「夜分遅くに失礼致します、レオンハルト様」
「――何、ちょうど俺も一息ついたところだ。別に構わない」
魔物大将軍同士での会議を終えたリーは、その足でレオンハルトの城へと直接向かった。
夜の帳もとっくに下りきった刻限だというのに、魔人レオンハルトは快く自分を執務室へと迎え入れてくれる。
時間を考えれば眉をひそめられてもおかしくない。睡眠を必要としない魔人や使徒であっても、夜の時間はプライベートなものだという暗黙の了解がある。勿論、個人にもよるし、夜に呼びつけられたのならこちらは何をおいても駆けつけねばならないが、それは魔人という絶対の支配者階級を象徴するものだ。どんな横暴も許される。
それを考えるなら、魔人レオンハルトという存在は部下にとって非常にやりやすくもあり、同時に恐縮させられる相手である。何しろ、
……魔人の最高位である御方が、我々を気遣ってくれるのだからな。
明らかな無理難題を出すこともなく、軍務の上での失敗も、それが怠慢によるものでなければ怒りを見せることもない。冷静に受け止めながらも、こちらを労ってくれる時すらある。
そもそも、ただの魔物でしかない部下と仕事外で付き合おうとする魔人というのが圧倒的に少数派だ。
他の魔人の方々は、自らの使徒と同格の魔人以外には線を引いている。支配し、顎で使うのは当たり前。格下どころか下等とも言っていい他の生物の気を慮る必要はない。魔物からしても、これは当たり前の価値観だ。圧倒的な力を持つ魔人には畏怖をもって接し、頭を垂れる。叛意を持つのは烏滸がましいし、やっても無駄だ。魔人に、魔人以外のあらゆる攻撃を無効化する無敵結界が備わってからはさらにそれが顕著になったと感じる。だが、
「それより、会議を終えてすぐに来たと聞いた。報告ついでに食事でも取っていくといい」
「は、しかし……」
「遠慮するな。……というより、お前がこの部屋に来る間に用意しておくよう言っておいたからな。諦めて食っていけ」
「……ご気遣いありがとうございます」
気にするな、と何でもないように言うレオンハルト。彼の表情は真顔そのもので、本当にどうとも思っていないのだろう。ただ、訪ねてきた配下に城自慢の料理を振る舞うだけ。この城の料理人は魔王城の厨房を担当していた人間の料理人が同じく料理人であった女性と関係を持ち、結果出来た子供に親が料理人としての教育を施し、それを働かせているらしい。通常は人間の料理人を連れてくるか、一部の料理が上手い魔物、もしくは女の子モンスターに任せるのが通例だが、そのような背景で出来た人間の子供を、異例ではあるがレオンハルト様、そして先代の魔王様が認め、試験的に人間の家族をこの城に住み込みで働かせているという。実際、リー大将軍や他の魔物将軍が城を訪れた際に何度か口にしたことあるが、魔王城で食べるものと遜色ない味であったので経過は良好だろう。ゆえに食事をここで摂れるというのは、その気遣いも合わせて嬉しいものだ。なのに、
……自分はこれから……その気遣いを踏みにじるようなことを、せねばならないのか……。
仕事とはいえ気が重い。それがおそらく、レオンハルトの触れてはならない部分だと半ば確信しているがゆえに。
尊敬の念を抱く主に向かって唾を吐きかけるような行為だ。理解っていてやらなければならないのだから余計に質が悪い。
無論気にならないといえば嘘になるが、それよりも罪悪感の方が圧倒的に勝る。
しかしいずれは口に出さなくてはならない。黙りこくるこちらに対して、レオンハルトは急かすことなく黙って報告を待っている。空気が重い、と感じるのはおそらく自分だけだろう。レオンハルトは軽い様子でカップの中に入った紅茶を口にしながら、通常と全く変わらない雰囲気を醸し出している。
せめて使徒である御三方の誰かしらがいればいいのだが、こういう時に限って誰もいない。珍しいことだ。何か用事でもあるのだろうか。
……だが、いなくて良かったかもしれん。話題を考えると……。
使徒の方々が知っているかどうかは解らないが、そのどちらであってもこの後の気まずさには変わりない。
やはり、さっさと言うべきだろう。言わねばならないのなら躊躇っていてもしょうがない。
「その、ご報告の件――あ、いや、議題に上がっていた戦略目標に関する件なのですが……」
「ああ。もう決まったのか」
「……はい。一応選択肢が幾つか……ただ、そのことで少し、ご許可と言いますか、お尋ねしたいことがありまして……」
「……? ああ、別に構わない。話せ」
さすがに前置きが長い上に、様子がおかしいことを悟ったのだろう。レオンハルトが僅かに眉をひそめる。そのことに緊張が高まるも、
……ええい、ままよ!
リーは意を決してそれを口にした。
「今更口にするのは憚られるのですが……その、戦略目標の大国に……
「――何?」
言うと、やはりというべきか彼の表情が強張った。
レオンハルトは少し――部下であるから手心を加えているのか――魔人としての剣呑な気を見せながら聞いてくる。
「……どういう訳だ? あそこは――いや、その前に理由をきかせろ」
「は、はっ……その、バルカ大将軍の提案で、例の国が、隣国との開戦を間近に控えているとの情報が……」
「……続けろ」
「はい、その上で、両国の戦争後、勝利した方の大国に攻め込めば、戦いの後で疲弊した国を、楽に落とせるだろうと……そのような経緯で、この二国が戦略目標として上がっております」
「……なるほどな」
リーは静かに目を細めているレオンハルトの表情に、身体が強張るのを自覚する。
しかし最後まで魔物大将軍としての職務を全うするべく、言葉を尽くした。
「……地理、兵の質、得られるもの、その他様々な情報を精査した結果、大将軍らと会議に参加していた魔物将軍一同、有用と判断した次第であります」
「…………」
言った。言い切った。
レオンハルトは険しい表情のまま黙り、顎に手を当てている。考え込んでいるのだろうか。
しかし、
「……ふー……そうか」
と、吐息一つで表情を戻し、落ち着いた様子を見せたレオンハルトはそのまま告げてくる。
「……理由は理解した。その有用性もな」
「……では……?」
ああ、と、レオンハルトが一つ頷いてみせる。
「一日だけ考える。明後日までには答えを出そう」
「一日、ですか……」
口に出してから、その声に少しばかりの落胆の色が混じったことを後悔する。
「……不服か?」
「! い、いえ! そんなことは決して!」
やや鋭い視線で短い声を飛ばしてくるレオンハルトに、慌てて否定を返す。
しかしレオンハルトは、すぐに表情を戻すと、目蓋を指で揉み解しながら息を吐き、
「……悪いな」
「え?」
不意の謝罪に間の抜けた声を出してしまうも、レオンハルトは気にした様子なく、
「少し整理したくてな。明日一日考えて、それで結論を出そう」
「は、はっ! 畏まりました! では――」
「ああ、書類はそこに置け。目を通しておく。今日のところは食事を摂ってから帰るといい」
「……了解しました。……その、レオンハルト様は――」
「……何だ?」
「……あ、いえ、何でもありません」
続く質問は喉元までいって、しかし口に出せなかった。腰を上げ、立ち上がると深々と頭を下げ、
「では、失礼致します」
「ああ」
同じ様に立ち上がり、目線を切りながら応答するレオンハルトに再び頭を下げて退出する。
部屋から出る前、最後に見えたのは背中を向けて窓の外を見るレオンハルトの姿であり、
……やはり……そういうことなのだろうか……。
思ったよりあっさりとそれを飲み込んでくれはしたが、微妙に葛藤があるような気もする。
作戦の判断に一日二日程度の時間を置くのは無いことではない。難しいものであれば再び会議をすることもある。今回はレオンハルト自身、会議に出席していなかったので、書類を確認しながら判断する時間も必要だろう。
しかし数百年間、魔軍参謀として冷静かつ優れた判断を見せてきた魔人レオンハルトにしては、合理的な判断以外の感情が、垣間見えた気がした。
その日、魔人レオンハルトは何をするでもなく、執務室で一夜を過ごした。
食事も睡眠も夜の営みも、その日は気分が乗らない、考えたいことがあるからと拒否し、執務室でひたすらに考え込む。
キャロルやペールは軽い心配と疑問を覚えながらもそれを了承し、しかし明るい様子で世話をしようとしてきたが、それをやんわりと拒否する。起きているのは構わない。何かあれば呼ぶから待機していろ、と命令を出して。主が起きているのに寝ることも出来ないだろう。そんな使徒としての立場もあるだろうし、何より、心配しなくていいから寝ていろ、部屋には入ってくるな、と言えば
なので余裕をもってそう使徒に命令を出した。ケッセルリンクは数日前に城を出たのでここにはいない。今頃、試行錯誤しているのだろうか。そっちの心配もあるが、彼女なら必ず良い方向に向かってくれるだろう。何かあれば助けにはなるがそこまで心配はしていない。問題は自分の方で、
「……どうするかな……」
レオンハルトは、執務室のソファに腰掛け、足を組みながら額に右手を当てて考え込む。
こうやって考え込むことは最近になってからはそこまで珍しいことではない。色々有り、体制が変わってからは考えることも多いのだ。
しかし、それは長くても一時間程度。大体は数分から数十分程度の時間だ。夜が明けるまで考え込むというのはない。
それはやはり、故郷のことであるからだろう。
テーブルの上に置かれた地図、そして大将軍が置いていった会議の報告書を眺めながらレオンハルトは思う。
視線の中心には、地図。魔軍の領土に隣接する巨大な国家が記されてる。
人間の国家としては最古。そして最大の領土を持つ覇権国家。それを見てレオンハルトは、ふっ、と鼻で笑うと、
「まさか、ここまでデカくなるとはな……わからねぇもんだ」
自分が魔人になる際に、手出しをさせないことを条件に出した。
契約は結ばれ、その集落は今日に至るまで魔軍は一切の手出しをしていない。
その恩恵があったおかげなのか、国を興し、発展を遂げてきた故郷。そこにはやはり、複雑な思いがある。
しかし、だ。そこが何物にも変えられない大切なものかと聞かれれば、それは違うと答える。
あれは自分にとって最後の責任。王として最後まで民を導けなかった責任と、自分が生まれ、育った場所を守るという義理と恩を返すため。
そして、良心によるものだった。
今ある自分の大切なものに比べれば大して価値のないもの。
今ある立場を考えれば、迷うことなく切り捨てるべきもの。
ましてや合理的な判断付きである。自分の心を納得させるだけの材料はとっくに揃っているのだ。
なのに、結論が出せない。
「…………」
目の前にある書類を見詰める。
それはいわゆる――作戦許可書だ。
昨日に大将軍一同が纏めたもの。
戦争をする二つの大国に対して漁夫の利を狙い、果てはその全てを血に染めてしまおうという――そんな命令を出すもの。
無論、魔軍としては珍しいことではない。人間の国に攻め入ることなど今この時ですら世界のあちこちで起こっていることだ。
強いて言うなら、普段は完全に国を滅ぼすことはせず、ある程度の被害を与え終えれば、即時撤退。
数ヶ月から長くて数年。その地に居座り、魔軍としての脅威を与えつつその地にあるものを搾取する。
虐殺や掠奪については各軍の裁量に一任されるが、国が壊滅するほど致命的な傷を負わせることは許可されていない。脅威を与え続けることが重要なのだ。小国であれば数十年に何度かは滅ぼすこともあるが、魔軍が撤退し、そこに出来た空白地帯は時が経てば再びどこかの国が取り込むか、新しい国が興る。それほど問題にはならない。
しかし、今回は事情が違う。今回は、魔王ナイチサの勅命。初めての大規模攻勢だ。
新たな魔王の恐怖を人類に刻みつけるため、大国を血に染める。
ゆえに今回は完全に滅ぼす。目的はこの地に地獄を作ることだ。
理解は出来る。私人として虐殺は趣味ではないし、別に人間を進んで苦しめようとは思わない。助けられるのなら助けるだろう。
だが魔軍参謀として、魔人の最高位である魔人筆頭としては、この作戦が合理的なものであると既に認めている。
魔人として、この命令は絶対。自分も了承したものだ。
だから後は、この書類にサインを入れるだけ。そうするべきのはず。
今まで何度だってやってきたし、覚悟はしていた。今更この程度で躊躇することはない。
「…………くそ」
なのに――ペンが動かせない。
頭では理解しているというのに。
故郷など、今更何の価値もないはずなのに。
自分には未だ、故郷を血に染めたくないと感じるだけの思い入れが、残っているとでも言うのか。
「どうする……?」
再びペンを置いて考え込むも出てくるのは同じ結論。
こうするのが一番楽に命令を遂行出来るという結論。
苦労する方を選ぶはずもない。
何せ、それで犠牲になるのは自分の部下達だ。
負けることはないが、戦争をする以上、犠牲は必ず出る。そこは躊躇いを覚えない。シビアだが、戦う以上はどちらも死ぬ。戦士としての心構えであり、当然のことだ。
しかし責任ある立場として、下の者たちを動かす以上。戦争をする以上は最善の結果が出るように動く。
それこそが、上に立つ者の責務だ。
敵に情けをかけた結果、味方に被害を出すなど笑い話にもならない。
それでもエゴを出すというのなら、堂々と恥じることなくそれを行うべきだ。分かった上で本能のまま、やりたいことをやるというのも、上に立つ者に許された権利。
そこに後ろめたい気持ちを覚えてはいけない。堂々とエゴを通してこそ、下の者達が浮かばれる。
だから自分に付いてくる者達が大勢いる。自分に従いたいと頭を垂れる者達がいるのだ。
魔王の配下として、大勢を支配する魔人として、そのバランスさこそが肝要。事実、ここまで結果を出せているから、自分はここにいる。
その自分の経験と判断が、これに署名すべきだと訴えている。
乗り越えろ。必要な犠牲だ。こんなことはこれからも腐るほどある。こんなことで一々逡巡するな。たかが、過去の故郷である、という一点だけで、周りを不幸にする必要はない。
その一点。その一点が――
「――レオンハルト様ー!」
「――あ?」
と、不意に扉から音が聞こえた。
それは扉をノックする音と、外側から聞こえる声――キャロルのものだ。
「どうした?」
「はい、レオンハルト様にお手紙が着てますの!」
「手紙? ……とにかく入ってこい」
レオンハルトは怪訝な顔をしながらも、キャロルを部屋に招き入れる。
「失礼致しますわ! おはようございます、レオンハルト様!」
「ああ、おはよう。で、それが手紙か?」
キャロルの手に握られた白い封筒に視線を向けて言う。キャロルが朝だからか、普段よりも元気よく声を上げ、
「はい! お手紙ですの! 街の魔物兵が見つけて届けてくれましたわ!」
「……街の?」
「はい! 何でも、その魔物兵は前線から来た別の魔物兵から渡されたそうですわ!」
魔物兵からの手紙。そう判断するがぶっちゃけ意味が分からない。
というか、
「誰から、とは言ってなかったのか?」
「それが言ってなかったようですの! ただ、宛名がレオンハルト様だったので慌てて持ってきたそうですわ!」
「……よく分かんねぇな。――とりあえず」
レオンハルトは胡乱な物を見るような視線を向けつつも、とりあえず便箋を開いた。
……随分と上質な紙だな。
ひょっとしてケッセルリンク。もしくはカミーラからだろうか。
いや、大穴でナイチサという可能性もなくはない。こういう貴族的な回りくどいやり取りも好きそうだ。
そんなことを考えながら手紙を開く。すると、
「――――」
そこに書かれていた文面に、目を疑う。
キャロルが首を傾げて、
「レオンハルト様? 誰からでしたの?」
「…………」
「レオンハルト様?」
キャロルの声にも反応出来ず、ただ無言で手紙に目を通し続けた。
しかし、やがてその全てに目を通すと、
「――ざけんじゃねぇぞ」
「え?」
小声で悪態をつく。
そして立ち上がると、
「――少し出てくる」
「はい! ……って、どこにですの?」
「……ちょっと、手紙の送り主のところにな」
安心しろ、と。
「すぐに戻る」
「! ……はい! いってらっしゃいませ!」
「ああ」
キャロルがこちらの表情を見て一瞬何かを察するも、その上で快く送り出してくれる。そのことをありがたく思いつつ、レオンハルトは執務室の窓を開いて中庭に飛び降りた。
その手には彼の憤りを形にしたように、ぐしゃり、と握り潰した手紙があった。
草原を行く一人の影がある。
それは額の青いクリスタルと長耳が特徴的な美人であった。
広々とした大地を進みながら、魔人四天王の一角――ケッセルリンクは息を入れる。
「……もうこんなところまで来たのか……」
地図を見ながら疲れたように言うも、実際に疲れたわけではない。体力的には余裕あるものである。
だが、精神的には少し疲労を感じる気がする。
……もう三日も経つな。
レオンハルトに励まされ、その翌日に城を出てから三日。ケッセルリンクは目的を持って彷徨っていた。
それは自分で納得してのことであったが、それでも一人で来たことに対する新鮮さと不安がある。一人旅など、一度としてしたことがない。
いつも誰かしらと一緒であったからだ。プライベートであれば身内がいるし、仕事であれば魔軍の面々がいる。
しかし今は完全な一人。これがレオンハルトと二人とかであれば楽しいのだろうが、一人だと、
「……寂しいな」
やはり誰かといることに慣れた所為か、一人だと心に穴が空いた様だ。
ただでさえ、最近はレオンハルトの城に泊まってばかりであったので余計にそう思う。あの城と、街の賑やかさが懐かしい。
「……はぁ……」
らしくもない溜息を吐いたその時だ。正面から声が聞こえたのは、
「――こんなところで、何をしているのですか。ケッセルリンク様」
「む……」
見ると、突然その場に現れた黒い髪の女性が、膝を突いた状態で声を掛けてくる。
その口調は、おおよそらしからぬ丁寧なものであり、
「旅に出たとは聞きましたが、そのように溜息を漏らしていると――」
「……始祖様に敬語を使われると、やはりむず痒いですね」
「――あ、やっぱり?」
と、そこで立ち上がったのは、ケッセルリンクとしても馴染みある元カラーの女性。
レオンハルトの使徒であるハンティだ。彼女は、先程の自分の様子が可笑しかったのか、歯を見せて笑い、
「いや、あたしの立場としてはこれが正しいはずなのに、敬語を使ってみると変な顔されるんだよね」
「私としても、慣れねばいけないのですが……未だペールともども、始祖様と呼んでしまう始末で」
「まあ……他の魔物がいる時じゃなければいいとは言われてるけどさ。正直、主の魔人に対しては結構フランクな使徒もいるっぽいし、レオンハルトにだけは普通でいいかなって思うんだけど、どう?」
「ふむ……。しかし、様付けだけはしている様な……」
「じゃあ――“レオンハルト様、パン買ってきて”、みたいな感じでどう?」
「……パシリですか」
「面白いでしょ?」
冗談めかして言うハンティの姿に、自然と笑みが溢れる。
実際にやったら周りの魔物兵らは卒倒するのだろうな、と思いながら、
「フッ、中々に面白いですね、それは」
「まぁ、実際にやったら物凄い反応返ってきそうだけど――って、そうだ。忘れる前に……はいこれ」
途中で何かを思い出した様に、懐に持っていた布を渡してくるハンティ。
それを手に取りながら、
「……これは?」
「フード。様子見ついでに、持ってなかったら渡しておこうと思って」
「……必要なのですか?」
疑問に思ったので言うと、ものすごい微妙な表情を返される。溜息付きで、
「……いやいやいや、そのまんま人間の街入ったら怪しまれるから。存在感あるし、そもそも見た目カラーだし。あんまり目立ちたくないでしょ?」
確かに、と納得する。
何となく大人しくしてれば大丈夫だろうと思っていたが、冷静になって考えてみるとこっちのほうが確実だ。ありがたく受け取らせてもらう。
「感謝します。始祖様」
「いいって。……それより、使徒見つけるんだって?」
と、ハンティがこの旅の目的を口に出してくる。
ケッセルリンクは頷き、
「……はい。少し思うところがあるので、探してみようかと」
「んー……まぁ、頑張ってね。……というか、どうせ使徒になるならそっちの方が良かったなぁ……」
「……それは……何とも……」
「あ、いや、冗談だけどね。とっくに納得してるし」
微妙な気持ちを察してくれたのか直ぐ様冗談だと言うハンティ。そして気を取り直して、
「ま、何もないとは思うけど気をつけてね。ここをもうちょっと行ったら人間の国に入るから」
「はい。わざわざありがとうございます」
頭を下げてお礼を言う。顔を上げると、ハンティは苦笑しており、
「……こうやって畏まられるのに慣れてるあたしの所為でもあるのかなぁ……」
「……それも何とも言えませんが」
だよね、と納得するハンティに微笑を向ける。しかし、
……もうすぐ人間の国か。
考えてみればカラー時代も森から出たことがなかったため、プライベートで立ち寄るのはこれが初となる。どこかに良い使徒候補が見つかってくれればいいのだが。
そう思い、ケッセルリンクはハンティと別れ、人間の国に足を踏み入れた。
スラル「次回はレオンハルトが激おこだって聞いたんだけど本当?」
ペール「いやぁどうでしょうねぇ……」
キャロル「わたくしには何とも言えませんわ! ただ、ちょっとした因縁が――」
ペール「あああああ!! 言っちゃ駄目ですよう!? ち、違いますからねー? レオンハルト様はアレです。な、仲直り的な? お礼参りとかそういう感じですよう!」
ハンティ「……なーんか、色々と解釈出来そうな言い訳だね……」
ラウネア「…………(ラウネアです。最近、意味もなくガルティアのお腹の穴に糸で巣を張ったら、出かけようとしたタルゴとサメザンが巣に引っかかって大変なことになり、ガルティアに怒られました。さて次回は? “実家に帰らせていただきます”)」
タルゴ「…………(故郷の接待)」
サメザン「…………(レオンハルト、怒る)」
ラウネア「…………(の三本です。明日もまた見てくださいね!)」