※この作品はR-18です。

SEED-虹の向こう側-   作:星乃 望夢

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やっぱり最初は戦闘だろうということで我慢できなかった。

血のバレンタイをブリティッシュ作戦に当て嵌めて、本格参戦はルウム戦役に当て嵌まる世界樹攻防戦にしましたが、まったくのオリジナルなので適当に書いてみました。またグルマルディ戦線まで連合宇宙軍第三艦隊にムウさんが居たので今のところはムウさんくらいしかネームド敵キャラが居ないかもしれない。モーガンさん戦車乗りだしこの頃。

SEED MSVからも二人程味方として参戦しますが、色々と盛って増すので別キャラみたいに見えるかも知れませんがご容赦ください。




第二話 C.E.70 2月22日 世界樹攻防戦

 

「やっぱり落ち着く。コックピットは」

 

 ジオン系でも連邦系でもない、宇宙世紀の人間からすれば全く新しい見た目のコックピット。しかしデバイスが違うだけで全天モニターが普及する前の旧式のコックピットと然程変わらず動かしかたもそれほど変わっていない様で、10分も乗り回せば身体が覚えた。だから根っからのパイロットなのだ自分は。

 

『コンディションレッド発令!MS各隊は順次発進。新型ジャミング展開のため、レーダー障害が予想される。光学観測による有視界戦闘にて対応せよ!』

 

『ハッチ解放。カタパルト電圧上昇中。オールウェポンズフリー。進路クリア、発進どうぞ!』

 

「ユキ・アカリ、ジン・フルバーニアン。発進する!」

 

 C.E.70年2月22日。L1のコロニー世界樹に宙域て地球連合軍とザフト軍による初の大規模宇宙艦隊戦が巻き起こった。

 

 連合宇宙艦隊は3個艦隊を配置している。ザフト側は1個艦隊。1対3の戦力差を覆すにはモビルスーツによる白兵戦を仕掛けるしかないだろう。

 

 まるでその光景はルウム戦役を彷彿させた。

 

 C.E.65年。今から5年前にこの世界にやって来てしまったユキは、デュランダル協力のもとザフトに入隊した。

 

 実力主義のザフトにおいて、次席で士官アカデミーを卒業したユキは赤服というザフトにおいてはエリートの証しを纏っていた。

 

 そして士官アカデミー時代からデュランダルと結託してアナハイム・エレクトロニクス社を創設した。

 

 これにはアカデミー時代に提出した統合整備計画案と、より簡素にMSを動かす新型OS、新型軽巡洋艦の開発、レジャー用や建設用のプチモビやジュニアモビルスーツの販売によって得られた資金により実現した。

 

 ナスカ・ローラシア級とは異なるデザインは目新しいもので、地球軍のネルソン級との正面からの撃ち合いを想定された性能を持つ。ムサイ後期型をそのまま造った艦がユキの母艦だった。

 

 MSの搭載数は6機と、宇宙世紀のムサイと同じだが、コムサイにはMSを余程でない限り積まないために常備運用は4機とナスカ・ローラシア級に譲るが、旋回式砲塔を5基の連装荷電粒子収束ビーム砲による10門のビーム火線は強力であり、1週間前のユニウスセブンでの戦闘ではアガメムノン級1隻、ドレイク級6隻を単艦でその強力なビーム火砲を用いて撃沈している。

 

 ユキの搭乗艦はムサイ級二番艦のペールギュントであり、一番艦は通常のムサイとして建造され、技術開発の為のテスト艦として機能している。ということにしてアステロイドベルトへと派遣している。

 

 その圧倒的火力をローラシア級の様にほぼ360度に投射可能な上にローラシア級よりも足が速い。構造も簡略であるがゆえに生産性も良い。

 

 ただ量産はされないだろうとユキは思っていた。如何に強力な艦でも創設から3年程の企業の艦が量産採用されることもないだろう。

 

 実力主義のザフトの気風のお陰で、会社からしてユキとデュランダルのもので、その実験艦ともあれば運用は好き勝手だ。

 

 1週間前の戦闘では艦長が居なかった為に、ペールギュントの指揮はユキが執ったが、その戦果と対価に新たに艦長をつけてもらったからこそ、ユキはMSで漸く戦場に出れるのだ。

 

「トライン艦長! もう一度言っておくが、アンチ・ビーム爆雷は絶やすなよ? この艦は注目の的だからな」

 

『は、はい! りょ、了解しました!!』

 

 デュランダルのお墨付きでペールギュントの艦長を任せたのは、まだ23歳と若いが黒服を纏う青年。アーサー・トラインであった。

 

 ザフトは全体的に若い将校も珍しくはない。年功序列などというバカな事をしているほどザフトに余裕はないからだ。

 

「立ち上がって敬礼するなら主砲で攻撃だ! 右30、仰角プラス12、主砲一番から四番まで連続斉射!!」

 

 艦橋に取り付き、接触回線で指示を飛ばす。

 

 未だ両軍は艦載機を順次発艦させているところだ。

 

 そんな中でのペールギュントの主砲が連続して発射される。

 

 ビーム射程ギリギリに踏み込んできた敵のドレイク級が何発ものビームを受けて轟沈した。

 

『おお!! 初弾命中とはお見事です!』 

 

「あとは任せるぞ。欲張って前に出なければ早々沈みはしない!」

 

 ペールギュントの一撃が開戦から両陣営初の撃沈とあって、ザフト軍の勢いが増した。ザフト側はユニウスセブンの弔い合戦だと息巻いている。勢いは確実にザフト側にあった。

 

「ペールギュント乗艦の同志諸君に告げる。各々自らの作業を続けたまま聞いてくれ」

 

 初陣は戦闘という戦闘をしたわけではないし、自分が指揮するのなら全力で皆を生き残らせるという気概もあった為に長距離攻撃に終始していたが、先の戦果と砲撃能力は地球軍にも知れているだろう。集中的に狙われる可能性すらあるのだ。故に本格的な戦闘は今日からということになるだろう。中には不安に思っている者も沢山いるだろう。何しろ技術任官という形でアナハイムの技術者も少なくない人数がこのペールギュントには乗艦し、モビルスーツや船の整備をしてくれているのだから。

 

 自分はその命に対して責任がある。

 

「我々の戦いは、コーディネイターとナチュラルの戦争ではないと、私は常々口にしているから今更そのようなことを言う気はない。我々の戦いは、連合からのプラント独立そのものにある。宇宙に住むから、遺伝子操作して生まれたから、そんな理不尽な理由で銃を向けられる理不尽があって良いものか? 否! 良いわけがない! そして諸君らも知っての通り、ナチュラルでも才能のある人間、努力によって栄光を勝ち取る者も多い。隣の隣人を見ろ。少なからずコーディネイター、ナチュラル、なにが違う。同じ人だ。それを忘れないでくれ。我々は宇宙で自由に住みたい、ただ自立したい、自分の国、居場所を持つことが悪だとでもいうのか? これはその為の戦争だ。その初志を胸にこの戦争を生き延びて貰いたい。死んでしまっては成せることも成せなくなってしまう。故に、諸君の生存を祈ると共に、その健闘に期待する」

 

 そこで一度言葉を切る。これがジオンだったならば、ジーク・ジオンで締めるのだが、ザフトはジオンではない。

 

「プラントに栄光あれ!」

 

 そう締めくくると、ペールギュントが爆発的な衝撃に包まれる。これで戦闘の恐怖を忘れられるだろう。恐怖に慄かなければ戦うことが出来る。抗うことが出来る。

 

 自分だけが戦っても意味がないのだ。この戦争は、プラントに住む者達の心が自治権獲得に向かなければならないのだから。

 

 L1へと展開を開始したザフトに対し、連合は月のプトレマイオス基地より艦隊を発進。第一艦隊、第二艦隊、第三艦隊の三個艦隊による戦力で迎撃態勢に移行した。

 

 ビームやミサイルが飛ぶ宇宙の戦場。その中を駆け抜ける感覚。心が踊って仕方がない。

 

 大規模宇宙艦隊戦の中。弾幕の嵐の中を駆け抜ける。

 

 ジン・フルバーニアンは士官学校で乗っていたジンの機動性に満足出来なかったユキが設計したジンの高機動型だ。

 

 フルバーニアンの名が指す様に、ガンダム試作1号機の設計データを反映している。

 

 ユニバーサル・ブースト・ポッドと増設したアポジモーターの生み出す運動性は60%程の向上。機動性もジンの3倍は超える程のものだ。

 

 この世界のMSはバッテリー駆動であり、核エネルギーを使っていない理由は核というわかりやすく強力な旧世界から続く最強の兵器を、コーディネイターの造り上げた新たな力でナチュラルに勝利する為である。

 

 最も、MSに核分裂炉を搭載させた場合の放射線の問題と、小型化する技術開発がまだ出来ていなかったという裏事情もあるだろう。

 

 ならば無理をするよりも安全なバッテリー駆動を選ぶのは自然だった。

 

 さらに脅威なのはジンの性能はバッテリー駆動であってもその機体性能がザクⅡS型とあまり変わらないという事だろう。それがコーディネイター故に能力の基盤がナチュラルであったジオンよりも高いからだろう。

 

 指揮官やエース向けだったザクⅡS型程度のMSが一般向けの機体なのだ。

 

 連合の立場で考えたら、相手が可哀想になってしまった。

 

 艦砲に運悪く当たるジンが後方で爆発する。

 

 敵の先鋒のMA部隊が、こちらのジンと交戦を開始した。

 

 いくら能力が高くとも、戦場では皆平等に死が訪れる。ベテランパイロットでも流れ弾に当たって死ぬこともある。新兵の死に物狂いの攻撃にエースが落とされることだってある。それが戦場だ。

 

『これが、戦場か…』

 

「そう。これが戦場だ。それでも戦う理由がある。戦わなければ守れないものの為に皆が戦う。家族、友人、恋人の為。あるいは武勲、利権、そういったものを得たいがため。大義名分に酔えればそれで良い。そうでないのなら自分の信念を見つけるしかない。あなたはどう思う? ジャン」

 

『……』

 

ジン・フルバーニアンの脚に触れて、接触回線で会話するジンのパイロットはジャン・キャリーというアナハイムの社員で、機械工学博士としてプラントでも知る人は知る有名人でもある。

 

「ナチュラルとコーディネイター。遺伝子操作をして確かにコーディネイターはナチュラルよりも優秀かもしれない。でも私にはどちらも人である様にしか見えない。人であるからこうも争える。進化した人類は争う必要のない人類だ。ならナチュラルと変わらない。コーディネイター同士でさえ喧嘩をすれば争いもする。感情を持つ人間だ」

 

『君は面白い考えをする。だが、この世界でその考え方は茨の道でもある。君は、それに耐えられるかい?』

 

「別に耐える必要はない。正しいと思うことを成す。それでも批難、迫害、認められなくとも認めてくれる者達も確かにいる。世界が1対1になってしまってはダメだ。その瞬間、ナチュラルもコーディネイターも互いをただ滅ぼしあうだけの戦争とは呼べないものになってしまう。これは人種差別によることに端を発した戦争だが、それではいけない。これはプラントの自治権を求める独立戦争であるべきだ」

 

 相手を滅ぼすのではない。相手に認めさせる戦争にする。そうなれば独立を勝ち取れば戦争を終わらせることが出来る。そして――。

 

『君がナチュラルだと公言しているのはその為か』

 

「ナチュラルでも努力すればコーディネイターを超えられる。なんて過激思想はないが、プラントにも少なからずナチュラルは居る。その逆もまた然り。そもそもコーディネイター人口の9割は地球に住んでいる。ナチュラルだから、コーディネイターだから。そんなことで戦争していけばいずれ人類は滅びるしかなくなる。そんなことで、この世界の子供たちが幸せな世の中を生きていけると思うか? 私はそうは思わない」

 

『それが君の戦争か…』

 

「…まずはこの戦闘を制する。プラントが負けては意味がない」

 

『了解した。共に武運を』

 

「健闘を祈る」

 

 ジャンと分かれ、ジン・フルバーニアンの推力で一気にモビルスーツ部隊の先鋒を追い越していく。迎撃にビームやミサイルが飛んでくるが、その一切を無視してユキは敵艦隊に向かう。

 

 ザフトの主力兵器がMSならば、連合の主力は戦闘機の発展型や作業ポッドに武装をしたMAと呼ばれている兵器だ。

 

 宇宙世紀のMAのそれを知るユキは失笑したが、それでも戦闘機や武装をしたポッドの恐さを知っている。戦い方次第ではMSでも墜とされる。

 

 故に敵の気勢を削ぐ為に、敵の母艦を叩きに向かう。

 

 核分裂を妨害するニュートロンジャマーにより、地球軍は核攻撃が出来ない。さらにNジャマーの副産物。レーダー障害により短距離レーダーならまだしも長距離レーダーは使い物にならず、有視界戦闘に頼る事になる。有視界戦闘による機動戦ならば、こちらには腐る程ノウハウはあるのだ。毎月単位で3年間論文を書き連ねた成果が表れてくれることを願う。

 

 武装ポッドも機関砲しか装備していない。ボールの様な一撃の恐怖がないのは有り難かった。

 

 御大層に隊列を組む連合艦隊の弾幕は、近くにいる敵がユキのジン・フルバーニアンだけとあってその弾幕は激しいが、艦隊の懐に入れば味方との同士討ちを避けて火線が甘くなる。

 

 他のジンも艦隊に接近しようとするが、艦載機に阻まれたり、弾幕の前に尻込みしたりと二の足を踏んでいるために未だに艦隊に取り付けたのはユキのような化け物の他は生粋のザフトでもエース級の腕を持つパイロットだった。

 

 もはや入れ食い状態でユキは暴れまわった。ルウムのように、赤い彗星の後に続いて敵艦を沈めていたが、今は自分が赤い彗星なのだ。

 

 ジン・フルバーニアンの武装は対装甲リニアライフルだ。

 

 一般的な76mm重突撃機銃よりも対艦戦闘を想定して120mmの弾丸を使いたかったのもある。ペールギュントの対空機銃も120mmである為、弾頭を共用にしてコストを抑える意味もあった。

 

 威力はチタン合金セラミック複合材は撃ち抜ける程度は欲しかった為、バレルの長さがΖ系列のビームライフル程の長さで取り回しに難があるが、Ζ系列は慣れている為に問題はない。技術開発も兼ねて弾倉とエネルギー供給のバッテリーパックを一緒にした所為で1マガジン18発しか撃てないが、Eパックビームライフルの装弾数も平均的にはその程度の弾数なので気にはならなかった。

 

 武装ポッドは蹴り壊し足場にして機体のベクトルを急激に変えながらリニアライフルでアガメムノン級のブリッジを天頂から撃ち抜き、エンジン部にも3発撃ち込むと盛大な爆発を起こして大破した。

 

 さらに近場のネルソン級やドレイク級を平らげる。予備マガジンは左手のシールドに四つある。元々の装弾していた1マガジンに合わせて5マガジンなら90発は撃てる。

 

「撃ちきる前に推進材が心許なくなるな」

 

 それに戦艦一点駆けを何時までもしてはいられない。

 

「ッ!?」

 

 脳裏に奔る気配。多角方向からの攻撃をバレルロールとAMBAC機動、アポジモーターの連続噴射で切り抜けるが、リニアシートでない機体でそんな振り回しをすればダイレクトに掛かるGで骨身が軋む。

 

「ぐっ!…ほう。オールレンジ攻撃か…!」

 

 ニヤリと口許が歪む。異邦の宇宙のオールレンジ攻撃の程を測るまさかの機会に、戦士としてというより技術屋としての血が笑みを浮かばせたのだ。

 

 砲台端末は4基らしい。本体のMAからの有線式制御によって攻撃を行うらしい。

 

「成る程。インコムの系統か…。しかしどうも面白いなこの世界は」

 

 旧ジオン公国がニュータイプ用に試作していたMA――ブラウ・ブロのコンセプトを持つ機体が一年戦争のルウム戦役に居るような物だ。

 

 コーディネイターでも一般兵士相手なら十二分に脅威になる機体だ。

 

「それにさっきからおれに触れてくるこの感覚。ニュータイプにしてはまた少し違う。でも自分の認識能力を空間に広げて周りを認識する。人の覚醒。それを兵器に利用するのはどこも同じだな」

 

ジン・フルバーニアンの運動性ならばMA程度に遅れは取らないが、それでもオールレンジ攻撃は厄介だ。

 

「っと、これだからバッテリー駆動は」

 

 警告が鳴り、ジン・フルバーニアンのエネルギーがイエローからレッドに差し掛かりそうになっていた。

 

 エネルギーが無くなればジンも木偶の坊だ。

 

 リニアライフルでオールレンジ攻撃の砲台端末を2基破壊すると踵を返して一目散に離脱した。

 

「まだ力が目覚め切れちゃいない」

 

 デュランダルから聞いていたが、この世界には既に高い空間認識能力を必要とするもののあの様に兵器利用されているものがあった。ニュータイプへの覚醒もなくそんな兵器が実用化されている。

 

「本当に、面白い」

 

 だからこそコーディネイターやナチュラルだからと争っていることが何れ程人類の歩みを停滞させていると気づかない。

 

 しかし戦争は起きてしまった。ならば戦争が早期に終決する事を願いながら、しかし軍隊としてまだ未熟なザフトを強くしなければならない。

 

 何れ投入されるだろう地球軍のMS部隊の物量相手でも強固に守れる程の質をユキは目指していた。

 

 だから自らの知る戦訓や技術を惜しまないつもりだ。

 

 帰りの駄賃にまた数隻の連合艦を沈めたユキは、ザフト側の制宙圏に入ると、擦れ違ったジンに声を掛けられた。

 

『勇ましい戦果だな、ユキ。これでは首席の立つ瀬がないな』

 

「ラウこそ。もう5隻は墜としているのだろう?」 

 

 接触回線で繋がっているのはラウ・ル・クルーゼ。

 

 シャアよりもハイセンスな仮面を着けている友人にして同期の戦友。レイの保護者でデュランダルという共通の友人が居るから、プライベートでも繋がりの深い男だ。

 

『単機で敵陣に切り込み、アガメムノン級を多数沈めて敵の左翼を半壊させてきた君に言われてもな。これでナチュラルなのだからコーディネイターも高が知れている』

 

「場数の違いがあるだけさ」

 

 これで何も知らないヒヨッコならばどうなっていたかは一年戦争のルウムで泣き喚きながらセイバーフィシュに追いかけ回されていた苦い経験が頭を過った。

 

 敵の艦隊の一翼を突き崩したが、依然敵の勢力は艦隊戦力は向こうに有利だ。

 

『では私は行くよ。誰かの所為であと1隻は墜としておかねば笑われてしまうのでね』

 

 クルーゼのジンが離れ、戦場に向かって行く。

 

 進路をペールギュントに向けながらユキは戦場を俯瞰する。

 

 地球軍のMA部隊は連携してジンと戦っている。

 

 平均的に1:3のキルレシオの様相を呈している。エースパイロットなら1:5で戦っていてもお釣りがくるほどだ。

 

 しかし連携を軽視しているザフト側のジンは集られて狩られる機体も少なくない。この戦闘では敵を完全に退かせなければならない。何れはとわかっていても今の時点で連合にMSを渡すわけにはいかない。

 

 ペールギュントに着艦すると、整備を受けているMSが目に入った。現時点で携行型のビーム兵器を所持する唯一の機体だ。

 

 ジン・ハイマニューバーと並行して開発したドラッツェだ。

 

 フレームはジンと共用だが、見かけは宇宙世紀と同じものだ。初めて自身が設計した機体だけあって、見た目も変えたくなかったというユキのわがままもあった。

 

 性能は本家そのまま。MSに対して運動性で譲るものの、機動性はリックドムⅡに匹敵する空間戦闘高機動型MSとして、はっきり言ってジンより強い機体ではあるがジンよりもコストが3割ほど安くなっている。

 

 武装は試作1号機は本家そのままに作ったが、改良とU.C.96年代までの技術を取り入れてアップグレードを施し、外見はドラッツェ改に強化され内装も最新式。リニアシートと全天モニターを導入している。頭部にブレードアンテナも付けているためよりジオンのモビルスーツとしての印象を色濃く前面に押し出している。

 

 武装はジン・ハイマニューバーと共通の対装甲リニアライフル。だが最も特徴的なのはシールドの内側に装備されているビームサーベルだろう。ビームガンとしても機能し、この世界のMA相手ならば十分な火力を有している。ビームの発振もバッテリーパックを使うことで本体の電源が消費しないことは本家からの技術転用だ。高機動型MSには余計なエネルギーを他所に回している暇がないからだ。しかしその代わりシールドがシールドの仕事を半分放棄して武装プラットホームとして機能しているために、盾を壊すと武装が減るというデメリットも相変わらず抱えている。「当たらなければどうということはない」を地で行く機体でもある。

 

 今はこのドラッツェの機能をバックパックに集約した高機動パックを試作してジンに取り付ける予定で開発が進んでいる。早ければ今月中にはロールアウト出来る予定だ。

 

 さらに高機動型のドラッツェとしてGP02のデータを反映した機体を開発したが、今回の開戦のごたごたで製造が間に合わなかった為にこちらも今月でのロールアウトになる。

 

 アナハイムはドラッツェのおかげで高機動型モビルスーツ産業に躍り出られる可能性も出てくる。故に今日その戦果を期待するところ大である。

 

「部長!」

 

 ドラッツェの出来に内心満足していると声を掛けられた。まだ15歳なのにMSのビーム兵器開発に従事する天才の少女だ。おそらく自分が居なければザフトにビーム兵器を齎したのは彼女だっただろう。プラントはコーディネイターによる能力開発が進んでいて、実力社会と人口が6000万と少ないのもあって、優秀であればあるほど社会的に高い地位着くこともできる。目の前の彼女が15歳でビーム兵器の開発をしているのもそういった能力の高さもある。

 

 彼女がユキを部長と呼ぶのは、アナハイムのMS開発部門の部長をユキが務めているからだ。年齢的には(公的にはユキも今は15歳)同年代であるからそこまで畏まることもないのだが、軍人であり赤を纏う者同士でも自分より上であると認めているからシホは部長とユキを呼んでいる。

 

「シホか。ドラッツェはどうだ?」

 

 そしてドラッツェのパイロットも彼女に任せている。

 

「は、はい。良い機体です。その機動性はジンとは比べ物になりません。しかしすみません。大事な機体を傷つけてしまいました」

 

 そう落ち込むシホ。待機ボックスからは脚部の燃料タンクに被弾したらしい痕跡があり、今新しいユニットとの交換作業に入っている。

 

 シホもアナハイムに所属し、そしてそのアナハイムの実情を見ているひとりでもあるから今回のドラッツェの存在意義をわかっている人物でもある。

 

 故にこの機体で戦果を上げなければと焦りが隙を生み、被弾してしまったのだった。幸いタンクが爆発しなかったが、もし爆発をしていたらとも思うとぞっとする。そういった不安や恐怖を見せない様に落ち込んだ風に見せて顔を俯かせていた。

 

 そんなシホの胸をユキは軽く叩いてやる。

 

「そう落ち込むな。テストパイロットの役目は機体を無事に持ち帰ることだ。戦果は二の次程度に考えていればいい。そう気負って本来の能力を発揮しきれないのでは意味がない」

 

「部長…」

 

「次は私も共に出る。未だ地球軍は頑固に抵抗しているが、ユニウスセブンでは満足に叩き潰せなかったからな。ここでプラントの力を正面から見せつける必要がある」

 

「はい…!」

 

 ユニウスセブンと聞いて、彼女の目にも火が入る。だがその火の扱い方を間違えないように導いてやらなければならないと、ユキは強く想いながらシホに作戦を説明する。

 

「敵の左翼は壊滅しているが、未だ中央と右翼は強固に防衛体制を敷いている。この作戦は連合の月基地を牽制し、プラントへの圧力を減らすための意味も込められている。故に負けられない」

 

「はい。しかし敵の艦隊はこともあろうに世界樹を盾にする動きがあります。このままでは満足に艦隊の火力を生かせません」

 

 シホも15歳でビーム兵器の開発をし、赤を纏う傑女だ。ユキの言う作戦も理解出来ている。しかし故に連合の行動によってこちらの攻撃が満足にできないことに歯がゆさを感じていた。

 

「自軍のコロニーを盾にするバカさ。かと言ってこちらがコロニーを気にしないで撃てばいいのかというわけでもない。そうなれば我々は宇宙でも孤立してしまう」

 

「コロニーサイド共栄圏構想ですね。あれを見て私も驚いて、だからあなたを知りたくなった」

 

「そんなに凄い人間じゃないがな。でだ。敵の右翼はほぼコロニーを盾にしている。こちらの艦隊も敵の中央を相手にするので動かせない。となればどうする」

 

 シホは自分が試されているのだと理解した。目の前の傑物、ユキ・アカリに。

 

 ナチュラルでありながらザフトレッドを纏う姿はザフトでは嫌われているが、今現在ザフトの戦術理論を作ったのは目の前の少年だ。

 

 特にモビルスーツ運用論は完璧すぎて誰も文句を言えないほどの完成度なのだ。さらにモビルスーツを有する艦隊行動戦術論。その有用性と電波障害時における有視界戦闘戦術論も今回のことで絶大な評価を受けるだろう。まさかNジャマー環境下を想定していたわけでもないだろうに、やけに有視界戦闘環境下での戦術論は素人目に見ても綺麗にまとまり過ぎていて、実際にその戦闘を自分が体験しているかのような気分をさせられる読み応えのある論文だった。

 

 今では士官アカデミーのモビルスーツ教育、戦術に関してはほぼ目の前の少年が監修した教本が使われている。

 

 そんな恐ろしい人物が実際あってみれば自分と同い年の普通の可愛い男の子だった時は気抜けしたものの、いざ話すと普通ではない。少なくとも同い年の自分より遥かな高みに居る少年だと見せつけられた。でもそれに驕ることもない。優しさに溢れていて、真剣にプラントのことを考えていることも普段の彼を見ていればわかる。

 

 ビーム兵器開発で先を越されたのは悔しい。でもそれがプラントの為になるのなら悔しがってばかりは居られない。ザフト初のビーム兵器搭載MSにしてアナハイム・エレクトロニクスの純MSを任されたというのならば、その責任は大きい。そしてそれほど期待されているということにもなる。

 

「モビルスーツによる強襲を掛けてコロニーの裏から追い出す。そういうことですか?」

 

「戦術としてはそれで良い。だが敵がコロニーにお構いなしに発砲する可能性もないわけではない。あちらからすればプラントは宇宙人の化け物らしいからな」

 

「それは…」

 

 ブルーコスモスの言う宇宙の化け物。青き清浄なる世界。それについても目の前の少年は論文を書いている。

 

 曰く、ナチュラルもコーディネイターも同じ人であると。

 

 だから目の前の少年はプラントにおいて敵が多い。その技術が今のプラントには必要であるから切り捨てられていないが、そうでもなかったら――。

 

「だから見せつける。宇宙人と呼びたければ好きにしろ。でも自分たちは本気でプラントの独立を望んで戦っている。本気だからここまで戦えるということを」

 

「あなた、まさか…!」

 

「隠れている右翼の艦隊を徹底的に潰す。コロニーを守る為には敵の背後を突いて強襲。こちらに引き付ければコロニーへの攻撃が行くこともない」

 

 敵の艦隊をMSだけで壊滅させる。そんなこと…目の前の少年はやってきたばかりだった。それこそ単独で敵艦隊の中を駆け抜けて、無傷で帰ってきた。これがナチュラルというなら彼は神に愛された才能の持ち主だ。遺伝子操作で能力をナチュラルより高く付与された自分たちコーディネイターがなんなのかわからなくなる。

 

「だから努力を怠らなければいい。君がここに居るのは才能だけか? 軍人になるのに努力したはずだ。違うか?」

 

「あなたは努力してきたとでも言うの?」

 

「それこそ努力の積み重ねだったさ。確かにモビルスーツの開発は楽しかったしそっちの才能はあるとは自負している。でもパイロットとしては努力の積み重ねだった。天才的なセンスがあるわけじゃない。ただ乗れるということから場数を踏んで、死線を潜り抜けた。パイロットならだれもが通るだろう道をただ生きてきた」

 

 そう語る彼の姿は同年代にはとても思えないほど、疲れていて、老齢している老人を思わせる。時々彼が魅せる不思議な姿だった。

 

「だから言える。人は努力を怠ってはならない。努力すれば報われるとは言わない。それでも学んだことは無駄にはならないと私は断言する」

 

 自身に満ち溢れた声。そして彼の纏う雰囲気は人を魅了する空気を持っている。俗に言われるカリスマ性。人を無意識に魅了するその甘美な毒。

 

 でも本質はやっぱり優しい男の子だから、無理をし過ぎて壊れてしまわないか心配になってしまう。見た目が幼いのもあってどこか庇護欲を擽られるのも心配になる一因かもしれない。

 

『アカリ機、補給作業完了!いつでも発進できます』

 

 艦内アナウンスで流れる報告に、ユキは端末で返事を返すとヘルメットを被って一度シホを振り返る。

 

「敵艦隊の強襲。付き合ってくれるか?」

 

「あの機体で戦果を上げる。行きますよ、一緒に」

 

「機体の調整をしておく。終わったら出るぞ」

 

「了解!」

 

 敬礼をして送り出す小さな背中。

 

 格納庫に出ると整備員に指示を飛ばす小さな少年。整備員の動きも良くなった。

 

 どの分野でも人を引っ張っていく姿に人もみんな彼に惹かれていく。そして思う「この人と一緒なら大丈夫だ」「この人はどんな知らない世界を見せてくれるんだろう」「この人の力になりたい」「自分の力が少しでもこの人の力になれば」。

 

 だから彼もそれに応える為に人の前に立ってしまう。

 

「でもあなたはまだ子供よ」

 

 自分が大人かと言われたらそうでもない。プラントでは15歳で成人になるものの、大人とはそうじゃない。

 

 だからその姿が壊れてしまわない様に誰かが支えてあげなければならない。

 

「傲慢ね。私だって、あの子みたいに強くはない」

 

 だから今はその強さを学ばせて貰うだけだ。

 

 彼の作ったMSは優秀だ。優秀すぎて無駄がない。まだモビルスーツが生まれてそう年月は経たない。ジンもまだ洗練されたMSとは言えないのに、アナハイムの造ったこのドラッツェは怖い程に洗練されている。

 

『発進と同時に味方の艦隊の影を進んでコロニーに向かう。あちこちで乱戦しているから見つかりにくいとは思うが、気を緩めるな』

 

「了解」

 

『MSが出るぞ!ハッチ開け!!』

 

『我らが希望をお願いします!』

 

『プラントの為に』

 

 発進準備に入る間、彼のジンからいろいろな声が聞こえてくる。

 

『電圧上昇、進路クリア。発進どうぞ』

 

『ユキ・アカリ、ジン・フルバーニアン。発進する! プラントに栄光あれ!!』

 

『『『『『プラントに栄光あれ!!』』』』』

 

 MSの装甲越しにも聞こえてくる声量に身体の芯が熱くなりそうだった。皆が皆、彼の理念を理解してプラントの為に戦うから心も一つにして戦えるのだ。

 

『進路クリア。ハーネンフース機、発進どうぞ』

 

「シホ・ハーネンフース、出るわ! プラントに栄光あれ!!」

 

『プラントに栄光あれ!!』

 

 無線越しに聞こえる声は生気に満ちている。これが彼の怖いところだ。

 

『行くぞシホ。敵の右翼を沈めれば艦隊も攻勢をかけられる。そうすればこの戦闘はこちらの勝ちだ』

 

「了解」

 

 彼にはこの戦闘の決着が見えているようだった。いや、これからその流れを作りに行くのだ。

 

 スーツの中をジメリと汗が流れていく。そこには恐怖もある、不安もある。それでもそれを押し退ける興奮もある。今から自分も艦隊攻撃に加わるのだ。

 

 戦場では連合とザフトの艦隊が激しい撃ち合いをしている。アンチ・ビーム爆雷によってどちらも有効打は与えられず膠着状態。MS部隊とMA部隊も激しいドックファイトを繰り広げている。それでも数と質の戦いは長引けば数に押されられる。時間との勝負だというのはシホも感じていた。

 

 ドラッツェも重装型として機体に積めるだけの装備を積んでいる。

 

 脚部の燃料タンクにパルデュス3連装短距離誘導弾発射筒を、両肩にキャットゥス500mm無反動砲を、盾にもリニアライフルの弾倉を減らしてシュツルムファウストという旧時代のパンツァーファウストをそのままMSの武器にした使い捨てロケット砲弾という重爆装装備でジン・フルバーニアンに続く。多少機体が重くても問題ない推力をドラッツェは有している。

 

 ドラッツェ改重装型という爆撃仕様の機体でシホは目の前を進む蒼いジンを背中を追う。まるで彗星のように光を放ちながら進む姿に、戦場だというのにシホは見惚れていた。

 

 主戦場から離れていたからだろう。ユキとシホは敵に見つかることもなくコロニーにとりついた。

 

「これからどうしますか? 強襲するといっても2機だけで」

 

『相手の指揮官はどうやら臆病らしい。尻で椅子を磨くだけが能かもしれないな。かわいそうだが、ご退場願うわけだがさて、どう攻める』

 

 優しいのに戦場だと怖い程に戦い馴れている様子がシホに疑問を抱かせる。ちぐはぐに見えてなぜかしっくりくるのだ。

 

『決めた。コロニーの中を突っ切って敵艦隊の前に躍り出る。そこから敵艦隊を突破して背後に回り込み、強襲を掛ける』

 

「ほ、本気!?」

 

 なんて破天荒な戦術なのだろうか。自分にならできるかもしれないが、随伴機のことをまるで考えていない発想だった。

 

『ドラッツェの性能なら問題ない。真っ直ぐ飛べば後ろからどうにかしよう』

 

「あなたねぇ!」

 

 どうしてこうも自分勝手に話を進めるのだろうか。確かにドラッツェの戦果は必要だが、それでも無謀ともいえる作戦に付き合う身にもなってほしいとシホは憤りを感じずにはいられない。

 

『君になら出来ると考えているだけだ。それとも、怖くて尻込みしたかな?』

 

 厭らしい言い方をする。でもそれは普段彼を知るものは知らない顔だ。なぜなら世間一般からは出来た子供として通っているからだ。しかしアナハイム内部ではそれ以外にも的確に指示を飛ばす姿、人をやる気にさせる乗せ上手な所もある。いわゆる悪魔。

 

 そしてシホもそういわれては引けない負けず嫌いな所を利用して焚きつけているのだと彼女自身わかっているのだ。ズルい人だと思う。

 

「やるわよ!その代わり、死んだら化けて出てやるわ!」

 

『ククク、良いだろう。なら死なせない様に立ち回るだけだ』

 

 そしてそんな風に言うから女性陣からいろいろな意味で誤解され易いというのも自覚してほしいと思いながら、一度ヘルメットのバイザーを上げて深呼吸する。

 

「ごめんなさい。行きましょう!」

 

『了解した。コロニーに潜入すればさすがに向こうにも気づかれる。一気に突き抜けるぞ』

 

「了解!」

 

 先行する蒼いジンの続いてドラッツェも続く。

 

 物資搬入用の小さなゲート。作業ポッドが出入りする為の、MSでギリギリ通れるような場所のゲートにたどり着く2機。

 

「後方! 接近物!!」

 

『敵じゃないな。…ジャンだな』

 

「え?」

 

 レーダーに映る機影。それの識別はペールギュント所属でアナハイム所有の白いジン。予備機のコードだった。

 

『補給に戻れば出て行った二人の機体が見えたものでね。私に出来ることでもあれば手伝おう』

 

『良いのか?』

 

 どういう意味でユキが語り掛けているのかはシホにはわからない。だが問われたジャンはわかっていた。

 

 地球で反コーディネイター論が高まり、居場所がなくなってきたことで、両親の死を期に地球からプラントに移り住んだジャンは、機械工学の道に進む。

 

 アナハイムがプチモビやジュニアMSを開発する過程で、機械工学で博士とも呼ばれ有名に鳴り出したジャンをスカウトしに来たのが目の前のジンに乗る少年だったのだ。

 

 始めは早い才能の開花をした少年だと思っていたジャンだったが、話すうちに彼がただの子供ではなく、何かを隠しながらも必死になっている大人の姿に見えた。時折見せる顔は、老齢した大人のソレでもあった。

 

 何に燃え、そして何を目指すのか。それは口々に彼が口にしていることそのものが本心だろう。

 

 彼が目指すのはコーディネイターもナチュラルも関係がない。ただプラントという自身の住む環境の安定化。そのための戦争だという。プラント、コーディネイターの国でナチュラルとして戦っているその姿が眩しく、貴く、そして羨ましく思ったのだ。

 

 彼は自分の写し鑑なのだと。コーディネイターであるからナチュラルの国から逃げた自分。ナチュラルでもコーディネイターの国で、自分の居場所の為に戦う彼が。

 

 だから今度は逃げてはならないと思った。幼い彼が戦っているのに逃げてはならないと。憎しみの連鎖を終わらせられるのは彼なのだと思った。

 

 故に彼のもとで戦うことを決意出来たのかもしれないと後にジャンはとあるジャーナリストに語ることになる。

 

「君の戦いを見守るのが私の役目だと思っている。こんな私だが、最後まで付き合わせてほしい」

 

『その為に私は貴方に声を掛けたのさ。嫌でも付き合ってもらう。何しろウチの会社でMSに乗れる人材は貴重だからな』

 

 そんなことはない。アナハイムの、少なくとも整備士や開発陣は少なくともMSの操縦は出来る様になっている。でなければ機体を弄れないし作ることもできないからという方針でもあるからだ。

 

 それでもジャンの腕はシホでも難しい程の強さがある。

 

『コロニーの内部を突っ切って敵の正面に出る。敵艦隊を突破して背後から強襲する。良いな?』

 

「これはまたまた」

 

 かなり無茶な作戦だが、それを言うということは、出来ると疑っていないことだ。むろん自分自身ではなく僚機であるこちらをだ。

 

『隔壁はビームサーベルで開ける。シホ!』

 

『了解!』

 

 シホのドラッツェが左腕のシールドの内側のビームサーベルを起動し、隔壁の四隅に沿って切れ込みを入れる。

 

 切り込みを入れたところでハンドサインでシホを下がらせたユキは対装甲リニアライフルを撃ち放ち、隔壁を吹き飛ばす。

 

「全機続け!」

 

 先にユキのジン・フルバーニアンが入り、そのあとをシホのドラッツェとジャンのジンが続く。

 

 侵入すると侵入者迎撃用のオートマトンが攻撃してくるが、それらは無視して突き進む。

 

 隔壁を破懐して進むユキに迷いはない。それはニュータイプとしての勘がユキを無意識に導いているからだった。

 

 通路を抜けてコロニーの中に入る。そのままコロニーの反対側の通路に入って同じことの繰り返しだ。

 

「よぉし、いい子だ。このまま敵の前に出るぞ!」

 

 ユキは返事を聞く間も惜しいと、そのままキャットス500mm無反動砲で隔壁を吹き飛ばして外に出る。

 

 そこはもうすぐ傍に地球軍艦隊の正面が控えていた。

 

「な、なんだ!?」

 

 いきなりコロニーの外壁が爆発したと思えば、MSが数機出てきたのだ。そのことにちょうど真正面だったネルソン級の艦長は信じられないと戦慄した。

 

「コロニーの中を抜けてきたというのか!? 迎撃! 迎撃しろ!!」

 

「し、しかし! コロニーに当たります!」

 

「構わん! 多少の攻撃ではコロニーは壊れん!!」

 

 そうして数隻のネルソン級やドレイク級はユキたちに向けてその火砲を放ってきた。

 

『撃ってきた!?』

 

『マズい。このままではコロニーが!』

 

「ええい! これだから地球に住む者というものは、コロニーが地球と地続きでないとなぜわからん!!」

 

 コロニーがあるのにも関わらず攻撃してきた連合軍。予想していたとはいえ、スペースノイドとしてこれは感化出来る状況ではなかった。

 

 艦砲を潰しつつ敵陣深くまで食い込んだ3機。MA部隊は直援機も少なく、しかも艦隊隊列の中を自由に動けるほどの運動性はMSには劣る。

 

「全機兵装自由! 薙ぎ払え!!」

 

『ええい!!』

 

『これも戦争だ。悪く思わんことだ』

 

 周りは撃てば当たる上に敵しか居ない状況だ。

 

 各々武器を放ち、次々と敵艦を撃沈、または戦闘不能に追い込んでいく。

 

「っ!? 全周囲警戒!!」

 

『な、きゃあ!!』

 

『ぬぐっ!? どこから、まさか!』

 

 艦隊の中で暴れまわる3機に対してどこからかの攻撃が殺到する。前や横や下など様々な方向からの攻撃にシホは辛うじてシールドで攻撃を防ぎ、ジャンも機体をバレルロールさせて回避し、ユキはサーベルを抜いて弾丸を切り飛ばして。リニアライフルで攻撃元の砲台端末――ガンバレルを破壊する。

 

『クッソ!! 弾を切るなんてありかよ!』

 

「これくらいは出来なければ」

 

 ユキの目に移ったのは先ほど戦った赤いMAだった。ただその十字にガンバレルを装備していた様子とはまた少し違う機体だった。左右の砲台端末のあった部分がMA――メビウスのエンジンに代わっていたのだ。

 

「別の機体? いや、現地修理か?」

 

『残り一基じゃキツイな。こりゃ逃げるが勝ちかな?』

 

 残った端末を戻して不格好なT字になったMAを見送る。今はMA1機に構う時間が惜しいからだ。

 

『部長! ご無事で』

 

「シホこそ。大丈夫だな?」

 

『意外と頑丈な盾のお陰ですよ』

 

「まぁ。なけなしのガンダリウム製だからな」

 

 ドラッツェのシールドは武装プラットホームでもあるので頑丈に越したことはない。故にコロニーの重力ブロックで作ったなけなしのガンダリウム合金が使われていうのだ。

 

「このまま敵の艦隊を平らげる。行くぞ!!」

 

『了解! 吶喊します!!』

 

『援護はこちらに任せてもらおう』

 

 シホのドラッツェはその機動力で艦の対空砲を翻弄し、ビームサーベルで船体を切り裂いて去り際にシュツルムファウストやキャットゥス500mm無反動砲を撃ち込んで敵艦を大破ないし中破させていく。

 

 ジャンはそんなシホを援護しながら傷の浅い艦のエンジンにバルルス改特火重粒子砲を撃ち込んでいく。

 

 ちなみにジャンの使うバルルス改はアナハイムの独自改良が加えられ、ビームの集束率が原型とは比べ物にならないほど向上し、破壊力と貫通力が段違いである。威力としてはGディフェンサーのロングライフル程度はある。取り回しに難があるとはいえ、戦艦並みのビーム砲がモビルスーツの機動・運動性で襲ってくるのはやられる側からしたら悪夢である。

 

「そう。これがモビルスーツの対艦戦だ」

 

 船体を次々と蹴りながら加速し、ユキは一気に敵の中枢であるアガメムノン級を沈めに回る。

 

 現れては消え、そして破壊を振りまく姿を後に生き残った連合兵は『悪夢』と語った。

 

 この戦いにより、ユキはザフトの悪夢・ザフトの蒼き鷹。シホは火器を惜しみなく放つ姿からホウセンカ、ジャンは白いジンの姿と名前の一部を取って煌めく凶星「J」と呼ばれるようになる。

 

 個人戦果もそれは凄まじい被害を連合側に及ぼした。

 

 ユキはアガメムノン級5隻 ネルソン級1隻 ドレイク級8隻 補給艦1隻 MA26機。

 

 シホはアガメムノン級3隻 ネルソン級16隻 ドレイク級1隻 補給艦4隻 MA33機。

 

 ジャンはアガメムノン級3隻 ネルソン級1隻 ドレイク級9隻 補給艦1隻 MA15機。

 

 三人合わせればアガメムノン級11隻 ネルソン級18隻 ドレイク級18隻 補給艦6隻 MA74機を撃墜。一躍有名人となり、ドラッツェは高評価を受けるMSとして認知され、アナハイムはザフトにおける高機動型MS産業のシェアを獲得していくことになる。

 

 

 

 

to be continued…

 

 




今回執筆するのに約10年振りにSEEDの設定を勉強し直しましたが、ASTRAYが面白い意味がわかった。本当に面白い設定がこんもりですわ。

しかしジャンさんなんで反コーディネイターが嫌で地球からプラントに移住したのに開戦したら戦いが嫌でまた地球に降りたのに憎しみの連鎖を断ち切る為に連合に入ったんだろうか。やっぱNジャマーの件もあって地球も生まれ故郷だから守りたかったのだろうか?

そんなこんな事を思いながら書いていると不思議と筆が乗りました。しかしユキに出逢ったが運の尽き。ザフトのエースとして邁進します。

てかサイコロが暴れてシホの戦果がヤバすぎる。まあまあええわ(諦め
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