※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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今回はちょっとアレ。そんで次話から始まる話の布石
でも、別に変なことやってるわけじゃないよ。イチャイチャ回だよ!
もしくは剣を磨いてるだけ。


営みと不安

 夜。

 室内を明かりで照らされた広い空間がある。

 備え付けられたテーブルと椅子が並ぶそこは、高級感溢れるお店だ。

 レオンハルトシティにあるその店は、料理と酒を楽しめるレストランであり、魔軍の重鎮だけが入ることが出来る高級店でもある。

 その個室に足を踏み入れたのは、大柄な魔物達だ。その前に立つものが声を上げる。

 

「予約していたものだが」

 

「はい、お待ちしておりました。大将軍閣下。――どうぞこちらへ」

 

 うむ、と頷いたのは、大柄な魔物将軍よりも一回りほど大きい魔物大将軍、リーだ。

 彼は連れの二体の魔物将軍。そして一体の魔物隊長とともに、店員の女の子モンスターの導きに従って席に着く。魔物のサイズに合わせた、大きなテーブルだ。同じく大きめの椅子に腰掛けると、下座に座った魔物隊長が辺りを見渡し、

 

「すごい……こんなとこ、初めて入りましたよ」

 

 感嘆の声を上げる。彼はレオンハルト軍麾下の魔物隊長。同席する魔物将軍の紹介で連れてこられた者であった。

 ゆえに本来ならここに入ることは出来ない。何故なら、

 

「はは、そうかそうか。まあ驚くのも無理はない。ここは魔物将軍以上でないと入れないからな」

 

「自分が初めて入った時は魔物将軍だったが、それでも驚いたものだ」

 

 と、魔物将軍らは言う。その声に仕事の時のような厳しいものはなく、幾分か和らいだ気のいいものだ。

 それに続くように魔物大将軍リーが魔物隊長に目を向け、

 

「うむ、魔物隊長。お前も、将軍になったのなら来る機会はあるだろう。慣れておくといい」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 魔物隊長は頭を下げてお礼を言う。大将軍は硬くならなくて良い、と言ってくださるがとんでもない。自分は目を掛けられているのだ。

 眼前にいる魔物大将軍リー。彼は魔人や使徒を除けば魔軍の最高位、通常の魔物が望む最高の地位にいる御方だ。

 魔物隊長までは特殊なスーツを着ることで出世していくことになるが、そこからは種として進化が必要となる。隊長から将軍になる事例は幾つか見受けられるし、とある方法で将軍になる方法も存在する。

 だが何体かいる魔物大将軍の中で、今の所、将軍から大将軍になったのはリーだけだ。

 彼は魔軍最精鋭のレオンハルト軍の最古参の魔物であり、レオンハルト軍やこの街の運営にも携わっており、レオンハルト様の懐刀のような存在である。

 使徒並の信頼を受けるこの御方に、目を掛けられた。それは出世を期待されているということでもある。

 勿論、魔物社会は実力主義で、特にレオンハルト軍では他の軍で行われるような袖の下などは通用しない。純粋な能力主義である。

 なので出世が決まったわけではない。他にも優秀な魔物隊長は大勢いる。なので気を抜くわけにはいかない。

 心を締め直し、魔物隊長は上司達の話に耳を傾けた。運ばれてきた食前酒を皆で口にしながら、

 

「最近、調子はどうなんだ?」

 

「いやお前、同じ軍なんだから調子も何も、解るだろう。特に問題はない。ですよね、大将軍閣下?」

 

「そうだな……まぁ、私としてはこの間、とうとうキャロル様に果たし状なるものを渡されたのだが……誰か上手い逃れ方を知らないか?」

 

 皆が一斉に目を逸らす。リー大将軍が息を吐いた。立場が高く、上の者との距離が近いとこんな苦労もあるのか。覚えておこう。

 と、思っていると、最初に話を振った魔物将軍が気を取り直して、

 

「いや、そういう意味じゃなくてだな。お前、最近嫁増やしたんだろ?」

 

 そう聞くと、質問を投げかけられた魔物将軍は合点がいったのか、ああ、と頷き、

 

「そっちも問題ないな、概ね。ただ……うちの新しい嫁、ちょーちんなんだが、家に帰ると大体、明かり消した暗い部屋で隠れてるんだ。そんで頭の光灯して、こっちを誘ってくるんだが、すると殴られる。殴って襲いたいんだと。でもそんくらいだと全然効かないのが嫌なのか、いつも部屋でパンチの練習してる。たまに物を壊すときもあるから正直やめてほしいんだが……それ以外は問題ない」

 

「……問題あるじゃないか」

 

「……うるさいな。お前のとこはどうなんだよ。確か、バトルノートだったか?」

 

 少しムッとしつつ魔物将軍が相手の魔物将軍に聞き返す。するとバツが悪そうに頭を掻き、

 

「あー……いや、うん。問題ないぞ。……ただ、仕事場が一緒の所為か、家に帰った後、その日の作戦行動とか自分の指揮に小言を言ってくるんだ。やれあれが駄目だの、あそこはこうだの。何か、嫁にする前は従順だったし強く言えたのに、嫁にしてからというもの逆らえなくてな……俺、上司なのに……」

 

「お、おう……苦労してるんだな……」

 

 その姿に哀愁が漂っているのを見て、その場の者達が微妙な表情を浮かべる。聞いた魔物将軍は空気を変える様に、今度は魔物隊長に目を向け、

 

「……そうだ。お前のとこはどうなんだ?」

 

「あ、ええっと……」

 

 急に話を振られたことで少し戸惑うも、やがて思い返しながら、

 

「一応、います。その、幼馴染の、きゃんきゃんでして……」

 

「おお、いいじゃないか。それで、どんな感じなんだ?」

 

「問題があったりするのか?」

 

 いつの間にか復活した魔物将軍も混ざりつつ、重ねて問われる。答えなくてはならない。しかし、

 

「そう言われましても……うちは普通です。普通に仲良くしてますよ?」

 

 正直に言うと魔物将軍達は二人で肩を落とすと息を吐き、

 

「……何だろうな、こっちの方が恵まれてるはずなのに、普通に羨ましく思えるのは……」

 

「……癖のある嫁だと苦労するよなぁ……」

 

「は、はぁ……別に普通のつもりですが……」

 

それが良いんだよ、と言われる。何がだ、と思う。しかしそこで気になったのは、

 

「……ああ、その……大将軍閣下は、どうなのです?」

 

「む……」

 

 黙って酒を飲んでいたリー大将軍に話を振る。すると彼は渋い顔になる。

 それを見た魔物将軍は、大将軍に向かって声を飛ばした。

 

「そういえば、リー様は一人もいないんでしたっけ?」

 

「いい加減、誰かしら作ったらどうです。リー様なら選り取り見取りでしょう?」

 

「……しかしだなぁ……」

 

 と、唸るリー大将軍に、魔物隊長は意外な気持ちになる。

 ……大将軍閣下なら、一人どころか二人以上いても全然おかしくないのに……。

 そう言うのも、それがレオンハルト軍で、この街では普通のことだからだ。

 魔物界では最先端の、そして最もお洒落で安全な街といわれるここは、魔物界で屈指の人気を誇る。多くの女の子モンスターが訪れるのだ。

 ゆえにこの街は半ば、出会いの街であり、人気のデートスポットとしても名高い場所でもある。

 そんな中、この街に住み、魔軍最精鋭の軍で働く自分達は――はっきり言って、普通の魔物よりもモテる。

 自分達はこの街の生活に慣れきってる。作られた屋根の下で暮らし、充実した仕事を行い、休日には同僚や部下と街に繰り出したり、そこらでお茶をしに行く。文化的かつ、優雅な生活である。他の野ざらしで暮らすような魔物と比べれば雲泥の差だ。

 これを当たり前としている自分達の姿が、他の魔物よりもモテる理由の一因だ。

 

 そしてもう一つに、こちらは魔物として当たり前のこと。強さがある。

 魔軍で最も優れた軍の名に恥じないよう、自分達はそうあろうと努めている。任務や仕事の数も多く、大変なことも多いが、ゆえに成長出来る。ゆえに通常の魔物兵であっても他の魔物兵よりもモテる。

 もはや、レオンハルト軍に所属し、この街に住んでいるというのは一種のステータスだ。

 魔物兵達もそれを知ってか、出世するために人一倍熱を上げる者も少なくない。

 何しろモテるだけではない。魔物隊長であればより良い生活を送ることが出来る。魔物将軍であればそれよりも更に上、魔物社会では極僅か、一握りのエリートだ。

 魔物大将軍ともなれば、それは推して知るべし。そんなリーは、あまり欲がないのか、嫁も取らず、何かを欲することがない。

 何故、という思いが浮かび、大将軍に視線を向けると、少し困ったように、

 

「……興味がないわけではないが……それよりも、今は仕事が大事でな……」

 

「……お硬いですねぇ……」

 

 魔物将軍が半ば呆れるように言う。すると大将軍は顔をしかめ、

 

「いや、ちゃんと抜くべきとこは抜いている。こうやって、部下を連れて食事に行ったり、風呂や劇場に連れて行ってるだろう?」

 

「いや、ありがたいですけど、そこにもうちょっと彩りを加えるのも悪くないのでは? ほら、レオンハルト様だって言ってたじゃないですか。良い人はいないのか、って。尊敬するレオンハルト様が推奨してるんですから、大将軍閣下も率先してそれに倣うのが宜しいのでは?」

 

「ううむ……それは確かに、そうかも知れないが……」

 

 そうやって理屈を、というか、レオンハルトの名を出されると弱いのだろう。リーが迷うように顎に手を当てる。もう一体の魔物将軍が引き継ぐように、

 

「レオンハルト様みたいにハーレムでも作ったら、大将軍閣下にも、レオンハルト様みたいな深みが出るかもしれませんな」

 

「むっ、それは……一考の余地が……」

 

 ……そこで揺らぐのか……。

 魔物隊長は内心でそう思ったが、見れば将軍達も苦笑を浮かべている。どうやら同じ気持ちらしい。

 大将軍閣下に良い人が出来ればいいのだが、それはこの分ではまだまだ掛かりそうだ。それにしても、

 ……レオンハルト様か。どんな生活送ってるんだろうなぁ……。

 魔物隊長は軍に所属してまだ短いし、城の中に入ったことがないのでそれは解らない。

 だが、魔人筆頭ともなれば、それはもう優雅な生活を送っているであろうことは想像に難くない。ありとあらゆることが出来るはずだ。

 ……自分も、将軍くらいには成れるように頑張るか……。

 思い、魔物隊長は料理と酒に舌鼓を打ち、リーを説得するための言葉を考え始めた。

 

 

 

 

 

 レオンハルトの城。

 その城壁を全て赤で染めた、魔人筆頭の居城。

 その一階にあるとある部屋の名は――大浴場。

 風呂好きのレオンハルトが、この街から湧き出た温泉を城の地下まで引き、作らせた部屋がそれだった。

 街にある大衆浴場と比べても大差ない広さと、それを上回る豪華さを誇る大浴場。そこでレオンハルトは、

 

「――レオンハルト……その、どう、だ……?」

 

「――お加減は、いかがですか~?」

 

「んっ、ちゅ……ん……れほんはふほはま……」

 

 ケッセルリンクとペール、そしてキャロル。三人に、身体を洗ってもらっていた。

 風呂場であるため、誰もが生まれたままの姿でそこにいる。浴場に備え付けられた浴室用の椅子に座り、イチャつきながら身体を洗ってもらっているのだ。

 残念ながら、キャロルだけは剣を磨くのに夢中になっているようだが、それでも申し分ない。剣だって、重要なものだ。それを率先して磨いてくれるキャロルは、忠臣にほかならないだろう。

 レオンハルトは三人を見て、多幸感を思った。

 正面、ケッセルリンクがその身を寄せてくる。

 

「レオンハルト……」

 

 うっとりとした表情でこちらを見るケッセルリンク。その身体つきに目が釘付けになる。

 女性にしては長身のその肢体は、白砂のように綺麗であり、女性らしさと美の結晶だ。

 もっちりとしたお尻のライン、くびれた腰つき、たわわに実った果実。その先には、ツンと上を向いた桜色の乳首があり、

 

「んっ……」

 

 こちらの胸に抱きついてくる。

 その双丘がむっちりと押し付けられ、形を変え、先端のそれが柔らかさと弾力の中でこちらの乳首と合わさり、こり、と刺激してくる。

 彼女の表情は、真っ赤に染まっており、吐息を漏らしている。思うのは、

 

「ケッセルリンクは……綺麗だな」

 

「あ……」

 

 ケッセルリンクの顔がさらに赤くなる。しかし視線を逸らさず、その瞳をうるうるとさせており、

 ……ほんと、綺麗だな。

 魔人四天王の一角である上級魔人、ケッセルリンク。

 普段はクールな表情を張り付けた美人で、高嶺の花、といった印象の強い彼女。

 そんな彼女が、自分には好意の込もった熱い視線を向けて、身体を洗ってくれるという。

 そのことに悦びを感じざるを得ない。手を伸ばし、

 

「それじゃ、頼むな」

 

「あっ……わかった……んっ……」

 

 右手を彼女の尻に回し、こちらに引き寄せる。密着感が高まる中、五指で尻を撫で回していると、

 

「私も、洗いますねー?」

 

「ん……頼む」

 

 今度は、舌をちろり、と出した自らの使徒ペールがそう言って、泡の付いた身体を寄せてきた。

 使徒になり、容姿に変化があったペールだが、童顔で可愛らしい顔つきは変わってない。

 しかしそれでいながら、身体つきはいやらし過ぎるほどにいやらしい。

 きゅっと締まったお尻に、細い腰つき、そしてたっぷりと実った爆乳。その先にある淡い色の、陥没したそれごと、

 

「えーい」

 

 気の抜ける声とともに押し付けられる。

 使徒になって大きくなったそれは、つぶれて形を広げ、たっぷりと胸に押し付けられる。

 するとペールはこちらを見上げ、

 

「今日も、たっぷりサービスしますね? レオンハルト様の仕事の疲れを癒せるように」

 

 楽しそうに上半身を左右に揺らし、こちらの肌にむにゅんむにゅんと胸を滑らせてくる。

 なので、と、

 

「いつでも、私達にストレスを吐き出してくださいねっ」

 

「……風呂場では、身体を洗うだけのはずなんだがな」

 

 言いながらも、それだけで終わらないことは分かってる。ゆえにペールの尻にも手を伸ばし、

 

「あんっ、触られちゃいましたよう……!」

 

 五指を突き立て、こちらに引き寄せる。ペールは嫌がる台詞を言いながらも、声色は悦んでおり、腰を揺らしてむしろ押し付けてくる。そして、

 

「それじゃ、いつも通り洗っちゃいましょうか、ケッセルリンク様」

 

「わかった……」

 

 と、ペールの言葉を合図に、二人が動き始める。

 上半身に並んだ四つの山が、スポンジとなってこちらの身体を洗い始める。

 中身の詰まったたぷたぷのそれが柔らかく形を変えながら身体の上をなぞる。下に向かって移動し、こちらの太腿に、それぞれ彼女たちが跨ると、ぷにぷにした感触に気持ちよさを感じる。

 下まで到達すると、今度は上に戻ってくる。こちらの胸板を再び撫でながら、二人が上がってくると、首元を過ぎて、

 

「っ――」

 

 顔が挟まれる。

 両側から押し寄せる柔らかいスポンジの感触が気持ちいい。二人の細い腰を抱きよせて、四つのもちたぷを顔で味わっていると、

 

「んっ、んっ、んっ――」

 

 と、剣を必死に磨き上げているキャロルと目が合った。

 凛々しい顔つきをしている彼女は、熱に浮かされた様に四つん這いで剣を磨き上げ、腰を揺らしている。

 ぷりんとした桃尻を左右に揺らしてこちらの目を楽しませながら剣を磨く。上から見ると腰のラインが艶かしい。

 熱が入りすぎて、掌サイズに膨らんでいるその先が、ぴんぴんに立っている。それでいながら、愛情たっぷりに首を振り、こちらを見上げてくる視線に嬉しくなり、応えたくなる。

 ゆえに、顔が解放された時に、

 

「キャロル、偉いぞ」

 

「っ!!」

 

 と、褒めてやる。剣を磨くスピードが増した。

 それが嬉しくなり、溜まっていたストレスが発散されそうになる。二人の体洗いもそれを助けてくれる。

 レオンハルトはそれを我慢せずに発散した。

 

「んんっ――!」

 

 キャロルが磨きすぎて熱くなった剣を、喉を鳴らして受け止めてくれる。それを心地よく思いながら、

 

「あっ……」

 

 ケッセルリンクがそれを察して声を上げる。剣を見て、同じくペールが、

 

「あー、もうですかぁ? 本当に溜まってたんですね、ストレス」

 

 からかうように言ってきたので、二人の胸を今度は掴みながら、

 

「いや、まだまだ溜まってるからな。まだまだ存分に発散してやる」

 

 重たく詰まったそれを弄び、やる気を出していると、眼下で、

 

「……レオンハルト、さまぁ……んんっ!」

 

 再びキャロルが、右手で剣を磨き始めた。今度は、左手で自分の股ぐらに手を伸ばしながらで、

 

「完全に、スイッチ入っちゃってますねぇ……じゃあ、私も本気出しますよう」

 

 ペールが剣の元に移動し、それを胸で包み込みながら目を細める。キャロルが、押しのけられ、

 

「ん……ずるいですわ……ペールさん……!」

 

「ええー、次は私の番ですよう。キャロル先輩は、上に行ってください」

 

「……しょうがありませんわね……んっ、レオンハルト、様……!」

 

 ペールが自慢の双丘を揺らし、剣に乳圧を掛けながら言う。埋もれたそれを見て不満そうだったキャロルだが、上に来るのも魅力的だったのだろう、勢いよく抱きついてくるのを受け止める。聞いて思うのは、

 ……こっちも本気出さないとな。だが……。

 と、反対側のケッセルリンクを見る。そこには、こちらに縋り付くように抱きつく彼女の姿があり、

 

「んっ……レオン、ハルト……!」

 

 興奮しながら身体を押し付けてくる。それはいい。

 だが、その瞳の中には、やはりとある感情が見え、

 ……問題はこっちだよな。

 と、内心で言葉を作り、レオンハルトはケッセルリンクに声を掛けた。それは、

 

「ほら、今日も可愛がってやる。だから――安心しろ」

 

「っ、はっ……んんっ!」

 

 ケッセルリンクの身体を弄る。再び抱きつく力が強くなるのを感じながら、

 ……さて、どうするか。

 方法を思案しつつ、レオンハルトは三人と風呂を楽しんだ。

 

 

 

 

 

 ――私は、怖い。

 

 そして、悲しい。

 未だに、思い出すと悲しくなる。

 これからを思うと怖くなる。

 皆は既に前を向いているのに、自分だけが引きずっている。

 自分だけが、先に進むのを恐れている。

 だが、彼を感じている時だけはそれを忘れられる。忘れさせてくれる。

 罪悪感はある。彼を逃避のためにに使っているという罪悪感だ。

 勿論、嫌な訳じゃない。それは幸せなことだ。

 しかし、だからこそだ。

 その多幸感だけが、自分を苦しみから解放する。

 胸に刺さった棘の痛みを、感じないでいられる。

 この棘が無くなるのはいつになるのだろうか。

 ともすれば一生刺さったままかもしれない。

 しかし、抜くことは悪いことかもしれない。

 だから私は――このままでいい。

 現状をただ維持できれば、それで――。

 

 

 

 

 

「――ん……」

 

 ケッセルリンクは、緩やかに意識を覚醒させた。

 身体が少し重い。理由は解る。昨夜の所為だ。

 慣れてきたとはいえ、少々激しく、長時間のそれは体力を使う。戦いのそれとは違う、別の体力が。

 ……水を……。

 と、ケッセルリンクは身体を起こそうとした。すると、

 

「――おっ……起きたのか。身体は大丈夫か?」

 

 不意に、横から声が飛んできた。レオンハルトの声だ。

 彼の腕枕で寝ていたのだから当然である。自分が何も着ていないことも。レオンハルトが何も着ていないことも。その横にキャロルが寝ていて、ペールのものと思われる毛布の膨らみがあることも。当然のことだ。

 

「ん、少し怠さがあるが……まあ、問題ない……」

 

 なんとなく、そのまま彼の身に身体を寄せる。

 彼の身体は安心するのだ。硬く逞しい男の身体。自分の好きな者の体温。それを感じて息を漏らす。

 それを見て、苦笑を浮かべたレオンハルトは、

 

「それならいいけどな。……ここのところ、俺が城に帰る時はほぼ毎日来てるから、ちょっと不安になった」

 

「……そう、か」

 

 諌められたような感じを覚えて少し落ち込む。というのもそれは事実だからだ。

 レオンハルトは仕事が忙しく、魔王城で丸一日を過ごすことも多い。それは、いつ魔王に呼ばれるかわからないためでもある。魔王や魔人、使徒は睡眠が必要ないが、それゆえに、一日中を起きて過ごす者もいる。魔王も寝ずに起きていることがあるらしく、そういう時のことも兼ねてレオンハルトは城に居続けることがある。

 それは仕方のないことだ。だが、

 

「……私が来るのは、迷惑か……?」

 

「そんなことはない」

 

 ズルいことを言ってしまった、と言った瞬間に後悔したが、レオンハルトは即座に否定してくれる。それだけで嬉しくなるのだから、彼はズルいと思う。

 しかし彼は続けて、でもな、と、区切ると、

 

「……その、だな。そろそろ、お前の城を作りたいんだが――」

 

「――っ」

 

 言われる。それは、これまでに何度か聞いた言葉だ。

 身を固くしてしまう。次に言われるのは、やはり、

 

「お前は魔人四天王だ。だから、その役目を……出来れば果たしてほしい。城が嫌なら屋敷くらいでも――」

 

「…………」

 

 無言で、彼の身体を抱きしめる。それは意思表示だ。

 嫌、とは言えない。だが、頷きたくもない。それゆえの、ずるいやり方。

 彼に察してもらう。そのやり方をもって意思を伝える。

 今まで何度か合ったことだ。魔人四天王である自分にそれを与えるという案は。しかし、いらないというなら別にいいか、と最初は彼も考え、それに納得した。

 しかし、段々とそれに気づき、敢えてレオンハルトはそうしないか、と諭してきている。

 ゆえに続く言葉も同じ。変わらないものだ。それは、

 

「……そんなに、寂しいか?」

 

「…………」

 

 無言で身体に縋り付く。肯定の証だ。

 

「……いつでも来ていいんだぞ。お前は、俺の女だ。拒む理由はない。だから――」

 

 力を込める。嫌だ、と。

 それを感じ取ったレオンハルトは、諦めたのか息を一度吐く。

 しかしそれは間違いで、

 

「……色々、考えたんだがな」

 

 と、レオンハルトは言葉を続けた。

 

「お前は、一緒にいてくれる、大切な奴がほしいんだろ?」

 

「…………」

 

 頷く。それは貴方や、見知った者達のことだ。

 だから傍にいてほしい。いなくならないでほしい。

 そう思い、彼を感じる。頭上から聞こえてくる声は止まず、

 

「……なら、一つ、提案があるんだが――」

 

 と、言う。それは、

 

「ケッセルリンク。お前――使徒を作れ」

 

「――――」

 

 今までとは違う、そんな提案だった。

 

 

 

 

 

「使徒を……?」

 

 ああ、と、レオンハルトはケッセルリンクの言葉に頷きを返す。

 自分が提案したことだ。彼女の寂しさ、言いようのない不安を埋めるための案。

 それを、レオンハルトは説明する。

 

「大切な存在。他ならぬお前と一緒にいてくれる存在を作るんだ」

 

「……それは」

 

 出来るのか、と問うてくる。それは半信半疑だ。

 今まで大切な出会いを得てきたからこそ、これからもそれを得られると思う心と、大切すぎる存在が出来たからこそ、そんなのは出来ようがないと思う心。その二つが彼女の心を揺らしているのだろう。

 その比重を、片方に向けようと、レオンハルトは言葉を尽くそうとする。

 

「……俺はな、ケッセルリンク。昔から色々と悩みがあった」

 

 悩みがあるという。言いながら、彼女とは反対の方に顔を向けると、

 

「……でも、その大体は――俺の使徒達が解決してくれたんだ」

 

「んにゅ……レオン、ハルト……様……」

 

 すやすやと気持ちよさそうに眠るキャロルの頭を撫でる。

 自分はそうだった。元は悩みを解決するために使徒を作った。

 だが、

 

「思えば、最初から見どころのある奴だった。どいつもこいつも、何だかんだ言いながら俺の役に立とうとしてくれてる」

 

「……それに、救われたのか?」

 

 頷く。勿論だ。それだけではないが、その要因は極めて大きい。

 キャロルやハンティにペール。皆俺に付き従ってくれている。ハンティだけは事情が異なったが、それでも、いつしか大切な奴の一人になり、

 

「……そう。いつしかこいつらも、大切な奴らになっていた。こんな俺にすら、付いてきてくれる奴らがいる」

 

 だから、

 

「お前に出来ないはずがない」

 

「…………」

 

 確信をもって言う。ケッセルリンクに付き従ってくれる使徒は、必ず現れると。

 ゆえに、

 

「少しだけ、探してみないか? 外に出て、人と会って、何か切っ掛けがあればそれは現れる。大切にしたいとお前が欲するやつ。お前に付き従いたいと思うやつ。どっちかは解らないが、必ずどっちかは見つかる」

 

「……そう、だろうか……」

 

 言う。彼女の頭を撫でながら、

 

「ああ、必ずだ。俺を信じろ。今は、自分に見つかるのか、と思っていてもいい。お前が信頼する俺を信じて、それを試してみろ」

 

「…………なら」

 

 と、ケッセルリンクはややあって、ゆっくりと顔を上げる。

 そしてこちらと視線を合わせ、

 

「……貴方がそう言うなら……少しだけ、やってみる……」

 

「! ああ、そうだ。やってみろ。絶対見つかる」

 

 戸惑いながらも肯定してくれたケッセルリンクを抱きしめてやる。

 安心させるように、彼女の背中に腕を回し、

 

「大丈夫だ。何かあれば、俺も必ず協力する」

 

「……わかった。そうしよう」

 

 少しだけ落ち着いたのか、ケッセルリンクが普段通りに戻る。それを見て、少しだけ胸を撫で下ろし、

 ……これで、少しはこいつの不安が取り除かれれば……。

 思う。これについては自分にも、責任がないとは言えない。

 なので、色々と忙しい自分だが、何かあれば助けになってやろう。そう思い、レオンハルトはしばらく、彼女を抱きしめ続けた。

 




スラル「……は?」

ペール「こ、こわっ! 何で私にだけそんな憎しみの込もった目をするんですか!?」

キャロル「おそらく――」

レオンハルト「おい馬鹿! 言ったら抉られるぞ! 魔法で物理的に!」

ペール「ふ、ふんだ。解りましたよう。これはただの、貧乳のひが――」ボシュッ

レオンハルト「ぺ、ペール!? くっ、これも――」ボシュッ

スラル「アウト」

レオンハルト「判定厳しい――!?」

ケッセルリンク「懐かしいネタだな……」

ラウネア「…………(私はある方だよね、うんうん)」ボシュッ
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