かっぱは強いのよ! みんなのうたでやってた、かっぱの歌でもかっぱは強いって言ってるし! 負けるとは限らないからね(迫真)
天蓋付きの赤い大きなベッドがある。半透明のカーテンが掛かったそのベッドは、かなり大きい。十人以上寝てもまだ余るほどの大きさである。
そこはレオンハルトの城。その城主である魔人レオンハルトの私室のベッドだ。
その中にいるのは輝くような金髪と、切れ長の鋭く灼眼を持った美丈夫――魔人レオンハルトが一人と、女が八名。
誰も彼もが美少女である彼女たちは主に、レオンハルトの城で働く人間のメイド達であった。
レオンハルトに助けられ、城で働くことを決めた女達は皆、顔を紅潮させながら好意に濡れた瞳でレオンハルトを見ており、身に纏っていたメイド服と下着を脱いで一糸まとわぬ姿で身を寄せていく。
彼女達は一人ずつレオンハルトと口づけを交わすと、そのまま夜伽へと移っていった。
「レオンハルト様、どうぞ……」
「えへへ~、レオンハルト様早く触ってください♪」
上半身に迫ってくるのは五人の美女達であった。大きく実った胸を揺らし、または腕を締めて深い谷間を見せつけてくる。
「ご主人様、どうぞ私の膝に」
「身体、温かいです……」
「どうですかー? レオンハルト様の大好きなおっぱいですよー?」
「ああ、気持ちいいぞ……」
メイド長がレオンハルトの頭を、女性らしい肉付きの良い太腿に乗せると、前かがみになってその大きな胸で顔を挟んでくる。そしてメイド二人が両側からレオンハルトに抱きつき、胸板に巨乳を押し付けてたわませ、空いている両手を残りのメイド二人が優しく捕まえ、自らの乳房に押し付け、掌で揉めるようにする。すると下半身の方でも、
「いっぱい気持ちよくなってくださいね?」
「レオンハルト様ぁ……」
空いている部分、両足に二人が抱きつき胸を押し付け、最後に大事な得物である魔剣も爆乳に挟みこまれてしまう。
そうやって体中がおっぱいで包まれる極楽を感じながらレオンハルトが思うのは、随分と恵まれている、ということだ。
それは彼女達の濃厚な奉仕自体の事ではない。
この程度の贅、酒池肉林は人間の王であった時に既に経験し尽くしている。その時の行いのせいで、頭を抱えるはめにもなったが、今更この程度に溺れるほど軟ではない。
しかし、それも好意が無かった時の話である。人間時代、自分に仕えていた女達は誰一人として自分を見ていなかった。それは偏に、自分自身に問題があったのだとレオンハルト自身認識し、既に過去の事だと消化している。今更何か思うこともない。
だが、現状を思うとどうしても昔と比べざるを得ない。何故なら昔と違い、今自分に奉仕を行っている者達は全員、レオンハルトに好意を持ち、自ら望んで情けをくれと懇願してきたのだ。
そもそもレオンハルト自身、最初は人間を城に住まわせる気は毛頭なかった。奉仕している中にいる少し幼い顔をしたメイドを見て思う。後はこちらに抱きついている姉妹も見て思う。思い返せば彼女達を受け入れたことが始まりだった。
ナイチサに下賜され、あるいは献上された少女たちを哀れに思い、城に連れてきはしたが、折を見て人間界に帰してやろうと思っていた。しかし彼女達は城で働くことを望んだ。人の住むところに、帰る場所なんてない、と。そう言ったのだ。
その言葉を聞いて、レオンハルトは彼女達が城で働くことを受け入れた。しかし、魔物だらけの中で生活するのは大変だろうと色々と気を使ったものだ。ちゃんとした食事に安全、着るものなど、衣食住は全て整えたし、働くだけでは精神的に参るだろうと休日を与え、本や娯楽物を与えた。
――気がつけば、惚れられていた。
一体何故、と思い聞いてみたが……それはもう色んな答えが返ってきたものだ。惚れられる度にそれを問い、それが納得の行く、心からのものであった場合、それを許してきたが、気がつけば大所帯になってしまった。
今でも人間の国に帰るか、城で働くかの二択を、新しく来た人間には必ず突きつけるが、帰る者達は三割程度で、殆どは城で働きたいと言ってくる。
これも人を助けることに繋がっているし、彼女達の想いは純粋に嬉しいものだ。ゆえに、一度受け入れたなら身内であり、面倒は最後まで見る。一度納得して受け入れた者を途中で捨てることはしない。去る者は追わず来る者は拒まず、といった具合だ。
なので自分の出来る限りで、その好意に応える。節操のないことになっているが、誰か一人のものになる訳にはいかないし、人助けにも、益にも繋がることだ。やめはしないだろう。
それに、仮に自分を独占出来る――いや、独占している者がいるとすれば、
……いや……今それを言っても詮無きことだな……。
ふと考え込み、動きを止めてしまう。既に奉仕には魔剣を解放したことで区切りが付いて次の段階に以降している最中である。どうかしたのか、と首を傾げるメイド達に何でも無いことを告げ、レオンハルトは腰を動かし、メイドの一人にそれを突きこんだ。その際に慈しむことも忘れない。
「レオンハルト様……レオンハルト様……!」
彼女は喘ぎ、こちらを熱っぽい視線で見つめ続ける。こちらからの愛の篭った言葉や動きは、それだけで心を蕩けさせるだろう。手に取るように理解る。それは憶えがあることだ。
……好意を……愛を向けられることは、それだけで救いになるからな……。
例え生活が困窮し、それ以外の何も己にはなくとも、他者からの愛があれば、人は生きていける。身体はともかく、少なくとも心は死なないものだ。
レオンハルトはそのことを充分に理解していた。ゆえに、
「……動くぞ?」
「……ぁ……はっ……あっ、ん……!」
右手で彼女の頬を撫で、労るようにそう言うと、それだけで彼女の身体がぶるりと震えた。随分と幸せそうに達するものだ、とそれを眺める。今動いてやるなどして全力でやり過ぎると、快感で大変なことになってしまう。ゆえに少し待つ間、両手でメイドの二人を抱いて解してやる。
……もうそろそろ行かないとな。
生憎と用事もある。一巡を終える頃には出なくてはならないだろう。
かといって露骨に早く終わらそうとするのも失礼だ。ゆえにレオンハルトはメイド達を抱きながらも、色々とペースアップすると、内心強い感情を抱きながら、この後の事について思考を移すのだった。
魔王城。
城に住む魔人達の部屋がある階層に、レオンハルトはいた。
昔は殆どの魔人がこの城に住んでいたが、今となっては城以外の魔物界――様々な場所に移り住むようになった魔人も多いので、そこまでの数はいない。今は数名程しかいないはずだ。
しかしそうであっても、この辺りが魔人が徘徊する魔物達からすればVIPフロアであることには変わりない。少し行けば、魔王様の部屋もあるのだ。今もお気に入りのパイプオルガンを弾いているのか、ナイチサが好みそうな荘厳な曲がその場には響いている。
ゆえに警備の魔物兵も殆どおらず、気配が遠くにしか感じられない中。だからこそ、正面から来たその気配は強く感じられた。
「――レオンハルトではないか。奇遇だな」
「……何の用だ、ザビエル」
魔人ザビエル。
炎カッパの魔人であり、ナイチサが最初に作った魔人。
今となっては、魔人四天王の一角を立派に勤め上げている魔人が口元に笑みを浮かべながらそこにいた。
……? 使徒の気配はあるが、近くにはいないな。
ザビエルの使徒達の気配。城内、この階層にはいるようだが、何故離れているのか疑問に思う。
いつも肩に乗っている藤吉郎の姿もない。何かあったのだろうか、それとも――と、思考を回していると、ザビエルは口を開いた。
「ふん……相変わらず見てて嫌気が差す顔だな」
「…………」
「その気配も鬱陶しいことこの上ない。少しは抑えてはどうだ? ふふ……」
嘲るように言うザビエルの言に、レオンハルトは沈黙したまま僅かに目を細めることで答える。言外に不愉快だという感情を込めて。
これだけで並の魔人であれば視線に気圧されるものだが、ザビエルの態度は全く変わらない。それどころかさらに口を回し始める。
「その目もだ……その目も気に入らぬ。永久に閉じきってしまっても構わんのだぞ?」
と、明らかな中傷を受け、レオンハルトの眉間に皺が寄る。
……今日は一段と鬱陶しいな。
魔人四天王になってからというもの、ザビエルは度々傲慢に振る舞い、それどころかレオンハルトに対しては喧嘩を売ってると思われても仕方のないような発言を繰り返している。
このように絡んでくるのも一度や二度のことじゃない。使徒がいれば睨み合いになったり、一悶着あったりするのだが、今回は一対一だ。周囲に人影もない。だから、というわけでもないがレオンハルトも言い返すことはなく、
「…………ふっ」
しかし代わりに、ザビエルを鼻で笑うようにしながら何の気なしにその横を通り過ぎた。
そして少し過ぎた辺りで背後のザビエルに向かって言う。それは、
「ザビエル。理由は解らんが、お前はどうしても俺に喧嘩を売りたいらしいな?」
「…………」
狙いを看過されたからかは分からないが、ザビエルの気配が少し変わる。
無言になった背後のザビエルに、図星か、と続けると、
「だがな。俺は……お前の喧嘩を買う気はない」
「……ほう?」
興味深そうな様子でザビエルが視線を向けてくる。それに応えるように、
「お前と俺が戦えばタダでは済まないし、周囲の被害も洒落にならないことになるだろう。そして何より――」
言う。おそらく、ザビエルが手を出させたい理由というのは、これではなかろうかと思い、
「ここは、魔王様の居城だ。しかも部屋からほど近いフロア。ここで戦うことは、幾ら血気盛んな魔人達でも憚られるようなところだ」
そう。ここはナイチサの部屋からそれなりに近い場所だ。パイプオルガンの曲が響いていることからもそれは解る。
魔人同士で諍いを起こし、衝突することは偶にあることだが、それでも魔王の部屋に近い場所でそれを行うことはしない。そんなことをして魔王の不興を買ってしまえば、良いことにはならないだろう。流れ弾でも当たってしまえば目も当てられない事態になることは誰でも容易に想像できる。
ゆえに、ザビエルの狙いは、
「前々から俺のことを疎ましく思っているようだが……俺に手を出させたいなら最低限外だ。それと――もうちょっと俺が愉しめるような舞台でも用意するんだな」
愉しめるような実力をつけろ、とは言わなかった。実力だけで言うならすでに魔人四天王の中でも最強と思われるザビエルは悪くないからだ。
だが、
そんな直感的な理由で、レオンハルトはその場を後にしようとする。そこから数歩歩いたところで、先程まで無言だったザビエルが、
「……喧嘩を買う気はない、か。ふむ、それならしょうがないな……」
「……?」
と、一度諦めるような言葉を口にしてみせた。胡乱な視線を向ける――ことはしないが、それでもザビエルの様子を訝しげに思ってしまう。
だが足は止めず、そのまま立ち去ろうとする。
「……時にレオンハルトよ。聞きたいことがあるのだがな――」
無視する。相手にする必要はない。
だが。次に耳に届いた言葉に、レオンハルトは足を止めざるを得なかった。
それは、
「貴様が前魔王……スラル様と――――愛人関係にあった……というのは本当の事か?」
「――――」
レオンハルトにとって、聞き流すことは出来ない話題であった。
足を止めてこちらに耳を傾ける気配を出すレオンハルトに、ザビエルはほくそ笑んだ。
今までどんな嘲りにも挑発にも乗ってこなかったレオンハルトが、唯一反応した話題。それを、ザビエルは口にする。
「ふ、ふふ……その反応、やはりそうか」
「…………それがどうした」
僅かに怒気を覗かせるレオンハルトに、煉獄や戯骸からもたらされた情報は正しいことを確信する。
それは、古くからいる魔人にとっては常識であり、語られこそしないものの有名な話であった。
……レオンハルトと先代の魔王様が愛人関係……それよりも深い関係にあったらしいということ……。
話に拠れば魔人レオンハルトは魔王スラルが最初に作った魔人であり、それ故かかなりのお気に入り、寵愛を受けていたらしい。
魔人になって直ぐに魔王直々に魔人四天王に推したことからもその贔屓の程が窺える。レオンハルト自身の実力もあったためでもあろうが、普通はそんなことは起きない。自分が直ぐに魔人四天王になれなかったことからもそれは解る。
そして重要なのは、お互いに相思相愛の仲であったらしく、特にレオンハルトは、先代魔王の事となれば強い感情を覗かせるらしい。ゆえに話は簡単だ。つまり、
……ならば、そこを突いてやれば良い……。
本来であれば先代とはいえ、魔王様も侮辱するようなことはしてはならないが、今一度だけ、レオンハルトを誘うためにそれを行う。
元々情に厚く、甘い部分があるレオンハルトのことだ。確実に乗っかってくるだろう。
そしてそこを――自分が迎え撃つ形で倒す。
大義名分を整えた上で、自分がレオンハルトより上なことをこの上ない形で見せつける。そうすれば、
……我が、次の魔人筆頭だ……!
仮に直ぐにそうはならなくても聡明なナイチサ様であれば直ぐに理解して頂けるだろう。そもそも魔人筆頭とは魔人の最高位。他の魔人に負けるようでは務まらない。追い落とすためのしっかりとした理由になる。
これは叛意でも何でも無い。ただ、己が目の前の魔人を越えていることを証明するためのものだ。魔物界の法則から考えても極めて自然な事。強い者が上位に立つ。
レベルは限界まで上げきった。戦いに明け暮れ技術を極めた。カミーラにもケッセルリンクよりも強くなったはずだ。
以前見た戦い振りから見ても、レオンハルトに劣ることはない。戦って勝つことは出来る。
ゆえに、ザビエルは言う。
「いやなに……その日々はさぞかし楽しかったであろうなとな……どうだったのだ?」
「……お前に言う必要はない」
ザビエルは言う。嘲るように、
「そうか……随分と臆病で弱い魔王だと噂で聞いていたのでな。真偽を確かめてやろうと思ったのだが……ふふ」
「…………」
レオンハルトの肩がほんの僅かに動いた。
それを見逃さなかったザビエルは畳み掛けるように言う。
「どうもただの少女の様だったらしいではないか。それなら――
と、ザビエルが言い切る前に、ザビエルは飛んできたそれを見て剣を引き抜いた。
……掛かった……!
いつの間にか引き抜かれていたレオンハルトの魔剣を受け止めることに成功する。それは以前反応出来なかった――見えない斬撃だ。
その正体をザビエルは言い当てる。怒気を膨れ上がらせたレオンハルトに向かって、
「その見えない斬撃……以前は仕掛けが解らなかったが、今なら理解出来るな……とどのつまり、それは所謂――――“居合”、と呼ばれる技だな……?」
「…………」
無言だが肯定するような気配が伝わる。ザビエルはそれを完全に目で見て、理解していた。
「その魔剣、空間を鞘にすることが出来ると聞く。つまり、貴様のそれは空間から高速で引き抜いた魔剣を、もう一度高速で戻しているというわけだ」
それを行うと、斬撃が知覚出来ない相手からは、剣も持ってないのに急に斬れたように感じるだろう。よく出来た技ではあるが、
「それは最初の一撃であり、貴様の選別の為の一撃であるというわけだな。その攻撃に反応すら出来ない相手とは戦う価値もない、と」
「…………分かっているなら威張らない方が良い。これを防げたところでまだ序の口だ。お前が俺に勝てるとは限らない」
それもそうだ。だが、
「……ふふ、それでも解ることもある……貴様の実力がそれほどではないこともな……!」
「……っ!?」
ザビエルは力を込めて、鍔迫り合っていた状態から強引に抜け出す。レオンハルトを力で吹き飛ばし、逆の手を向け、
「――黒の炎!」
「っ……プロミネンス!」
両者共に炎の必殺技を放つ。
ザビエルから放たれた黒炎と、レオンハルトは放った紅炎がぶつかり合い、周囲に凄まじい熱気を撒き散らす。
しかし炎を使った技はザビエルの十八番。故に同属性の技であっても勝つのは当然こちらであり、
「ぐっ……!」
レオンハルトは黒炎の衝撃を受けて吹き飛ぶ。
体勢を直ぐに立て直しはしたが、その表情には苦悶のものが混じっており、
「ふふ、どうした? 魔人筆頭にしては随分と情けない姿ではないか? 貴様も、弱くなったものだな……」
「……舐めるなよ……!」
声とともに剣を上段から振りかぶってきたレオンハルトをこちらも剣で受け止める。それで感じるのは、
……やはり、地力ではこちらの方が上だ……!
口端を歪めて歓喜する。やはり、己の強さはレオンハルトを越えている。剣技に関しては向こうの方が優れているようだが――それでも、大きな差はない。
「ふ、ふはははは! どうやら我は強くなり過ぎてしまったようだな、レオンハルトよ……!!」
「……っ……この程度で勝ったと思うな……!」
レオンハルトの負け惜しみのような言葉に気分が良くなる。確かに、レオンハルトが言うようにまだ勝ちではないだろう。
だが、その言葉はレオンハルト自身、力で劣ることを認めているようなものだ。ゆえに――
「――さあ、我の強さに絶望しろ!! レオンハルト!!」
――このまま続ければ勝てる。
そう確信し、魔人ザビエルは炎を纏った剣技でレオンハルトに斬りかかっていった。
――おかしい。
魔王城の通路を見張っていた魔人ザビエルの使徒――戯骸は煙管を銜えながら感じた違和感に首を捻っていた。
「こんなに弱――いや、それほどでもなかったのか?」
通路の先。奥の方で魔人レオンハルトと魔人ザビエルが戦闘を行っている。
それは魔人筆頭と魔人四天王。上級魔人同士の名に恥じない攻防ではあった。
しかし、
「ザビエル様の方が有利、ねぇ……?」
自分の主に対して失礼だと思うが、どうしてもそこに違和感を覚えざるを得ない。
確かに主は強くなった。頻繁に魔軍を率いて人間を殺して回り、戦いにも慣れて強くなった。
同じ魔人四天王であるカミーラやケッセルリンクなどの上級魔人と比べても、主の方が僅かだが、確実に強いだろう。
しかし、戯骸の見立てではレオンハルト相手だと良くても五分――悪ければ全く歯が立たない可能性もあるかもしれない。そんな可能性も考えていた。
だが、それに関しては戯骸の何の根拠もない勘である。確かにレオンハルトが戦っている姿をたまに見る限り、そこまで主との差はないように見えたし、それどころか主の方が上回っているように見えた。
だからその考えには信憑性も何も無い。戯骸の想像、妄想の類に過ぎないかもしれない。しかし、
……俺の思い過ごしか? 随分と弱ぇような……。
手加減でもしているのだろうか、と思うも、感じる限り、レオンハルトは全力で戦っている。戦闘に関しては魔人級の強さを持つ戯骸の見立てだ。その自負もある。ゆえに全力を出していることに疑いはない。
「随分と強くなっちまったのかね、うちの主様は……」
考えられるのは魔人ザビエルの実力がレオンハルトを完全に上回り、ファンであることも相まってその強さを過大評価していた己の思い過ごし。順当に考えるとそれが適当だろう。しかし、
「……やっぱり、なーーーんか嫌な予感がするんだよなぁ……」
怒られること覚悟で止めに行ってみようかとも思う。レオンハルトのファンではあるが、その前にザビエルの使徒である。レオンハルトもその使徒らも好きな奴らではあるが、主の言うことは聞かないといけない。ゆえに他の使徒と同じように、このフロアに繋がる通路で待ち構え、他の魔人が来るようなら追い返すか時間稼ぎ、レオンハルトの使徒が来るようなら戦闘して倒す。そう言い付けられていたのだ。
しかしその命令を破って、止めるべきだと考える自分がいる。
だが止めるにしても明確な理由がない。嫌な予感がする、というものだけだ。
自分達使徒の忠言は結構聞いてくれることを知っている戯骸だが、さすがに念願のレオンハルト打倒を目の前にして、それを止めてくれるとは考え難い。
結局戯骸はその場から動くことが出来ずに、未だに鳴り続けるパイプオルガンの音を聴きつつ煙管から炎を吹くと、
「どうしたもんかねぇ……」
違和感を感じて首を捻り続けた。
――しかし、
「…………」
そんな戯骸を遠くから、気配を消したまま覗き見る者がいたが、
「――あ? なんか――……」
戯骸は、最期までそれに気づくことが出来なかった。
ザビエル「(レオンハルトは反応する話題。それは)……ふふ、レオンハルトよ。この串カツを二度漬けしたらどうなるかな……?」
レオンハルト「っ!? テメェ! 何してやがる!?」
ザビエル「見て分からんか? ならばもう一度やってやろう……」
レオンハルト「なっ!? 二度だけでなく三度目……三度漬けだと……!? テメェは生かしておかねぇ!!」
スラル「――っていう展開を思いついたんだけど、どう?」
ペール「感想に書いてあった奴ですよね、それ。まあ面白かったですけど」
ガウガウ「……というか、レオンハルトが負けそうになってるんだがいいのか?」
皆「…………」
ガウガウ「え、えっ? 何で皆無言になってるんだ?」
ハンティ「ハハハーソウダネー……レオンハルトマケソウダネー……」
キャロル「う、うわー、大変ですわー、ザビエル様に負けてしまいますわー(棒)」
ペール「助けに行かないとですねぇ……ふわぁ……」
ラウネア「…………(決着は次回!)」