その少年――パイアールは、家の中で作業を行っていた。
箱に敷き詰めていた様々な部品となるもの、ゴミ捨て場や町の色んな場所から拾ったそれらを工具や色んなものを使いながら組み合わせる。
姉さんは家事を済ませているが、それが一通り終わると外に出るので、それまでに工程を終わらせたいものだ。
……うーん、こっちはもうちょっと効率良く出来そうだな……。
機械、と呼んでいるそれらの発明品は、様々なことに応用が利きそうだ。
その中で、お金を稼ごうとするならやはり武器にするのが手っ取り早いだろう。
なにせ世の中は魔物で溢れかえっているし、どこの国も魔軍との戦争で疲弊しているのだと言う。幸いにもこの町に魔物が押し寄せてきたことはないけど、それでも人の不安は消えない。
ゆえに人は兵士や武器――つまり武力を求める。
……僕の開発するものは、武力を与えられる。
それが存在するというのなら、国はこぞってそれらを欲しがるだろう。生き死にの問題であるから金に糸目は付けない。一つ作るだけで大儲け出来るのだ。そうすれば生活も楽になって、姉さんも楽が出来るし、他の猿に施しを受ける必要もなくなる。
……姉さんは、僕が助ける……。
最愛の姉さんのためなら、なんだって出来る。そういった想いで、手を動かす。
しかし、
「――っ、けほっ……」
「! 姉さん! 大丈夫!?」
不意に、姉さんが咳をして苦しそうに胸を抑えたのを見て、機械を放り出して姉さんの元に駆け寄る。
「大丈夫よ……ちょっと、咳が出ただけだから……」
「ううん! 何があるか解らないんだからちゃんとしなきゃ駄目だよ! ほら、今日は医者に行こう?」
おそらくは風邪だろうけど、万が一でも大きな病気の可能性があれば用心するに越したことはない。姉さんの手を引っ張って病院に行くように促す。
すると困ったように笑みを浮かべて、
「もうっ、パイアールったら大袈裟なんだから……わかったわ。今日はお医者さんのところに行きましょう。少し違和感もあるし……」
「それは大変だよ! なら早く行こう! すぐに支度して!」
急いで準備をする。機械なんか開発してる場合じゃない。
「心配してくれてありがとう、パイアール。でも、大丈夫だからね。ゆっくり行きましょう」
「……だって、姉さんが病気だと思うと、居ても立ってもいられなくて……」
「まだ分からないでしょ? もう……」
少し慌てすぎた。姉さんに呆れたように注意される。
だが、医者に行くのは確定してるようで、姉さんは準備を進める。
……何もなければいいけど……。
そう思って、姉さんとともに医者に行き――僕は唖然とした。
姉さんは病を患っていた。それは、
――不治の病。カスケード。
放って置くと手足が痺れ、咳が酷くなり、内臓を死滅させる死病。
――姉さんが生まれてから20年と94日。
――僕の孤独な戦いが始まった日だった。
「――というわけで、料理長ってどんな人なんだ?」
「……出会うなりにそれ? まあいいけど……」
食堂から研究室に戻ったガウガウは、外から帰ってきたのか、室内にいたハンティにさっそく声を掛けた。
魔法の研究を一緒にする同僚なので、ガウガウにとって一番よく話す間柄だ。使徒だけど、割りと常識人なのと、数少ない貧乳なのがポイント高い。他の奴らは異常者か、巨乳ばかりだからだ。
そんなハンティは白衣を着たまま椅子に座り、カツサンドを食べている。メイドに申し付ければ好きなものを部屋まで届けてくれるからだ。普段はガウガウもそうしている。
……というか、そのカツサンドも美味そうだな……じゅるり。
食べたばかりだというのによだれが出そうになる。ここの料理は美味すぎて悩ましいものだ。それでも、夜中にはカップラーメンをこそこそと食べるのだが。夜中に食うと妙に美味いのもあってやめられない。クセになっているのだ。
そして、ハンティはカツサンドを飲み込むと、軽く半目になりながら、
「ていうか研究はしなくていいの?」
「料理長がどんな人間なのか気になってしょうがない。これじゃあ研究も手に付かないからな」
「……なら会いに行けばいいのに」
「いきなり会いに行くのは怖いだろっ! しかも、なんかヤバそうな人らしいし!」
そこのところもはっきりさせておきたい。なので尋ねるとハンティは、ああ、と得心したように頷き、
「確かに……色々とアレだからね……」
「いやだからアレって何!?」
「……いや、うん……料理は凄い人だよ。ただ……あたしはちょっと苦手かな……」
こめかみを押さえて息を吐くハンティ。その様子から見るに、やはりヤバい人の予感がする。
「……あたしよりもキャロルかペールの方が色々と知ってるから聞いてきたら? ……ちょっと理解したくないし……」
「……え~、あの二人かぁ……」
ちょっと面倒だ。騒がしいというか異常者だし。
しかし背に腹は代えられない。ならばそうしようかとハンティにお礼を言って部屋を後にしようすると、
「――わたくし達を!」
「――呼びましたね!?」
先に扉が開け放たれ、外から件の二人が勢いよく入室してくる。
ビシッと二人揃ってポーズを取る二人に、ガウガウは半目と溜息付きで一言、
「……やっぱり聞くのやめようかな……」
「……というか何で呼ばれたのがわかったのさ?」
ハンティが問うと、キャロルとペールは得意気な笑みを浮かべ、
「レオンハルト様に教えてもらいましたの!」
「ガウガウさんが料理長のことを深く知りたいらしいので教えて差し上げるように言われたので! 出張サービスです!」
「何でも聞くとよろしいですわ!」
胸を張って言う二人。キャロルはともかく、ペールの方は胸が揺れたので帰ってほしい。せっかく貧乳率100パーセントだったのに、それが薄まってしまった。
だが、知っているというなら利用してやろうとガウガウは口を開く。
「……じゃあ聞くけど、料理長ってどんな人なんだ?」
具体的に頼む、と付け加えると、まずキャロルが、いいでしょう、と、
「料理長はとても凄い人間ですわ。まずは、そうですわね――料理で人が倒せますわ」
「……は?」
ちょっとよく解らない言葉が聞こえた。
……料理で人を倒す?
ちょっと意味が解らない。考えても解らない。
しかし冗談を言っているような雰囲気ではなく、ハンティは目を逸らしているし、続けてペールも、
「倒せるのもそうですけど、本気を出したら料理を食べさせて相手を脱がせることが出来るんですよう」
「脱がす!? 変態なのか……!?」
「いえ、あくまで料理を食べた相手が美味しすぎて悶絶して、自主的に自然に脱ぐだけです」
どっちにしろ変態だろ……! と、思うも、それだけで異常な噂は止まらなかった。
今度はキャロルが、
「あと、御本人も美味しいものを食べたらすごいリアクションを見せてくれますわ! 口や目からビーム出したり……」
「ビーム!?」
「本当に凄いんですよう? ”うまああああああい! 美味すぎるぞおおおおお!” とか叫んで目と口からビームと言いますか、白色破壊光線を出すんです。あれは必見ですね」
「目と口から白色破壊光線……!? それ絶対化け物だろ!! 人間じゃない!!」
むしろ人間であってほしくない。頭の中でとんでもない化け物がシェフハットを被って料理をしているところを想像してしまう。
「いえ、確かに人間ですわ! 下手な人間や魔物よりもお強いですけど!」
「ちなみに、私よりも古株なんですよ? この城が建てられた時からいますし、それ以前は魔王城で料理をしていたらしいので」
「え、えぇ……?」
聞けば聞くほど常識から逸脱した話が湧いて出てくる。
噂を聞いてからちょっと会いに行ってみようかと思っていたが、段々怖くなってきた。そうやって戦慄していると、横からハンティが補足するように、
「……ちなみに、料理長は17代目……くらいだっけ? 先祖代々、それこそ魔王城が出来てから約千年、ずっと魔軍で料理人として働いてきた一族だよ」
「へ、へぇ……」
そんな変態化け物一族の末裔がこの城の中に住んでるのかと思うとガウガウは微妙な気分になる。
しかし、不意にキャロルとペールが、ガシッ、とこちらの両腕を掴むと、
「では、それを踏まえた上で――早速会いに行きますわよ!」
「へっ?」
「今はお昼過ぎですし、そこまで忙しくないでしょうからちょうどいいですよ!」
「え、あっ、ちょっと……心の準備が……!」
二人に抱えられてしまったので抗議するようにじたばたと抵抗するも、使徒の力を振り解けるはずがない。
なので助けを求めるように同僚に向かって、
「た、助けてハンティ!」
「……さぁて……あたしも、そろそろ仕事しないとなー」
「あっ、こら! 一人だけ逃げるな! この薄情者!!」
よっぽど自分も巻き込まれたくなかったのか、同僚を見捨てたハンティに抗議する。しかし聞こえていない振りなのか、口笛を吹きながら明後日の方向を見ている。後で覚えてろよ、と報復を誓うも、自分の身体は悲しいかな、使徒二人に連れてかれ、研究室を後にする。
「ちょっ、だから心の準備――!?」
――ミシュラン一族。
それは代々魔軍の料理番を務める人間の一族の名である。
その成り立ちは古く、先代の魔王の治世。
その最初期、魔王城が建てられた際に外から人間を攫い、料理をさせていたのが始まりであり、その中にいた一人の人間が、ミシュランという一人の男である。
初代ミシュランと後世にて呼ばれたこの男は、優れた料理の才能を持ち、魔王城の厨房を預かっていた料理人の中ですぐに頭角を現し、魔王直々に料理長に任命された。その後、他の料理人の監督、教育を行い魔軍の食を担ってきたミシュランは魔王だけでなく、魔人カミーラや魔人レオンハルトといった上級魔人の舌を唸らせ、あの魔物界一のグルメ魔人、ガルティアにも最高の料理人だと認められた。
ミシュランは魔王城の中で同じく連れてこられた女性の料理人と付き合い、子を成すと、その子供にも料理人としての教育を施した。
そしてその子供が育ち、立派な料理人になると同じように子を成して出来た孫に親子揃って料理人としての教育を施し、その子も立派な料理人となった。やがてミシュランが老衰によって亡くなると、彼が書いたレシピと使っていた器具、ミシュランという名前とともにそれは子供に受け継がれる。
そうして何代もの間、魔王城の料理長として君臨したミシュラン一族は、レオンハルトシティで出される多くの出店のメニュー作りに携わり、やがて魔王が代わるのとともに、魔人レオンハルトに召し抱えられ、そのまま料理長として働いている。
幾人かいるミシュランの一族は、魔王城や魔人カミーラの城などに別れて、それぞれの場所で料理長を努めているが、その中でもミシュランの名を冠し、名誉総料理長、”料理の帝王”とも呼ばれる男こそが、紅魔城料理長である――
「――貴様あああああああああ!! 何だこの料理はあああああああああああ!?」
「ひぃっ!? も、申し訳ありません料理長!!」
厨房にて他の料理人を怒鳴りつけるのは、先祖代々伝わる大包丁とフライパン、歴代のミシュランが開発、発見した千を超える料理が記されたレシピ帳を手に持ち、仮面で顔の上半分を隠した筋骨隆々の大男。
彼こそがミシュラン一族の現総代――ガストロノミー・ミシュラン。
約五百年、永久保護魔法によって生き長らえながらレオンハルトの城で料理長として働く男である。
魔物と見紛うほどの肉体を持つ大男は、実際に超人的な身体能力を持ち、特に耐久力は人間とは思えないほど高く、下手な人間や魔物より強い。若い頃に未知なる食材を探し求めて世界を旅した結果らしい。先祖代々伝わる大包丁は普通の包丁では捌けないほどに固い生物や巨大な生物を捌くためのもの。ミシュランの名を継ぐためにはこの大包丁を自由自在に操る必要があるらしい。破天荒な性格で、料理に対する拘りは異常ともいえるほどで、どんなに些細なミスも許さない。
料理界のマエストロ。千のレシピを持つ料理人。化け物。様々な通り名で呼ばれる料理長は厨房全体に聞こえるどころか、壁を貫いてしまいそうなほどの音量で声を上げる。
「料理とはああああああッ!! 材料! 器具! 技術! それら全てを使い、己の心――即ち愛でもって作る究極の美!」
膨れ上がった筋肉によってピッチピチになったコックコートと異様に長いコック帽子を被った料理長は厨房で叫ぶ。
「相手への思いやりなくして料理とは云わず! 相手への思いやりこそが料理の真髄! だというのに貴様は――」
「は、はっ、一体何が駄目で――」
「火にかける時間が長あああああああああああああいッ! 長過ぎる! ライゼン様へお出しする肉はレアだと言っているだろうが!!」
「……どうやら指導中みたいですね」
「声を掛けては悪いので、しばらく待つのが吉ですわ」
「ちょ、超怖いんだけど……!?」
厨房の入り口にて中を覗き見る三人の姿がある。キャロルとペールの両名につれてこられたガウガウは、2メートルを優に超える料理長を見て震えていた。
三人が観察の姿勢に入ると、怒鳴られた料理人である男は料理長に向かって恐る恐ると、
「で、ですから……その、レアにしたつもりでしたが……」
「違うわ馬鹿者め!! 火入れが4秒も長ああああい!! いいか!? ライゼン様はドラゴンなのだ! 通常のレアの肉よりもほんの少し血が滴るくらいが好みなのだぞ!!」
「な、なるほど……」
言い方は迫力があってアレだが言ってることは納得のいくものだったので、料理人が頷く。すると料理長は調理台に置かれていた特大の肉を片手で持つと、
「いいか!? しっかりと見ていろよ……!!」
そう言って巨大な肉を鉄板に置く。そして、声を上げ、
「フハハハハハハ!! この肉め……! 焼き殺してやる……!!」
「いや、もう死んでるだろ!?」
思わずツッコミの声を上げてしまう。
すると、何人かがこちらに気づいたが、肉を焼くことに集中しているのか料理長は気づかない。そして、
「フハハハハ!! そう、このタイミングだ!! このタイミングで肉を――む?」
「――え、あ……」
すると、教えていたはずの料理人が余所見をしているのを見て、拳を震わせると、
「貴様あああああああ!! 何を余所見しているかあああああああ!?」
「ひっ!? も、申し訳ありません!!」
「お前も美味しくしてやろうか!?」
「ご、ごごごごごめんなさい……!!」
巨大な包丁を手にとって凄む料理長に料理人が震える。確かに、あれは怖い。美味しくしてやろうか、ってなんだよ。調理されてしまうのか?
と、ガウガウが思っていると、不意に料理長と、
「――む?」
「――あ」
目が合った。そして、
「……貴様はああああああ!!」
「う、うわあああああああ!? 勝手に入ってごめんなさーーーいっ!?」
自分も美味しくされてしまうのか、と恐怖する。しかし、
「何故子供が入って……まさか貴様――」
言う。こちらを見下ろし、
「腹が減ったのか!?」
「…………へ?」
蹲るこちらに対し、そんなことを言う料理長。
涙目で見上げると、さらに身体を震わせて、
「うおおおおお……!! 何ということだ……! 腹が減って涙を流すほどとは……!!」
「え、あの、ちが――」
「レオンハルト様に厨房を任された身として……!! 腹を空かせた者を出してしまうなど、顔向けが出来ん!!」
うおおおお……! と声を上げながら涙を流しはじめた料理長。
そして調理場に向かいながら、
「待っていろ幼き少女よ……!! 直ぐに美味しくて温かいお料理をお出しするからなあああああああ!!」
言って調理台に並べられた食材を適当に手に取り始める。
そうして手に持った巨大なフライパンをコンロに掛けると、目にも止まらぬ速度で調理を始め、
「――完成だ! JAPANから届いた新しい食材を使った――和風チャーハン!!」
「ふ、あ……」
皿に盛り付けられた料理を目の前に差し出され、香ばしい匂いが漂う。
先程食事は摂ったはずなのに、食欲が湧いてくるから不思議だ。そんな自分に、料理長は高笑いをしながら、
「さあ頂くが良い少女よ!! 鰹と梅が絶品だぞ!!」
「うっ、ごくり……じゃ、じゃあ……いただきます」
差し出された皿を受け取り、れんげでそれを掬って口にする。
「お、美味しい……! はぐもぐ……!」
「フハハハハハハ!! そうだろうそうだろう!! 沢山食べるがいい少女よ!!」
「うんま……!」
もはや料理長など気にならず、料理をひたすらに口に運ぶ。そうしていると背後から、
「ちょっと、ずるいですよガウガウさん!」
「わたくしも食べたいですわー!」
厨房に二人が入ってくる。それを見た料理長が、
「おお……キャロル様にペール様!! どうされましたか!?」
深くお辞儀をしてみせる。意外と礼儀正しい。料理にぱくつきながらやり取りを見ていると、キャロルが、
「ガウガウさんが料理長に会いたいというので連れてきたのですが、やって来たらわたくしもお腹が空いてしまいましたわ!」
「私もですよう!」
「フハハハハハハハ! それはそれは!! 直ぐにお作り――む? ガウガウさんと言うと――」
途中でその名前に気がついたのか、首を傾げる料理長。ペールがこちらを指さして、
「そこの方がガウガウさんですよ」
「……おおっ!! そうでしたか!!!」
「へっ、な、何!?」
急に料理長がこちらにも頭を下げてくる。歯を見せて笑いながら、
「料理のための魔道具を提供してくださり、いつもありがとうございます!!!」
「あ、あー……いやまあ……頼まれたし……」
「……ぐううううううう!! 何とお優しいのだ!! こうなれば、ガウガウ様のために夕飯は腕によりをかけて新料理を出して差し上げねば!!」
「わたくしにも何かくださいな!」
「私もほしいですよう!」
キャロルとペールが再度注文すると、料理長は高笑いして、
「フハハハハハハ! ご注文承りました!! 直ちにご用意させていただきます!!」
休むこと無く料理を再開する。
幾つもの行程を同時に進めながらもその動作に乱れやミスは一つもない。大鍋を力強く掻き混ぜながら、
「そうだ、もっと良い出汁を……旨味を出すがいい……! じっくり煮込んでやる……!」
「……言い方は怖いが、よく聞けば普通のことを言ってるんだな……」
「そうですね。まあ先程言ったことは全部事実ですけど、親切で優しい人ですよ?」
「お腹を空かせてる人を放っておけない人なのですわ!」
……あれ? この人、滅茶苦茶良い人なんじゃ……?
それどころかこの城に住む人の中でもぶっちぎりに人格者な可能性が出てきた。見た目や口調が威圧的で、多少人間離れしてるだけなのではと、
「……いやでも、先程のが事実だったら全然まともじゃないような……」
「……まあ料理長強いですからねぇ。この間、間違ってライゼンさんの尻尾に吹き飛ばされてましたけどピンピンしてましたし」
「城の使用人の中では、料理長とメイド長の二大巨頭だと言われていますわ!」
「フハハハハハハ!! キャロル様! 和風出汁で作った海鮮あんかけ焼きそばお待ちしました!」
「フハハハハハハ!! ペール様には旬の野菜たっぷりホイコーローです!」
「ありがとうございますわ!」
「お野菜たっぷりで美味しそうですね」
「……料理の上手い化け物か?」
会話の間に入って、キャロルとペールにそれぞれ料理を手渡す料理長を見て呟く。というか今、料理長が二人に……分身というか残像が見えたぞ。
料理長の動きにげんなりしていると、またしても背後から、
「お呼びでしょうか、ガウガウ様」
「!? め、メイド長……!?」
急に現れたメイド長さんに身体をびくん、と震わせる。笑顔を向けてこっちもこっちで化け物なのか、と思っていると、こちらを通り過ぎて、
「料理長。今日は夕食にケッセルリンク様も来られるそうですから、そのつもりで準備をお願いしますね」
「了解したメイド長!! フハハハハハ! 食材共よ、今日は大忙しだぞ!! 切り刻んでやる……!!」
「ではそのように。それでは皆様方、お仕事があるので失礼致します」
やり取りを交わし終わると、メイド長さんがお辞儀をした後、直ぐにその場から立ち去る。
それを見て、ガウガウは大きく息を吐くと、
「……うん……人間も魔物も……中にはおかしな人はいるよね……」
「ガウガウさんが悟ったような目をしてますわ」
「許容範囲を超えたんですね……」
「もう突っ込んだら負けな気がして……」
しみじみと言う。
そしてハンティや皆が言っていた意味が分からなくもない。どうもされなかったが、それでも個性的過ぎる人物だ。
……良い人だけど、関わると疲れるから必要以上に関わるのはやめよ……。
ガウガウはとりあえず食事を食べ終えると、そそくさと厨房から出ていった。
スラル「かなり昔からいる料理人一族がようやく登場ね」
レオンハルト「初代は俺もガルティアも会ったことがないからな……」
ガルティア「そう考えたら最も古い一族ってことになんのか? 初代の料理も食べてみたかったな……」
ケッセルリンク「……まさか昔からこんな感じの人だったのか?」
スラル「初代はこんなムキムキじゃなかったんだけど……ただ、ハイテンションでヤバイ人だったのは間違ってないわ。どっちかと言うと魔術師タイプね」
ガウガウ「料理人なのに魔術師タイプって何!? というかはじめまして!!」
スラル「まああの大きい包丁を扱うくらいには強かったけどね。……はじめまして」
レオンハルト「ちなみにその昔、包丁でドラゴンを狩ったことすらある」
ライゼン「……闘争の結果だから文句は言えんが……出来ればやめてほしいな……」
ラウネア「…………(ご飯残すと凄い勢いで泣くから困る)」