※この作品はR-18です。

北郷当代記   作:KKS

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三(風、稟)

 机を間に挟み、茶を喫している二人。何度か使用した茶葉のためか、少々味が薄く感じられていた。かといって、どちらもそのことを口にしようとはしない。

 この茶葉は、以前洛陽から来たという行商人から買い上げたものだった。わざわざ遠く涼州まで足を運んでくるとは、とその時は感心したものである。

 経済を回していこうと思えば、この狭い地域だけにこだわっていてはいけない。かといって、外部から来る人間ばかり優遇したのでは、土着している商人との軋轢が生まれてしまう。

 結局、なにごとも塩梅が大切なのである。そのことに悩んでか、まだ茶の残った湯呑を机にとんと置くと、郭嘉は眼鏡を外し指で眉間を揉んだ。

 

「お疲れですかー、稟ちゃん?」

 

「おう、それもそうだろうぜ。何日か前の晩だって、女泣かせの旦那のところに泊まってきたんだろう? まったく……、足腰がふらつくほどがっつくなんて若いねえ」

 

「こら宝譿、いくら本当のことだからって、言っていいことと悪いことの判別くらいつけられないのですか」

 

 素知らぬ顔をして頭上の宝譿に語らせる程昱は、普段どおり飄々としている。郭嘉の求め方が激しいのはよく知っていることだから、半分はカマをかけているようなものである。

 

「してないから! ……そこ、までは」

 

「あれえ、そうなんですかー? やっぱり稟ちゃん、どこか具合でもよくないのでは」

 

「風、あなたはわたしをなんだと思っているの……」

 

「えー? ほんとに言っちゃってもいいんですかー?」

 

「いや、もういいから! これ以上、わたしの頭痛の種を増やさないでください!」

 

 民政の責任者として漢陽郡の統治を気にかけるのは勿論のことだが、郭嘉の軍の参謀としての目は洛陽へ向いていた。

 董卓が、洛陽を制圧した。そこまでは、特になにも問題はなかったのである。董卓は一刀の同盟者であるし、個人的な関係が深まっていたことも知っていた。どのような形になるにせよ、世の中が落ち着きを取り戻すのであればそれもいいのだろう。郭嘉も、そう納得するようにはなっていたのだ。

 だが、それがどうにもきな臭くなってきている。初撃の優位さを保った董卓軍は、兵力で劣る袁家の勢力をいとも簡単に打ち払ってしまっていた。間諜が伝えてきた限りでは、なかでも華雄、張遼、そして呂布の働きは凄まじかったという。

 そんな武名高い将軍を抱える軍に、宦官たちが戦で敵うはずもなかった。どうにもならないと見た段珪(だんけい)らは、帝とその妹を連れて逃げようとしたが、その動きは盧植によって察知されることとなる。

 最終的には河水まで辿り着いた段珪たちだったが、あたりを囲まれどうにもならない状況となった。そこでついに生き延びることを諦め、董卓の軍に捕縛されるくらいなら、と深い水のなかに身を投げたのである。

 帝を保護したことにより、董卓の権力には箔が付くようになった。官兵を動員し、残った宦官らの捜索にあたらせた。呂布には引き続き執金吾の役職を遂行させると同時に、自らの軍から兵を五千与えた。そのことを最も喜んだのは他ならぬ陳宮ではあったが、陳宮の喜びは呂布にとっても大事なことなのである。

 それからというもの、深紅の呂旗は洛陽内を毎日のように警邏して回っている。そこに千単位の兵がついているのだから、誰も逆らうことなどできようはずもなかった。

 

「すごいことになってるみたいですねー、いまの都は。さすがの風もこう……、背中にぶるっときてしまうのですよ」

 

「ええ。宦官を殺し尽くしたかと思えば、つぎは役人の番だとか。あの穏やかだった月殿が、これほどまでに残虐な手段を取られるようになるだろうなどとは……」

 

 郭嘉の頭痛の原因は、それだけではなかった。強硬手段に出て粛清を続けているだけでなく、このところ董卓からの連絡が一切途絶えていたのである。始めは、混乱を鎮めるために奔走しているからだろう、と誰もが考えていた。

 さらにそこから一月が経過しても、結局はなんの音沙汰もなかった。間諜によって処刑の情報がもたらされた頃、劉備宛に盧植の書簡が届いたが、本当にそのくらいだったのである。

 

「月ちゃんの理想は、いまの世の中にとって高潔すぎたのかもしれませんねー。それを体現しようと思えば、汚れた水を徹底して除かなくてはなりませんから」

 

「そう、なのかもしれないか……。しかし、多少の汚れなしに生きていけないのは、魚もひとも同じことでしょう」

 

「はい。ですがそのくらいのこと、わからないような方たちではありません。それにあの風鈴さんが変わらず味方をされているというのも、引っかかる部分ではないでしょうかー?」

 

 盧植は漢の軍人であると同時に、儒家としても高名を馳せていた。いまの董卓による行いは、まともな儒学者であれば到底許せるものではないはずなのである。

 それなのになぜ、盧植はいまも政権に残り続けているのだろうか。程昱はそこに、強く疑問を抱いている。

 

「引っかかる部分、ですか……。確かに、それについてはわたしも気になってはいましたが」

 

「それだけではないのですよ。あれだけご主君さまと仲睦まじかった月ちゃんが、文ひとつ送ってこないなんて、これはもう異常事態としかいえません。それに詠ちゃんだって、なんだかんだといいつつも、ご主君さまのことを信頼されているようでしたから」

 

「つまり風は、一刀さまを遠ざけようとしている部分にこそ、月殿の真意があるのではないかと?」

 

 自らの意見を言い終えた程昱は、話し疲れたのかいつものように飴を舐めはじめた。そう考えれば、辻褄が合うような気がしてくる。

 董卓の強引としかいえない行動に、各地の諸侯は不満を洩らしているはずだった。日数が経過していく毎に、戦の機運は高まっていくはずである。

 それによって引き起こされるのは、洛陽と帝を賭けた大戦(おおいくさ)だろう。権力をほしいままにする董卓を討った者こそが、次の指導者となることは明白だった。

 

「まあ、これも推論でしかありませんけどねー。それにご主君さまに伝えようにも、いまは無理な話しですから」

 

「順調に進んでいれば、そろそろ馬騰殿のところに到着されていてもおかしくはない、か。そういえば、翠殿との関係をどう話されるかについて、風はなにか聞いていますか?」

 

「いえー。相談はされましたが、結論については風も知りません」

 

 一刀は現在、馬騰のいる隴西郡に向かっていた。

 涼州入りに際して馬家の軍勢をつけてもらったことについての礼もまだできていないし、娘の馬超のこともある。それに、董卓の動向についても情報を共有しておきたかった。

 

「なんだい嬢ちゃん。さては北郷の旦那が、この期に及んで翠の嬢ちゃんだけを正妻にするんじゃねえかって、内心びびってるんじゃないだろうねえ」

 

「ええー、まさかそんなことってー。長年連れ添ってきた女を簡単に捨てるだなんて、ご主君さまはいつからそんな鬼畜になってしまわれたのでしょうかー? 風は悲しみで、涙が止まりません。よよよー」

 

 宝譿の語ったことを真に受けた体で、程昱は袖で顔を覆っている。

 胡散臭さすぎる泣き声のする部屋に、特大のため息がひとつ響いた。騙す気すらうかがえないその演技力に、郭嘉はツッコミを入れる気力すら奪われてしまったようである。

 

「はあ……。しかし翠殿は、涼州に名高き馬騰殿の御嫡子、それを蔑ろにするわけにもいかないでしょう。ですが、一刀さまのあのご性分を考慮してみれば、自ずと答えは見えてくるのかもしれませんね」

 

「そうですねー。きっと風も、稟ちゃんと同じことを考えているんだと思います。どうでしょう、よければ同時に披露してみませんかー?」

 

 程昱はそう提案すると、指を使って三、二、一、とカウントダウンをし始めた。言うまでもなく、一刀に教わった方法である。

 互いの回答を聞き、ふたりはやはりそうか、と小さく笑い合った。

 

「くふふ、やはり稟ちゃんもそうきましたかー。これは、ご主君さまがお帰りになってからの答え合わせが楽しみになりましたねえ。正解していた場合には、どんなご褒美をいただきましょうか。ご主君さまと風の二人がかりで、ねっとりじっくり稟ちゃんを愉しませてあげるというのも、面白いかもしれません」

 

「わたしを愉しませるって、そんな、んっ……むぐっ!?」

 

「おおっ、稟ちゃんのこの様子はもしや……?」

 

 近頃では、すっかりご無沙汰となっていた反応である。急速に顔を赤らめていった郭嘉は、結んだ手をもじもじとさせながらうわ言のようになにかを呟いていた。

 

「い、いけません、一刀さま……っ。そのような場所を、何度もされるだなんてはしたないですっ。やっ、そんな……。風、待って……、あっ、うぅうあ……っ」

 

「ふむう……、これはなかなかの浸りっぷりですねえ。疲労に加えて、ご主君さまとお会いできていないことも影響しているのでしょうかー? 宝譿は、どう思います?」

 

「嬢ちゃんの言った通りじゃねえのかい。北郷の旦那と寝た夜だって、不完全燃焼に終わっちまったみたいだしなあ。稟の嬢ちゃんのためにも、早いとこ帰ってきてくれないものかねえ」

 

「はあっ、くうぅうあっ……♡ だめ、だめです一刀さま……っ。くっ……、そのように淫らなモノを見せつけないでいただきたい……っ」

 

 鼻血の堤防が決壊してしまうまで、あとどのくらいなのだろうか。郭嘉の口から洩れる桃色の吐息は、時が経つごとに熱を帯びていっている。

 

「困りましたねー。このままでは、お部屋の中が大惨事となってしまいそうなのですよお……。うーん、仕方がありません」

 

 程昱は立ち上がると、座ったまま妄想に耽る郭嘉の背後に回り込んだ。

 苦悶する親友のため、ここは自分がひと肌脱いでやろうではないか。そう決心すると、程昱は郭嘉の身体を抱きながら、わなわなと震える唇を吸ってみた。

 

「んむっ……!? んっ、ぴちゃっ、ちゅ、ちゅる、んううぅう」

 

「はあっ、んちゅううぅううう。稟ちゃん、さっさと妄想の世界から帰ってきてください」

 

 最初から舌をしっかりと絡め取り、現実にいる自分という存在と行為に及んでいることを自覚させてやった。虚ろだった郭嘉の瞳は、徐々にだが理性を取り戻しつつあるようだった。

 水音。恥ずかしがってなどいられない。口内に溜まった唾液を音を立てて吸い出していく傍ら、濡れているであろう下着に手を伸ばしていく。

 

「ちょっ、んんっ……、風……っ!? んぷっ、ああっ……。そこは、ああっ……、感じてしまうから……っ」

 

「いいんですよー、どんどん気持ちよくなってしまっても。それにしても、すごい濡れっぷりですねえ。参考までに聞きたいのですが、脳内ではご主君さまにどのような犯され方をしていたんですかー?」

 

 下着越しだというのに、指がもう愛液まみれになってしまっている。このような状況で、興奮するなというほうが無理があった。

 空いているほうの手で、自分のいやらしい部分を擦ってみる。内緒でいけないことをしているようで、甘い刺激の波が身体中に伝わっていった。

 

「そ、それは……、んんっ、あはあっ……」

 

「言ってくれないと、最後までしてあげませんよー? 稟ちゃんだって、しっかり気持ちよくなっておきたいですよねえ?」

 

 郭嘉の反応が、どうにも加虐心を煽り立ててくるのである。

 言葉で責め立てているだけだというのに、分泌される愛液の量はどんどん増してきている。充血した陰核の周りをそれらしく撫でてやると、郭嘉はたやすく首を縦に振った。

 袖の中を探ると、李典から預かっているとっておきの道具が指に触れた。これを使えば、もっと面白いことになるかもしれない。密やかに笑みをこぼしつつ、程昱は郭嘉の紅潮した横顔を見つめた。

 

「くっ……、ああっ……、ま、街の路地裏で、人の視線を感じながら……っ」

 

「いいですねえ、その調子で続けちゃってください」

 

「ううぁっ……、一刀さまに、強引に服を剥ぎ取られて、ひゃうっ……!」

 

 郭嘉を立ち上がらせ、窓際に連れて行く。無論、その間も愛撫の手は休めなかった。

 ぐっしょりと濡れてしまった下着を剥ぎ取り、淫靡な匂いを放つ下半身を露出させていく。

 

「ほ、ほんとにこんな、ああっ……っ♡」

 

「いやらしいお顔を見てもらいたいんでしょう、稟ちゃんは? だったら、そのお願いを叶えてさしあげるのがいいかと思いまして」

 

 再び袖の内部に手を入れると、程昱は棒状のものを取り出した。李典からの預かりものとは、男根のかたちを模した張形であった。

 散々一刀のそれを観察して作り上げたものだったから、形状はかなり再現できている。

 

「んっ、ふふっ……。これ……、すごいですねえ」

 

「ふ、風っ、なにをしているのですか!? んぐっ、う……おお、あはあっ……っ!? な、なんなのですかぁ……、これえ♡」

 

「んふふー。ご機嫌なようですねえ、稟ちゃん。しっかりとおまんこを動かせば、なにを挿れられているのかわかるかもしれませんよお?」

 

 郭嘉の反応は、やはり上々だった。奥深くまで特製の張形を咥え込んだ膣肉は、悦びに打ち震えているようにすら見える。数回焦らしながら動かしてやると、物足りなさそうに腰がくねった。

 

「んおっ、ああっ……、これぇ、この形ってぇ……。もしかして、うくはあっ……、一刀、さまの……!?」

 

「おおっ、さすがは稟ちゃんですねえ。こんなに早く答えにたどり着いてしまうなんて、風もびっくりなのですよ」

 

 見事な正解だけに、褒美を与えてやるべきだろう。程昱は張形の付け根をしっかりと握り、前後に大きく抽送させていく。

 真っ赤な花弁。心地よさに、さらに濡れ方が激しくなっている。気持ち本物よりか大きめに作られた張形の亀頭が、快楽に飢えた膣肉の窄まりを掻き出していった。

 

「ほおら、稟ちゃんの大好きな、ご主君さまのおちんちんですよお? ですから、しっかりと……んっ、味わってくださいねえ♡」

 

「ひゃ、あぐう……っ。んっ、お……あふうっ♡ こ、これ、ほんとに、一刀さまに突いていただいているみたいで……え」

 

「その名も、まけるな一刀くん壱号、だそうです。さすがにあの熱さまでは再現不可能だったみたいですが、寂しさを紛らわせるくらいにはちょうどよさそうですねえ。あっ、あそこに人が」

 

 郭嘉に見えるように、わざとらしく窓の外を指差してみる。すると、明らかに手応えが変化した。

 膣内では、張形を急速に締め上げてしまっているのだろう。息遣いも荒く、郭嘉は羞恥に肌を染め上げていった。

 

「あれえ、すごく感じているみたいですねえ、稟ちゃん? ちなみにいまのは冗談ですから、ご心配なくー」

 

「ふっ、うぐっ、ん……、そんなに強くなんて……っ!? わたし、ああ……、うあああっ」

 

「いいですよー、イッてしまわれても。稟ちゃんが可愛らしく達しているところ、風にもみせてください」

 

 程昱は背後から身体を密着させると、手首の動きで張形を素早く動かしていった。さらに空いている手でコリッとした陰核を責め上げていき、郭嘉の快楽を引き出そうとしている。

 吐息によって曇った窓には、ふたつの身の詰まった柔肉が押し付けられている。軋んだ音。程昱の容赦ない責めに抗えず、郭嘉はつま先立ちとなって快楽に震えている。

 

「くふふっ、いよいよ来てしまいそうなのですかあ? ほらっ、もっとおちんちんでいじめてあげますから、どうぞ気持ちよくなってください」

 

「ああっ、すごいっ……!? ごりごりって、おちんぽお腹の奥までぇ……っ。ああ、くる……来てしまう、わたし、わたし……っ」

 

「稟ちゃんのおまんこ、まさしく洪水状態になっちゃってますねえ。こんな姿を見せられては、風も……興奮してしまうのですよお」

 

 じゅぽっ、じゅぽっ、という下品な音を奏でながら、郭嘉の秘部は愛液を撒き散らしてしまっている。

 垂れ落ちて床を汚しているそれは、行為の激しさを表しているかのようでもあった。

 

「イキます、イキますからあっ……! もっと、もっと感じさせてください……っ。ああっ、一刀さま……、わたし飛んでしまいます、もう……だめえぇえええ♡」

 

「きゃっ、あうっ……! すごいのですよ、稟ちゃん……。ぬるぬるのお汁が、こんなにたくさん」

 

 身体をつんのめらせてイキよがる郭嘉。それと同時に吹き上げた潮が、程昱の衣服までもを濡らしている。

 

「だって、ああっ……、だってえ……♡ 気持ちよくなっていいっていったのは、風なんですからねえ……っ♡」

 

「言いますねえ、稟ちゃんも。それでは、もう少しコンコンしてみましょうか」

 

「うぐっ、んあああっ……。いい、それいいのお……っ。一刀さまがしてくれるみたいに、もっと飛ばしてえ……!」

 

 郭嘉は本能のままに叫びを上げ、自身にもっと快楽を与えるように懇願した。快感を得てはいるものの、やはりどこかで物足りなさを感じてしまっているのだろう。ひくついた入り口を円を描く動作で擦られると、郭嘉は心地よさそうに深く息を吐いた。

 二人きりだった室内に変化が訪れたのは、そのときだった。こういう場合、まずいと思った瞬間にはもう手遅れなことが多い。

 無遠慮に開かれていく扉。せめて郭嘉のあられもない肢体だけは隠さなくては、と程昱はとっさに動いた。

 

「……んー? なにしてるの、風?」

 

「ああー、そういう……。ぐう……」

 

 扉を開いて現れたのは、誰あろう徐晃だった。

 情事の現場で出くわしたのが顔見知りだったことに安心したのか気が抜けたのか、程昱は全身を弛緩させてすぐに寝息を立ててしまっていた。

 

「ちょ……、わたしに乗りかかったまま、寝ないでくださいっ」

 

「おおっ! 風としたことが、目まぐるしく変わる展開についていけず、現実逃避してしまいましたー。それで、香風ちゃんはここになにかご用があって?」

 

「……うん。ちょっと役所に来る用事があったんだけど、お部屋の中から飛ぶって聞こえてきたから、なんだろう……って」

 

 ああなるほど、と程昱は頷いた。将軍としての役目が忙しいためか最近は鳴りを潜めていたが、大空を飛ぶことこそが徐晃の夢なのである。

 

「……さっきの声って、稟だよね。もしかして、シャンに内緒でなにかしてたの」

 

「い、いえっ、決してそんなことなどっ」

 

「……むー、あやしい。稟、さっきから声が裏返ってる」

 

 徐晃の目が、きらりと光を放っている。気に止まったのは、後ろ手になにかを隠している程昱のことだった。

 一流の武人である徐晃に動かれては、腕力のないふたりでは静止のしようもない。簡単に防御の陣形を崩して入り込むと、徐晃は最後の抵抗を試みる程昱の腕をがっちりと掴んだ。

 

「あっ」

 

 その声は、三人同時に発したものだったのかもしれない。程昱の手には、すっかり愛液まみれとなってしまった張形が握られている。それに冷静になって観察してみれば、床に下着が一枚放置されたままになっていた。

 徐晃の脳内が活発に動き出し、状況を整理して組み合わせていく。そこから導き出される答えは、ひとつしかない。

 

「……こっちのアメって、おもしろいかたちしてるんだねー」

 

「そんなわけがあるかっ!」

 

 郭嘉渾身のツッコミが、室内に虚しく響き渡る。涼州はまだ、平和な時を過ごしていた。

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