一刀たちが陳留に到着した頃には、とっぷりと日も暮れてしまっていた。これでは街をじっくりと見て回ることもできないので、ひとまず宿をとって一晩明かすことになる。
「それじゃ、みんなおやすみ」
「義妹がわがままを言って申し訳ありません。鈴々、ご主人様に迷惑を掛けぬよう大人しくしているのだぞ?」
出発前のこともあって、一刀は気を使って今回はさすがに一人で寝ようと決めていた。しかし、張飛がどうしても一緒に眠りたいと瞳を潤ませながらお願いをするので、一刀は半ば押し切られるような形で了承してしまっている。
「もー。愛紗、心配のしすぎなのだ。鈴々、そんなに子供じゃないもん!」
張飛はぷくっと頬を膨らませて、抗議するように義姉の方を向く。そういうところが子供っぽいのではあるが、本人にはその自覚はない。
「まあまあ、俺がいいって言ってるんだからさ。ね、愛紗」
場を鎮めようと、一刀は張飛のことを引き寄せながら関羽に笑いかける。渋々矛を収めた関羽は、もう一度だけ注意をすると割り当てられた部屋に入っていった。
「鈴々、ちょっと先に入って待っていてくれるかな?」
「うん? それじゃあ稟、凪、また明日なのだ!」
ぱたん、と扉が閉まったのを確認して、一刀は郭嘉と楽進を揃って抱き寄せる。
「あっ、隊長……。んっ……、こんな、いきなりなんて……」
「一刀さま、このようなところ……ちゅ、あむっ……、いけません……、ふう……」
驚く二人に触れるだけのキスをし、一刀はゆっくりと身体を離した。少女らは名残惜しそうにしているのだが、今日は本当にそれ以上のことをする余裕はない。
「今度こそおやすみ、二人とも」
短い挨拶だけを残し、一刀は張飛の待つ部屋へと消えていく。郭嘉と楽進は困り物の主君にため息をつくと、胸の高鳴りを感じたままそれぞれの部屋に別れる。
そして奇しくも両名ともに扉へ背を預けると、唇にそっと指を当てて愛しい人の温もりを確かめるのであった――。
「お待たせ、鈴々」
一刀が姿を見せると、退屈そうに寝台の端に座っていた張飛に笑顔の花が咲く。
「鈴々大人だから、ちょっとくらい待つのは平気なのだ。それより、はやくはやく!」
自分からころんと横になって、張飛は一刀にもそうすることを促している。張飛がなにをそこまで楽しみにしているのか一刀にはわからなかったが、同衾を楽しみにされて悪い気はしない。
「一応聞いておきたいんだけどさ。鈴々、どうしてそんなに俺と一緒に寝たいと思ったの?」
張飛と向かい合うようにして寝転び、一刀は小さな子と戯れる時のように柔らかな頬をふにふにとくすぐる。
年相応の可愛らしい答えが返ってくることを一刀は期待していたのであるが、張飛の口から出たのはそれとはあまりにかけ離れたものであった。
「にゃ……、くすぐったいのだあ。……えっとね、ちょっと前に凪と風が話してるのを聞いちゃったんだけど」
「凪と風が? うん、それで?」
その二名の組み合わせは、なんとなく一刀を不安にさせる。そんな感情を張飛は知るはずもなく、くりっとした丸い目を瞬きさせながら続きを話した。
「風がお兄ちゃんと寝るときもちーって言ってたの。凪もなんだか恥ずかしそうだったけど、ぎゅーってしてもらうと元気になれるって。それで鈴々も気になって、お兄ちゃんと寝てみたいって思ったの!」
ほんの一瞬心臓が飛び跳ねそうになったことを、張飛に悟られなかっただろうか。一刀は荒ぶりそうになる鼓動をどうにか抑え、張飛の期待に輝く瞳を改めて見つめる。
(……さすがにびっくりしたけど、鈴々が求めているのって絶対そういうことじゃないよな。鈴々の純粋な視線が、ちょっと痛いくらいかも……)
これからどうしたものか僅かの間考え、一刀は張飛の方へ右腕を差し出した。
張飛はなにをすればよいかわからないようであったが、一刀が腕をぽんぽんと叩くと遠慮がちにそこへ頭をのせる。
「うんしょっ……。お兄ちゃん、重くない?」
「全然そんなことないよ。これだけ近くにいれば、鈴々のことぎゅーってしてあげられるね」
左手を張飛の背中の方へと回し、頭を胸の中に抱き寄せるように一刀はしている。鼻孔を通して伝わる香りはまるで若草のようで、元気一杯の彼女らしいと一刀は思う。
「鈴々が寝ちゃうまでこうしてるから、ゆっくりおやすみ」
「うん……。お兄ちゃんの身体あったかくて、鈴々なんだかどきどきってしちゃうのだ……」
なるべくいやらしい手つきにならないように気をつけ、一刀は張飛の背中を擦ってやる。初めは緊張のためか上半身をもぞもぞとさせていた張飛であったが、時間の経過と共に次第にとろんとした目が目蓋に閉ざされていくのであった。
(かわいい寝息、これでとりあえずは満足して貰えたかな。俺もそろそろ、寝てしまおう……)
張飛高めの体温が、一刀の睡魔を少し前から呼び覚ましている。誰かと添い寝するというのはやはり安心できるものであり、彼はゆったりと意識を手放していく。ここまで穏やかな睡眠を取るのは、一刀にとって久しいことであった――。
ごそごそと、何かが下腹部をまさぐっている。そんな感覚を受けてもなお、一刀の脳内では睡眠欲が勝っていた。
思考の八割に靄がかかったままでは、いつの間にか腕にかかった重みがなくなっていることに彼が気づくことはない。事件が起こったのは、それからしばらくして一刀が気持ちよさそうに仰向けの体勢になった時であった。
「――よいしょっ、わわっ!?」
「んあっ……? って、え……、鈴々!?」
ズボンを強引にずり下ろされ、睡眠中の生理現象でガチガチに勃起した男根が、ぶるっと身を震わせながら現れる。
その猛々しさに張飛は口元を両手で覆いながら目をぱちくりとさせ、半覚醒状態の一刀は事態を飲み込めずにいた。
「えっと……。お兄ちゃんのこれ、こんなパンパンになってて痛くないの? もしかして鈴々、寝てる間におちんちんになにかしちゃったのかと思って……」
張飛はそう言いながら恐る恐る手を伸ばし、赤黒い亀頭の表面をさする。汗ばんでしっとりとしている少女の掌の感触に反応し、モノ全体がびくりと動く。
「あっ……、鈴々」
驚いた張飛は手をぱっと離す。一刀は無意識に自分が情けない声を上げてしまったことに赤面するが、張飛の柔らかな肌をもっと感じていたいと思ってしまったのは事実である。
つい伸ばしてしまった手が、行き場所を見失って宙を彷徨う。張飛は両手でそれをふんわりと包み込むと、目を伏せがちに消え入りそうな声で一刀に尋ねた。
「――あのね、お兄ちゃん。鈴々にしてあげられることがあるなら、ちゃんと教えてほしいのだ。鈴々、がんばるから……」
普段の元気印から一転、いじらしい張飛の姿に一刀は鼓動の高鳴りを抑えきれずにいる。
汚れを知らない無垢な少女の指に、男への奉仕を教え込める機会。ひと度そんな風に考えてしまうと、細い理性の糸は焼き切れてしまった。
「ここ、握ってみてくれるかな? ちょっとくらい強くしても平気だから」
「わっ!? ちんちん、すっごく熱いのだ。お兄ちゃん、これでいい?」
竿の部分をしっかりと掴んだ張飛は、素直な感想をもらす。一刀のそれは張飛の片手では余裕で手に余り、ぐつぐつと情欲の炎を燃えたぎらせている。
「うん、それでいいよ。そのまま、上下に動かしてみて」
「こ、こう? ちんちん、痛くないのだ?」
「くっ……。大丈夫、むしろ気持ちいいくらいだよ」
自分がどういった行為をしているのかもよく知らずに、張飛は懸命に奉仕を続ける。夜明け前の薄暗い部屋に先走りをこねるニチニチとした音が響き、一層淫靡な雰囲気を醸し出していた。
「先っぽから、ぬるぬるしたお汁出てきてる……。これ、おしっこじゃないよね?」
「あー、なんというか。男は気持ちよくなっちゃうと、それが出てくるんだ」
「気持ちいい? 鈴々のお手て、気持ちいいの? えへへっ……」
一刀に褒められて機嫌を良くした張飛は、ペースを上げてリズミカルに竿を扱く。その背徳感から生まれた異様な昂ぶりを感じて、一刀はぞくりと下半身を震わせた。
「鈴々、動かすのはそのままでいいから、先っぽもなでなでしてくれないか……?」
「うん、わかったのだ。……ぬるぬる、どんどん出てくるね」
張飛が円を描くように亀頭の表皮の上で掌を滑らすと、粘着質な液体が隙間を埋めるように広がっていく。さすがの彼女も自身がいやらしいことをしていると理解してきており、その吐息に熱いものが混じりかかっている。
触られているだけでは我慢できなくなった一刀がなだらかな膨らみに手を伸ばすと、服の上からでも刺激が強すぎたのか少女は嬌声を上げた。
「やあ、なのだ……。お兄ちゃん、鈴々のおむね触りたいの?」
「鈴々のかわいいおっぱい、見てもいいかな?」
恥ずかしそうに竿の先をこねながら、張飛は一刀の方をちらりと見る。一刀があえてなにも言わずにじっと待つと、張飛は身体全体を真っ赤に染めながら胸の部分を覆いをたくし上げた。
「愛紗みたいにおっきくないけど、笑わないでね……」
「笑うわけないよ。おっぱいの先のところ、ツンってなってる」
指の腹で桜色になった乳首を転がされ、張飛はいやいやと首を振る。
「鈴々のここ、感じすぎちゃうのかな。辛いなら、ちんちんぎゅーってしてていいから」
平らに近い胸の中央で、敏感な突起は責められてぷっくりと腫れていった。
張飛は胸先からぴりぴりと伝わる刺激を逸らすように、一刀の肉棒を激しく扱く。胸を愛撫される前に比べて遥かに雑な行為ではあるのだが、一刀にとってはそれが張飛の快感のシグナルのように思えている。
「お兄ちゃん、お兄ちゃ……ん」
耳朶を打つ切なげな声が、興奮を高まらせている一刀にはたまらない。肉棒には太い血管が浮き上がり、亀頭もさらにパンパンに膨れ上がっている。
「鈴々、先っぽのところお口でぱくってできるかな……?」
「う、うん……。ちんちんのここ……、ん……あむっ……」
分泌された先走りの味に僅かに眉根を寄せながら、張飛は甲斐甲斐しく亀頭の先端を咥えた。本能的に少女は尿道をちゅうちゅうと吸い上げ、男を喜ばせている。
一刀は快楽に抗うように張飛の胸を愛撫し続けるが、せり上がる奔流をこれ以上止める術はない。
「ごめん、鈴々……! そのまま、口離さないで……っ」
「ふうっ? うん、れろっ……、ちゅう……」
「くううううっ……! 出すよ……、鈴々っ!」
出す、と急に言われたところで、張飛にはその意味がわかるはずもなく。
そんな無垢な口内に向かって、少女の乳頭を捻り上げながら一刀は容赦なく精液を放出させる。張飛は言いつけをしっかりと守り、絶え間なく流し込まれる精液を喉を鳴らしながら胃に溜め込んでいった。
「む……っ、ごくっ……、ふううううううっ!」
鼻から抜ける精液独特の匂いと乳首から走る強い痺れで、張飛の思考は乱れっぱなしになっている。がくがくと肩を揺らしながら、小さな身体は精一杯快楽を受け止めていた。
「ああっ……、ぐっ、はあああああっ……」
張飛が溺れる寸前で射精が打ち止めとなると、一刀はこれまでにないほど深く息を吐いて身体をぶるりと震わせている。それだけ彼女との行為にのめり込んでいたということでもあり、目の奥がじんじんとするような感覚が一刀を襲う。
「――んっ。止まった、かな。……よく我慢できたね、鈴々。気持ち悪かったら、吐き出してもいいよ?」
「うー! うー!」
左右にぶんぶん首を振って、張飛は一刀の言葉を否定している。口を抑えながら時間をかけて残った精液を飲み込むと、張飛は解放感たっぷりに深呼吸をした。実際は相当耐えていたらしく、目の端には涙が浮かんでいる。
「無理させちゃってごめん。でも、鈴々に飲んでもらって嬉しかったかも」
しっかりと張飛のことを抱きしめると、一刀は感謝を込めて頭をあやすように撫でる。
「おっぱいのとこくりくり、ってされるのもちょっぴり気持ちよかったけど、やっぱりぎゅってしてもらうのが一番だね。ふわっ……」
抱かれながら甘える張飛は、まだ眠り足りないように欠伸をした。気の抜けたそれは、日常へと戻る合図のようでもある。
「鈴々……。まだ暗いし、このままもう一回寝よっか」
「うん」
張飛が恥ずかしそうに頷くと、一刀は彼女を抱えたまま横になった。
そのまま二人は部屋に日が差し込むようになるまで、ぐっすりと二度寝を楽しむのであった――。
宿を出て、陳留の街に繰り出した一刀たち。やはり到着した時点とは違って日中ということで活気もあり、人々は思い思いに生活をしている。
「話に聞いていたように、さすがに整然とされていますね」
郭嘉はざっと見て回りながら、街が業種によって区分けされているところに気がついていた。そういった部分からも、曹操の理論的な姿が垣間見えてくる。
「ご主人様の知識の中では、曹孟徳とはどのような人物なのですか?」
「そうだなあ。なんていうか、英雄って言葉がぴったり当てはまる人だと思うよ」
なるほど、と関羽は納得していた。治世の能臣にして、乱世の奸雄。そう評されることもある曹操は、一刀からしてみれば最早おとぎ話の中のヒーローのような存在でもある。
「稟にひとつ聞き忘れてたけどさ、もしかして孟徳さんも女性だったりする?」
「た、隊長!? まさか……」
「いやいや、全然変な意味じゃなくってさ。単純にどうなのかなって」
関羽や張飛に始まり、いまのところ一刀の周りには有名所で男性の将はいない。ここがそういう世界であるのか、たまたまそうなっているのか。一刀としてもそれなりに気になる点ではあった。
「曹孟徳殿は、確か女性のはずですよ。その祖父であられる大宦官さまは、当然殿方ではありますが」
郭嘉のいう大宦官さまというのは曹操の義理の祖父であり、宮中で権勢を振るった曹騰のことである。
宦官である曹騰は当然子孫を作ることができないので、親交のある夏侯家から養子を取って自らの家督を継がせていた。その夏侯家からやって来た曹嵩の子であるのが、曹操である。
「なるほど。それならあんまり背が高くなくても問題ないかもね」
曹操は世に小男であったとも伝わっており、一刀はそのことを言っている。尤も、関羽などの猛将たちが講談のように堂々たる体躯をしていたのかも確かめようのないことではあった。
「お兄ちゃん」
一刀たちはそんな下らない話をしていたのだが、突然張飛が目つきを鋭くし辺りを警戒するように見回している。気づけば、彼らは少し開けた広場のような場所に出ていた。不思議なほどに周囲に人はなく、誘い込まれてしまったようにも見える。
「――貴様ら、この辺では見ない顔だな。特に怪しい格好をしたそこの男。少しばかり、ツラを貸してもらおうか」
そこに現れたのは長い黒髪を持つ一人の女性。その眼光は鋭く、明らかに殺気を放っている。
女性は右手に持った大剣で一刀のことを指し示し、同行するように命じた。
「この御方は、我らのご主人様である。貴様のような誰とも知れぬ輩に、はいそうですかと渡せるものか」
一刀と女性の間に割って入りながら、関羽は青龍偃月刀の切っ先を保護していた布を取り去る。こんなところで喧嘩沙汰を起こしてしまうのは非常にまずいことなのではあるが、主君を愚弄された怒りで関羽は止まりそうにもない。
まさに一触即発。触れただけで斬れてしまいそうな空気を纏いながら、二人の武人は対峙するのであった――。