本人を目の前にして、争い事も無縁な程の普通の家に迎えられて育った。それこそ自分の出生すら知らない節のあるところを察して、スーパーコーディネイター云々という話題は、キラに向けて一切していないカナードは不器用ながらも今のキラの平和な日常は壊す気がないのが理解できる。
それくらいには平和な日常がどんなものか4年間で学んでくれたかと安堵した。
カナードとの出会いは地球旅行から帰って直ぐだった。
それこそ最初の内は本気でユキを殺す気で襲い掛かっていたが、毎回の如く組み伏せられて疲れるまで押さえつけられて終わるという毎日だった。
獰猛な野獣が力で勝てないことを分からせる様に教育するということに少しレイはユキを見る目が変わりそうだったが、それほどにカナードが荒れていたともいえた。
そんな生活が1年ほど続けば大分大人しくもなって会話も出来る様になってきて、ちょうどプレアが家にやって来て、自分も出生を知ることになった。
スーパーコーディネイターを作る為に生み出されたクローン。ただ金の欲しさ、寿命すら金で買えると思い上がった愚か者の夢の末路。そうラウが言っていた。
それでも、生まれた命はたとえクローンでも一つの命だと、ユキはレイとプレアに言って聞かせた。それは自分にもクローンの知り合いが居て、それでもその知り合いたちは一人の個人として生きていると聞かされた。
まさかそんな話の知り合いと会うことになるとはレイも夢にも思わなかったが。
愛情と親愛を注がれて、未来を生きられる身体になって来て、未だに薬は必要でも量は減ったし、身体の調子も良くなって行っている。
そんな日々で自分が変わった様にカナードも変わった。
失敗作だから価値がないのか。だったら自分で価値を身につければいい。本物のスーパーコーディネイターに出逢ったときに自慢できる自分になれば良いだけだと、ユキはカナードを厳しく指導し始めた。それこそカナードが根を上げそうなトレーニング内容でも尻を蹴り上げて無理やりさせる様に。
その時のユキは少し怖かったが、それでも愛があるからちゃんと出来ると褒めていた。それは普通に育つ暇もなかった自分やカナードに、ごく普通の親の愛を感じる程の、普通の教育風景だった。
だから自分はユキ・アカリという人物を親と胸を張って言える。カナードはああだから恥ずかしがって言わないだろうが、長男を自称するのも愛があるからだろう。
そういう意味でカナードはキラ・ヤマトに対して複雑ながらも気にかけている。自分がこんなに能力があるのに、成功作のお前がそんな程度の環境でせっかくの才能を食いつぶしていていいのかという捻くれた心配の仕方だった。
素直じゃない。と思いつつ、それがある意味カナードの魅力なのだから、4年も暮らしていれば嫌とも思わない。
「それよりもだカナード。お前はどう思う」
「どうって、何をだよ」
「お前も感じるだろう? この気配を」
「オレはオマエ程敏感でもないからわからいことも多いが、確かに気になるな。というより向こうもこっちを探ってないか?」
「互いに気にはなっているということだろうな」
そう言いながら、レイとカナードは天井を見上げた。
そこに在るのはただの天井だが、それを透過するように向こう側が見えてくる。それだけでなく集中すれば知っているような感覚もでもあった。
「あの女の気配がする」
「とはいえ少し違うな。なんというか、あの人より刺々しさがない」
思い浮かべるのは接触は少しだけだったが、おそらく誰よりもユキを想っているだろう少女の姿だった。ユキ以外のニュータイプ。その感じ方は、全部を包み込んでくれる優しさのあるユキとは違う刺々しい物だった。
その気配に比べると刺々しさはマイルドに感じるが、それだけでなくどうも違う感覚があるのだ。
「なんで寂しがっているんだ?」
「それは直接訊かなければわからないな」
「反対側のブロックだろう?」
態々足を運ぶのか? そう視線で言って来るカナードだが、互いに気になって探り合うよりは相手を見てしまった方が早くて後腐れもないとレイは思っている。
それを言うと、好きにしろと反対しない辺りカナードも気になって仕方がないのは手に取る様にわかる。
「動くのは次の休日だな」
いったい何があるのか。ひょっとすると仲間かもしれない。そんな淡い期待を込めながらレイは手元のフライパンで焼いているベーコンをひっくり返すのだった。
to be continued…