夜更け。一刀がひとり陣屋で過ごしていると、訪ねてくる者がいた。昼間行動を共にしていた、張飛である。相談事でないのは、顔を見ればわかった。両手を身体の前で握り、いくらかソワソワとしている。床几に座ったまま手招きすると、張飛は嬉しそうに飛び込んできた。
日光をたっぷりと吸ったせいか、髪からは干し草のような香りがしている。相変わらず指通りがよく、触っているだけでも幸せな気分に浸れてしまうくらいだ。張飛を左膝の上に乗せ、額を手の甲で撫でた。くすぐったそうに、口が僅かに動いている。
「どうした。眠れないのか、鈴々」
「んにゃあ……。だって、ドキドキおさまらないんだもん……。きっと、全然暴れてないせいなのだ」
「だったら、俺はどうすればいい?」
眉根を寄せて唸る張飛。本当に、力が余ってどうにもならないのかもしれない。可愛らしい困りごとだ。こんな表情を見せられては、誰だって甘やかしたくもなる。
小さな身体を抱きとめて、一刀はゆっくりと頭を撫で始めた。穏やかな吐息が、肩にあたっている。こういった時にどうしてほしいのかくらい、理解はしていた。それでも、どうせならば本人の口から聞いてみたい。
張飛の吐く息には、穏やかさとは別のものが混じっている。
「んん……、ふわあ……。あたまナデナデされるのも気持ちいいけど、お兄ちゃあん……」
「頭だけだと、満足できないのか。それなら、この辺りはどうかな」
「やっ……、くすぐったいのぉ。お手々気持ちいいけど、もっと……」
ヘソの窪み。敏感なそこを、傷つけないよう指で優しくほぐしていく。艶めかしさの増した声が、張飛の口から洩れている。
「ン……、こっちは違ったか。ごめんな、鈴々」
「いいの……、いいからあ……。鈴々の気持ちよくなれるところ、お兄ちゃんにたくさんさわってもらいたいの」
声色が、明確に変わっている。まるで、懇願しているかのようだった。よく見れば、じれったさからか目の端に薄っすらと涙が溜まっていた。
これ以上を求めるのは、酷というものだろう。なにも、張飛を壊したいわけではないのだ。簡素な寝台。その上に小さな身体を仰向けに寝かせ、両足をあられもなく開かせていく。
ぴったりと肌に張り付いた薄手のスパッツ。子供っぽい大きさをした尻のかたちが、よくわかってしまう。ただし、浮き出ているのは、それだけではない。
「あう……、やうぅ……。お兄ちゃん、それ……いいのだぁ」
内股。ぷっくりとした丘陵が、触ってほしそうに主張していた。芸術的ともいえる幼い縦筋に、指を一本這わせていく。ふにふにとした、柔らかな感触。欲していた部分を擦られて、張飛も満足しているようだ。
この幼裂を通ったのは、ただひとり自分だけだ。そう思うと、否が応でも興奮が増してくる。指を前後させていると、汗とは違う水気を感じるようになっていた。鼻を近づけてみる。女の香りだったが、瑞々しさがやはりあった。熟していない割れ目が、健気に指を求めて動いている。多分、直接触れてほしくて仕方がないのだろう。中身を早く見たいと思ったのは、一刀も同じだった。
スパッツと一緒に、シンプルな色をした下着をも剥ぎ取ってしまう。ねっちょりと、股間と下着の間に粘糸が引かれている。思わず、指でそれを掬い取った。
「すごいな、鈴々。こんなに濡らしてしまって、よっぽど気持ちよかったんだな。ほら、下着までベトベトになってるぞ」
「にゃう……、恥ずかしいのだ……。鈴々、いけない子なの?」
「ははっ。そんな言い方、どこで覚えたんだ。だいたい、イケナイのは俺の方だろう。ちっさな鈴々にこんなことを教えた上に、もっとすごいことをしたいと思ってしまっている。イケナイ、大人だよ」
かたちの崩れていない、美しい丘だ。開いている部分は、ごくわずか。そこから、綺麗なピンクの膣肉がのぞいている。
「うぅ……。お兄ちゃんの舌、ぬるってしてるのだ。そこ、もっと舐めてぇ……」
衝動的に、むしゃぶりついてしまう。汗と尿の混在したような、刺激のある味が舌に伝わってくる。イケナイ味。まさしく、そういった類のものなのだろう。
もっと、この感覚を楽しみたい。そんな思いを持って、舌を奥に差し込んでいった。愛液のたっぷりつまった蜜壺。優しく、舌を迎え入れてくれる。
「んんっ、あうぅう……! 浅いとこ、気持ちいいの。お兄ちゃん、すごいよぉ……。鈴々、さっきよりドキドキ強くなってるのだ……っ」
「すごく熱くなってるな、鈴々のなか。どんどん溢れ出してきて、いいぞ鈴々」
「えへへ……、そうなのだあ? んあっ……きゅう……っ。でも、こうしてもらってると、どんどんほしくなってくるの。お兄ちゃんのおっきなちんちんで、お股の奥……ぐりぐりってしてもらいたくなるの……っ」
膣襞が、切なそうに痙攣している。
これまで、張飛とは何度も繋がってきた。小さな身体が知った、強烈な快楽。きっと、脳裏に焼き付いてしまっているのだろう。覚え込ませたのは、誰あろう自分だ。
誘うような声。それが張飛の口から出たものだと思うと、余計に下半身は硬く大きく滾っていく。
袍を脱ぎ、隆起した分身を外気に晒す。視線を感じる。それも、とびきり
「にゃはっ……。ちんちん、でてきたのだ。大好きなお兄ちゃんの、大好きなおちんちん。鈴々、それでたくさん気持ちよくしてほしいの」
「驚いたな……。ちゃんとお
言葉にしてみただけでも、男根がびくっと上に跳ね上がった。本当は、狭い膣穴に早く突き入れたくて仕方がないのだ。その気持をなんとか押し留め、一刀は張飛の行動を見守った。
多分、恥じらいがあるのだろう。戸惑うような表情。それでも、張飛は健気に指示に従おうとしている。
「ん……。これで、いいの……? お兄ちゃん、恥ずかしいから早くきてぇ……」
張飛は僅かに尻を持ち上げ、濡れそぼった入り口を指で左右に開いている。言葉にし難いほどの、扇情的な光景だ。綺麗な中身。しかも、愛液がたっぷりと詰まっている。
「ごめんな、鈴々。焦らした分まで、たっぷり味わわせてあげるから」
「んにゃっ……!? んんっ、ふわっ、入ってきてるのだあ♡」
粘ついた膣肉を剥がしながら、ぐりぐりと奥目掛けて先端を進めていく。ねじ込んでいく、といったほうが正しいのかもしれない。
キツイながらも、柔軟な動きで責め立ててくる肉襞。気を抜いていると、すぐにでも搾り取られてしまいかねなかった。
「んんんんんんん~っ♡ ふ、深いところまで、ぴりぴりってするの。鈴々、きっとお腹の奥で、お兄ちゃんのちんちんとちゅーしちゃってるのだ」
「ン……、鈴々。ちゅーするのは、そっちだけでいいのか」
蕩けっぱなしの声に耳を傾けながら、音を立てて唇付近を吸っていく。我慢できなくなっているのは、張飛ではなく自分のほうかもしれなかった。
「やっ、んんっ、だめなのだあ……。鈴々、お兄ちゃんといっぱいちゅーしたいんだもん。ちゅーしながらにゃんにゃんすると、大好きって気持ちがもっと大きくなるんだもん。だから、しよ……?」
そんなのは嫌だ、というように身体をよじらせる張飛。
これはもう、魔力が宿っているといってしまってもいいだろう。赤く色づいた唇。湿り気のあるそこを、少々乱雑に吸い上げていく。
頭の中。するとじんわりと、快楽の波が波及していった。
「ん、ちゅむ、ちゅぱっ……。へへっ、気持ちいいね……お兄ちゃん」
「ああ、鈴々……。上も下も、トロトロになってしまいそうだ」
「あうっ……。いま鈴々のお腹のなかで、ちんちんビクってなったのだ」
「めちゃくちゃに動かさなくても、おまんこ気持ちいいんだよ。ほら、見てみなって」
もう無理だ、というところにまで、男根を突き入れる。小さな膣内。さすがに、全てを挿入するのは不可能である。数度の動きで入り口はめくれ、隙間なく埋めた男根をなんとかもてなそうとしている。
「うあっ、すごいのだ……っ。ちんちんのかたち、ぽこって浮き出てえ……♡」
「鈴々、すっごくスケベな顔になってるな。どうだ、奥いじめられて気持ちいいか?」
丁度、ヘソの下あたりだろうか。張飛の薄い腹の肉を押し出すようにして、男根のかたちがこんもりと浮き出てしまっている。
締め付けは、ひたすらに甘かった。幼い子宮の入り口が、異性の遺伝子を求めて疼き始めている。
「すっごく、すっごく気持ちいいのだ。お腹の中がぽかぽかしてると、胸の中まであったかくなってくるの。こんな風になるのって、絶対お兄ちゃんにしてもらってるからだよ?」
「くっ……、鈴々」
心の奥底が、カッと熱くなっていくような感覚。こうまで想われて、誰が冷静でいられようか。
優しく口付けるのは、後になってもできることだ。いまは、張飛の想いに応えたい。そのことだけが、一刀の頭の中にある。
細い腰。左右から、両手で固定する。動くと、ずるりと竿の部分が抜けていった。
「やっ、抜いちゃだめ……」
「わかってる。いくぞ、鈴々」
上から一気に、滑った穴を突き刺すように穿った。杭を打つ。その要領で、一刀は止まらずに責め続けた。
「ふにゃっ……!? あっ、あっ、んくぅ……、ふにゃあ……っ♡ イク……っ。鈴々、イッちゃうのだ……っ♡ あっ、うあううぅううううう……っ♡」
「もう、イッたのか? いいぞ、俺に遠慮なんてしなくてもいい。鈴々の好きなだけ、気持ちよくなってくれ」
「うんっ、うんっ……! ひゃあ、んあうっ……!」
軽い尻が、くいっと持ち上がっている。無意識に、挿入しやすい体勢を作ってくれているのだろうか。だとすれば、末恐ろしい才能の持ち主だともいえる。
膣内の痙攣。まだ止まらない。ばたばたと動く、可愛らしい両脚。勢い余って、顎を蹴り上げられないように気をつけなければなるまい。
「身体のぴりぴり、止まらないのだ……っ。お兄ちゃんのもさっきより太くなってて、また……うあっ!?」
打ち付ける腰の勢いを、緩めることなどできなかった。快感の波に身を任せている張飛は、ずっと
敏感になっていく箇所が、ちりちりと疼く。男根の半分から先の感覚が、おかしくなりそうだった。
奥の奥。打ち付ける。これ以上は入らないというところまでは、案外すぐに到達してしまう。そこに、狂おしいほど疼いた先端を擦りつけた。
「くうっ、鈴々……っ」
「うにゃっ、んんっ……!? お兄ちゃんのおちんちん、びっくりしちゃうくらい熱いのだあ……。もっと、ぐりぐりってしてえ……♡」
不意に、情けないくらいの声が洩れ出てしまう。張飛の幼い肢体。夢中にさせられてしまうだけの魅力を、確かに備えていた。
暗がりの中だけにはっきりとはしなかったが、眼の前の肌が赤く色づいてきているように見えていた。
しっかりと、自分のことを感じてくれている。そのことが、たまらなく嬉しかった。熱くうねった膣内。柔軟にかたちを変化させ、どんな動きにも対応してくれている。
いい加減、精を吐き出せ。張飛自身がどう思っているかはともかくとして、身体は先よりそう激しく主張していた。
「可愛いぞ、鈴々。もっともっと、めちゃくちゃにしてやりたくなるくらいだ」
「あんっ、やっ……、んんんーっ!? いいよ、お兄ちゃんになら……。鈴々、へーきだから……。だから、たくさん、かわいがってもらいたいの……っ」
「そんな風に、鈴々……っ」
細い腰を両手で抑え込み、容赦のない抽送を繰り返していく。時々、張飛の軽い身体が突き上げによって浮いた。漂っているのは、淫靡な匂い。先走りと愛液の混じったものが、じゅぷじゅぷと泡立っている。
黒い欲望。身体の内側から、膨らんでいくようだった。もはや愛しているというよりは、犯していると表現するべきなのかもしれない。狭い膣内が、太い男根によって内から拡張されていっている。
自分に愛されたいがゆえに、張飛は無茶を受け入れてくれているのだろうか。表情を、上から覗き込む。すると、そうではないことが、すぐにわかった。
「んあうっ、いいっ……、これっ、いいのだ……っ。お兄ちゃんに思いっきり突いてもらうの、鈴々大好きなの……っ。もっと、すっごく強くしてもいいから……っ♡」
「ああ、してやる。頭が真っ白になるくらい、鈴々のこと感じさせてやるからな」
「えへへっ、嬉しいのだ。あっ、ぐうっ……!? そこっ、気持ちいい……っ。お兄ちゃんのカタイの、とっても膨らんで大きくなってるのだ……♡ あっ、はあっ……。白いの、もうすぐでるの? 熱いベトベト、鈴々にいっぱいごちそうして……っ」
「まだまだ……っ。鈴々の最高に気持ちいいおまんこ、もっと味わってからじゃないと……っ」
余裕の欠如を見抜いてくるあたりは、さすがだと思った。
朦朧としているようでも、感覚のどこかに鋭さが残っている。そうでなくては、一流の武人とはいえないのだろう。
「うにゃあ……。鈴々のなか、気持ちいいんだね……。お兄ちゃんのお顔も、ちょっとトロってしてきてるのかも……?」
「当たり前だろ……っ。大好きな鈴々とこうして交わって、気持ちよくないはずがない」
「んぐっ、ひゃうぅうっ……! わかるよ、お兄ちゃん。おちんちんが、だいすきーっていってきてるみたいなのだ……っ。お股の奥ゴンゴンってされてても、ちょっぴり優しくって、お兄ちゃん……鈴々ね……っ」
組み敷いた張飛の身体が、一瞬ぶるりと大きく震えた。行為を始めてから、何度絶頂を繰り返しているのだろうか。そのなかでも、今度の波は格別なように感じられた。
執拗なくらいに、絡みついてくる膣肉。その蠢動が、明らかに激しいものへと変わってきている。掻き分ける度に、ゾクゾクとした刺激が脳幹にまで響いた。
どうせならば、強烈な快楽を共に味わいたい。張飛は、きっとそう願っているに違いなかった。可愛らしいヘソの窄みを、親指で愛撫してやる。僅かに歪んだ表情に、欲望がさらに
「イキたいんだな、鈴々。だったら俺のことも……、もっと気持ちよくしてくれ。そうしたら、一緒にイケると思うから……っ」
「うんっ、するのだ……っ。はっ、はっ……、んんっ……。ねっ、お股ぎゅーってされると気持ちいいの?」
「ああっ、たまらないな。ただでさえキツイおまんこだっていうのに、そうやって本気で締め付けられたら……っ」
「にゃっ、あうっ、ひゃう……っ♡ パンパンって、響いてくるのだ……っ♡」
歯を食いしばる。そうでもしなければ、すぐにでも精液を暴発してしまいそうだった。
ちゅく、ちゅく、と粘っこい音が連続して鳴っている。幼い子宮口との接吻は、あまりにも甘美だった。
最大限の快楽を味わうために、張飛はイクことを我慢している。堪えきれなくなるところまで到達するには、多分あと少しかかるのだろう。それまで、こちらが先に音を上げるわけにはいかない。
なんとか、気を紛らわせなくては。そう思って、一刀は張飛の唇に吸い付いた。愛情の交歓などではなく、快楽を貪るためだけの口づけ。だから、初めから舌を存分に絡め合い、口内を満たす唾液をはしたなく
「じゅぷっ、んじゅるうっ……。はあっ、きもひぃ……♡ れおっ……、んんっ……、ちゅぱっ」
法悦に蕩けた声色が、あまりにも愛おしい。
小さな舌。巻き付いてくる。たっぷりと唾液に塗れており、舌にぬるりとした感触が強く伝わってくる。またしても、快楽を引き出されてしまう。夢中で男根を扱っているときも、おそらくこういう動かし方をしているのだろう。
本当に健気で、一刀は胸が詰まりそうになった。
「んうぅっ……! れろ、んちゅるっ、んぐぐっ……♡」
膣壁が、ざわざわと戦慄く。それも、一際強い反応を示している。この分なら、あと数回抽送を行っただけで、張飛は限界に達するはずだ。
次第に丸まっていく身体を、しっかりと掴まえてやる。上下で繋がったこの感覚を、手放したくはなかった。
「ン……。イキそうなのか、鈴々」
「うん、うん……っ♡ お兄ちゃん、イッてもいい? 鈴々、イッちゃってもいいのだ……?」
「いいぞ、いつだって。俺もそろそろ、我慢しきれなくなりそうだ……っ!」
媚肉。痙攣を、し始めている。
一旦抜けるギリギリのところまで男根を引き、全身の力を込めて突き上げる。刺激に堪えきれなくなった先端から、精液が濁流となって溢れ出た。
「ひゃふ、んあうっ……!? おにいひゃ、おにいひゃ……んんんんん……っ♡♡♡」
「うぐっ……。受け取れ、鈴々……っ」
我慢に我慢を重ねていただけに、射精による快楽はとてつもなく大きかった。無意識に、身体が子宮口をこじ開けようとしているのかもしれない。ドクドクと精液を吐き出し続けるかたわら、亀頭が最奥部を力任せに擦っていた。
「グリグリ、強すぎるのだ……っ。うにゃっ……、ひゃうあぁああああっ……!?」
力任せに快楽を求めているのは、張飛も同じだ。
背中には、両脚がしっかりと絡みついてきていた。がっちりと固定されており、常人の力では動かすことすら叶わないだろう。
女としての本能が、働いているのかもしれない。一滴残らず、胎内に吸収してやる。絶頂に意識を委ねている張飛とは口を聞くことすら難しかったが、身体はなによりも雄弁だったのである。
「んっ、んんっ……♡ んんぅ、お兄……ちゃん……?」
「おかえり、鈴々」
意識が明瞭なものとなるまで、随分と長い時間がかかったような気がする。
とろんとした瞼は、少々重たげだ。それだけ気持ちよくなってくれたのだから、男冥利に尽きるともいえよう。
「お兄ちゃん……。鈴々、もう一回ちゅーしたい……」
「あははっ。そのくらいだったら、何度だってしてやる」
心地よいくらいの体温。眠気を誘われる。張飛の身体に布をかけてやりながら、交合中とは違う、情愛を込めた口づけをしていった。
「はふう……。好きぃ、お兄ちゃん……」
「俺もだよ、鈴々。もっと、ちゅーしようか?」
「んみゅ……、ふわあ……? なんだか、お兄ちゃんがふたりに見えてきたのだ……?」
「くくっ……。その様子なら、ぐっすり眠れそうだな。いいよ。もうおやすみ、鈴々」
眠気に支配されつつある張飛。淫靡な気配など、すっかりどこかにいってしまっている。
啄むようなキスでさえ、いまの状態であれば余計なことのように感じてしまうのかもしれない。頭をなで、小さな身体を抱き寄せる。後処理をしていない下半身は多少の不快感を生んでいたが、この微睡みを中断するほどの理由にはならなかった。
どのくらい、眠りに落ちていたのだろうか。陣中にいるせいか、一刀も気配だけには敏感になっていた。
目を覚まし、ひんやりとした得物の鞘に指で触れる。しかし、それだけだ。感じていたのは、よく知っている気配だった。
「申し訳ありません、殿。まだ、お休みのところでしたのに」
「いいんだ。それよりも、よく戻ってくれた。お前がここにいるということは、なにか成果があってのことなんだろう?」
「むにゅ……、お兄ちゃん……」
一刀が身体を動かすと、温もりを離したくないというように張飛が両腕ですがった。
あどけない寝顔だ。そんなところを見せられては、いかなる者であろうと表情が綻んでしまうはずである。
「ふふっ、可愛らしい寝言ですね」
「少しだけ、待ってくれないか。俺も鈴々も、見ての通りでさ」
陣屋の入り口に、洛陽に派遣していた胡車児が控えている。少し早いのかもしれないが、もう日は昇っているのだろう。
さすがに、よだれを垂らして眠る張飛を横に置いたままでは締まりがない。それに、自分の袍も昨晩から乱れたままだった。
「いえっ。どうか、拙者のことはお気になさらず。それに、張飛殿を起こすのは、いささか気の毒なようにも思えます。殿のお側で眠ることができて、とても幸せそうですから」
「寝た子は起こさないに限る、か。すまない。だったら、このまま聞かせてもらおうか」
「はい、それでは。これは別の者から報告があったやもしれませんが、郭嘉殿は昼までに到着されることになるかと」
「そうか。援軍が来れば、戦況も動く。俺たちの方も、忙しくなりそうだな」
話をしているうちに、眠気を含んだ頭も段々とはっきりしていった。同時に、胡車児がそのことだけを伝えにくるはずがない、と一刀は思うようになっている。
「郭嘉殿が連れてこられたのは、援兵だけではありません。かの盧植将軍も、同行されています」
「なんだと、盧植将軍だって? 洛陽での接触は、上手くいっていたのか」
盧植と聞いて、一刀の目つきが変わった。袁紹らが挙兵するとなっても、董卓と行動を共にしていたのである。それがこちらに来ているというのだから、驚くなというほうが無理があった。
「そちらに関しては、殿のご指示通りにこなしてきたつもりです。賈駆殿からの書簡も、盧植殿は携えておいでです。詳細については、ぜひ御当人からお聞きください」
「ン……、わかった。お前がそういうのであれば、そうしよう。援軍の接近を知って、敵軍にもなにか動きがあるかもしれない。来たばかりで悪いが、周辺を偵察してきてもらえないか」
「御意のままに。それでは、拙者はこれにて」
相変わらず、消えるときはどうやっても目で追うことはできなかった。艶のある髪から発せられた残り香だけが、ほのかに感じられるくらいなのだ。
盧植とも、長い間顔を合わせていなかった。だから、話したいことはいくらでもある。なにがあって、涼州に来ることになったのか。それに、董卓やほかの皆は、どうしているのか。
焦れったい。ひとを待っていてそう思うのは、久しぶりのことだった。