※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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使徒としての

 キャロルは、ぷちハニーをばら撒いていた。

 ぷちハニー弾も含めて、装備として隠し持っているぷちハニーも投げつけてみせる。その爆風を浴びさせる相手は白の獣と化した魔人ザビエルの使徒、白虎だ。

 四肢で大地を踏みしめて駆けてくる白虎を追い払うようにぷちハニーを投げると、その爆発を喰らった白虎が苦悶の声とともに、

 

「っ……これしきでやられるか……!」

 

 気合いで爆風の中を駆けてきた白虎に少なからず驚いた。良い根性だ、とキャロルは敵への評価を上げて頷く。

 

「よろしいですわ。ならば、わたくしも出し惜しみはしません」

 

「来い……!」

 

 言われずとも、キャロルは行動を起こしていた。試作の物こそ使えないが全力を尽くす。隠していたぷちハニー。それを収納していた大きな袋をまるごと取り出し、

 

「さあ、大盤振る舞いですわー!」

 

 と、袋を白虎が向かってくる途中の空に放り投げた。

 その上で、キャロルは右手の通常の弾が入った銃で狙いをつけ、

 

「――!」

 

 中身を衝撃から守る効果の掛かった魔法の袋。その結び目だけを綺麗に撃ち抜き、

 

「ぷちハニーの雨を喰らいなさいな!」

 

「……貴様!」

 

 ぷちハニーが空中にばら撒かれ、地上にいる白虎を襲った。

 

 

 

 

 

 白虎は爆発の連鎖を受け、それでも前に進んだ。

 ここで負けるわけにはいかない。死ぬわけにはいかない。自分が敗北するということは、

 ……ザビエル様の望みが叶えられん……!

 自分達が負けることを、ザビエル様は望んでいない。勝つことだけを望んでいるのだ。

 ならば前に出るしかない。キャロルは距離を取っての戦闘に徹しており、身体能力も真の姿を取ったこちらより劣ると推測出来る。身体のサイズもそうだし、膂力でも勝っているのだ。一度捉えてしまえば勝てる。――だから前に出た。

 

「お、おぉ……!!」

 

 ぷちハニーの爆発の中に、白虎は全身を投げ出した。

 一歩目で、既に体表は焼かれた。爆発の中にいては前すらも見えない。

 二歩目で、声を上げることが出来なくなった。喉を焼かれ、火薬の匂いで鼻も利かない。

 三歩目で、痛みは許容範囲を越えた。激痛に藻掻き、苦しみながらも前に出る。

 四歩目、五歩目と行けば、感覚はほぼ無くなる。

 だが八歩目を往く頃には、二本ある牙の片方が折れて再び激痛を味わった。

 十歩目にはもう片方の角も折れた。

 そこから先は、歩数を数えることも出来なかった。本能以外の全てを捨てた白虎は、もはやただ一匹の獣となり敵を狩りに往く。考えは不要だった。

 前を見た。爆発が止み、煙だけの視界になる。身体の感覚はない。

 だがやがて、視界が開けた。煙を抜けた。そこには、

 

「――!」

 

 敵がいた。

 己の主の邪魔となる敵。倒すべき相手を前に、白虎は最後の力を振り絞った。

 足に力を込め、全力で相手に体当たりを仕掛ける。

 速度は落ちるどころか、己の全速以上のものだ。

 白虎は確信する。相手を倒すのにこれ以上の手段はない、と。

 そしてそれを証明するために、白虎は身を低くして敵に正面からぶち当たった。

 だがそこで、己の歩みが止まった。

 

「っ……中々のパワーですわね……!」

 

「――――」

 

 ――否、止められた。

 己の折れた牙を受け止めるように、敵が両手で掴み、足で踏ん張ったのだ。

 敵は言う。

 

「ですが……お忘れじゃありませんこと? わたくしは魔物界一の……完璧使徒。そのライバルは、()()()()()()()()()()()。だからこそ――追いつくためにも、基礎能力の向上は怠っていませんの……!」

 

「……!」

 

 白虎は、眼前の不敵な笑みを浮かべた小さな敵に、徐々に押し返されていく。

 

「わたくしの完全勝利のために……とどめ――行きますわよ……!」

 

「……っ!」

 

 と、白虎は直後、下からかち上げられるように身体の前半分を、宙に浮かせた。

 敵の力任せの掌底、それを受けて出来た隙に、敵が腹の下に潜り込む。そして、アッパーのような軌道で腕を振りかぶり、その一撃は来た。

 

「――――ドラゴン突き!」

 

「――っ!!」

 

 そう名乗っただけの全力のパンチが、白虎の腹に突き刺さる。

 下からの打撃に身体が浮き、反転して仰向けに倒れていく。

 全てがゆっくりに見える世界の中、白虎は己の不覚を悟り、自嘲するような笑みを浮かべた。

 

「……見誤って……いた、な……」

 

 相手の力量も、己の力量も、何もかもが失敗していた。それが今、ようやく確認出来た。

 答えを出しながらも、挑まざるを得なかった勝負の果てに、白虎は相手に声を掛けた。掠れた声で、

 

「……今、のが……ドラ、ゴンを……倒す、力……と、いう……わけ、か……?」

 

 どうでもいい、そして答える必要のない敗者の問い。何故自分でもこんなことを聞いたか解らないものだ。

 しかし相手は、それに静かな声で答えてくれた。珍しい真剣な顔色で、

 

「……ドラゴンのパワーはこんなものではありませんわ。なので、こんなところで負けるわけにはいきませんの」

 

「……そう、かい……それは――」

 

 白虎は言う。薄れる意識の中で、

 

 ――負けるわけだ……。

 

 それを口に出来たかは解らない。

 しかし、後に残ったキャロルは、それを見て、

 

「……ええ、完璧使徒になる予定のわたくしに負けたのですから、あなたは何ら恥じることはありませんわ。胸を張って地獄に行きなさい――煉獄さん」

 

 ふっ、と思わず笑みが漏れた。敵のくせに、妙に気の利く奴だと。

 気の抜けるところは戯骸に似てるかもなぁ、などと緊張感のない事を思い、そして、

 ……地獄に行ったら、後でやって来るザビエル様や他の使徒も誘って、また暴れるかねぇ……。

 地獄で国盗りなど、それこそ主や他の者達が好きそうだ――と、愉快な気分になったのを最期に、白虎は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 炎で全身を焼かれたハンティは、かろうじて危機から脱していた。焦土と化した地面を転がりながらも、氷雪系に属する水魔法を唱えて身体に纏わりつく炎を消すと、素早く立ち上がって身構える。攻撃を喰らったからといつまでも隙を晒しているようではあの馬鹿(レオンハルト)に怒られる。片膝を突きながらも剣を前に構えて顔を上げると、変わらぬ位置に火の鳥はいた。

 

「これでちょっとは楽になったか? ……でもまあ、ここからが本番だな。俺にとってもお前にとっても」

 

 ザビエルの使徒。朱雀となった戯骸だ。姿こそ変わったものの、生きてそこにいる。

 ……確かに殺したはず!

 これを生きていて良かったと喜ぶべきか、殺せなかったと嘆くべきかは微妙なところだが、不利になったことだけは事実だ。そのことに、苦々しい気持ちを覚える。

 だが、その疑問はすぐに解決の取っ掛かりを得た。それは、己の中にある知識と、主から聞いた話、今眼の前で起きている現象、その全てを組み合わせて浮かんだ答えを確認するように、ハンティは細めた目を朱雀に向けた。

 

「……傷が炎とともに再生してるけど、あんたってばそういう生き物だったんだ」

 

「お、解るか?」

 

 解る。古い友人の遺した書物にも、伝説として記されているものが、朱雀の正体だ。

 

「……レオンハルトと戦って生き延びたって聞いてたけど、それが正体なら納得だ」

 

「へぇ――言ってみな」

 

 鳥になっても表情は分かりやすい。試すような笑みを浮かべ、答えを促した朱雀に、ハンティは告げた。

 

「大昔の伝説に、死んでも蘇る炎の鳥がいるって聞いたことがある」

 

 死んでも炎とともに蘇り、死ぬことの出来ない伝説の生き物。

 その名を、今の言葉ではこう呼ぶのだ。それは、

 

「――“不死鳥(フェニックス)”。それがあんたの元の種族ってわけだよね?」

 

 

 

 

 

「戯骸さんが不死鳥……ですか?」

 

 レオンハルト軍本陣で、魔導を捕らえて一度戻ってきたペールに、レオンハルトは戯骸の正体を話していた。

 

「ああ、そうだ。死んでも蘇る不死の鳥。伝説上の生き物が、戯骸という使徒の元の種族だろう」

 

「それって、作り話か何かだと思ってました。昔の人が適当に作った系の」

 

 ペールが休憩用にと持ってきたハーブティーを飲みながら言う。椅子を置いて座っているが、肩や腕が当たるくらい距離が近いのはいつものことだ。注意することも出来るが、敵軍との交戦中とはいえ、仕事を終えた帰ってきた、短い休息中ともあって何も言うことはしない。こちらも淹れてもらった紅茶で喉を潤し、それを机に置きながら、

 

「創作であっても、元となる話はあるものだ。確かに、大体はデマの類か、尾鰭が付いていたりするものだが……不死鳥に関しては真実だったということになるな」

 

「ということは、戯骸さんがレオンハルト様と戦って生き残ったって噂は――」

 

「……ああ、言ってなかったか。――本当のことだ。一度死んで生き返ったのを、“生き残った”と言うならな」

 

 聞かれなかったのもあって言うのを忘れていたな、と己の不覚を少し恥じる。その上で、その時のことを思い出しながらレオンハルトは詳細を口にした。

 

「ザビエルが俺の分身と遊んでいる時、俺はカッとなって戯骸を衝動的に殺してしまってな。やってしまったと後で頭を抱えたが……実はその日の内に他の場所での目撃証言があることと、古い知識と当てはまることから既に生き返っていたらしいこと。それらの情報から、奴が不死鳥であることに気がついた」

 

「……それじゃあ倒せないじゃないですか。殺しても蘇るなら、無敵ってことですよね?」

 

「いや、そうとは限らないだろうな。一度死んで蘇っても、直ぐに動けるとは限らない。少なくとも俺が殺した時はしばらくその場から動いていなかった。戯骸自身がよく解っていなかった可能性もあるが……復活にかなりのエネルギーがいるか、時間が掛かる可能性もある」

 

 ひょっとしたらザビエルも気がついていない可能性もあるな、とレオンハルトは戯骸についての考察を続ける。

 

「もっとも、真の姿とやらだとどうなるかも解らないが……とにかく、戯骸については殺してしまっても問題ない。殺しても死なないのだからな。ゆえにハンティにも、従わないのなら殺せと――」

 

「? レオンハルト様?」

 

 ペールが首を傾げて、言葉を止めたこちらを見上げてくる。

 だが、レオンハルトはそれを口にしたことで、あることに気がついてしまった。そのことについて、何か問題が起きてしまわないかを考えていると、ペールが何かを思いついたように尋ねてきた。それは、

 

「そういえば、そのことは始祖様に言ったんですか?」

 

「…………言ってないな」

 

 考えていたことと全く同じであった。こちらを見上げる半目の視線の圧力に、目線を逸しながらレオンハルトは言う。

 

「……失敗したな。途中で気づくだろうから問題はないだろうが……どの道、倒すのなら避けては通れない道だ」

 

「いやー……どうですかねぇ。私やキャロル先輩みたいに割り切りが良いならともかく、始祖様ってレオンハルト様に似て情に厚いのは良いんですけど、あれで割り切り超下手くそですし……微妙に葛藤したかもしれませんよう?」

 

「……だろうな。……あいつの好きな菓子でも用意しておくか」

 

 それがいいですよう、とクッキーを摘みながら言うペールを横目に頭に手を当てながら心の中で侘びておく。すまなかったな、ハンティ。でもまあ、どうせ解ることだから許してくれ。後でペールが食い散らかしたお菓子やるから。

 ……俺としたことが、情報の共有を怠るとは……猛省しなければ。

 まだ言ってはならない情報かと思っていた。だが、考えようによってはハンティの精神を鍛える良い機会とも言える。結果的に問題はないだろうが、意図したものではない以上、自分の管理が杜撰であったと恥じる。ザビエルと石丸に気を取られすぎたか。

 謝罪を終え、心の中のハンティが親指を立てたのを見て、おそらく許してくれたと解釈したレオンハルトは、ペールの何気ない言葉を聞いた。

 

「戯骸さん、強いとは思ってましたけどそんな凄い存在だったんですね。始祖様、大丈夫かなー……」

 

 伝説の不死鳥。それが使徒となり、力を増した存在こそが、ハンティの相手だ。

 確かに強く、厄介な相手だろう。だが、

 

「問題ない。戯骸は伝説の存在だが――それは()()()()()()()()()()

 

「あっ、それもそうですね!」

 

 そう。ハンティも戯骸と同じ様に、伝説の存在が使徒となり、力を増した者だ。

 しかも形は違えど、元から不死であった存在。ハンティという己の使徒はそんな奴だ。

 そして、条件が同じであれば簡単には負けないし、そうでなくとも己を滾らせた女だ。そこらの男に負けるような軟な女じゃない。

 だからこそ、レオンハルトは己の使徒の勝利を信じ切る。

 

「――ハンティは勝つ。勝利の重さを知っている女だ。そう簡単に負けるはずがない」

 

「ですかねぇ。……それにしても、伝説同士のバトルとか、ちょっと見てみたいですね。激レアイベントじゃないですか」

 

 懐から取り出したメモ帳を手に、うずうずとし始めたペールに、レオンハルトは軽い溜息付きで、

 

「イベントと言うならこの後も大きなイベントが幾つも控えている。ハンティには、出来るだけ早めに戻ってきてほしいところだな」

 

「……エッチなイベント回収なら、直ぐに出来ますよう?」

 

 しなをつくりながら腕を取って、胸を押し当ててきたペールをあっさりと振り払いながらレオンハルトは言う。

 

「戦の最中だ。そういうのは終わってからにしろ」

 

「あんっ、もう、たまには戦いの前の昂ぶりをぶつけて欲しかったのに……」

 

 残念そうに口を尖らせるペールに、内心で謝罪する。

 ……悪いが、この昂ぶりをここで発散するつもりはない。

 どんな形になるにせよ、戦いの前の血の熱さや、頭が冷えるようなこの感じは戦いをするに当たって特に必要なものだ。

 他の雑念を混じえては、気概が衰えてしまう。色事くらいで萎えることもないし、熱くなることもあるが――今回の戦いには、極力不純物は混じえたくないものだ。

 そのための“掃除”も、直に終わる。レオンハルトは自分が動くべき時が徐々に近づいていることを、戦場を真っ直ぐに見据えながら感じていた。

 

 

 

 

 

「――まあ、そういうことだ。俺は不死鳥でな」

 

 多分、レオンハルトも気づいてるだろうぜ、と告げられるが、ハンティもそう思う。

 ……気づいてたなら言いなさいよっ!

 これでは先程まで悩んでた自分が馬鹿みたいだ。殺害許可が出たのは、殺しても問題ない、死なないからという意味だろう。

 心の中でレオンハルトに向かって親指を下に向けるような想像を行うと、ハンティは続く朱雀の言葉を聞いた。

 

「かく言う俺も、最近になって自覚した身でよ。いや、不死鳥ってのは知ってたが、今まで死んだことも無かったし、だからといって、死んで確かめようとはならんだろ? だからお前の主に殺されて、気づかせてもらったことになる」

 

「……なるほどね」

 

 厄介だ、とハンティは思う。殺しても復活するなら、朱雀を倒すことは出来ないのではないかと。

 しかしその答えは、朱雀自ら口にした。苦笑混じりで、

 

「つっても、さっきみたいに直ぐに復活するのは難しいかもだけどな。新しく生まれ変わるには体力も時間もかかるみてぇで、俺としてもまだ慣れてねぇんだ」

 

「……それ、言わないで隠してた方が良かったと思うんだけど?」

 

「おっと、いけねぇ。ハハ、だがまあ言っちまったもんはしょうがねぇな」

 

 気楽に喋る朱雀を、呆れながら見るも、ハンティは朱雀の狙いを察する。

 ――最早、己が手加減する理由は無くなったと。

 その心意気を感じ、ハンティは大きく息を吐いて、気持ちを切り替える。

 

「……殺しても死なない不死の生き物と、まさか実際に遭遇出来るなんてね」

 

「? その反応だと、もしかして昔っから知ってたのか?」

 

 頷く。当然だ。

 自分はかつて、己と同じような永遠を生きる存在を、興味本位で調べてみたことがある。その際に出てきたのは、不死鳥などの伝説の生き物だが、その中には、己もいたのだ。

 

「――遠慮する必要は、ないってことだよね?」

 

 改めて問いを投げる。すると朱雀は一瞬間を置いてから、気勢を感じる声で、

 

「おお、当たり前だ! 俺は死んでも死なねぇからな! ――本気で来ないと倒せねぇぜ!?」

 

 改めて答えを告げた朱雀に、ハンティは安心したように口元が緩んでしまう。

 無理をする必要も、手加減をする必要もない。

 それなら本気を出せる。最強の自分を見せてやれる。

 

「見せてやるよ。あたしの――――()()()姿()()

 

 それを証明するように、ハンティは己を解放した。

 己の業、そして変わった在り方を象徴する真の姿を。

 

 

 

 

 

「――――」

 

 朱雀は、眼前でハンティの身体が光り輝くのを見た。

 そして徐々に、その姿は変化していく。

 その際に、ハンティに与えた傷が一瞬で治っていく。

 

「再生……? いや、それよりも、その姿は――」

 

 朱雀が驚愕する先、光が収まり、ゆっくりと立ち上がったハンティの姿は、確かに変化を遂げていた。

 額のクリスタルが第三の目のように開き、頭から角のようなものが生えた。背中からは大きな黒い翼が生え、同じ様な黒い尾が後ろから伸びている。

 黒い髪は更に長くなり、その瞳は、彼女の主のように紅い双眸に変化していた。

 そして彼女は、己の得物であった剣を手に取り、

 

「――この姿を、身内以外に見せたのは初めてになるかな」

 

 静かな声で言った。朱雀は思わず声を上げる。

 

「ドラゴン……か?」

 

 その姿はプラチナドラゴンの魔人であるカミーラに少し近いだろうか。紅い瞳や第三の目を除けば、形態としてはそれに似ている。

 こちらの言葉に、ハンティは小さく苦笑し、

 

「以前はもっと見るに堪えない姿だったし、制御も利かなかったけど……使徒になってから変わったからね」

 

 と、ハンティは一度笑みを消して、堂々と剣を構えてみせる。

 

「これがあたしの、使()()()()()()姿()――ってことになるかな」

 

 今までのは使徒としての戦闘ですら無かったと、そういうことだ。

 だから、と、

 

「ここからは正真正銘の本気を出すけど……慣れてないし、手加減は出来ないからね。――さっさと掛かってきな」

 

「っ……上等! 中々に燃えさせてくれるじゃねぇか!」

 

 朱雀は、己の内の闘争心が刺激されるのを感じた。

 ハンティの使徒としての存在感。魔人に近いその圧力に、朱雀は心が燃え上がるのを抑えず、その闘気を体現するように炎が吹き荒れる。

 そして、空中でお互いに勢いを付けると、

 

「――!」

 

 その瞬発する突撃を合図に、伝説同士の戦いは始まった。




次回もハンティVS戯骸で、終わったら石丸達の戦いに続きます。
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