※この作品はR-18です。

かルとホらーのヒろイんに囲まレた爛レた日常   作:SHV(元MHV)

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白石監督の作品に触れ、彼の世界観(もといNEO様)にしびれて書き上げました。
これまでも菊地秀行氏のキマイラや吸血鬼ハンターDなどは読んだことがあったのですが、自身初となるオカルト二次になります。
よかったらお楽しみください。


【呪いのビデオ】①

埼玉県草加市の駅近くにあるコインパーキングに、一台の軽自動車が停まっていた。

 

ハイゼットカーゴと呼ばれる、社用車としてもよく用いられる車両だ。荷台が広く積載量もそれなりにあることから、ちょっとした荷物を詰め込むには十分なサイズを持った車両でもある。しかし一般的な白いカラーリングのそれの後部座席には、外から中身が一切覗けないようにカーテンが引かれ、外の光を遮断していた。

 

中では、一人の男が毛布にくるまり体を丸めて眠っていた。時刻は午前十時半頃。年の頃は20代後半ほどだろうか。無精髭を生やし、服装はヨレヨレの黒いワイシャツにジーンズを履いたままである。

 

不意に、男の傍らに置かれた携帯電話が鳴り出した。車中泊をしている男が持っているようには到底思えない最新機種である。

 

「……はい」

 

気だるそうに、ぼそぼそとした声で電話を受けとる男。相手は彼が知る不動産屋の男だった。

 

「あ、蔵木さん! よかった、繋がった! あ、あの、ちょっと緊急で見(・)て(・)ほしい案件があるんですけど……!!」

 

どこか申し訳なさそうに告げる相手の不動産屋は、溝呂木といった。

 

蔵木と呼ばれた男が高校生の頃からの付き合いで、以前ある事件に巻き込まれた際蔵木によって助けられたことがあってからの付き合いだった。

 

彼自身納得していないが、いわゆるそういった事件に巻き込まれやすい体質でもあり、その都度蔵木にそ(・)の(・)手(・)の話を持ちかけては解決してもらっていた。

 

蔵木は、いわゆる除霊を生業としている男だった。高校生になるまでに家族全員が不慮の事故で死に、彼自身何度も死のうとしてきた過去があった。

 

しかし自身の体質がそ(・)う(・)い(・)っ(・)た(・)存(・)在(・)に有効だと知ってからは、むしろこれを活かして生きていこうと決めていた。

 

電話の声を聞き、蔵木は内心“またか”と思いながらも、ひとつところに留まれない自身が生活していくには元手となる現金は必須であり、その糧である現金支払いの大半を担っている溝呂木からの仕事を断るわけにはいかないと、気だるげに体を起こして頭を掻く。薄暗い社内に、天パでもじゃもじゃとした彼の髪からフケが飛ぶ。

 

「……つい昨日、徹夜で案件ひとつ解決したばっかだと思うんだけどな?」

 

多分の嫌みを込めて蔵木は告げる。無精髭を掻きながら、あれは久しぶりにキツかったと傍らを眺めながら蔵木は思う。

 

蔵木が見る方向には誰もいなかったが、そこに確実にいる存在には蔵木自身大いに助けられていた。

 

「あ、いや、その、ただ時間がなくてですね……! すいません、無理を言っているのは十分わかっているんですが……!!」

 

焦った声音に、本当に余裕がないのだろうと蔵木はぼんやり判断する。彼に感じる気配から彼自身がそ(・)れ(・)に関わっているのではないと蔵木は判断したが、少なくとも彼の近親者が被害に遭っているのだろう。

 

「……どこに行けばいい?」

 

「ありがとうございます! あの、ひとまず僕の事務所に来ていただければと……!」

 

恐らく電話の向こうで、薄い頭に汗をテカらせて頭を下げているのだろうと想像して蔵木は笑う。

 

「わかった。ただ昨日の現場からそんなに離れてないんだ。一時間もあれば着くと思うから、飯でも用意して待っててくれ」

 

「わかりました、お待ちしています。それでは……」

 

電話が切れると、蔵木はバックドアを開いて外へと出る。

 

長身な男だった。概算で190センチはあるだろうか。筋肉質な上背を見せつけるように両腕を開いて伸びをすると、首をコキコキと鳴らしてハイゼットカーゴの運転席へと向かう。

 

シートベルトをしめ、助手席を確認してエンジンを始動する。彼は一路、溝呂木が事務所を構える新宿へと向かった。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

溝呂木の構える不動産事務所は、新宿の雑居ビルのひとつにあった。エレベーターではなく階段を使って三階まであがると、ガラス戸にブラインドがかけられた扉をノックする。

 

「お、お待ちしていました!」

 

「……ああ」

 

中からいそいそと扉を開けて現れたのは、少々小太りの男溝呂木だった。蔵木の予想通り薄い頭と額に汗を浮かべ、平身低頭で蔵木を出迎える。身長が低いため、蔵木と並ぶとまるで大人と子供のような差があった。

 

すりガラスの間仕切りで区切られた来賓室へと招かれると、そこには中学生程度の少女がいた。食事をしていたのか、開けられた弁当へとつけていた手は止まり、椅子から立ち上がって蔵木を見つめていた。

 

「あ……」

 

挨拶をしようと口を開いた瞬間、少女は蔵木の横に佇む小さな女の子に気がついた。薄ぼんやりとしたその姿に、彼女はそれを引き連れて平然としている蔵木を本物だと確信する。

 

「柑菜(かんな)、ご挨拶なさい」

 

ぼおっとしていた彼女を、溝呂木の声が正気に戻す。

 

「あ、ご、ごめんなさい……! 村上 柑菜(むらかみ かんな)です。えっと、よろしくお願いします……!」

 

蔵木は、少女がどこか憔悴しているように見えた。同時に、彼女を見た瞬間通常の除霊師では無理だと理解した。自分でも真正面から挑むのは難しいと判断する。それほどの淀(・)み(・)を彼女から感じていた。

 

「あ、あの、蔵木さん……?」

 

いつの間にか厳しい顔になっていたのだろう。少々怯えた様子で柑菜が蔵木の顔を覗き、溝呂木も雰囲気が仕事の時のそれとなった蔵木を見つめている。

 

「……溝呂木、ちょっといいか?」

 

「は、はい!」

 

蔵木の様子にただ事ではないと焦る溝呂木。

 

「……この娘(こ)、一体何に関わった」

 

「そ、それは……!!」

 

言い募る溝呂木。聞けば蔵木が遠慮するとでも思っていたのか、溝呂木は体を震わせる。

 

「いいよ、おじさん。私から説明する」

 

蔵木は少女の様子から覚悟を感じた。覚悟をした人間は強い。蔵木は、そこに希望を見た気がした。

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

【呪いのビデオ】。

 

それが、柑菜が関わった怪異──いわゆる霊的な現象の正体だった。

 

蔵木もその存在は知っていた。いわゆる都市伝説として最近有名になり始めたものだったが、内容は至って単純。“見れば死ぬ”というものだった。

 

柑菜からさらにその詳細を聞き、蔵木は溝呂木に用意させたメモに【呪いのビデオ】に関する情報をまとめていた。

 

ひとつ、呪いのビデオを見た人間は7日後に死ぬ。ふたつ、ダビングした呪いのビデオを第三者に見せることで死を回避することができる。

 

文字に書いてみるとその単純さ、悪辣さが理解できる。柑菜曰く、ビデオ自体は気味が悪いひどく奇妙な情景がひたすら映っていたらしい。

 

丸い何かから見える夜空と月。髪をとかす女。文字が躍り狂う新聞。這いずり回る人々。海を背景にどこかを指差す、タオルを被った男。誰かの目と、そこに映った“貞”の文字。……そして、どこかの井戸。

 

それらの情景を、詳細に柑菜は語った。

 

蔵木から見て、彼女の身の回りはひどく淀んでいた。蔵木は霊によって起きる被害、霊障を受けた人間の周りに見える黒い影──淀みの大きさによって事件の規模を判断している。彼からすれば、彼女はまるで何かの冗談のごとく大きな淀みに包まれていた。

 

「……家族は、知っているのか?」

 

「うん。たぶん、私死んじゃうと思うから」

 

あっけらかんと自らの死について話す少女。彼女は制服を着たままだった。溝呂木に確認すると、昨日から学校も休んでいるらしい。

 

「……そのビデオ、お前以外に見た人間はいるのか?」

 

「いません。ビデオも焼きました」

 

きっぱりと断言する柑菜。蔵木は無精髭を掻きながらしばし考える。

 

これまで蔵木が解決してきた案件で、法則性を持った悪霊というのがこれまでもいなかったわけではなかった。

 

決まった場所でしか干渉できないタイプ。決まった時間にしか現れないタイプがそれだ。つい昨日までやっていた案件も決まった場所でしか干渉できないタイプであり、外へ出るとそれらを連れ出してしまうことから蔵木は徹夜でやり合わざるを得なかったのだ。

 

だが今回は、つい昨日までやり合った相手と比べても洒落にならないほど気配が濃いと蔵木は判断する。最悪自分自身に呪いを被せることで彼女を助けることも考えたが、オリジナルテープがわからない以上その方法も難しいだろう。

 

「私が死ねば、呪いも終わるんでしょう? わかるんです、彼女が、とても強い恨みを持っているのが……」

 

「柑菜ちゃん!」

 

柑菜の様子に、溝呂木が悲鳴をあげる。彼女は彼にとって姪に当たるらしい。自身の巻き込まれ体質を恐れて結婚しようとしない溝呂木にとって、彼は彼女を実の娘のように思っていた。

 

今回の事件が発覚した際も、溝呂木から色々とそういった事件を聞いていた彼の兄によって蔵木を即座に呼び出してほしいと提案されたとのことだった。

 

「……死ねば終わり。本当にそう思っているのか? それがオリジナルだっていう保証はない。都市伝説になってるくらいだ。お前が死んだくらいで治まるような恨みなら、とっくに誰かが祓ってるよ」

 

蔵木はため息をついて天井を見上げる。

 

「……とりあえず、一度眠らせてくれ。残りの日数でこっちもそれなりに準備を整える。それまではひとまずここに泊まるぞ」

 

言うなり蔵木はその場で眠り始める。ひどい疲れが、彼をあっという間に眠りへと誘っていった。

 

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

 

蔵木が眠った後、柑菜と溝呂木は来賓室を出て溝呂木のデスクまでやってくる。

 

「あの人、本物だね。傍にいた女の子、悪い雰囲気もあったのにすごく大人しかった。懐いてるのかな?」

 

柑菜の疑問に、コーヒーを飲みながら溝呂木はなんとも言えない顔をする。

 

「……そうか、やっぱりお前は視(・)え(・)る(・)のか。その子はな、私が以前管理していたマンションで亡くなった子供だよ。貯水槽を点検する時にイタズラで昇って、誤って落ちたらしい。誰にも気づかれず死んだ彼女が色々と霊障を起こしているのを、なんとかしてくれたのが蔵木さんなんだ」

 

溝呂木はもう十年近く前になる出来事を思い出す。

 

不動産業を祖父から譲り受け、思った以上に抱えた物件が多いことにてんやわんやだった頃のことだった。

 

不意に、管理人から出された雨漏りの報告を受けて溝呂木は妙な胸騒ぎがしたのだ。なぜならば、雨漏りの点検は報告があった一ヶ月前にやったばかりだったのだから。

 

不審に思い、現場にやってきた溝呂木は、雨の中奇妙な少女の姿を遠目に見る。マンションから逃げ出すも、追われ、もうだめかと思われたその時──偶然にもそこへ現れたのが蔵木だったと彼は語った。

 

「まだ高校生くらいだっていうのに、ひどく冷たい目をしてたのを覚えてるよ。彼が僕を追ってきていた女の子を手で追い払うと、そのまま嫌がる私を引きずってマンションの貯水槽まで連れていったんだ。そしたら急に“この中で女の子が死んでる”なんて言うもんだから……いやあ、あのときは本当に怖かった」

 

その後警察へ通報し、貯水槽を確認したところ、腐乱し白骨死体となった女の子の遺体が発見され霊障は止んだ。雨漏りに悩まされ、女の子の霊に連れていかれそうになっていた真下の住人である親子は、蔵木によって軽く頭と肩を叩かれてからはそういった悩みもなくなったと、溝呂木は柑菜に語る。

 

「彼曰く、僕はどうやら無自覚な引き寄せ体質らしいんだ。どうにも、そういった物件ばかり出会うのはそれが理由らしくてね。他にも似たような案件があるんじゃないかって彼に調査してもらったら、出るわ出るわ。で、以後は相応の謝礼と引き換えに、色んなお祓いの案件を依頼する仲介人みたいなこともしてるってわけさ」

 

「それで、パパがあんなに早く対応してくれたんだ」

 

柑菜はビデオの件を話してすぐに家でポルターガイストが起きたことを溝呂木に語る。

 

弟である彼から霊障に関して聞いていた彼は、娘の相談を受けて即座に彼へ娘を託したのだった。

 

「兄さんがあんなに慌ててるのは初めて見たよ。柑菜と同じで兄さんも多少霊感はあるらしいからね。気づいたんじゃないかな、“まずいことになってる”って」

 

そう言って溝呂木は、柑菜を真正面から見つめる。

 

「蔵木さんは、ちょっとそっちの業界でも常識はずれの存在らしい。まあ僕も、彼がお経を唱えたりしてるのは見たことないから、何かしら特別だっていうのは知ってるけど。それでも、彼なら今回の件もなんとかしてくれる。きっと、大丈夫だよ」

 

力強く宣言する溝呂木。そんな彼の言葉に続くように、突如として棚からファイルがいくつも転がり落ちる。

 

「……! だ、大丈夫だ。まだ日数はある。僕も、できる限りのことはするから!」

 

静かな決意と共に、頭の薄い小太りの男は、その目に覚悟を宿していた。

 

 

 




ということで1話目でした。
ちなみにヒロインポジションの柑菜ちゃんはビデオ版呪怨で下顎☆クラッシュされてた女の子をモデルにしております。名前もまんま。
溝呂木、蔵木はオリキャラになります。
今回はリングメインの話になりますが、オリジナル要素が強いので原作展開をある程度お望みですと違和感ありありかもです。では、また次回にでも。
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