――NC705年。
魔王城にある自室で、魔王ナイチサは心中の昂りを抑えようと必死であった。
「悪魔の宗教など……断じて許さん……!」
その原因は藤原家の台頭にある。
厳密に言えば藤原家が推し進めようとしている天志教と呼ばれる新興宗教に、ナイチサは激しい怒りを覚えていた。
最初は人間同士の勢力争いなど放置しておけばよいと思っていたが、人類圏と呼ばれる大陸の南半分を支配した藤原家を生意気に感じて調べてみたところ、天志教は悪魔を信仰し、魂を悪魔に捧げるためのものであることに気づいた。
そんなことは断じて許されない。神に弓引く行為など、神を否定する行いなど、決して許されざる事だ。
生まれながらにしてAL教の教えを学び、その真意を察したナイチサにとって、神とは価値観そのものに近い。神が悪行を望んでいる。神が正義の行使を望んでいる。
神に逆らおうとするだけでは飽き足らず、その真逆の存在である悪魔の宗教を世に知らしめるなど、己の価値観を揺るがす如き行いだ。
許すわけにはいかない。
「ぐ……こ、の、異端者共が……ッ!」
それを思うと不意に、己の中の殺意と破壊衝動が高まり、力任せに暴れそうになってしまう。だがここは自らの居城。そこで怒りを発散しても無意味どころか害にしかならない。
衝動を必死に抑え、椅子に腰掛けると、ナイチサは頭を押さえながら荒く息を吐いた。
このように怒りに震える姿は王にあるまじきものだ。
もうじき人が来るのだ。このような有り様は見せられない。
ナイチサは落ち着くために愛飲しているワインではなく、メイドさんを呼んで直ぐ様、紅茶を用意してもらう。少しして淹れてもらったそれを一口含むと、怒りこそ消えていないものの落ち着くことが出来た。
「……どうするか……」
落ち着くと、今度は手段を模索しはじめる。
それは当然、藤原家を滅ぼすための方法であるが、それは直ぐに答えが出る。その方法は、
――配下の魔人に命令し、滅ぼさせる。
それも一刻でも早い内にだ。
ゆえに考えるのはどうやってやるかではなく“誰に”ということだけであった。
魔軍を動かすのだから余程のことが無い限り負けることはないが、万全を期すなら魔人を動かすのが最善だろう。相談もしたいが、そのための側近は直ぐにやって来る。今の内に誰に行わせるかを考えようと、ナイチサは思考を回した。
……実力の高い魔人がいいであろうな。
魔人であればその殆どがかなりの強さを持つが、確実性を重視するならその中でも特に高い実力を持つ魔人を選ぶのがいいだろう。
だが魔人には癖の強い者が多い。魔王の命令である以上、可能な限りそれを為そうとはするだろうが、それでも問題のある者もいる。
まず何か一つの事に執着する魔人は除外だ。周りが見えなくなる可能性がある。
魔人ガルティアは食に対する情熱が常軌を逸しているし、レッドアイやレキシントンも除外だ。あれらは戦闘力には問題ないが些か思慮に欠けるため、不確実である。
戦闘力に不安が残るパイアールなども向いていないし、かといってメガラスは無口過ぎて魔軍の指揮において問題がある。
……であれば、やはり四天王以上の者になるか。
魔人カミーラはどうだろうか。彼女は上級魔人の中では最も古株である。当然、実力に問題などない。人間如き容易く滅ぼしてみせるだろうし、使徒の七星も万事において優秀である。
しかしカミーラは気まぐれな部分があり、狩りがいのある獲物でもいれば相応にやる気を出すが、そうでない場合は些か怠惰である。今回の任には向いていない。
ならば魔人ケッセルリンクはどうだろう。彼女も高い実力を持っており、特に夜の戦いにおいて右に出る者はいない。
だがあまり争いに興味がないのか、そういったことには淡白な様子が見られる。任された以上仕事はこなそうとするだろうが、今回の戦争はかなり大規模だ。ゆえに少し不安が残る。
魔人ザビエルであればどうなるか。実力的には文句はない。忠誠心も確かであり、人を苦しめることを好む。使徒達においてもかなり優秀である。命令を下されれば喜んでそれを行おうとするだろう。しかし、
……ザビエルは、どうにも傲慢に過ぎる。
今回の任務に向いてはいるのだが、それをこなしたことでまた傲慢になってしまわないかという不安がある。ただでさえザビエルは他の魔人に喧嘩を売りその力を容赦なく振るう上、それに飽き足らず力の差を見極められないばかりか、度重なる挑発を行った結果、危うく殺されてしまうところであった。自分が止めなければ死んでいただろう。
……ならばやはり……。
そうして最後の一人を思うと、不意に音が聞こえた。
「――ナイチサ様。魔人レオンハルト。只今参りました」
「……来たか。――入ってくるがよい」
扉がノックされる音と、呼びかける声が聞こえたので入室を許可してやると、失礼します、という言葉とともに一人の男が姿を見せた。
……魔人レオンハルト。
魔人筆頭、魔軍参謀の任に就く最高位の魔人である。彼は顔を見せると直ぐに一礼し、
「遅くなってしまい申し訳ありません」
「よい。夜分遅くに呼びつけたのは余である。礼を失したのも余であるゆえ気にするな。――座ってよいぞ」
「はっ、失礼します」
そう言ってこちらの正面の椅子に腰掛けるレオンハルト。相変わらずの礼儀正しさに満足を得る。
今の時刻はもう夜半である。魔王や魔人は睡眠が必要ないとはいえ、夜分に家臣を呼びつけるのはあまり礼儀がなっているとは言えない。火急の用であればそれも許されるが、それでも礼を失していることに変わりはないのだ。
ゆえに気遣うのは己の方である。
「……何か飲むか? 食事でもよいぞ?」
「……いえ、お気遣いなく」
そう断ってみせるレオンハルト。しかし慌ててきたのは確かだろうし、ひょっとしたら疲れているのかもしれない。それに一度は断るのも珍しくはないのだ。なのでもう一度、
「なに、遠慮するな。余も少々口寂しいと思っていたところで、夜食を頼もうと思っていたところである。卿もどうだ?」
「……なるほど。恐縮ですが、そういうことであれば頂きます」
今度は頷く。二度目であればよっぽどの事でなければ断らないのがレオンハルトという男だ。その忠誠心を利用するようで悪いが、こうでもしなければレオンハルトは何も欲しようとしない。働きに報いることの出来ない君主など無能も良いところである。故に度々こうして食事に誘ったり、褒美を下賜したりしているが、レオンハルトも喜んでいないわけではないだろうし構わないと見ている。
メイドさんを呼び、二人分の軽い食事を申し付けると、ついでにレオンハルトの分の紅茶を淹れさせる。そして一息ついたところで声を掛けた。
「さて、レオンハルトよ。卿が何故呼ばれたのか解るか?」
「は……」
急の試すような問いに、レオンハルトが考えるように間を置く。しかし直ぐに答えが出たのか、口を開き、
「……藤原家をどうするか。或いは先んじて私へ決定を告げるためでしょうか?」
「ほう?」
その答えに感嘆を得る。
当てられてしまったことに対する小気味よさはあるが、何故そう思ったかが気になる。ゆえに続けて、
「何故そのように思った?」
「……夜半の呼集ということを考えますに、公的なものではないと考えました。臣下を罰するための上意である可能性もありますが……自分で言うのは面映いですが、失敗した覚えもありません。であれば個人的な相談。それも最近の話題となれば、藤原家に関することではないかと――そう愚考した次第です」
「……フフ、なるほど。正解だ」
思わず笑みを漏らしてしまう。やはり能力では頭一つ抜けている。
……レオンハルトに命じてしまうか……?
最強であり最高の魔人であるレオンハルトに負けはあり得ない。それは実力もそうだが、それ以外の能力が稀有なものであるからだ。魔人にとって強さは何よりも大事であるが、それはレオンハルトを語る上では二の次とも言える。
魔軍参謀という要職に就き、魔軍を取り仕切るその手腕。
魔人筆頭となり、魔人を統率するそのカリスマ性。
人望にも溢れ、知性も高い。様々な事に造詣が深いのが会話していても解る上、言葉遊びを解するので話していて苦ではない。媚び諂うこともない実直さも長所だ。
そしてそれだけの能力を持つ魔人であるのに、驕ることなく謙虚な姿勢を保ち、しかしそれでいて謙虚過ぎることもなく、礼儀や規律を重んじ、必要以上に罰することもせずに相手を許す懐の深さもある。
使徒や部下も優秀な者ばかりであり、レオンハルト軍は魔軍最強と称されるほどだ。人の素質を見抜く目、洞察力や観察力も優れているのだろう。部下に慕われているのも人の上に立つ者として必要なものを理解し、そうあるように努めていると推測出来る。
そして何より――強い。レオンハルト一人で他の魔人数人分の働きをこなせるだろうし、忠誠心においても問題はない。正に完璧な魔人。魔人の鑑だ。
強いて欠点を上げるとすれば、他者を虐げるような真似は好まないことだろうか。褒美を強請らないのも困る。
だがそれも命令か、それをせずとも言って聞かせればその意を汲み取って任をこなす。私的なものを余り混じえない。
女好きで巨乳好きという面白い一面もあるが、英雄色を好む、とも言う。問題ではない。
まあ全く含むところがないというわけではないが、それを踏まえてもやはり問題はない、とナイチサはレオンハルトを評する。
ゆえにナイチサは、目の前の魔人に命じることにした。
「……レオンハルトよ。実はな――」
と、
「藤原家討伐の任――卿に任せたいと思うのだが……どうだ?」
「……ご命令とあらば、全霊を懸けて遂行する所存で御座います」
レオンハルトはナイチサの言葉を受けて一先ず言葉を返した。
……やはりそういう用事だったか。
ナイチサに呼ばれた時からこうなることは予想出来ていた。
なにせ礼儀を重んじる男である。通常、貴族というのは夜分遅くに臣下を呼び出したりはしない。
ナイチサもその例に漏れず、夜になれば城で大人しく過ごしているが、何事にも例外というものがある。
礼儀を無視して家臣を呼び出す理由としては、危急の用か、臣下を罰する上意という悪い報せが殆どである。それ以外となると個人的に親しい場合のみにおいて夜食や酒の誘いがあったりもする。
地域によって違いはあるが概ねこのような礼儀であり、ナイチサがこれを破るとは思えないし、破ったことはない。
ならばそのどれかであることは予想がつく。なので既にレオンハルトは答えを用意していた。
「フフ、そうか。ならば卿に任せよう。卿であれば単騎で攻めても問題あるまい?」
「……お言葉ですが単騎では時間が掛かってしまいます」
「そこで“出来ない”と言わないところが卿の頼もしいところよ。ふむ――ワインでも飲むか?」
笑みを絶やさずにそう言うナイチサ。部屋に入った当初は苛立ちを抑えているような様子だったが、今は機嫌が直ったらしい。酒を勧めてくる辺りそれが窺える。
だが言わなくてはならないこともあるのだ。その申し出を断り――しかしどうせ受けることになるだろうな、と思いつつ言葉を作る。
「遠慮しておきます。――進言したいこともありますので」
「む……何だ? 言ってみるがよい」
ありがとうございます、と一度お礼を言ってからレオンハルトはそれを口にした。
「もし出来ればで宜しいのですが……それを正式に皆の前で命じられる際、お願いしたいことが一つあります」
「ふむ、続けよ」
ナイチサの許可を得て話し続ける。
「それを命じる際に、ある者が自薦した場合のみにおいて、その者を討伐の任に加えていただきたいのです」
意を決して言った。
断られると少し面倒だな、と思いつつナイチサの反応を窺う。
しかし機嫌を害した様子はなく、顎に手を当てると、
「……それはつまり、魔人をもう一人付けて欲しいということか?」
「はっ、お願いできればと」
「誰を付けたい?」
成った。ここまで来れば成功したも同然である。
故にレオンハルトは言った。その者の名を、
「加えてほしいのは――――魔人ザビエル」
「……! ほう……?」
ナイチサの表情が興味深そうに変化する。
……さて、まずは奴に嫌がらせでもしてやるか。
ザビエルを少しでも苦しめてやるため、レオンハルトは悪意を以てナイチサにその企みをお願いするべく建前上の理由を言って聞かせることにした。
魔王城でナイチサにお願いを聞いてもらったレオンハルトは、そのまま夜食を口にし、少し話に付き合ったところで城に帰った。
夜分でも変わらず警備を行う魔物隊長や親衛隊の女の子モンスターを労い、城に帰ると真っ先にメイドが頭を下げてくる。
「――お帰りなさいませご主人様」
「ああ、ただいまメイド長。もう皆寝ているか?」
「使徒の方々は皆起きています。それとケッセルリンク様とその使徒の方々。食堂にガルティア様。夜更かしするガウガウ様。後は私と料理長。一部のメイドと親衛隊の方々が起きていらっしゃいます」
「……そうか。お前もよく起きていたな?」
「メイド長ですので」
いつものように笑顔でそう言い切られる。
殆ど起きているとは頭が下がる想いだ。何名かは完全に私用だったり、ただの不摂生だったりと何も言えないものだが。
何でメイド長さんはここに居ながらにして誰が何処でどうしてるかまで把握出来ているのか、などと思わなくもないがメイド長さんであれば仕方ない。これくらいは当たり前にやってのけるのがメイド長さんだ。
とはいえ、
「ならメイド長。使徒達を全員、自室に呼んでくれ。それが終わったら休んでも構わない」
「……よろしいので?」
「ああ。どの道、これから忙しくなる。出来ればメイド長のお前にも働いて貰いたい」
「であれば、どうぞお命じ下さい。主人の力になることはメイドとしての生き甲斐に等しいことです」
「……今の内に休んでいてもいいんだぞ? 毎度思うが、疲れてないのか?」
少し気遣って言うも、メイド長は胸を張って言う。
「メイド長ですので」
「……そうか。ならば頼む」
「はい。――ではお呼びして参ります」
と、言ってメイド長さんはその場から一瞬で消えた。最早慣れたものだ。何も言うまい。正直、瞬間移動でも使っているのでは疑惑があるが、そうでないことはハンティが確認している。余計解らないが、何も言うまい。メイド長と料理長に関してはツッコまないのがこの城での暗黙の了解だ。
ゆえに気にせずレオンハルトは自室に向かう。
だがその途中、ボサボサの緑髪をした小柄な少女を見かける。彼女はこちらに気づくと、
「……うっ、レオンハルト……」
「ガウガウか……って、お前、またカップラーメン食べてるのか。食生活は改善したんじゃなかったのか?」
微妙にバツが悪そうに顔をしかめたガウガウ・ケスチナの手には、カップラーメンがある。それを見て呆れたように言ってやるとガウガウは、むっとして、
「……確かに城の食事も美味しいけど、こういうの身体に悪そうな大雑把な味も偶に食べたくなるんだよ。特に夜中になっ!」
「……なるほど、一理あるな」
ガウガウの言葉に納得して頷く。確かに良い物を食っていても時たまそういったジャンクな物を食べたくなる時がある。
……特に夜中に無性に食べたくなるんだよな……。
レオンハルトはガウガウの手にあるカップラーメンを見て思う。特に最近、というかさっきもナイチサに誘われて夜食を口にしたが、ナイチサは貴族らしく軽くて上品な味付けのさっぱりとした物しか頼まない。別にそれはそれで構わないのだが、
「…………決めた。俺も食べるぞ。――メイド長」
「……は? いや――」
「はい、ご主人様。ご所望のカップラーメンで御座います」
「おお、悪いな」
しばらくして食べようとメイド長を呼ぶと、直ぐ様メイド長さんがカップラーメンとともに現れる。手渡された熱々のカップラーメンとお箸を受け取ると、湯気とともに香ばしい匂いがしてきた。実に美味しそうだ。なのでガウガウと一緒に食べるか、と思っていると、
「って、速いよ! というか出来上がってんじゃん!? お湯を入れて三分じゃないの!? 時間超越したの!?」
「いえ、さすがに時間はどうにもなりません。ですが――こんなこともあろうかと、先にお湯を入れておきました」
「まさかの未来予知!?」
……何も言うまい。
おそらくはどうにかしてガウガウと自分が出会ったのを確認し、カップラーメンをガウガウが持っているところから自分も食べたくなるであろうことを予想してから作ったのだと思う。多分。そうじゃないと説明が付かない。説明がつくギリギリとも言える。
「では私はこれにて」
「ああ。……よし、ガウガウ。部屋で食べるぞ」
「……未だにメイド長さんと料理長には慣れない……」
げんなりしたガウガウを押して部屋に連れて行くと、ソファーに座って二人でそれを食す。
……夜食だとこういうものの方が食べたくなる辺り、貴族には向いてないな。
そうやってカップラーメンのジャンクな味を楽しんでいると、
「お、レオンハルト。何だ、良い物食ってんじゃねぇか」
「……ガルティアか。生憎とこれは俺のだ。やらねぇぞ」
「また増えた……ずるずる……」
匂いに釣られたのかガルティアまでやって来た。カップラーメンを見て何を思ったのか、ガウガウの隣に腰掛けると、
「……別にいらねぇとか思ってたが、見てると俺まで食べたくなってきたな。……一口くれないか?」
「嫌に決まってるだろ! 幾ら魔人の頼みでも、私は屈しないからな!」
「……残念だ」
珍しく割とマジに残念そうにするガルティアと、意外な意地を見せたガウガウを見ていると、
「……レオンハルトにガルティア。それにガウガウか。集まって何をしているのかね?」
「どうやらお夜食を食べているようですね、ケッセルリンク様」
「夜中にカップラーメンは……」
「……まあ、珍しいですね」
ケッセルリンクとシャロン。パレロアやエルシールまでやって来た。するとガルティアがケッセルリンクに向かって、
「見てたら無性に食べたくなってな……一口くれって頼んだんだが断られた。お前からも何か言ってやってくれ」
「……いや、もう一つ頼めばよいのでは……?」
「そーだそーだ! もっと言ってやれ!」
「……なんなら全員分頼むか?」
「お、それはいいな」
善意でそう言うと、ガルティアが喜ぶが、シャロンがこちらに笑みを向け、
「……女性としては、あまりこういったものを夜中に食べるのはよろしくないのですが……無理強いするおつもりで?」
「……いや、そういうつもりじゃないんだが……なら、ガルティアの分だけ――」
「それとこれとは話が別です。――ですよね、ケッセルリンク様?」
「ん、ああ……それは構わないが」
「どうかしたのかしら、シャロン……」
「というかいつの間にか私達まで食べることに……」
「――こんなこともあろうかと」
妙な押しの強さにケッセルリンクや使徒達が戸惑う。
……ひょっとして、シャロンも食べたかったのか?
食べたいけど、食べたいと思ってると思われたくなかったのだろうか。
如何にも女性らしいなぁ、と変な見栄を感じながら皆してメイド長の持ってきたそれを受け取ると、
「レオンハルト様ー! ただいま参りましたわー!」
「こんな夜中に、何の用――って、何で皆してカップラーメン食べてるの?」
「うわぁ……何だかすごい不良感ありますねぇ……」
キャロルとハンティにペールが、別々の反応を見せながら部屋に入ってきた。
するとまたしてもメイド長が現れ、
「――さあどうぞ」
「ありがとうございますわー! 頂きますですの! ずるずる……」
「……って、何一つ疑問に思うことなく食べるかね、普通……」
「懐かしいです。昔、引きこもってるときは夜な夜な一人でこれを啜って……あ、思い出すと泣きそう」
三者にまたしてもカップラーメンを手渡す。さすがにもう終わりか、と思っていると、
「――貴様ら、こんな夜中に何を揃って食べている。……俺にも寄越せ」
ガルティアに次ぐ食いしん坊が窓から声を掛けてきた。
するとまだ近くにいたメイド長が、
「……さすがにライゼン様に差し上げる物となると、ご用意出来ていません。ですが直ぐにキッチンをフル稼働させてお作りいたしますので暫しお待ち下さい」
「これも用意してる、とか言われたら怖いけどねっ!」
「俺もこれじゃ足りねぇからついでに持ってきてくれ」
ガウガウがツッコミを入れる頃には既に居なくなっていたメイド長さんだが、ガルティアの注文は聞こえているのだろう。メイド長なのだし。
しかし、
……夜中なのに賑やかだな。
本当は使徒達を呼んで、明日から戦争の準備をするよう命じるつもりだったのだが、
……明日でもいいか。
殆ど皆が集まっているのでちょうどいい気もするが、今それを言う気分にはあまりならない。
ゆえに今は皆で歓談でもしていよう、とレオンハルト達はカップラーメンを片手にいつもの日常を過ごした。
「……あら? よく見るとシャロンさん達のそれ、カップラーメンじゃなくてカップ焼きそばですわね?」
「結構美味しいですよ?」
「濃いわね……塩分相当高いんじゃないかしら……」
「あっ……でも意外と美味しい」
「あたしのは蕎麦なんだけど……いや、美味しいからいいけどさ」
「私はうどんでしたよう? ……それにしても、懐かしい青春の味ですねぇ……」
「……この手の食べ物は啜るのが礼儀と聞いたが、啜るのは難しいな……」
「…………」
「あっ、こらラウネア! 食べ物を残すなっていつも言ってるでしょ!」
「……なあレオンハルトよ。俺のはまだか?」
「私のいるか? 麺食べ終わったからスープだけだけど……」
「……三分くらい待ってろ」
――賑やかにも程がある夜中であった。
スラル「私もよく食べたなぁ……」
レオンハルト「よく俺に隠れて食べてたよな。……途中から開き直って普通に食ってたが」
スラル「うっ……だって毎回バレてたから隠す意味ないし……」
ガルティア「そりゃ匂いで解るからな。容器だけ隠してもバレバレだ」
ケッセルリンク「注意はしたのだが……」
スラル「……中毒性が高くて……特に夜中」
ラウネア「…………(何故かカップラーメン販促回になった)」