「それにしても、この世はままならんな。気負うことの多い子ではあったが、あの月ちゃんがねえ」
馬騰の私室。やはりというか、飾り気はなかった。現在は、客人を迎えるための机と椅子が、部屋の大部分を占めている。
形式的な礼を述べたあとは、董卓のことで話題は持ちきりとなっていた。
「これからどうするつもりなんだろうな、月殿は。あたしから見たって、いまのやり方で政権を続けていくのは無理だってわかるくらいなんだ」
「ああ。いくら朝廷内部を正したいとはいえ、このままでは敵が増えていくばかりだろうな。特に、追い出された格好の袁紹たちは相当怒っているに違いない」
馬超の見立てに相槌を打ち、関羽は表情を曇らせた。袁紹や袁術が、対董卓のための兵を集めているであろうことなど、わざわざ報告を受けるまでもなく想像できることだ。
もうじき、この国にも冬が来る。一度雪が積もってしまえば、諸侯の思うように兵を出すことはできなくなってしまう。だから、春になって軍勢を自由に動かせるようになったとき、まず間違いなく戦端は開かれるのだろう。
「わかっているんだろうね、一刀」
「それは、どういう意味でしょうか」
「お前がどういった態度を取るにせよ、戦となれば月ちゃんと対面する機会が訪れるやもしれん。だから、よくよく考えておくことだ」
「はい、それはもう。……そのことについてですが、馬騰殿ご自身はどうお考えなのです?」
「わたしか? ふむ、そうだな……」
楽進に目を覚まされてからここまで、自分がどう動くべきかについてはずっと考えていることだった。
思い描いているのは、近い将来のことだけではない。しかし現在は、眼前の問題に集中するべき時でもあった。
きっと董卓は、わざと敵を作るような真似をしているのだろうな、と一刀は思うようになっていた。
腐った役人の粛清をする傍らで、憎しみを自身だけに集中させていく。最終的に悪人となった董卓が斃れれば、残った土台は勝者に受け継がれていくことになるはずである。
まさか、董卓は自分にそれを期待しているとでもいうのか。もしそうであるとすれば、面と向かって頼まれたとしても冗談じゃない、と跳ね除けるつもりだった。
「逆賊を討つは漢の臣下として当然の務めではあるが、それは中原の者に指図されてやるものではないよ。仮にもし、本当に月ちゃんを討つべき時が来れば、わたしは勝手にやらせてもらうさ。それが、涼州に根を張る軍人としての矜持ってやつだ」
「なるほど、それだけ聞くことができれば充分です」
誇りを持って、馬騰はそう宣言してみせた。そして、今はまだその時ではない。わずかに覗く笑みが、一刀にはそう言っているように見えた。
「おー! 馬騰、すっごくカッコいいのだ!」
「こら鈴々、なんだその言葉遣いは。翠の母上に対して失礼だろうが」
「ははっ。そのくらいで怒るほど、わたしは気短ではないぞ? うむ、しかし翠の婿殿はあれだな」
「うえっ……!? ちょっと母様、その呼び方は気が早いんじゃないか!?」
「気が早いもなにも、お嫁さんにしてって言ったのはお姉さまのほうだよ? ねー、叔母様」
慌てる娘を見るのが面白いのか、馬騰は声を大にして笑っている。言われた一刀のほうは、慣れない呼び方にむず痒さを感じていた。
「なあ張飛ちゃん、一刀のことは好きか」
「お兄ちゃん? うん、大好きだよっ。ほら、こーやって……、ぐりぐりーってしちゃうのだ!」
腰に飛びついてきた張飛を、一刀は足を踏ん張って抱きとめた。腕に頬ずりをする張飛の様は、なんとも幸せそうでもある。
「くくっ、その顔を見て安心したよ。いやなに、婿殿が小さな子を騙しているんじゃないか、と少し心配になっただけさ」
「……風に留守番をさせていて正解でしたね、隊長」
「うん、確かにそうかもしれない……。今頃、風は城のどこかでくしゃみでもしているんじゃないか?」
こういった話になったとき、敵か味方かわからなくなるのが程昱という人である。散々引っ掻き回して楽しんだ後、得意の居眠りで逃げようとしている姿を、一刀はすぐに思い描くことができた。
とはいえ、その飄々とした面の裏側に隠れた、自らに対する期待というのもよくわかってはいる。
自分の掲げるべき日輪となってほしい。そう言い放った程昱の熱っぽい瞳を、一刀はふと思い返していた。
「まあいい。湿っぽい用件はこのくらいにして、飯にでもしようじゃないか。おい蒲公英、鶸と蒼にも声をかけてきてやりな」
「はーい! それじゃあ、ちょっと行ってくるね」
馬岱が駆け足で出ていったあと、少しの間静寂が室内を支配していた。
僅かに鋭利さを含んだ、馬騰の視線。まるで、お前の本心はどこにある、と問い掛けられているようでもあった。それを真っ向から受け止めながら、一刀は張飛の柔らかな髪を撫でたのである。
「そういえば、さっきから翠姉さんと義兄さんの姿が見えないんだけど、蒲公英はどこに行かれたのか知ってる?」
「蒲公英だって知らないけど、いまは探さないほうがいいと思うよ? ほら、よく言うでしょ。ひとの恋路を邪魔するやつは、馬に蹴られて地獄に落ちろ、って」
「え、ええ……? なんだか微妙に違う気がするけど、姉さんたちの邪魔をするつもりなんてわたしには……」
「もしかしてお姉ちゃんたち、逢い引きの真っ最中ってこと~? やだあ、想像したら蒼、興奮してきちゃったかも~?」
夜。街の広場には、明々とした篝火が並べられていた。その中央に作られた即興の舞台では、張三姉妹が得意の曲を披露しているところである。
愛嬌たっぷりに歌い舞う三人に、士卒も町人も関係なく歓声や拍手を送っている。普段こういった催し物に乏しい地域でもあるから、若者たちがこぞって見物にきているようであった。
その喧騒をよそ目に、人気のない路地裏で抱き合っている男女が一組いた。額が擦れるほどの距離。赤らめた顔を背けようとした女の唇を、男のほうが強引に奪った。
「んっ、んむっ、ちゅぱ、ちゅう……。はあ……っ、あたし、一刀殿に謝らないといけないことがあるんだ」
「なんだよ、謝ることって。俺は、翠になにかされた覚えなんてないけど」
馬超の手を握る。絡めた指が、少し冷たかった。
こうしていることが嫌だ、という雰囲気ではない。頃合いを見てここまで手を引いてきたが、それならそうでもっと早く言っているはずだろう。
「今日さ、一刀殿が天和たちに囲まれているとき、思ってしまったんだ。女の子にチヤホヤされて喜んでる一刀殿と、あたしだけを真っ直ぐに見つめてくれた一刀殿。いったい、どっちが本当の一刀殿なんだろう、ってね」
「ああ、それであのとき元気がなかったってわけか。そのことは、俺も気になってはいたんだ」
真剣な口調で話している馬超のことを、茶化してやるわけにもいかなかった。できることといえば、安心させてやるために強く手を握ることくらいである。
「母様にどう言おうかってことで、頭が一杯だったのかもしれない。だから、余計にみんなと仲良くしてる一刀殿のことが、気になってしまったんだろうな」
「そういう意味でなら、非は俺のほうある。悩んでいる翠のこと、もっとしっかり見ていてあげるべきだったんだから」
「い、いいんだ、ほんとに! そのあと、よくわかったんだよ。ああ、この人は本気で全員を愛するつもりなんだな、って。母様にああやって断言できる一刀殿、かっこよかったよ」
本当に、自分はひとに恵まれている。誰か一人でも強く反発してしまえば、いまの関係など硝子を砕くよりも容易に崩壊してしまうはずである。
心の広い女性たちと巡り会い、支えられてきた事実に一刀は感謝せずにはいられなかった。
「女の子にデレデレしてる一刀殿も、昼間みたいにキリッとした一刀殿も、全部ほんとのあなたなんだ。みんなに優しくってもいい、だけど時々こうしてあたしと……、ちゅ、んんっ……、一刀……どのっ」
「翠にこうまで言われて、我慢できるわけないだろっ」
身体を押し付けていきながら、唇を強く吸った。
頭の中は、馬超のことで溢れかえってしまいそうになっている。愛している、という言葉を口にすることすら煩わしく思えた。
心でも、身体でも、なにもかもで繋がりたい。ぴったりと閉じられた内腿を撫でつつ、怖くないから、と耳もとで囁いた。
薄緑色をした可愛らしい下着。指で秘裂を前後に擦ると、馬超は未知なる感覚に小さく声を洩らした。戸惑いを見せる瞳。それを手のひらで覆い隠し、一刀は丹念に唇を合わせた。
そこから時間をかけて、一刀は初心な女体に少しずつ快楽を教えていった。そのおかげか未熟だった陰部はとろりとした蜜を垂らし、いまでは指を濡らしている。
どうやら馬超も、男女の交わりについては一応の知識を備えていたようである。だからこの次に、自分がなにをされてしまうかということもわかってしまっている。身体に触れているだけで、一刀にも緊張が伝わってくるようだった。
「お、お嫁さんになれば、当然こういうことだってするんだよな」
「ン……、そうだな。勿論、翠が嫌じゃなければだけど」
なにか言いたげな視線だ。愛撫の手を一旦休め、一刀は馬超の口元を注視することにした。
「練習……。うん、きっとこれは練習だ。一刀殿に、あたしの旦那さまに、愛してもらうための練習なんだ」
「おお……。旦那さまって、これはまた……」
「えっ、うあっ……、ご、ごめん!? まだそうなったわけじゃないっていうのに、あたしだけ勝手に盛り上がっちゃって……」
中途半端な反応が、馬超には否定しているように聞こえてしまったらしい。こういった部分では、もっと仲を深めていく必要があるのだろう、と一刀は思った。
「ははっ、悪かった。好きな子にそんな風に呼んでもらえて、嫌なわけがないだろ? すごく嬉しいよ、翠」
「ほ、ほんとに? だったら、いまだけそう呼ばせてもらうからな……、んっ、旦那さま……?」
「ああ、喜んで。ひとつになろう、翠。俺のこと、最後まで受け入れてもらいたいんだ。いいな」
決意を固めたような表情で、馬超はこくりと頷いた。
身体を壁の方に向けさせ、尻をこちらに突き出すように言った。さすがに恥ずかしそうではあったが、外気に晒された肌を撫でてやると、少しは落ち着いたようである。
チャックを下ろし、ぎちぎちにまで勃起した分身を取り出していく。愛撫をしながら興奮していたせいで、下着は我慢汁で汚れてしまっている。
「旦那さまの顔が見えなくて、ちょっとだけ不安かも……。やっ、すごっ……。ソレって、そんなに熱くなるものなんだな」
「それだけ、翠が可愛いんだって。はあっ……、楽にしていろよ。あんまり、苦しめるつもりはないけど……っ」
これまで何人抱いていようとも、馬超の初めてはいまこの一度っきりなのである。
強張った膣口に亀頭が入り込み、ゆっくりと押し拡げていった。締め付けの激しさを感じるが、そのうち馴染んでくるようにも思えた。
「うあっ、なんだこれ……っ!? 旦那さまのぶっといのが、にゅるってあたしの内側に入ってきて……っ。ああっ、そんなとこっ……!?」
「気持ちいいとこイジられてるほうが、翠だって楽だろ? ほら、もう半分くらい入ったよ」
「そうじゃなくって……。あたし、ほんとに力入らなく……っ。ああっ、旦那さまの指にコリコリってされて、だめなのに……ぃ」
馬超がなにをそこまで焦っているのかがわからないまま、クリトリスへの刺激を続けていった。あえぎ声に比例して、力まかせに締め付けてくるだけだった膣内にも多少の余裕が出てきている。破瓜の血が見た目には痛々しかったが、本人はそれほど辛そうにはしていない。
「もっと、力を抜いたっていいんだぞ。翠の身体は、俺が支えておいてあげるから」
「ち、違うんだって。これ以上そこイジられたら、あたし……きっと出ちゃうからあ! んうっ、いや、だめ、だめえ……っ!」
馬超の声色には、快楽とは別のものが確かに混じっていた。それが心配になってくる一方で、その正体を突き止めたくもなってくる。
腰を進める。ゾリっとした膣壁が、亀頭の表面を甘く痺れさせていた。
「あ、ああっ……っ。でちゃう……、だしちゃうんだ。旦那さまの目の前なのに、あたし……もう駄目だ……っ。んっ、くうっ、うああぁああ……っ!?」
男根が最奥部に到達したのと同時に、馬超の口から感極まったような声が放たれた。
クリトリスを愛撫していた手が、一際温かくなっていく。なんだと思って見てみれば、馬超の陰部からは黄金色をした液体が止めどなく流れ出てしまっている。
「いやっ、見ないでくれ……、旦那さま……っ。あたし、恥ずかしくて死んじゃいそうなんだ……っ」
「なんだ、そういうことだったのか。翠には恥ずかしいことかもしれないけど、俺はこのくらいなんてことないさ。だって、お漏らししてしまうくらい、気持ちよくなってくれたってことだろう?」
ここに来るまでに身体が冷えていたせいか、なかなか粗相を終えられないようである。しとどに濡れた足もとの土が、やけに生々しかった。それに少々ツンとした匂いが、不思議と興奮を誘うのである。
「うう、ああっ……。ほんと、ほんとに嫌わない……? あたし、旦那さまに呆れられてしまうんじゃないかって……っ」
「まさか。翠の色んな部分が見られて、俺は逆に嬉しいんだから」
さすがに、そろそろ打ち止めのようだった。小水でぐっしょりと濡れた指を少し舐め、腰の動きを再開させていった。突き立てる毎に、形の良い尻の肉がふるふると揺れる。
「あっ、ひゃん……っ、うあ……っ。旦那さまのソレっ、さっきよりも太くなってないか!?」
「ソレじゃなくって、おちんちんだよ、翠」
「う、うんっ……♡ お、おちんちん、すごいんだ……っ。旦那さまに、あたしのなか……荒々しくかき混ぜられて」
馬超も、気分が乗ってきているのだろう。それとなく言い方を躾けてやると、膣内がきゅうっと愛らしく抱きしめてくる。
「いい子だな、翠は」
ご褒美だとばかりに、抽送に合わせて震えている乳肉を手で掴まえてやる。片手では余る乳房を存分に揉みほぐし、いじらしく膨らんだ乳首を指先を使って転がしていく。
「はあっ、んっ、うう……っ。旦那さまは、気持ちよくなってくれてるのか……? さっきからあたし、頭がぼーっとしてきて……え」
「ああ、めちゃくちゃ気持ちいいぞ。わかるだろ、俺がいまどうなっているのか」
「くうっ……!? ああっ、わかる……ぅ。旦那さまのぱんぱんに膨らんだおちんちんが、あたしのなかで暴れてるんだ……っ」
大きさや形がよくわかるように、わざとらしくゆっくりと腰を前後させてやった。ねっとりと絡みついてくる膣肉をじわりと剥がしつつ、先端だけを咥えさせた状態にもっていく。
そこからまた奥までじっくりと差し込んでいくと、馬超の口からはとろけたような声が洩れた。
「ひうぅん……っ!? 強くされるのもよかったけど、これもすごくいいんだ……っ。ふふっ、なんでこんなに嬉しいんだろ? 旦那さまのモノにしてもらえてるって、実感できてるせいなのかな」
「そうだったら、俺も嬉しいよ、翠。これから何度も何度も繋がって、お前を俺だけのモノに変えてやる。嫌だなんて、言わせないからな……っ」
「いいよ、旦那さま……っ! あたし、旦那さまだけのモノになるからあっ! だから、たくさんたくさん、愛してほしいんだ……っ。ひゃぅ、やあっ、ン……くあっ♡」
「翠、すい……っ! ああっ、そろそろ……出すからな。精液、たっぷりお前のなかに注ぐぞ……っ」
「うん、来てえ……! 旦那さまのものなら、あたしなんでも受け止めるからっ」
子宮口をこじ開けるように、亀頭を全力で打ち付けていった。尿管に装填された精液は、いまにも溢れ出してしまうそうである。
ぐちゅり、ぐちゅり、と泥濘んだ膣内を抉る音が淫靡に鳴り響いている。快楽に染まった馬超の嬌声が、耳朶を心地よく打った。
「くっ……、出る……っ。ううっ、翠……、ぐおぉ……っ!」
「あ……、あはっ、きてる……っ! びくびくって、おちんちんが震えてぇ!? んんっ、うう、うあっ……、ああぁああああっ♡」
絶頂と共に身体を痙攣させ、馬超はまた少しお漏らしをしてしまっている。
だが、いまはそんなことを気にしている暇はない。
奔流。一刀は尻を両手で掴むと、馬超の子宮に直接精液を流し込むイメージで射精し続けていた。
「うあ……、なんだこれ……っ!? 熱いのがどくどくっていっぱい入ってきて、あたしのお腹……ぱんぱんにされちゃいそうだ……っ」
「まだまだ出すぞ、翠……っ。お前のなかも、搾り取ってくるみたいだ……っ」
「ああっ、出してくれ……っ。旦那さまに精液出してもらうと、あたしも気持ちよくなれるんだ。だから、もっと出して……っ!」
腰を押し付ける動きに合わせて、いつの間にか馬超も尻をぐりぐりと突き出してきていた。熱く火照ったお互いの性器はドロドロになって溶け合い、沸々と快楽を生み出し続けている。
きっと、今夜は長くなるのだろうな。美しい夜空を見上げながら、一刀は甘美な痺れに身体を預けるのだった。