※この作品はR-18です。

かルとホらーのヒろイんに囲まレた爛レた日常   作:SHV(元MHV)

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とりあえず二つ目でござい(´・ω・`)


【呪いのビデオ】②

柑菜がビデオを視てから、3日が経過していた。

 

その間蔵木は“準備をする”とだけ告げて何処かへ姿を消していた。

 

こういったことが初めてではない溝呂木は彼を信じ、その間柑菜が見たビデオについて色々と調べることにしていた。幸い仕事は時間の都合がつくものばかりなので、問題はない。

 

それに加えて一応蔵木は“お守り”を置いていってくれていた。それはいつも蔵木の横にいるという少女の霊。時々洗面所の水道や風呂場のシャワーが出しっぱなしになっているのが水道代的に気にはなったが、柑菜が時々少女と話して落ち着いているようだったので、不安はあれど3日もすれば慣れてしまった。

 

【呪いのビデオ】に関してはすぐに情報が入手できた。基本的な情報は柑菜が告げたことと同じだったが、それの起点となる存在として“貞子”という女の名前が上がった。

 

貞子。本名は山村 貞子(やまむら さだこ)。1947年生まれ。

 

彼女の人生は、数奇でありまた劇的だった。

 

超能力者と呼ばれた母親“山村 志津子”を持ち、その母親は超能力の公開実験まで行っていた。その際の映像は入手できなかったが、どうやらその時に母親は超能力を疑われ、後に三原山の火口に身を投げ自殺したとのことだった。

 

貞子自身も幼少期より不思議な力を周囲に見せており、彼女自身母親の死後も三原山の噴火予知や、念写実験に関わっていたとのことだった。

 

1968年。やがて彼女が18歳のとき、彼女は劇団「飛翔」に入団する。母親譲りの美貌の持ち主であり、入団当時から注目の的だったらしい。

 

しかし、彼女の入団直後から団員全員が井戸の夢に悩まされるなどの怪現象が起きはじめる。さらには練習中、主演女優の葉月愛子が怪死したことで彼女へ向けられる視線は変わっていった。

 

当時恋仲だったと思われる、同劇団の音響効果を担当する遠山博によって庇われてはいたが、彼女自身への劇団員の視線はあまりいいものではなかったようだ。しかもその後、演出家の重森が強行する形で彼女を主演とした舞台「仮面」の上演が決定している。劇団員との軋轢はこのときピークに達していたのだろうと溝呂木は判断した。

 

そして悲劇は起きた。件の彼女の母親が参加した公開実験において、貞子によって婚約者を亡くしたと考える新聞記者の女性宮地彰子が、舞台上演中にかつての公開実験の映像を暴露。それによって貞子が宮地の婚約者らしき男性を超能力で死に至らしめていると思わしき映像が流されてしまう。

 

しかも間が悪いことに、演出家の重森の死体が出てきたことで観客はパニックに陥ってしまう。

 

その後の情報ははっきりしていないが、その後劇団員は貞子の父親であるとされる伊熊平八郎の元へ向かい、全員が変死している。不確かな情報では、劇場でパニックが起きた時点で山村貞子は殺されていたとも、も(・)う(・)ひ(・)と(・)り(・)い(・)た(・)との情報もあったが、溝呂木にはその真偽を判断することはできなかった。

 

その後どういった経緯かは不明だが、貞子の遺体は南箱根の井戸に捨てられていたらしいことが判明しており、1990年に彼女の遺体が警察によって回収されている。

 

どうやらその時起きた事件で【呪いのビデオ】が生まれたらしく、以後はダビングを繰り返すことで全国に都市伝説の形で広がっていったとのことだった。

 

それら調査したことを蔵木へ告げた溝呂木だったが、蔵木は少し考える様子で“わかった”とだけ答えた。

 

そして6日目。

 

4日目の時点で蔵木から連絡があり、“なるべく古い空き家を用意しろ”と告げられた溝呂木。

 

以前にも似たような依頼をされた経験から備えをしてきた彼は即座に空き家を用意。蔵木に連絡し、空き家の場所を教えて後日そこで合流することにした。まだ蔵木の準備が終わっていなかったのだ。

 

新宿から一時間半。神奈川県の郊外にある人気のない場所に、その空き家はあった。平屋であり、最低限家としての体裁は保っているが、修繕しなければとてもではないが人が住める状態ではない。溝呂木がこういった時に使えるだろうと確保していた物件だった。

 

すでに蔵木は先に着いており、作業用の手袋をつけて何やら石像のようなモノを運び込んでいた。

 

「……待たせたな。どうにか用意ができたぞ」

 

いつも通りぼそぼそと呟くようなしゃべり方で、蔵木が先に答えた。

 

「い、いえ、とんでもないです。それは、一体なんですか?」

 

溝呂木は柑菜と共に怪異と対峙するつもりだった。蔵木を信頼していないわけではない。だが、彼女を残して自分が帰る気にはとてもなれなかったのだ。

 

上半身を普段の黒いワイシャツから黒のタンクトップへと変えていた蔵木だったが、溝呂木が到着する前からどうやら石像を運び込んでいる様子だった。見た目にはでこぼこした岩にしか見えないが、溝呂木にはそれにどこか見覚えがある気がした。

 

「……地蔵だよ。ちょいと見てくれは悪いがな」

 

空き家の中から戻ってきた蔵木が、車に積んだ曰く地蔵だという岩をポンポンと叩く。それを見て溝呂木も手伝おうとするが、地蔵は重く持ち上げることすら叶わなかった。

 

少しして準備が終わったのか、空き家へと案内された溝呂木と柑菜は、中で蔵木が設置した四体の地蔵の中心へと座らされる。ろくに掃除もしていなかったので一応気を使ったのか、中心にはレジャーシートが敷かれていた。

 

「……悪いが、今からそこを封印する。出ようとすると結界の意味がなくなるから、そこで動かないでくれ」

 

言いつつ蔵木はワイヤーのようなモノを取り出すと、自身の掌を傷つけワイヤーに血を擦り付けながら四方の地蔵を繋いでいく。不思議なことに、出血した血はすべてワイヤーに染み込んでいるようだった。

 

「……さて、これで準備はいいだろう。お嬢ちゃん、ビデオを見た時間覚えてるか?」

 

「たしか……夜の八時頃、だと思います」

 

「……なるほど。じゃあ残り六時間ってところか。本当にギリギリだったな」

 

時刻は現在午後一時五十二分。溝呂木と柑菜は緊張しながらも、蔵木の指示通り結界の中で時間を過ごした。なお名誉の為、彼女が二度ほど結界のなかで小用をしたことは二人の男の秘密とした。

 

待機している間、蔵木はどこかで拾ってきたのか大型のブラウン管テレビを結界の目の前へと設置していた。

 

柑菜は電源のコードが引きちぎれたそれを見て、思わず壊れていることを指摘する。しかしそれに対する蔵木の返答はあっけらかんとしたものだった。

 

「……弱いのならともかく、今回のにそんな条件は関係ねえ。というかむしろその程度の霊なら、そいつが出てくる瞬間に俺がテレビごとぶっ壊してそれで終わりだ」

 

「な、なるほど」

 

握りこんだ拳と共に、無表情に腕の筋肉を見せつける蔵木。溝呂木は苦笑しながら、相変わらず常識はずれの除霊方法だと思った。

 

彼は何度か見たことがあったが、蔵木の除霊方法は驚愕の一言だった。

 

霊とは、この世の者が干渉できない存在である。その特異性を用いて、狭間から一方的にこちらへ害をもたらすのが霊障なのだ。

 

それ故に多くの除霊を生業とする人間は経文や真言を唱え、別のモノから力を借り受けることで怪異に対処する。

 

しかし蔵木は、その前提条件を無視して霊(・)を(・)物(・)理(・)的(・)に(・)殴(・)る(・)こ(・)と(・)が(・)で(・)き(・)る(・)。おまけに弱い霊なら一撃で仕留められるし、何人もの死者を出したような強い霊でも最後まで蔵木を相手に戦えた存在がいたことはない。

 

普通なら霊を相手にするのに筋肉はまるで関係ない。だが視覚的な信頼感というのは、この状況において溝呂木と柑菜に目に見えた安心を与えてくれているのも事実だった。

 

「だ、大丈夫だからな、柑菜」

 

「……うん。おじさんと、蔵木さんを信じる」

 

震える柑菜。いよいよ、その時が近づいていた。

 

 

 

◇▫️◇▫️◇▫️◇▫️◇

 

 

 

静かに座っていた蔵木が、不意に立ち上がった。

 

まるでついさっきまで入念な準備運動を行っていたかのように、全身から湯気が立ち込める。

 

「すごい……!」

 

「こ、これがそうなのか……!」

 

まるで仁王を思わせるその様子に、柑菜は思わず息を飲む。

 

溝呂木は彼のやったそれが一種の呼吸法によってもたらされたものだと知ってはいた。それが霊能力とはまるで関係ないことも。だが、知っているのと見るのとでは驚きが違った。

 

蔵木曰く“ヤバい相手と戦うときには必須の準備”とのことだったが、ホームセンターで購入したという作業用の手袋をつけたままの拳を握りしめて、蔵木はテレビを前に柑菜と溝呂木を背後に何かを待ち構える。

 

──そして、いよいよそれがやってきた。

 

電源など入っていないはずなのに、テレビの画面が映りだす。砂嵐の状態だった画面が乱れ、やがてひとつの情景を映し出す。

 

「あの井戸だ……」

 

思わずと言った様子で柑菜はテレビに映った映像を見つめる。

 

井戸から、ゆっくりと手が伸びてきた。女の手だった。

 

溝呂木は漏らしそうなほどに怯えながらも、柑菜をしっかりと抱き締め蔵木の作ってくれた結界を信じる。

 

井戸から現れた白いワンピース姿の女は、時折ブレながらも確実にゆっくりと彼らの方へと近づいてきていた。

 

「……出やがったな」

 

モニターから這いずり出てくる女。溝呂木は、その女が“貞子”と呼ばれる【呪いのビデオ】を作り出した張本人だと確信した。

 

モニターから上半身を現し、近づいてこようとする貞子。──しかし彼女がそのまま立ち上がることはできなかった。

 

アーミーブーツを履いた蔵木のサッカーボールキックが、顔面に直撃したからである。

 

黒い血のようなものを吐き出しテレビごとひっくり返る貞子。蔵木は油断せず、仰向けになった貞子へと近づいていきその胸ぐらを掴みあげる。

 

瞬間、貞子の目が蔵木と合う。

 

──キンッッ……!──

 

しかし歪な甲高い音がしたのみで、蔵木は気にせず貞子を半分テレビに固定したまま殴り続ける。

 

「うわぁ……」

 

溝呂木は思わずと言った様子で呟いた。霊を殴れるとは聞いていたが、こうまで一方的な暴力で対抗していたとは考えておらず、果たしてこの光景を柑菜に見せていいものか悩み始めていた。

 

「……柑菜?」

 

しかし当の柑菜は全身を震わせ、両腕でその身をかき抱いている。

 

気がつけば、蔵木の作った結界の周辺を大量の髪の毛が囲んでいた。それは蔵木も例外ではなく、すでに下半身を飲み込まれたかのように包まれている。

 

「……そこから出るな」

 

そう一言言い残すと、蔵木は貞子を捕まえたままテレビの中へと引きずり込まれていった。

 

溝呂木は、蔵木の勝利を信じるしかなかった。

 

 

 




蔵木さんが何で霊とかぶん殴れるのかはその内明言させます。
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