かルとホらーのヒろイんに囲まレた爛レた日常 作:SHV(元MHV)
辿り着いた時、村の気配がひどく弱々しいものとなっているのに貞子は気付いた。
「これ、呪いですかね……?」
「ええ、かなり強力ね。……蔵木くん、依頼にはこの村の人間を助けることも含まれているのかしら」
貞子に答える形で薄い唇を開いた富江は、怜悧な表情を浮かべて暗に“見捨てるかどうか”を蔵木に訪ねる。ちなみに柑菜はその身に美津子を憑依させることで無理矢理同行していた。溝呂木のみ大量のマトリョーシカと一緒に旅館の一室で待機である。
「……いや、あわよくばって程度で直接的に契約に含まれたわけじゃない。それにしても、光明の結界が呪いの伝播を防いでくれたおかげで被害は広がっちゃいないが……反動で村は壊滅状態か。死んでないだけってのも辛えわな」
蔵木は足元の草を握り、それにまで染み込んだ深い恨みと瘴気による淀みを見て取る。
「この発生源である姦姦蛇螺をどうにかしなきゃ、どちらにしても呪いをどうにかするのは無理ね」
「……ああ。だがまあ助けることでボーナスを期待することはできる。やれるか? 富江」
どこか挑戦的に、そう言ってのける蔵木。
「言ってくれるわね、まったく。仕方がないから、久しぶりに見せてあげるわよ!」
富江はスーツケースを開くと、そこから幾枚もの呪符を取りだし何事か唱えてそれらを宙に浮かす。
「あ、富江さんも念力使えるんですね!」
「……まあ本質的には同じものだわな」
無邪気に喜ぶ貞子と、それを追認する蔵木。
「追召遺逐! 天地陰陽の理のもとに命ず!」
富江の組んだ印に従い、呪符が村の四方八方に散っていく。
「十五雷正法!
富江の血を込めた呪符がその威力を数十倍に高め、14枚の呪符が村を囲むようにして新たな結界を作り出す。
十五雷正法。富江の切り札であり、彼女の血という生命そのものを増幅器にすることでその威力を数十倍に高めた必殺の呪法である。
悠久の時を過ごしてきた富江にとって、呪法などというモノはついでに身に付けたものに過ぎない。しかし蔵木に付き合わされて海外を巡る内に、それらを思い出さずには到底切り抜けられない事態に幾度も合う嵌めに陥った富江は、己の膨大な知識を利用して本来仙法である十五雷正法を己の呪法として確立せしめたのだ。
今使ったものは特定の範囲内に強力な結界を貼るもので、かつて蔵木が“門”を暴走させた時にはこれを多重展開して防いだこともあった。
「ぽ」
「“
「そうは言っても、これ気休めにしかならないわよ。とりあえず今すぐ死ぬことはないだろうけど、少なくとも夜が開けるまでには姦姦蛇螺をどうにかしないと」
富江は余った呪符を再びスーツケースへ戻していく。スーツケースの中には幾本かのロープらしきものや、投げナイフらしきモノも入っていた。
──ズズウン……!!──
「……あら? どうやら今のが彼女を刺激したみたいよ」
山から響いた地鳴りのごとき音に、伽椰子がトシオを通して得た視界に意識を向ける。
すでに残るトシオは最初数百体いたものが三体を残すのみとなっていた。
伽椰子は蔵木の手助けにならんと自らトシオを操り攻撃を仕掛けていた。しかし鎧袖一触と言わんばかりに、黒猫の形をしたかつての呪詛の塊でもあるトシオは、尽く屠られ消滅を余儀なくされている。
伽椰子は最後のトシオを逃がす振りをして姦姦蛇螺に敢えて追わせ始める。
「蔵木さん、ひとまずこちらへ来るように誘導したわ。たぶん途中でトシオも殺られちゃうだろうけど、結界からは引きずり出せるはずよ」
「……了解した。んじゃ、コイツも試しに使ってみるとするかね」
蔵木はそう言って、自身の両拳に
それらは一見すれば縄のように見えた。鈍く輝く黒い縄をまとめた、さながら古代ローマの拳闘士が愛用したとされるセスタスを思わせる呪具。
これこそは、蔵木を想い自らの力で何らかのサポートアイテムが作れないかと試行錯誤した貞子が、富江の助けを借り、伽椰子に余計なことをされ、美津子に何か仕込まれ、とどめに八尺様が力を吹き込んだ為に完成した超弩級の呪具である。
その禍々しさは尋常ではなく、普段は富江と八尺様が作った専用の袋に収納されている。半端な霊能者が見れば、それだけで発狂しかねない超危険アイテムでもあった。
「ぽー」
「“
八尺様の翻訳と柑菜の言葉を同時に送りながら、美律子が蔵木の両手に憑いた髪の毛ナックル(仮)を見てドン引きする。
「…………あたしは警告したわよ。無闇に混ぜるなって」
「あ、あれで弄られたら……! 考えただけでゾクゾクしちゃう……♡」
富江が呆れ、伽椰子はいつも通りである。蔵木は髪の毛ナックル(仮)から流れ込む呪力を受け取りつつも、女達から嫌われたらこの呪力の害意が自分に向くのかと考え少々身震いする。
「……むん!」
とはいえいつの間にかしっかり髪の毛が拳に食い込んだ今、蔵木は外すこともできない。
どうせこれからとんでもない相手と戦うのだからと、蔵木は自身がこれまで抑えてきた力を解放する。
黒い呪具と、蔵木の影から漏れる白い影が重なり、尋常ではない力が周囲へと流れていく。
「……八尺とヤりまくってから、“門”から力が俺に流れ込んでくるようになってな。加減を考えないでやると、こんなことができるようになっちまったッッ!!」
振りかぶった蔵木が、音のした山へ向かって拳を振るう。──瞬間、白と黒の混ざり合った影が山へと向かって駆け抜けた。
派手な音はしなかった。見た目にも初めは違和感がなかった。しかしこの中で地味に一番視力がいい貞子が、山に起きた変化を見て愕然とする。
「や、山が枯れちゃってます……!!」
「しかもご丁寧に拳型。あたし知ーらない」
山の中腹。ちょうど金網によるフェンスのある辺りの部分が、目に見えて真っ茶色に変色していた。そこがどうなっているかの詳細は見えていなかったが、それを見た一同は直撃した部分にいた生き物は全滅しているだろうことを確信する。遠目に見てもわかるほどの範囲なので、恐らく被害直径は数十メートルは下らないと思われた。
どうやら髪の毛ナックル(仮)は蔵木の力が加わった遠距離攻撃を行うと、ちょっとした大量破壊兵器と化すらしい。精々木を幾つかへし折る程度の威力を想定していた蔵木は、そのことを自覚してゆっくりと髪の毛ナックル(仮)を外して袋にしまい封印する。
「……よし、これは見なかったことにしよう」
「ええっ!? 頑張って作ったのに!」
「……もっとヤバいのを相手にした時にでも使わせてもらう」
蔵木は苦笑しながら袋を貞子に預け車に乗り込むと、一同へ車に乗るよう促しそのまま走り出す。
「……今ので向こうもビビってるだろうからな。ひとまず、ぶん殴りに行くぞ」
蔵木は今しがたやったことを誤魔化すように、急いで車を走らせるのであった。
◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇
「オノレ……! コノ私ヲ呪殺シヨウダナドト……!!」
大蛇の下半身に六本の腕。かつて自身を陥れた連中を思い出させる行為に、姦姦蛇螺の怒りは沸点を迎えていた。
蔵木達は知るよしもないが、呪殺パンチ(仮)が直撃したのは姦姦蛇螺の目の前だった。もし直撃したとなれば、いかな彼女とてマトモに動けたかはわからないほどの威力。その事実に、彼女の怒りは益々込み上げる。
彼女は過去を思い出していた。かつて謀略の果てに腕を切り落とされ、大蛇の贄とされたことを。
本来であればそのまま死ぬだけであった彼女。
しかし巫女であった彼女は、自らの命を対価にある呪いを発動した。大蛇を殺し、その肉身を乗っ取る為の呪いを。
神として祀られていた大蛇も、腹の中からの呪いには抗えずあっさりと絶命。
巫女は大蛇の持つ力を呪いへと変えて、自身を追い詰め死へと追いやった者達を殺し尽くした。失った腕を一族の女達からもぎ取り自身のものへと変え、敢えて四人の生き残りを作って改めて自らを祀らせるよう言いつけた。
そう、彼女に施されたのは封印だけではない。神としての自身を確立させ、より力を得るためのものでもある。こうして彼女は大々的に祀られることで年々力を増し、今となってはその存在が都市伝説となるほどの力を秘めていた。
人に認識されるということは、神を含めた化外の存在にとって自らの力=存在が増すということでもある。
こうして多くの人間に認識され、祀られてきた姦姦蛇螺は、もはや単なる山の神の領域では収まらなくなっていた。
顔を上げた彼女は、森を枯死させた呪いの領域を避け、自身に呪術を放ってあまつさえ自らの腕を用いた分身体を潰した男──蔵木へと向かって高速で這いずり始める。
「殺ス……! 殺ス……!! 殺ス……!!!」
ただそれだけを呟きながら、姦姦蛇螺は蔵木のいる場所へと向かう。
やがて木々が途切れると、そこには両手にいつもの作業用手袋を着けた蔵木が待ち構えていた。
「……かかってきな、姦姦蛇螺」
くいくいと、右掌を上に向け指を曲げて姦姦蛇螺を挑発する蔵木。
「シャアァァァッッ!!」
顎を外したのか、口を大きく開いて蔵木へと走り寄る姦姦蛇螺。蔵木は予想以上に速い動きに自身の位置を微調整しつつ、突如跳躍して真上から強襲してきた姦姦蛇螺へとカウンターのアッパーを食らわせる。
拳によって弾かれ、何本か木々をへし折り倒れる姦姦蛇螺。蔵木は容赦なく追撃を加えようとして、横合いから向かってきた巨大な尻尾に弾かれ大きく飛ばされていってしまう。
「蔵木さんッッ!!」
貞子の悲痛な叫びが響く。その瞬間には、姦姦蛇螺の周囲を水が渦巻き彼女の体を拘束していた。
「
怒りをきっかけとして、美津子の能力が強化されていた。柑菜と憑依することで濁り水だけではなく真水をも操れるようになっていた美津子は、ふたりで協力して姦姦蛇螺の全身を持ち上げ地面へと叩きつける。
「
「まだよっ!」
喜ぶ美津子と柑菜に伽椰子から警戒の声が飛ぶ。
「ギシャアアアアア!!!」
叫ぶ姦姦蛇螺はまるでダメージがないのか、滴る水を弾かせ美津子が憑依した柑菜へと突進していく。
だが、横合いから伸びた髪の毛が姦姦蛇螺の全身に巻き付き動きを止める。
「……おまえ、なにをした?」
貞子の目が、姦姦蛇螺を睨む。
「ガッ!?」
致死の呪いが姦姦蛇螺を襲い、物理的な衝撃さえ伴って彼女を仰け反らせる。
しかしそれでも決定打には及ばず、怒りに燃える姦姦蛇螺は貞子に向かって自身の腕を二本大蛇へと変化させて向かわせる。
貞子はどうにかその内の一体を“死の呪い”で仕留めるが、もう一体までは間に合わない。
──ズギャッ!!──
そんな貞子の上空から、復活した蔵木が大蛇の脳天を殴り潰して現れた。
「……待たせたな」
蔵木は姦姦蛇螺による一撃を受けて数百メートルは飛ばされていた。
常人なら即死。鍛えた人間でも致命傷間違いなしの状況で、蔵木は自身の足で立ち上がり元の場所へと戻ろうとしていた。
そんな蔵木の元へと現れたのは八尺様である。彼女は触手で蔵木に触れて彼の傷を治すと、彼に頼まれてその身を貞子の頭上へと放り投げたのだった。
「……ふむ」
「シュゥゥゥッッ!」
舌を鳴らし蔵木を警戒する姦姦蛇螺。蔵木は真剣な面持ちで──姦姦蛇螺のむき出しの肉体を眺めていた。
すでに蔵木は眼帯を外し、隙あらば“死の呪い”を姦姦蛇螺に送っている。無論効かないためあくまで牽制にしかならないのは蔵木も理解していた。無駄と知りつつ彼がそんなことをする目的は、たわわに揺れる彼女の爆乳と無毛の陰部を見つめることだった。
「殺シテヤル……! バラバラニシテ、残サズ食ラッテクレル……!」
長大な下半身を揺らし、蔵木へ怒りをぶつける姦姦蛇螺。しかし富江は彼女の言葉に違和感を覚える。
「……あら、変ね? あなた人間を殺しても、食べるようには見えないのに」
艶然と微笑む富江。嗜虐的な眼差しを姦姦蛇螺に向ける彼女は、密かに呪符を足下へと展開していく。
「黙レェッッ!!」
その言葉に何かを刺激されたのか、姦姦蛇螺が富江へと向かって這いずり始める。
「……
富江の右手が中指と薬指のみを畳んだ印を組み、くいとその手首を引き絞る。
途端、地面から吹き上がる爆炎が姦姦蛇螺を飲み込み吹き飛ばす。
「……タフねえ」
十五雷正法の中でも上から数えた方が早い威力のモノを受けて、即座に起き上がるタフネスに半分呆れつつ称賛の言葉を送る富江。
だが不思議なことに、彼女の瞳には憐れみが込められていた。
「あなたの恨みは真っ当よ。だけど、同時にそのまま
「黙レッ……!!」
僅かに動揺したのか、一瞬その身を揺るがす姦姦蛇螺。
自身の全身が放つ呪いが効かない以上、目の前にいる連中はその身で撃滅せねばならない。
さらなる力を込めて対峙する連中を引き裂かんと体をたわませる姦姦蛇螺。
しかしその隙をついて、彼女の全身を無数の触手と髪の毛が縛り上げた。
「ガッッッ!?」
姦姦蛇螺の巨体に痺れが走る。
髪の毛はその長さをどんどん増し、触手から送り込まれた毒が彼女の体を動けなくさせていく。
「ギィィィィッッ!! グ、グブブッッ!!」
渾身の力を込めて抵抗する姦姦蛇螺。
だが彼女の巨体へと近づく姿がある。蔵木であった。
「……悪いがその力、奪わせてもらうぜ」
動きを奪われた姦姦蛇螺に跨がった蔵木は、彼女の目の前で“門”を開くのであった。
え? 髪の毛ナックルがパクリ? ところがぎっちょん、呪いの桁が違いまっせ(´・ω・`)(笑)
ちなみにきちんと織り込まれてるので見映えは案外よかったりします。なお構成要素は貞子(髪の毛、陰毛、血)、カヤコ(陰毛、唾液、黒い血)、富江(髪の毛、陰毛)、美律子(髪の毛だが霊体であるため実在はしていない)、八尺様(髪らしきナニカ)でございます。