JAPANの春は正に長閑、という言葉が似合う季節であった。
爽やかな風に澄み渡る空。冬の間は物言わぬ木々たちは一斉に芽吹き、色とりどりの花を咲かせる。農民達も田畑に出て、種を巻き始める季節でもある。野山では冬眠から覚めた獣達が野を行き交うようになり、雪解け水が湧き水となって麓に降りてくる。地震や妖怪による災害に悩まされるJAPANに於いても、それは長閑と形容してもいいものであった。
そんな穏やかな春の季節に、桃色の花――桜の木が生え、咲き乱れる庭園がある。
そこはある貴族の屋敷であり、敷地内には警備の召使い。この屋敷に仕える――武士、侍と呼ばれる者達がいた。和装に身を包み、刀を帯刀した彼らはJAPAN特有の階級、職業であり、JAPANを牽引する存在である。
地震、妖怪、鬼、様々な災害――特に妖怪や鬼に対抗するために武装し始めたのが起源とされ、彼らは一つの共同体として家という形を取り、その土地を収め、勢力を作った。
それが武家。武士、侍が属するJAPANの盟主達であり、この屋敷はその武家の一つ――藤原家が所有する屋敷であった。
その庭園の真ん中で、武士を圧倒する者がいた。
「やぁ――!」
「むおっ!?」
武士は手に持っていた訓練用の木刀を弾き飛ばされ声を上げる。気がつけばもうひとつの木刀が武士の顎を下側から突き上げるように添えられていた。
木刀を突きつけているのは、武士の身長の半分程しかない男児であった。顔立ちは歳相応の幼さがありながら、しかしどこか猛々しさを感じる強い目をしている。その瞳が、武士を射抜いた。それに気圧されるように武士は言う。
「……参りました」
「うむ! 良い腕であった! また頼むぞ!」
少年の上から目線の言葉に武士は、は……、と短く平服するしかない。
しかし不快に思うことは何もない。この男児、侍が仕える藤原家の四男として生まれた。つまりは主君の子であり、幼かろうとも身分は上。武士にとって身分というのは重要なものだ。
加えて言うならこの男児――石丸は齢三つの時に初めて剣を握り、五つの時には既に超越した剣技を振るっていた。今は七つ。藤原家に仕える武士の中で上から数えた方が早いこの武士であっても、相手にならなくなってきている。つまりは今更であり、天より賜ったとも云われる藤原家きっての剣の天才。麒麟児に負けたとて恥になろうはずがない。
しかしその人間離れした剣の強さが、四男であり家督を継げる位置にいない石丸を、更に冷遇せしめることになろうとは皮肉でしかない。その強さを、彼の兄達や父、果ては石丸が慕ってやまない母からも疎んじられ、主城から離れたこの屋敷に、半ば臭いものに蓋をするように預け置かれたのだ。
石丸の破天荒な性格も災いした。年の割りにしっかりとした考えと、教養を理解出来る頭を持っていたが、その素行は些かやんちゃに過ぎた。
屋敷を抜け出すのは当たり前、悪戯の常習犯であり、野山に出て獣や魔物を狩ってくることは日常茶飯事、それに姫様まで誘って行くのだから仕える武士や召使いからすればたまったものではない。あまりにも頻度が多いので、狩りに限っては敢えて許可を出し、供を付けることで解決しようとしたくらいだ。
しかしそれでも石丸は抜け出すことをやめないので、屋敷にいる武士達は半ば諦めた。というのも、武士達、召使いも何故か破天荒な石丸のことを嫌いにはなれず、一部の武士や召使いからは好感まで持たれるほど。理由は解らないが、人を惹きつける何かがある、と、石丸とよく手合わせを行う武士は見ていた。
特に女人にはよく好かれる。子供、というのもあるが端正に整った顔立ちのおかげだろうか。全くもって羨ましいものである、と武士は屋敷に戻っていく石丸を見て一息ついた。
石丸は武士との手合わせを終えると、中庭の井戸から水を汲み、一口飲むと、縁側に腰掛けた。
すると手合わせを見ていたのだろう、綺麗な着物を着た幼子が近づいてきた。そして石丸を見て一言。
「石丸さま……すごかった……!」
「む、そうか? 春には解らないであろう?」
春、と呼ぶその姫の名は――春姫。
歳は石丸より二つ下。短く切り揃えられた桃色の髪が特徴的な藤原家の縁戚の姫であり、訳あってこの屋敷で共に暮らしている。謂わば幼馴染であった。石丸が良く外に連れ出すのもこの春姫である。内に籠もっていてはつまらんだろう、という善意によるものであるが、春姫はともかく召使い達は困っていた。あまり悪影響を与えないように、とお達しが来るほどである。
だがそんなこともお構いなしに、石丸は話しかける。解らない、と言われた春姫は頬を膨らませて怒ってみせる。
「むー、わかるもん。石丸さまは、あぶないことがとくいなんです」
「危ないことなどない! 俺は天才だからな!」
ハハハ! と豪快に笑う石丸に、春姫はムスッとした表情になる。しかし、すぐに不安そうな表情に変化し、
「でも、あぶないことはだめですよ……外にでるのも……こわいし、けがしちゃうかもです……」
「外に出たくらいで怪我などせんわ! それに、外に出ることは怖いだけではないのだぞ!」
と、石丸は脇に置いていた幾つかの書物を手に取った。それは屋敷に置いてあった書物の中で、特に石丸が好む書物らである。内容はどれも似たり寄ったりな冒険物語。その中で毎日読むほどにお気に入りの一冊を手に取ると、石丸は春姫に見せつけるように掲げてみせる。
「外は楽しくて興奮することでいっぱいだからな! 内では出来んことも沢山出来るぞ!」
「……でも、ともも付けずにそとにでるのはよくないですし……」
「たわけ! 付けずに出るから良いのではないか! 知らぬことがあれば自分の目で見て確かめるのが面白いものよ!」
供を付ければ、何かと説明し、主君の子である石丸には危ない行動をさせないように働く。それも仕方のないこと故、理解は出来るが、自分で何か出来ないのは楽しくない。
それでは意味がない、と石丸は力説する。
「冒険とは、己の力で切り拓き、踏破するから面白い!」
「だから、剣のれんしゅうをしてるんですか……?」
石丸は頷いた。笑みとともに、
「自らの武勇で魔物を倒し! 新たな発見に胸を躍らせ! 夢を叶えるのが男児の本懐よ! 俺はな、春よ。己の力で夢を叶えてみせるぞ!」
「夢、ですか……?」
春は何だか解らない、といった様子で首を傾げた。しかしそれに構わず、石丸は無邪気な笑みで夢を語る。
「そうだ! 故に元服したら直ぐに旅に出るぞ! 後、数年であるからな! うかうかしてはいられん!」
「……でも、石丸さまは藤原家の――」
「俺は四男。家督を継げはせんからな! 誰も俺の行く末など気にしておらん! 精々、適当な縁を結ばせ、手駒にするつもりであろう!」
春姫の問いを理解し、被せるように答えてみせる。
石丸は自分の立ち位置をよく理解していた。自分が周囲、親兄弟からどう思われ、何故ここにいるのかも。
だがそのことで恨みを持ったり、憤慨することはない。それは仕方のないことだ。だが、
「自分の行末は自分で決める! 俺は夢を叶えるために旅に出るぞ! こんな小さな屋敷では、俺を閉じ込めておくには狭すぎるからな!」
親が、主家が何する者ぞ! と、石丸は豪快に笑う。周囲、たまたまそれを耳にした武士や召使い達はそれを聞かなかったことにした。面倒事には関わりたくないものである。
そして、それを聞いていた春姫は顔を俯かせ、
「……そう、ですか……」
残念そうにそう口にした。
ところが、
「……? 何を言っている。お前も連れて行くに決まっておろう!」
「へ……?」
春姫は顔を上げ、石丸を見上げる。そこには、憤ったような、不満そうな表情の石丸がおり、
「冒険にはそれを見届ける者が必要であろう! ……それに! お前もこんな屋敷で一生を過ごすのは嫌であろう! 腐ってしまうぞ!」
「く、くさる……」
その言葉に春姫は嫌そうな顔になる。それを見て石丸は更に勢いづいて続けた。
「そうだ! 腐りたくなければ俺と共に来い! 俺の傍で俺の冒険を――俺の夢が叶うその時を見届けろ!!」
「…………」
石丸は真っ直ぐで、そして無垢な瞳で、そう言い切った。
口元を釣り上げるような不敵な笑みを浮かべ、子供とは思えぬ堂々とした威風を身に纏う。
しかしその子供らしい小さな手は、春姫に向かって差し伸べられていた。
春姫は、暫しの間呆気にとられたような間の抜けた表情でそれを見ていた。しかしやがて、ゆっくりと、その手を伸ばす。
「……石丸さまの、夢……それは……それは、何なのですか……?」
疑問は自然と口から出た。石丸が言う。
「……まあ、春なら良いか。誰にも言うんじゃないぞ? ……俺の夢はな――」
春姫の手が、石丸の手を掴む。石丸も握り返し、春姫を引っ張り上げる。
――それは子供の頃の夢。
――しかし、今も変わらない昔の夢。
――それは藤原石丸という男の冒険の始まりであり、
――私と石丸様の……夢の始まりであった。
――夢を見ていた。
「――……丸様! 石丸様! 起きて下さい!」
「む……?」
こちらを揺り動かす振動と、声を聞いて覚醒し、薄っすらと目を見開くと、そこには見慣れた顔があった。
その男――藤原石丸は短い桃色の髪靡かせた女の名を呼ぶ。
「……春か。どうかしたか? もしや夜這いにでも来たか? それなら大歓迎だ」
「ち、違いますっ! そうじゃなくて――あんっ」
眼の前の女性――春姫の着物。石丸がその膨らんだ胸元に手を伸ばすと、春姫は声を上げた。
柔らかい果実の感触を堪能していると段々と微睡んでいた意識が覚醒し始める。次いでに股間の刀剣も抜刀を心待ちにしている。石丸は身を起こした。
「一回だけ構わんか?」
「構います! 今はそんなことしてる場合じゃ――んんっ!」
今度は尻を撫でる。また春姫が声を上げた。
やはり容姿の整った女を堪能するのは男児の本懐だな、と、その女体をまさぐっていく。
「起きる為に必要な行為だからな。うむ、これは仕方ない。一発沈めてもらってからでないと身体に力が入らんからな」
「う、だから……駄目、駄目です……」
「駄目とは可笑しな事を言う。身体の方は準備が出来ているようだが――がふっ!?」
と、下半身に手を伸ばしたはじめた石丸であったか、そこで不意に石丸の頭に打撃が飛ぶ。
短い声を上げ、頭を抑える石丸に、続いて飛んできたのは声であった。
「――戯け者がァ!! 軍議中に睡眠を貪るだけでは飽き足らず、何を情事に耽けようとしておる!!」
「むぅ、痛いではないか。何をする、麻呂よ。今は俺と春の情事の最中であるぞ」
「大事な軍議の最中じゃ馬鹿者が!!」
褐色肌の、白く立派な髭を蓄えた武者が怒鳴り声を上げる。
その爺の名は――坂上田村麻呂。
石丸の剣の師であり、征夷大将軍という武家の棟梁ともいえる要職に就く爺だ。そんな大事な仕事があるというのに、石丸の冒険に付いてきた変わり者の爺であるが、その元々の目的は元服するなり旅に出た石丸と春姫を連れ戻すためであり、旅の最中に何度も石丸と戦っている。
しかしいつの間にか旅に付いてくるようになり、いつしか、石丸の片腕、とも呼ばれるようになった。
そんな爺の隣に座する男が、顎に手を当てながら言う。
「小生としましても、さすがに軍議の最中に秘め事を行う者は初めて見ましたなぁ……全然秘めれておりませんが。しかしそれもまた一興でありますか……観覧させていただいても宜しいかな?」
「良くないです! 怒りますよ、ミッチーさん!」
「駄目でありますか……残念」
春姫の一喝にさほど残念そうでもなく言う男は――菅原ミッチー。
石丸や春姫とは幼い頃からの付き合いであり、世間では学問の神様、とも云われている男である。――変態だが。
着流しに煙管、ニヒルな笑みを浮かべた傾奇者といった美丈夫であるが、幼い頃より様々な教養を学び、大陸にも出て知識を得たJAPANでも一、二を争う知恵者だ。
しかしスケベな事でも有名であり、遊女遊びを毎日のように行い、官能的な詩や小説をよく書いている変態である。太政大臣、という政の長ともいえる要職に就いている。
ミッチーが手元の紙に筆でさらさらと何かを書いていると、今度は反対側に座っていた女武者がしなをつくりながら石丸に視線を送った。
「ほう、石丸様は溜まっておるのか。ならば、わしと一戦――」
「戯けが小娘ェ! 朕の言葉が聞こえておらんかったのか!?」
「さっきからうるさいぞ糞爺! ぶっ殺してやろうか!?」
「殺せるもんなら殺してみい! 先にその素っ首落としてやるわい!」
「上等だ糞爺! 殺される前にぶっ殺してやる!」
田村麻呂と言い争うのは長い黒髪を後ろで一つ結びにした美しい女性だった。
露出の高い山伏のような恰好をしており、とても口の悪いこの女性の名は――源頼光。
源氏、と呼ばれる武士団の棟梁であり、妖怪討伐で名を挙げた女傑であり、今回の石丸の旅で、石丸が軍勢を率いることになった原因でもある。
彼女が率いる源氏武士団は気性が荒く、血気盛んな者達ばかりであるためか、彼女自身も口を開けば何かと付けて、殺す、と言っていきなり刀を抜くことも珍しくないヤバい奴である。石丸の底知れない強さに惚れたため、石丸に対してだけは色づくが、それ以外に対しては大体厳しい。
「……皆の衆、落ち着け。石丸様も、皆を止めてくださりま――」
「何を新入りの癖に仕切っておるか月餅! 貴様も殺してやろうか!?」
「新入りは貴様もじゃろうが小娘ェ! 貴様の横暴さには温厚な朕の我慢も限界じゃぞ!! 死にたいのか!?」
「黙れ糞爺! 貴様が死ね!!」
「男は女陰に手を伸ばすと、そこから甘い蜜が――」
「変な物書かないでください!?」
「……はぁ……」
深い溜息をついた――おそらく男、それも老人である者がいる。
翁の面で顔を隠し、僧形に身を包んだその者の名は――月餅。
藤原石丸の参謀として名乗りを上げた謎の人物であり、その知識の量、奥深かさは深淵の如しである。知識人として知られる菅原ミッチーを越える叡智を持ち、戦術、戦略に詳しく、軍勢全体の兵站管理などを行っている。
しかし余りにもアレな者達に囲まれ、まだそれほど月日は経っていないのに既に春姫に次ぐ苦労人気質を開花させている哀れな老人であった。
田村麻呂と頼光が殺し合いを始め、何故かそれに月餅が巻き込まれ、ミッチーが自分で書きはじめた官能小説を音読し、春姫がそれにツッコミを入れたところで、石丸はようやく意識を切り替えた。
「……うむ! 賑やかで良いことだな! ――されど……そろそろ気を引き締めるか」
と、石丸がそう口にした瞬間。
各々好き勝手に行動していた皆が居住まいを正した。春姫だけが半目で、
「元はと言えば石丸様のせいですけど……」
「……月餅よ! 相手の陣営はどうなっておる!?」
誤魔化したな……、と皆が内心を一致させる中、尋ねられた月餅は、は、と短く応答した。
「斥候の情報によりますと、平将門率いる関東軍の数はまず本陣に二万。後詰に四万。対するこちらは一万に満たないほど」
「思ったより少ないではないか。これなら楽勝であるな」
「楽勝かどうかはともかく……分断の策がなったから楽になったのは間違いありませんなぁ」
報告を聞いて思ったことを素直に口にしたところで、横からミッチーが補足する。
続いて胡座をかいていた頼光が鼻を鳴らすと、
「平家の田舎武者など、全員わしと石丸様が斬り殺してくれるわ! ――そうですよね、石丸様!」
「うむ、何とかしてみせよう! 策謀は月餅とミッチーに任せる! 手立てを考えい!」
「うわ、投げやりですなぁ……まぁ、負けたら死ぬのみですのでやりますが……」
「……劣勢を覆し、勝ちを手繰るは軍師の務めでありましょう。この月餅にお任せを」
「朕を無視するでないわ!」
石丸の命令に応えようと策を巡らせる月餅とミッチー。既に刀を抜き放ち、意気揚々とそれを掲げる頼光や田村麻呂。
誰もが気負っていない様子であるが、その内心はある一念で燃えていた。
即ち――勝つ、という念。
この日ノ本に生きる武士であれば誰もが知っている弱肉強食の理。
弱きは死に、強きは生きる。災害の絶えないこの土地に生きる者達はそれを生まれた時から知っていた。
鬼や妖怪に襲われ死に、地震などの災害で死に、人間同士ですら殺し合い、果ては親兄弟で殺し合うことも珍しくない。そんな土地で生き、身内や民草に安寧を齎すには、修羅にならねばならない。
敵を滅ぼし尽くし、何もかもを奪い尽くす――そういった覚悟を持たねばならないのだ。
負けることは死を意味する。自分達の何もかもが奪いつくされることを意味する。
ならば勝たなくてはならない。
勝ってその先にあるものを得る。そうせねば夢を見ることは出来ない。
勝ち続け、屍の山を築き、そうして初めて生きることが出来る。武士、という者達は皆経験からそれを知っていた。どこかで割り切るしかない。全てを生かすことも、平和に終わることも不可能であると。
だが、
「春はちゃんと付いてこい!」
「あ、はい……」
春姫はその信念が、覚悟が足りていなかった。
昔から夢見がちな性格であったが、元服してからもそれが続くとは思っていなかった。
しかしそれは嫌ではない。悩むこともあるが、それを吹き飛ばしてくれる存在がいる。
それは、
「何、俺に勝てる者などおらん。大船に乗ったつもりで構えていろ!」
石丸の力強い言葉に、励まされる。
春姫は石丸の夢を知っていた。それを望んでいないことを知っていた。
彼の野望、進むべき道に付いていくことが、春姫の決めた道であり、夢である。
今はまだ夢の途中。ならばこんなところで死ぬわけにはいかず、
「……はい! 頑張ります!」
自分なりの覚悟を決めて頷く。それを見た石丸は笑った。
「ようし! そろそろ出るぞ! ――準備をせい!」
「はっ!」
声を揃え、応じる。
誰も彼もが戦の準備を万全にして立ち上がる。
甲冑を、具足を、兜を身に着け、腰には刀。
心に、神気と鬼気を同居させ、その芯には武士道。そして――
「――勝つぞ!」
「応!!」
――勝つ。
その一念で心を燃やす。
出陣を告げる法螺貝の音が鳴り響く。
大将である石丸は声を上げた。
「出陣――!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお――ッ!!!」
大勢の武士達が心を一つに、戦の勝ちを信じ、鬨の声を上げる。
それは藤原石丸、齢十九の頃。
鬼達が住まう地獄へと赴き、三種の神器を手に入れ、藤原家を支配することとなる。
そして、JAPANの盟主――帝になる。
その僅か一年前の出来事であった。
――これより始まるは血の神楽舞。
――藤原石丸という英傑の夢の果て。
――その答えを知るまでの物語である。